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文献概要
今月の主題 内科医のための他科疾患プライマリ・ケア 精神科
いわゆる不定愁訴
著者: 前田久雄1
所属機関: 1九州大学医学部・神経精神医学教室
ページ範囲:P.732 - P.733
文献購入ページに移動●概説
焦点の定まらない多彩な生理的範囲内の心身の故障感の訴えに終始する状態のことを,内科領域では不定愁訴と呼びならわしているが,精神医学ではこれを心気状態と呼んでいる.ここでは以下,心気状態として述べることにする.
心気状態を呈しうる疾患は後で述べるように極めて多種多様であるが,状態像そのものにも本質的に異なる2つの状態が含まれていることに留意しなくてはならない.すなわち,多彩な訴えの背景に重篤な疾患にかかっているという強い恐怖や信念があるものと,必ずしもそれがはっきりしないものとがあることである.狭義には前者を心気状態というが,日常臨床的には両者を含めることが多い.両者ともに,長期間にわたって熱心に病院へ通い,反面では医師の説明をなかなか素直に受け入れようとしないところは共通してみられる.しかし,前者が病気への強い恐れに基づく病態であるのに対して,後者ではしばしば満たされない依存欲求や怒りが潜在しており,おのずとその対応のしかたも異なってくる.後者は近年お年寄りに多くみられる.
焦点の定まらない多彩な生理的範囲内の心身の故障感の訴えに終始する状態のことを,内科領域では不定愁訴と呼びならわしているが,精神医学ではこれを心気状態と呼んでいる.ここでは以下,心気状態として述べることにする.
心気状態を呈しうる疾患は後で述べるように極めて多種多様であるが,状態像そのものにも本質的に異なる2つの状態が含まれていることに留意しなくてはならない.すなわち,多彩な訴えの背景に重篤な疾患にかかっているという強い恐怖や信念があるものと,必ずしもそれがはっきりしないものとがあることである.狭義には前者を心気状態というが,日常臨床的には両者を含めることが多い.両者ともに,長期間にわたって熱心に病院へ通い,反面では医師の説明をなかなか素直に受け入れようとしないところは共通してみられる.しかし,前者が病気への強い恐れに基づく病態であるのに対して,後者ではしばしば満たされない依存欲求や怒りが潜在しており,おのずとその対応のしかたも異なってくる.後者は近年お年寄りに多くみられる.
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