文献詳細
文献概要
今月の主題 内科エマージェンシー 疾患からみた内科エマージェンシー その他の疾患
悪性腫瘍におけるエマージェンシー—上大静脈症候群
著者: 森田正重1 江口研二1 小野良祐2
所属機関: 1国立がんセンター・呼吸器内科 2国立がんセンター・放射線治療部
ページ範囲:P.1258 - P.1260
文献購入ページに移動上大静脈症候群(superior vena cava syn-drome;SVCS)は,縦隔,肺に発生する各種の原因によって上大静脈または両側腕頭静脈が圧迫され,狭窄あるいは閉塞をきたし,静脈血の還流障害が生じて起こる一連の症候群である.原因の大部分は成人では悪性腫瘍,とくに右上葉の原発性肺癌が多い.上大静脈が狭窄あるいは閉塞をきたした場合には,上半身の血流は側副血行路を通じて右心房に還流される.主要な側副血行路としては奇静脈,内胸静脈,外側胸静脈,椎骨静脈があるが,奇静脈は直接上大静脈に合流するため,側副血行路としてとくに重要である.
SVCSでは,自覚症状は顔面を含む上半身の浮腫,頸静脈怒張が多く,他に息切れ,呼吸困難,起坐呼吸などがあり,脳血流のうっ滞によると思われる頭痛,耳なり,種々の程度の意識障害,頸部や肩甲部の痛みも出現しうる.症状の軽重は,病変の部位と範囲,腫瘍の発育速度,上大静脈の狭窄や閉塞の程度,奇静脈の閉塞の有無,側副血行路の発達の程度に左右される.原発性肺癌が原因である場合,咳,血痰,嗄声を伴う症例もある.
掲載誌情報