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文献詳細

雑誌文献

medicina26巻13号

1989年12月発行

文献概要

今月の主題 痛みの診断とその対策 Editorial

痛みのメカニズム

著者: 花岡一雄1

所属機関: 1東京大学医学部附属病院・分院麻酔部

ページ範囲:P.2478 - P.2480

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 痛みを表現する英語であるpainは,ラテン語のpoenaあるいはギリシャ語のpoineから由来しており,もともとはpenaltyとかpunishmentとかを意味していた.すなわち処罰とは痛みを与えることであった.古代ギリシャのアリストテレス学派においては,中枢神経系の概念はなく,心臓に痛みが直通すると考えていた.17世紀になって,デカルトは痛みの伝導系を考え(図1),それが,今日に至るまで300年以上にわたって痛みの臨床理論の礎となってきた.この理論から19世紀にはフォン・フレイにより,触覚,冷覚,温覚,痛覚の4種類に皮膚の知覚が分類され,それぞれの知覚に特異的な受容器が想定され,20世紀における痛みの研究の出発点になった.このように古代から人類は痛みとともに歩んできたが,そのメカニズムは未だに不明確である.この原因の一つは,痛みを科学的研究の対象とするうえで客観的把握が非常に困難な点にある.これは痛みが他人と同時に同程度に共有されることが不可能であり,個人個人に特有な自己経験的なものとして扱わざるをえないためである.また痛みの内容は多種多様であり,実に複雑であるにもかかわらず,その表現は誠に乏しいものである.Sherringtonは痛覚を生体組織損傷,あるいは損傷の可能性のある有害な侵害刺激noxious stimuliが個体に起こす感覚であると定義している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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