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雑誌目次

雑誌文献

medicina27巻12号

1990年11月発行

雑誌目次

今月の主題 膠原病—活動性の評価と治療の選択

理解のための10題

ページ範囲:P.2308 - P.2310

臨床的活動性の評価と予後に影響する因子

全身性エリテマトーデス

著者: 坂根剛 ,   上田裕司 ,   熊倉俊一

ページ範囲:P.2222 - P.2227

 全身性エリテマトーデス(systemic lupuserythematosus;SLE)は,抗DNA抗体をはじめとする自己抗体の出現を特徴とし,全身のほとんどの臓器を障害する代表的な全身性自己免疫疾患である.本症の診断には,アメリカリウマチ協会(American Rheumatism Association;ARA)が1982年に改訂したSLE分類基準が世界的に広く定着している.
 SLEはこの疾患の特性ともいうべき自然経過によって,あるいは治療の修飾によって寛解,増悪を繰り返しながら慢性に経過する.したがってSLEの診断が確立した後は,患者の病型,現在の活動性を正しく把握して,適切な治療を行うことが重要となる.ここでは,まずSLEの疾患活動性の評価基準となる臨床症状,検査所見について解説し,ついでSLEの予後に影響する因子を概観してみたい.

慢性関節リウマチ

著者: 鎌谷直之 ,   柏崎禎夫

ページ範囲:P.2228 - P.2230

 慢性関節リウマチ(RA)の主症状は対称性の多発関節炎であるが,同時にRAは慢性の全身性炎症性疾患でもある.したがって,RAの活動性は局所症状のみの評価では不十分で,全身症状の評価を加えて初めてより正確な把握が可能になる.また,炎症症状は赤沈などの検査所見にも反映されるので,客観的指標として検査成績も一般に日常臨床では利用されている.
 このようにRAの活動性は一つの因子では規定されず,いろいろの因子の総合によって決まる多少曖昧な概念である.しかし,RAの活動性を正確に評価することは,治療手段の選択,さらには生命や運動機能に関する予後を推定するためにも,欠かせないものである.

強皮症

著者: 熊谷安夫 ,   橋本博史

ページ範囲:P.2232 - P.2234

 全身性強皮症(進行性全身性硬化症;以下PSS)の予後は合併した内臓病変の部位,性質により規定される.とくにこの疾患にみられる動脈のムコイド型の内膜肥厚は全身に広く存在し,その分布と程度は予後に深く関与する.したがって臨床的にPSSの活動性を問題とする場合,血管病変の早期診断が重要である.多くの報告では予後の悪い順に,腎病変,心病変,肺病変,非合併群である(図1).
 またPSSでは,疾患概念上また診断上,皮膚硬化が重視される.とくに皮膚硬化の範囲による分類と各種内臓病変との関連が指摘されており(表),皮膚硬化の範囲と予後との相関があるという報告が多い.原則的には重症合併症が多いびまん型PSSのほうが,限局型PSS(従来の肢端硬化症,CREST症候群)より予後が悪いといわれる.

多発性筋炎/皮膚筋炎

著者: 山根一秀

ページ範囲:P.2236 - P.2237

 多発性筋炎・皮膚筋炎(以下,PM/DMと略)は早期に正しい治療を行えば寛解させることができる疾患である.したがって,患者のPM/DMの臨床的活動性が高いのか低いのか,予後の良いタイプなのか悪いタイプなのかを的確に評価し,治療方針にフィードバックさせることが肝要である.以下にその要点をまとめた(表).

高安動脈炎

著者: 森脇龍太郎 ,   沼野藤夫

ページ範囲:P.2238 - P.2240

 高安動脈炎は大動脈およびその基幹分枝,肺動脈,冠動脈を病変の主場とする非特異的な慢性動脈炎で,内腔の狭窄性病変あるいは動脈瘤などの拡張性病変をきたす.大動脈弓の主要分枝である腕頭動脈,鎖骨下動脈,総頸動脈領域を主病変とすることが多く,そのために橈骨動脈拍動が減弱ないし消失するため,“脈なし病”とも呼ばれる.
 上行大動脈基部の拡大のため弁輪の拡張をきたし,その結果,大動脈弁閉鎖不全症(以下,AR)を合併し,早期から心不全に陥ることもあり,注意が必要である.下行大動脈の広範囲な狭窄性病変により異型大動脈縮窄症を,また腎動脈の狭窄・閉塞性病変により腎血管性高血圧症を呈することも稀ではない.

Sjögren症候群

著者: 片山雅夫 ,   富井正邦

ページ範囲:P.2242 - P.2243

 Sjögren症候群(SjSと略)は外分泌腺,とくに涙腺,唾液腺に慢性炎症をきたす自己免疫疾患である.SjSでは免疫グロブリンの増加,各種自己抗体陽性,流血中免疫複合体陽性などの液性免疫異常に加え,細胞性免疫異常の存在も判明してはいるが,本質的な病因は未だに不明である.

Behçet症候群

著者: 竹内明輝

ページ範囲:P.2244 - P.2245

 ベーチェット病は多彩な臨床症状を呈する難病であり,疾患活動性についても,ひとつの症状のみが活動性が強く,他の症状はおさまっているということが,しばしばみられる.一般的には主症状に含まれる眼,皮膚,口内アフタ,陰部潰瘍などは発病初期にはしばしばみられるが,生命予後にも関係する神経,消化管,血管症状などは,発病後数年たち,主症状がおさまりかけた頃に出現するので安心は出来ない.
 以下,本疾患の活動性と予後に影響を与える因子について記載する.

治療方針の決定とフォローアップ

全身性エリテマトーデス

著者: 隅谷護人

ページ範囲:P.2246 - P.2249

 全身性エリテマトーデス(以下,SLEと略)の発症の仕方と臓器病変の現れ方は患者によってまちまちであり,緩徐に発症し,初診時には病歴を含めてSLEの分類基準を満たしても,その時点ではとくに薬物療法を要しない例から,急激に多臓器病変を伴って発症し,初診時から強力なステロイド療法を必要とする例まで,さまざまである.また,少数あるいはひとつの臓器病変で発症し,分類基準を満たさない例も存在することに留意する必要がある.この意味で,SLEの初期治療計画を考える前に,SLEの早期診断あるいはSLEを疑うことから始めなければならない.

慢性関節リウマチ

著者: 宮城憲一 ,   東威

ページ範囲:P.2250 - P.2251

 慢性関節リウマチ(RAと略)の病像は患者ごとに異なり,多彩であるから,各患者に合った治療法が選択されねばならない.この際,患者のquality of life(QOLと略)の改善を考えた治療が必要であり,病期に適した非ステロイド性抗炎症薬non steroidal anti-inflammatory drugs(NSAIDsと略)や疾患修飾薬disease modifying rheumatic drugs(DMARDsと略)の選択が重要である.DMARDsには免疫調節薬と免疫抑制薬があり,RAの進行を阻止する作用があり,早期からの適切な治療により,RAの転帰は著しく改善されるものと期待される.
 表はRAの段階的治療法を示したものである.

強皮症

著者: 近藤啓文

ページ範囲:P.2252 - P.2253

●強皮症の治療の問題点1)
 全身性強皮症の治療法に決定的なものがない現時点では,多くは対症療法にとどまっている.そこで,病期,病型および病気の活動性を考慮して治療法を選択することになる.
 まず,強皮症の病期の判定であるが,これは容易ではない.強皮症の初発症状は60%以上がRaynaud現象で,手の浮腫症状と関節痛がこれに次いでいる.初発症状から来院までの期間をみると,早期に来院する患者もいれば,10年以上たって来院するものもいる.しかし,前者が早期で軽症,後者が後期で重症と簡単に分類することはできない.むしろ前者に急速に進行する重症例が入ることがある.

多発性筋炎/皮膚筋炎

著者: 斉藤栄造 ,   岡田聰 ,   村林京子 ,   小川武彦

ページ範囲:P.2254 - P.2255

 多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DMと略)の主な治療薬剤は糖質コルチコイド(GCと略)剤と免疫抑制剤である.これらの薬剤の効果を客観的に評価した成績は少なく,治療有効性や適切な治療法の選択など不明な点は少なくない.本稿ではこれらの問題に関する議論は他書に譲り1),筆者らが行っている治療の実際を具体的に述べる.

結節性多発動脈炎

著者: 長沢俊彦

ページ範囲:P.2256 - P.2257

 結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa,以下PN)の診断と治療に関しては,1990年3月に厚生省系統的脈管障害調査研究所のPNの診断と治療の小委員会により表1,表2,図に示すガイドラインが示された1).本稿では,このガイドラインに沿ってPNの初期治療計画のたて方,フォローアップの注意点,再燃時の対応にっいて述べることにする.

高安動脈炎

著者: 安倍達

ページ範囲:P.2258 - P.2259

●若い女性に不定愁訴と思われる多彩な臨床症状をみたときは本症を疑う
 自覚症状としてもっとも多いものは上を向いた時にめまいがしたり,頭痛,失神発作,視力障害といった頭部虚血症状である.四肢,とくに上肢の循環障害による症状として,知覚異常,冷感,重いものを持つとくたびれやすいと訴える.大動脈あるいは腎動脈狭窄症状として,頭痛,めまい,息切れ,高血圧症状がある.また初期に微熱がでることがある.

Sjögren症候群

著者: 宮坂信之 ,   立石睦人

ページ範囲:P.2260 - P.2261

●疾病の概念と分類
 Sjögren症候群(以下,SjSと略)は,乾燥性角結膜炎・慢性唾液腺炎を主徴とする原因不明の自己免疫疾患である.
 本症の治療を考えるうえには,まずその病理組織学的変化を十分に頭に入れておくことが肝要である.SjSでは,外分泌腺の導管周囲に著明なリンパ球浸潤と,腺房の萎縮,破壊を特徴とする.これらの変化は涙腺・唾液腺にとどまらず,広く全身の外分泌腺に波及するため,本症はautoimmune exocrinopathyと呼ばれることもある1)

Behçet病

著者: 高野恵雄 ,   松田隆秀 ,   水島裕

ページ範囲:P.2262 - P.2263

 ベーチェット病は口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍,皮膚症状,眼症状,外陰部潰瘍を主症状とする慢性再発性の全身性炎症疾患である.本症の病因・病態については,かなりのところまで明らかにされている.治療についてもシクロスポリンの登場など個々の症例の病態に合わせ,各種薬剤を組み合わせた治療が可能になってきている.

診療上の特別な問題

全身性エリテマトーデス患者の妊娠の管理

著者: 長沢浩平

ページ範囲:P.2264 - P.2265

 全身性エリテマトーデス(SLEと略)は20〜40歳の女性に好発する疾患であるため,従来より,妊娠・出産の是非,および管理が問題となってきた.SLEは全身性の疾患であり,かつ一般にステロイド剤を必要とするために,一昔前までは妊娠,出産を許可しない風潮が強かったが,最近の知見の集積,および治療,管理の向上により,その考え方は変ってきているといえる.本稿ではその最近の考え方と治療,管理について述べたい.

CNSループスの診断における髄液検査の有用性

著者: 広畑俊成

ページ範囲:P.2266 - P.2268

 全身性エリテマトーデス(SLEと略)に合併する精神神経症状(CNSループス)は,全SLE患者の25〜60%に出現するといわれる.CNSループスの診断を困難にしている大きな要因は,腎障害,血沈,血清補体価,抗DNA抗体価といったSLEの全身の疾患活動性の指標が,必ずしもCNSループスの活動性を反映しないという点にある1).一般髄液検査でも,CNSループスでは,蛋白量・細胞数は正常範囲のことが多い1).しかし,近年髄液中の免疫グロブリンやサイトカインの定量が可能となり,髄液検査の幅が一段と広がった.
 本稿ではCNSループスで見られる髄液中の免疫グロブリン・インターロイキン6(IL6)活性の異常について概説したい.

抗リウマチ薬による腎障害

著者: 中野正明 ,   斉藤隆生 ,   菊池正俊 ,   佐藤健比呂 ,   荒川正昭

ページ範囲:P.2269 - P.2271

 慢性関節リウマチ(RAと略)の治療薬剤による腎障害について,各薬剤ごとに解説する.

慢性関節リウマチの物理療法の適応と禁忌

著者: 荻田忠厚 ,   冨山哲 ,   岡崎健

ページ範囲:P.2272 - P.2273

 慢性関節リウマチ(RAと略)は慢性かつ進行性の疾患であり,その治療目的は炎症を抑え,痙痛を取り除き,関節・筋肉の機能を保持しながら変形を予防,あるいは最小限にすることである.基本的には薬物療法によるが,寛解,増悪を繰り返し,経過とともに四肢の変形が進行し,日常生活動作(ADL)にも支障をきたす症例がきわめて多い.したがって,四肢変形の防止,ADLの維持・向上を目的とするリハビリテーション療法を積極的に取り入れ,患者の生活の質(QOL)の向上を図ることも重要である.

慢性関節リウマチの関節障害のリハビリテーション

著者: 木村彰男 ,   千野直一

ページ範囲:P.2274 - P.2275

 慢性関節リウマチ(RAと略)の治療において,リハビリテーション(以下,リハビリと略)の占める位置は一般に考えられている以上に大きく,このことは広く用いられているRAのピラミッド型の治療スケジュールを見ても明白である.すなわちリハビリ・プログラムをいかに薬物療法や手術などと組み合せていくかが,RA治療の成否を決めることになると言っても過言ではない.
 RAのリハビリのうち,物理療法については前項に譲るとして,ここでは日常生活動作(ADLと略),自助具,ホームプログラムなどの,主として外来患者へのリハビリの指導について述べたい.

慢性関節リウマチにおける関節置換術

著者: 腰野富久 ,   三ツ木直人

ページ範囲:P.2276 - P.2279

 慢性関節リウマチ(RAと略)に対する薬物を中心とする保存療法は近年急速に進歩し,その完全制圧も将来可能と思われる状況となった.しかし,発症したRAによる関節変形は薬物および理学療法ではいかんともしがたく,手術療法を行わざるをえない.今後もRAの治療を行ううえで,手術療法はきわめて重要な柱であり,整形外科医以外の医師も十分に外科療法の内容を理解する必要がある.
 RAに対する手術は,関節の破壊予防と炎症の鎮静化を目的とした滑膜切除術などと,破壊された関節の機能再建を目的とした関節形成術などに分けられる.人工関節置換術は関節の機能の再建を目的とした関節形成術であるが,同時に滑膜の切除も行い,炎症の鎮静化をはかり,疼痛を消失させる.

膠原病関連のトピックス

Undifferentiated connective tissue syndrome(UCTS)

著者: 東條毅 ,   小笠原孝

ページ範囲:P.2280 - P.2281

 膠原病に属する各疾患では,その疾患に特異的な臨床症状あるいは検査所見が乏しい.加えて病因や病態に不明の点が多い.このため膠原病各疾患の診断には,診断基準が広く用いられている.しかし膠原病を疑っても,どの基準にもよく当てはまらない症例が少なくない.これらはいわば疑診例に相当する.しかしどの疾患の疑診例とすべきかの判断は,恣意的になりがちである.
 最近このような一連の症例をまとめて,未分類膠原病あるいは分類不能膠原病と呼ぶ者がでてきた.この語源はおそらく1980年に米国のLeRoyらがArthritis & Rheumatism誌上に提唱したundifferentiated connective tissue syndrome(UCTS)にある1)

抗リン脂質抗体症候群

著者: 小池隆夫

ページ範囲:P.2282 - P.2283

●抗リン脂質抗体症候群の概念
 昔から全身性エリテマトーデス(SLEと略)患者の一部に梅毒反応の生物学的偽陽性が認められることが知られていた.そのような患者には,しぼしば個々の凝固因子の活性を抑制することなしに,リン脂質依存性の凝固検査を種々の程度に阻害する免疫グロブリン—いわゆるループスアンチコアグラントが認められ,さらにはカルジオリピンに対する抗体の存在も明らかにされた.
 これらの自己抗体は,抗リン脂質抗体と総称されるが,最近,SLEを中心にある種の臨床症状(血栓症,神経症状,習慣流産,血小板減少など)の出現と抗リン脂質抗体(とくにループスアンチコアグラントと抗カルジオリピン抗体)の存在が注目され,このような病態を「抗リン脂質抗体症候群(Antiphospholipid Syndrome)」と呼ぶことが提唱された1)
 本症候群は,SLEに代表される膠原病にもっとも多く認められるが,必ずしもSLEの診断基準を満足しないものから,原因不明の肺高血圧症,若年発症の心筋梗塞,習慣流産患者まで多岐にわたっている2)

Subacute cutaneous lupus erythematosus

著者: 衛藤光

ページ範囲:P.2284 - P.2285

 全身性エリテマトーデス(以下,SLEと略)にはさまざまな皮膚症状が出現し,その観察は臨床上きわめて重要である.近年,特徴的な皮膚症状を呈する軽症型のSLEとして,亜急性皮膚エリテマトーデスsubacute cutaneous lupus erythe-matosus(以下,SCLEと略)なる概念が提唱された.

リウマチ性多発筋痛症

著者: 原まさ子

ページ範囲:P.2286 - P.2287

 リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheuma-tica, PMRと略)は,項頸部,上背部,肩,上腕,腰帯部の疼痛とこわばりを主徴とし,60歳以上の高齢者に発症する疾患として,1888年,Bruceによりsenile rheumatic goutとして報告された.以来,種々の病名で報告が重ねられ,1957年,BarberによりPMRとしての疾患単位が確立された.白人に多く,50歳以上では年平均罹患率は人口10万に53.7という報告もあり,痛風につぐ発病率といわれている.日本人には少なく,1966年はじめて報告されて以来,100例に満たない.一方,本症と側頭動脈炎の合併が多いことから,血管炎とのかかわりが注目されている.

成人Still病

著者: 大田明英

ページ範囲:P.2288 - P.2290

 成人Still病は,小児の慢性関節炎である若年性関節リウマチ(JRAと略)のうちの全身型(Still病)が成人に認められたものと定義される.
 関節症状のほか,発熱,皮疹,リンパ節腫脹,肝脾腫などの多彩な臨床症状と,高度の炎症所見によって特徴づけられ,概念的にも関節疾患としてよりは熱性疾患の1つとして捉える傾向が強くなっている.

無菌性骨壊死と副腎ステロイド療法

著者: 有冨寛 ,   小林明正

ページ範囲:P.2291 - P.2293

 近年,ステロイド剤が種々の疾患,とりわけ難病の治療や腎移植など各臓器移植の免疫抑制剤として,長期あるいは大量に使用されるにつれ,大腿骨頭などの骨壊死例が,とくに1970年代半ば以降,増加の傾向にある.
 本稿では紙数の関係から,原因,臨床像,診断,治療と予後について簡単に概説する.

スポーツと関節障害

著者: 河野一郎

ページ範囲:P.2294 - P.2295

 スポーツが盛んになる一方で,スポーツ活動に伴う関節の傷害が増加し,一般外来で診察する機会も多くなっている.スポーツに伴う関節の傷害は受傷機転のはっきりしている外傷と慢性に経過することの多い障害に分けられる.本稿では関節障害を主に概説する.

鼎談

膠原病の免疫抑制剤療法—いつ投与にふみきるか

著者: 廣瀬俊一 ,   市川陽一 ,   柏木平八郎

ページ範囲:P.2296 - P.2306

 柏木(司会) 今日は「膠原病の免疫抑制剤療法」,とくに「いつ投与にふみきるか」というサブテーマを設けて,膠原病の治療に関してお詳しい先生方に,その現状と考え方についてお話し合いいただきたいと思います.
 膠原病治療の現状を考えてみますと,なかでも全身性エリテマトーデス(以下,SLEと略)や壊死性血管炎の予後は一昔前に比べて著しく改善されてきました.その主な理由には早期診断とgeneral supportivecare,とくに抗生物質による感染症のコントロールがあると思いますが,加えて重要なのはステロイド療法の進歩だと思います.しかし,なかにはステロイド療法でも十分にコントロールができない症例もしばしばあります.

Current Topics

超高速CT診断—心臓疾患への応用

著者: 相澤信行

ページ範囲:P.2350 - P.2356

 従来のX線CTスキャナーは,解像力,スキャンスピードについてほぼ完成の域に達したと考えられていたが,最近開発された超高速CTは,解像力,スキャンスピードの点で従来のX線CTを相当上回り,今後の新しい検査装置としての地位を獲得するであろうと考えられる.以下,超高速CTを使用した心臓疾患の診断法について紹介する.

カラーグラフ 冠動脈造影所見と組織像の対比・21

冠動脈バイパスグラフト閉塞による急性心筋梗塞

著者: 堀江俊伸

ページ範囲:P.2314 - P.2316

●CABG 12年後,グラフト閉塞による急性心筋梗塞に対し,PTCR, PTCAを施行した例
 症例 62歳,男
 家族歴 弟,子供も高脂血症を指摘され,弟もバイパス手術を受けている.

非観血的検査法による循環器疾患の総合診断

広汎な左室心筋の石灰化を示した心筋梗塞後心室瘤の1例

著者: 福田信夫 ,   大木崇 ,   小川聡 ,   影治好美 ,   林真見子 ,   清重浩一

ページ範囲:P.2324 - P.2333

■心音図・心機図所見
 1)入院時の心音図,頸動脈波曲線および心尖拍動図(図2)
 入院時の心音図で重要な所見は,①I音(I)の減弱,②心尖部(Apex)の全収縮期雑音(SM),拡張期奔馬音(DG)およびそれに続く拡張期振動群(DM),③第5および第3肋間胸骨左縁(5L,3L)のII音大動脈弁成分(IIA)に続く楽音様振動(M),および④5Lにおける拡張中期過剰心音(EX),の4点である.
 本例のP-Q時間(図3で測定)は約250msecと延長を示す.したがって,P-Q時間の延長により房室弁の閉鎖が前収縮期に近づき,心収縮開始時の弁閉鎖エネルギーが弱くなってI音の減弱をきたす.

Oncology Round・13

胸腔内出血と肺動脈塞栓症を併発した肝細胞癌の1例

著者: 高橋幸則 ,   武越裕 ,   池田栄二 ,   片山勲

ページ範囲:P.2335 - P.2339

 肝細胞癌は,欧米に比べて本邦に多い悪性腫瘍のひとつである.しかも,日本肝癌研究会による2年毎の原発性肝癌の全国登録症例数をみると,1982〜83年の5,567例から1984〜85年の7,320例へと年々の増加傾向も認められている.診断は,近年盛んに開発されている腫瘍マーカーと画像診断(超音波,CT scan,血管撮影)により以前よりはるかに容易となっており,そのため早期発見,完全治癒癌切除による長期生存例も報告されている.しかし,肝癌患者のうち切除手術が実施されるのは,いまだに17.1%(1989年,厚生省第5次悪性新生物実態調査)と少ない.過半数を占める手術不能症例に対しては,動脈注入による化学療法,肝動脈塞栓療法(transcatheter arterial emboli-zation;TAE),エタノール局所注入療法などの延命を図る治療法が活用されている.
 今回提示する肝細胞癌症例は,初診時すでに肝全体に娘結節を有するStage IV-Aであったが,数回のTAEにより,3年6カ月におよぶgoodquality of life(職場を含む日常生活への復帰)を伴う延命効果が認められた.

演習

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.2318 - P.2323

内科専門医による実践診療EXERClSE

全身倦怠感,食欲不振,意識消失発作/蛋白尿,腎機能低下

著者: 板東浩

ページ範囲:P.2367 - P.2370

 55歳,男性,農業.家族歴に特記事項なし.既往歴:31歳時に肺結核で1年間入院.現病歴:昭和62年1月下旬頃より全身倦怠感,食欲不振および嘔気が出現し,近医を受診.感冒と診断され加療を受けたが,症状は次第に増悪してきた.3月5日に意識消失発作がみられ,血清Na 117mEq/1,空腹時血糖59mg/dlと低Naおよび低血糖が認められたため,入院した.
 理学的所見:身長170cm,体重50kg.脈拍72/分,整,血圧100/58.意識清明,皮膚は乾燥し,やや蒼白,色素沈着を認めず.結膜は軽度貧血性であるが,黄疸なし.頸部リンパ節の腫脹や甲状腺腫を認めない.心肺に異常なく,腹部は平坦,軟,肝脾触知せず.腋毛はやや減少.下腿に浮腫なく,神経学的に異常を認めない.

講座 図解病態のしくみ 膠原病・4

全身性エリテマトーデス(SLE)

著者: 橋本博史

ページ範囲:P.2340 - P.2348

概念
 全身性エリテマトーデス(SLE)は慢性に経過する炎症性疾患で,経過中,寛解と再燃を繰り返し多臓器病変を伴う.臨床的にはリウマチ性疾患,病理学的には結合織病,病因論的には自己免疫疾患に属す.

検査

検査データをどう読むか

著者: 依藤寿

ページ範囲:P.2372 - P.2375

 患者:14歳,男性.主訴:発熱.既往歴:特記すべきものなし.家族歴:明らかな血栓症の既往なし.現病歴:昭和62年2月23日夕,急性腹症にて某病院に緊急入院.急性虫垂炎の診断にて虫垂切除術を受けた.その後,2月27日にてんかん様発作をきたし,頭部CTにて後頭蓋窩血腫が確認された.血腫は速やかに吸収されたが,3月中旬より白血球増多を伴わない高熱が続き,不明熱精査目的で次の病院に転院した.同院での腹部超音波検査にて下大静脈血栓が指摘され,静脈造影にて右下腿から下大静脈にかけて広範な血栓を確認した.凝固亢進状態に対してメシル酸ガベキサート(FOY)2,000mg/日の持続投与が行われ,若干の改善を得たが完全な寛解を得られず,更なる精査目的で4月16日当院へ転院となった.入院時現症:身長170cm.体重54kg.脈拍64/分,整.血圧118/72mmHg,左右差なし.右下肢に軽度の腫脹を認めた.

CPC

間質性肺炎,肺出血および消化管出血,汎血球減少,ショックと短期間に多彩な臨床経過をたどって死亡した35歳の透析患者

著者: 大山誠也 ,   須藤博 ,   小沢尚 ,   亀井徹正 ,   内田弘一 ,   勝俣範之 ,   梅田知子 ,   細田浩道 ,   金國鐘 ,   鈴木隆夫 ,   竹原栄一 ,   渡雅文

ページ範囲:P.2358 - P.2366

症例
 患者 35歳,男性,透析患者
 主訴 呼吸困難
 現病歴 16歳の時に急性腎炎に罹患し,ネフローゼ症候群となった.21歳より,慢性腎不全のために血液透析療法を導入され,週3回透析を行っていた.自尿はなく,dry weightは55.1kgであった.
 入院1週間程前より,咳,鼻汁,咽頭痛などの上気道炎症状および37℃台の微熱が続いていた.3日前より,咳がひどくなり,さらさらした痰が出るようになり,熱は38℃台まで上昇した.かかりつけの医院を受診し,L-ケフレックス1g/日を処方されるも改善せず,咳がひどくなり,全身倦怠感や食欲不振も出現した.1989年3月5日朝から呼吸困難が強くなったために当院を受診し,入院となった.
 既往歴 24歳の時に肺水腫,32歳の時に肺水腫およびウイルス性肺炎,34歳の時に鼻出血.
 家族歴:特記すべきことなし.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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