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文献詳細

雑誌文献

medicina26巻8号

1989年08月発行

文献概要

呼吸器疾患診療メモ

喘息死の予防

著者: 松本強1 宮城征四郎2

所属機関: 1沖縄県立南部病院・呼吸器科 2沖縄県立中部病院・呼吸器科

ページ範囲:P.1424 - P.1425

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 喘息が致死的疾患であることは意外に知られていない.あの著名な内科医であるWilliam Osler博士でさえ,喘息死はあり得ないとそのテキストに明言したほどである.喘息は3,000年も前から知られている病気であるが,喘息死が注目されるようになったのは過去50年足らずのことである.
 私どもの病院で,過去に3回も喘息重症発作のため挿管および人工換気を受けたAさんが,たまたま某病院に入院した.病気を心配して尋ねるAさんに,主治医は笑顔でこういったそうである.「大丈夫,喘息は絶対死なないから」.青ざめたAさんが私どもの病院に逃げ帰ってきたのはいうまでもない.Bさんは喘息大発作のため,一命はとりとめたが,低酸素性脳症のため3年間植物状態で入院している.皮肉なことに,その後喘息そのものは発作を起こさない.たった一度の大発作が,50歳のBさんのその後の人生を無為にしたのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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