icon fsr

文献詳細

雑誌文献

medicina27巻7号

1990年07月発行

文献概要

今月の主題 抗生物質の使い方 抗生物質選択心手順

培養検体の採取方法と限界

著者: 熊坂一成1

所属機関: 1日本大学医学部・臨床病理

ページ範囲:P.1104 - P.1107

文献購入ページに移動
 ある大学病院細菌検査室での出来事である1).創傷部位のガーゼを培養したところ,芽胞形成グラム陽性桿菌が認められた.この患者の検査依頼用紙には,ガス壊疽の疑いがあると記入されていた.そこで検査技師は,検査室のコンサルタントの医師を至急,電話で呼んだ.車を飛ばし駆けつけた彼はまず,グラム染色塗抹標本を観察した.確かに,芽胞形成菌が多数みられたが,Clost-ridium Perfringens(ガス壊疽菌)にしては小型すぎ,どうみても雑菌性のBacillus属としか思えず,納得がいかないので,受持医(研修医)と指導教官を呼んだ.そして,検体採取時の無菌操作の必要性を諄々と説明し,この検体がどのようにして提出されたかを改めて質問した.
 やがて研修医は「ガーゼ交換した外科医が床に落とした創傷部のガーゼを拾い上げ,緑膿菌感染の疑いがあるかどうかを調べるために検体を提出した」と告白した.そばにいた指導医は謝った.若い医師は「そんなことを言ったって…」とふくれっ面でまったく反省の態度をみせず,検査室を出ようとした.いつもは温厚な白髪混じりの細菌学者は,たまらず怒った.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?