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文献詳細

雑誌文献

medicina26巻2号

1989年02月発行

文献概要

今月の主題 内科医のための癌治療のオリエンテーション 癌発生と転移のメカニズム

癌の転移—血小板の役割

著者: 村田満1 池田康夫2

所属機関: 1慶応義塾大学医学部・内科 2慶応義塾大学医学部輸血センター

ページ範囲:P.198 - P.199

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 悪性腫瘍は宿主の組織に浸潤し,リンパ管や血管を通じて遠隔転移する性質により特徴づけられる.Fidler1)によれば転移の過程は一般に,腫瘍細胞の,1)原発巣からの遊離と周辺組織への浸潤,2)脈管内への侵入,3)脈管内移動,4)着床,5)脈管外への脱出,6)転移部位における増殖といった段階に分けられる(図).血行性転移の場合,腫瘍細胞はまず内皮細胞や露出した内皮下組織に粘着し,次に血管外に遊走しなければならない.
 血小板が腫瘍細胞の転移に関与していることは古くから知られていた.Gasicら2)は抗血小板血清などで血小板数を減少させたラットに腫瘍細胞を移植すると転移形成が著しく抑制されること,さらにこの抑制効果は血小板を輸注することで消失することを報告し,転移における血小板の役割が注目された.現在では,1)腫瘍細胞が血小板凝集を引き起こし,血小板とともに腫瘍血栓を形成する,2)血小板が種々の増殖因子を放出して腫瘍の発育増殖を促進する,3)血小板由来の物質により腫瘍細胞の血管内皮への粘着や血管外への遊走が亢進する,ことなどが知られている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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