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雑誌目次

雑誌文献

medicina28巻12号

1991年11月発行

雑誌目次

今月の主題 よくわかる内分泌疾患

理解のための10題

ページ範囲:P.2006 - P.2008

内分泌疾患発見のきっかけ

顔貌・体型

著者: 金森晃

ページ範囲:P.1848 - P.1851

ポイント
1)内分泌疾患の多くは,顔貌・体型の変化が徐々に起こるため,患者自身や近親者は異常に気づかない.
2)診察した医師が患者の顔貌・体型をみて特定の内分泌疾患を念頭にうかべないと,長期にわたって見逃してしまうことがある.
3)顔貌・体型の所見が診断のきっかけとなる内分泌疾患として,末端肥大症,バセドウ病,甲状腺機能低下症,クツシング症候群,アジソン病,類宦官症などがある.

皮膚症状

著者: 西岡清

ページ範囲:P.1852 - P.1853

ポイント
1)内分泌疾患に伴う皮膚症状は多種にのぼる.それらを大きく特異症状と非特異症状とに分けることができる.前者は皮膚症状から内分泌疾患を診断できるものであり,後者は他疾患との鑑別を行ったのちに内分泌疾患との関連性を考えうる症状である.
2)特異症状として,色素異常,毛髪異常,黒色表皮腫,粘液水腫,壊死性遊走性紅斑,座瘡様発疹などが挙げられる.

隠れた内分泌疾患を見つけるコツ

肥満

著者: 斎藤真理 ,   井上修二

ページ範囲:P.1854 - P.1855

ポイント
1)肥満とは過剰体重のことではなく,体脂肪の過剰蓄積のことであるが,体脂肪の適切な測定法がないために,標準体重に対する過剰体重を肥満度として肥満を判定している.
2)標準体重は(身長)2×22(kg)で計算し,肥満度30%以上を一般に肥満症と判定する(Body Mass Index[体重÷(身長)2]が22の時にもっとも疾患の合併率が少ないという統計に基づく日本肥満学会方式).
3)症候性肥満のうち内分泌性肥満は軽度のものが多いので,肥満度20%以上を肥満症と考えたほうが診断の誤りが少ない.
4)肥満の大部分は単純性肥満であるが,随伴症状の注意深い把握により症候性肥満を見逃さないようにすることが大切である.

やせ

著者: 鈴木裕也

ページ範囲:P.1856 - P.1858

ポイント
1)やせ,体重減少をきたすには,熱量出納が必ず負とならなければならない.
2)熱量出納が負になるには,摂取熱量の減少か消費熱量の増大がなければならない.
3)日常臨床でもっとも多いやせをきたす内分泌疾患は,バセドウ病と糖尿病であり,他の内分泌疾患は,それぞれ該当ホルモンの特徴的症状を伴う.
4)神経性食欲不振症,神経性大食症によるやせは心身症的症状により診断可能であり,ホルモン異常はやせによる二次的現象である.

低身長

著者: 肥塚直美

ページ範囲:P.1859 - P.1861

 下垂体性小人症,甲状腺性小人症に代表されるホルモン分泌不全による低身長は,ホルモンを補充することにより身長を正常範囲まで伸ばすことができる.低身長をみた際に,これら疾患を発見し,早期に治療することは重要である.
 本稿では内分泌・代謝疾患に基づく低身長を中心に,小人症の診断のプロセスについて述べる.

発熱・感冒様症状

著者: 西川光重 ,   浮田千津子

ページ範囲:P.1862 - P.1863

ポイント
1)発熱をきたす内分泌疾患には甲状腺疾患,副腎疾患,視床下部疾患がある.
2)発熱の程度は疾患により異なり,また,それぞれの疾患に特徴的な随伴症状がある.
3)これらの疾患には緊急処置が必要なものがあり,的確な診断と治療が必要である.

高血圧

著者: 鈴木洋通

ページ範囲:P.1864 - P.1866

ポイント
1)体型:やせは褐色細胞腫,肥満はクッシング症候群を疑う.
2)血清電解質:低カリウム血症は,原発性アルドステロン症とクッシング症候群を疑う.
3)若年女性:腎血管性高血圧,高安病を疑う.

けいれん,麻痺

著者: 塚本雄介

ページ範囲:P.1867 - P.1869

ポイント
1)非ケトン性高浸透圧性昏睡は脳血管障害ときわめて症候が類似する.
2)各種電解質異常の中で血清K値異常のみが意識障害をきたしにくい.
3)けいれん,麻痺の原因でもっとも多い電解質異常はNa代謝異常である.
4)リン,Mg,Cl異常症は見過ごされやすい.

倦怠感,ぼけ

著者: 久保明

ページ範囲:P.1870 - P.1871

ポイント
1)数多くの内分泌疾患が倦怠感,ぼけを生ずるが,身体所見に先行して生ずることもあり注意を要する.
2)倦怠感は精神・神経症状の中における“うつ症状”のひとつとして生ずることもある.
3)倦怠感,ぼけの多くはホルモン補充療法で改善するが,個人差もあり,長期の臨床的観察を要する.
4)臨床上,高頻度なのは甲状腺機能異常,精神・神経症状を高頻度に生ずるのはCushing症候群である.

多毛,脱毛

著者: 土師正文 ,   名和田新

ページ範囲:P.1872 - P.1874

ポイント
1)体毛の種類と分布は遺伝的素因とホルモンの支配を受け,①副腎,卵巣由来のandrogenに支配される両性性毛(腋毛,陰毛下半分),②睾丸性androgenに支配される男子性毛(ひげ,胸毛,陰毛上半分,前頭部,頭頂部),③androgenの影響を受けない非性毛(眉毛など)に分類される.
2)女性,小児にandrogen過剰分泌による男子性毛が生じる多毛症(hirsutism)では,月経異常,痤瘡など男性化症状を伴うことが多く,副腎性(先天性副腎過形成,Cushing症候群など),卵巣性(多嚢胞卵巣症候群,テストステロン産生腫瘍)および原因の特定できない特発性多毛症に分けられる.非性毛の増加を示す疾患には,末端肥大症,神経性食思不振症などがあげられる.
3)性毛の脱毛は,性腺,副腎機能低下を示す下垂体前葉機能低下症,Addison病(とくに女性),性腺機能低下症でみられ,非性毛の脱毛は,甲状腺機能亢進症(頭髪),甲状腺機能低下症(頭髪,眉毛外半分)で認められる.

多尿

著者: 中山昌明 ,   山田研一

ページ範囲:P.1875 - P.1877

ポイント
1)多尿例に対しては,まずそれが溶質利尿なのか,水利尿なのかを鑑別することが,原因診断のfirst stepである.
2)患者の体液状態を把握することが重要である.脱水状態にあるとき,たとえ尿崩症が存在しても多尿を呈さないこともあるからである.

性欲低下

著者: 薬師寺史厚 ,   宮地幸隆

ページ範囲:P.1878 - P.1879

 性欲低下の定義には種々の考え方があるが,以下ではインポテンツという意味にとる.日常診療において患者がインポテンツを主訴として来院することは本邦では少ない.インポテンツは,性欲,勃起,射精,オーガスムスの一連の流れのうち,いずれかひとつまたはそれ以上の不全をいい,これらは多くの内分泌疾患の一症状であることがある.

肝機能障害

著者: 吉村弘 ,   浜田昇 ,   伊藤國彦

ページ範囲:P.1880 - P.1881

ポイント
1)Al-P高値ではバセドウ病と副甲状腺機能亢進症を疑う.バセドウ病ではCaとPともに上昇するが,副甲状腺機能亢進症ではCaは上昇,Pは低下する.
2)T-cho低値でChE高値の場合はバセドウ病を疑う.
3)TTT,ZTTのみ高値では甲状腺機能正常の慢性甲状腺炎を疑う.LDH,T-cho,CPKも高値の場合は甲状腺機能低下症である.

ステロイド離脱症候群を考えるべきとき

著者: 田中廣壽 ,   府川悦士

ページ範囲:P.1882 - P.1883

ポイント
1)ステロイド投与中,とくに減量.中止時には常に本症候群を念頭におくことが,迅速・的確な診断につながる.
2)下垂体副腎皮質機能低下が明らかでなくとも本症候群が発生する場合がある.

内分泌疾患のスクリーニング検査から鑑別診断まで

下垂体腫瘍を発見したとき

著者: 石橋みゆき

ページ範囲:P.1884 - P.1890

ポイント
1)下垂体腫瘍の大部分は下垂体腺腫である.下垂体腺腫と鑑別を要する重要な疾患は,頭蓋咽頭腫と鞍上部胚細胞腫瘍である.
2)下垂体腺腫はホルモン産生能から,プロラクチン産生腺腫(プロラクチノーマ),成長ホルモン産生腺腫,ACTH産生腺腫,TSH産生腺腫,ゴナドトロピン産生腺腫,多ホルモン産生腺腫および非機能性腺腫に分けられる.
3)下垂体腺腫の臨床症状は,腫瘍による局所症状,ホルモン過剰症状,下垂体機能低下症の三者で,画像診断,視野・視力検査,内分泌学的検査を行って診断を確定する.

正しい甲状腺の触診のしかた

著者: 小原孝男

ページ範囲:P.1891 - P.1893

 甲状腺検査の基本は触診である.甲状腺疾患の患者の多くは,触診によってはじめて見つけだされる.とくに甲状腺腫瘍は大部分が無症状であり,悪性でも進行癌でないと症状が出ない.無症状のうちに甲状腺癌を見つけだすには一般医師の頸部触診に頼るしかない.甲状腺機能異常を起こすバセドウ病や橋本病にしても,腫大した甲状腺を触れてはじめてその診断を思いつくことがある.甲状腺の触診技術に習熟すると,その所見だけからどの甲状腺疾患であるか,診断を予測することが大体できる.

結節性甲状腺腫を診たとき

著者: 紫芝良昌

ページ範囲:P.1894 - P.1896

 甲状腺の触診の仕方は前項に述べられているが,結節性甲状腺腫の診断上大切なことは,1)結節のみ触れて甲状腺の他の部分を触れないか,2)甲状腺がびまん性に腫大していて,その上に結節を触れるのか,の区別を触診上きちんとつけることである.もちろん頸部リンパ節によく触れて腫大があるかないか確かめることが大切であることはいうまでもない.

バセドウ病を疑ったとき

著者: 女屋敏正

ページ範囲:P.1898 - P.1900

ポイント
1)バセドウ病を疑ったときは,同時に一過性甲状腺中毒症の可能性も必ず考慮しなければならない.
2)バセドウ病なら,きつい目つきや眼球突出がある.TSH受容体抗体陽性1)
3)亜急性甲状腺炎なら,自発痛や圧痛がある.赤沈亢進
4)橋本病に伴ういわゆるpainless thyroiditisならば一般に症状が軽い.ミクロソーム抗体陽性

甲状腺機能低下症を疑ったとき

著者: 葛谷信明 ,   金澤康徳

ページ範囲:P.1901 - P.1903

ポイント
1)甲状腺機能低下症の診断は臨床所見と血清フリーT4,フリーT3,TSH濃度による.
2)鑑別診断では病因を考慮した検査を組み合わせて原因疾患を診断する.
3)一過性の甲状腺機能低下症を呈する病態に注意する.

高カルシウム血症

著者: 木村哲 ,   佐藤豊

ページ範囲:P.1904 - P.1906

ポイント
1)症状と基礎疾患から高Ca血症を疑う.
2)疑いがあれば血清Ca,P,アルブミンを測る.
3)高Ca血症の鑑別診断には血中PTH,PTHrP,腎原性cyclic AMPの値が重要.

低カルシウム血症

著者: 森聖子 ,   松本俊夫

ページ範囲:P.1907 - P.1909

 血清カルシウム(Ca)は8.5〜10.2mg/dlときわめて狭い範囲に維持されている.血清Caのうち,約半分はイオン化Ca(Ca2+)として存在する.一方,約40%はアルブミンなどの蛋白と結合しており,残りの約10%はリン酸や,クエン酸などと複合体を形成している.このうち副甲状腺ホルモン(以下,PTHと略す)や1,25水酸化ビタミンD[1,25(OH)2D]などのCa調節ホルモンの作用により調節されているのはCa2+濃度である.
 ところが血清アルブミン濃度などに異常があると,血清総Ca濃度もその影響を受けるため,血清アルブミン濃度から血清総Ca濃度を補正して,Ca2+濃度を推測する必要がある.通常,血清アルブミン濃度が4mg/dl以下の場合には下記の補正式により比較的良好な血清Ca2+濃度の推定が可能である.

クッシング症候群を疑ったとき

著者: 田中孝司 ,   伊藤祐子 ,   長田恵 ,   清水直容

ページ範囲:P.1910 - P.1914

ポイント
1)Cushing症候群を疑った場合は簡便な迅速dexamethasone抑制試験(rapid DST)によるスクリーニングを積極的に行う.
2)1mgのdexamethasoneによるrapid DSTで抑制されても,臨床的にCushing症候群が疑われるときは,0.5mgのrapid DSTによるスクリーニングを行う.
3)Cushing症候群の病因鑑別のための負荷試験にはいずれも例外(非典型例)があるので,いくつかの負荷試験と画像診断を実施し,正確な診断を行う.
4)Cushing病では画像診断で下垂体腺腫を確認できない例が多く,また異所性ACTH産生腫瘍との鑑別困難例も稀ではない.このような例ではできるだけ下錐体静脈洞よりの選択的静脈採血を行う.
5)異所性ACTH(CRH)産生腫瘍では他の原因によるCushing症候群にみられる身体所見に乏しいことが多く,また予後不良なので,悪性腫瘍患者で低K血症,糖尿病,高血圧などが見られるときは積極的に検査を行い,すみやかに確定診断を行う.

原発性アルドステロン症を疑ったとき

著者: 小島元子

ページ範囲:P.1916 - P.1919

●原発性アルドステロン症の概念
 1.定義
 原発性アルドステロン症は,副腎皮質からアルドステロン(aldosterone)が過剰に分泌されるため,高血圧と低カリウム(K)血症を呈する疾患である.稀に低K血症を伴わない症例があり,これを正K性原発性アルドステロン症1)と呼ぶ.
 アルドステロン過剰の原因は,副腎腺腫と副腎皮質球状帯過形成に大別される.副腎腺腫によるものを狭義の原発性アルドステロン症,副腎皮質過形成によるものを特発性アルドステロン症と呼ぶ.

褐色細胞腫を疑ったとき

著者: 大石誠一 ,   佐藤辰男

ページ範囲:P.1920 - P.1922

ポイント
1)褐色細胞腫は,アドレナリン(A),ノルアドレナリン(NA)などのカテコールアミン(CA)を産生,放出し,その結果,臨床症状として高血圧,頭痛,頻脈,発汗,やせ,過血糖,高脂血症,視力障害などを呈してくる.
2)本症の診断は,まず尿中,血中CAおよびその代謝産物を測定し,それらの異常高値を証明し,次いでエコー,CTなどの画像診断法を用いて腫瘍の局在を明らかにすることである.
3)病型の鑑別,合併症の診断も重要である.

画像診断

一般X線検査から内分泌疾患を発見するコツ

著者: 逸見浩美 ,   久保敦司

ページ範囲:P.1924 - P.1928

 外来診療時の単純X線写真が内分泌疾患の発見の糸口となることは少なからずある.一般の単純X線写真で内分泌疾患を発見する場合には,1)内分泌腺そのものの異常を発見する場合と,2)標的臓器の異常を発見する場合がある.たとえば,前者では腫瘍による周囲への浸潤,圧排による正常構造の変形,破壊などで,後者ではホルモン異常による骨の異常代謝の像などがあげられる.
 本稿では,内分泌疾患に関連して,単純X線写真上で異常所見を呈するものについて述べることにする.

下垂体CT・MRIの見方

著者: 菅信一

ページ範囲:P.1930 - P.1933

ポイント
1)下垂体病変の画像診断での検索にはMRIが最優先する.
2)下垂体の形態は年齢とともに変化する.
3)下垂体後葉のMRIでの高信号は,ある程度その機能と関係している.

副腎CT・MRIの見方

著者: 小林成司 ,   成松芳明 ,   谷本伸弘 ,   平松京一

ページ範囲:P.1934 - P.1940

 近年のCT,MRIの進歩は目ざましく,副腎疾患の診断においても,その重要性は大きなものになりつつある.副腎は後腹膜腔の腎傍腔内に存在し,周囲を脂肪層に取り囲まれているため鮮明な輪郭を得ることができ,また,呼吸および腸管の蠕動に由来するアーチファクトが少ないことにより明瞭な画像が得られ,詳細な評価が可能である.
 ここでは副腎疾患におけるCT,MRIの有用性につき,筆者らの経験例をもとに述べる.

甲状腺超音波検査の見方

著者: 貴田岡正史

ページ範囲:P.1941 - P.1945

ポイント
1)甲状腺の画像診断の第一選択は超音波断層検査である.
2)高解像の超音波断層装置を用いて検討すると甲状腺疾患の有病率はきわめて高い.
3)結節性病変の鑑別診断にもきわめて有用性が高い.良・悪性の鑑別は典型例は診断に困難をきたすことはないが,吸引細胞診が必要となる場合もある.
4)甲状腺中毒症の鑑別診断にカラードプラ法が有用である.

インビボ核医学検査の見方

著者: 笠木寛治 ,   竹内亮 ,   日高昭斉 ,   御前隆 ,   阪原晴海 ,   小西淳二

ページ範囲:P.1946 - P.1951

ポイント
1)インビボ核医学検査は内分泌領域では甲状腺,副甲状腺,副腎の疾患の診断に応用されている.
2)甲状腺疾患では123Iや99mTcを用いる甲状腺シンチグラフィーと種々の腫瘍シンチグラフィーが行われる.前者は甲状腺中毒症の診断にとくに有用であり,後者は分化型甲状腺癌の転移の検出,未分化癌,悪性リンパ腫,髄様癌などの診断に用いられる.
3)副甲状腺機能亢進症における過機能性副甲状腺の検出に201TI/123I(99mTc)サブトラクションシンチグラフィーが行われる.
4)131I-アドステロールを用いる副腎皮質シンチグラフィーにより原発性アルドステロン症やクッシング症候群の画像診断が可能である.
5)131I-MIBGを用いる副腎髄質シンチグラフィーにより褐色細胞腫の診断が可能である.6)インビボ核医学は内分泌疾患の治療にも応用されており,現在,131Iにより分化型甲状腺癌の,131I-MIBGにより悪性褐色細胞腫の治療が行われている.

内分泌疾患治療の進歩

成長ホルモンの適応

著者: 高野加寿恵

ページ範囲:P.1952 - P.1954

ポイント
1)適応疾患
 ①骨端線閉鎖を伴わない下垂体性小人症
 ②GH分泌不全を伴うターナー症候群
2)GH治療開始適応基準
  GH治療継続適応基準
3)投与量・投与方法
  1週間,体重kg当たり0.5単位を6〜7回に分割し,就寝前に皮下投与

LH-RH療法

著者: 中井義勝

ページ範囲:P.1956 - P.1957

ポイント
1)LH-RH療法の適応は視床下部性性腺機能低下症である.
2)LH-RH療法はLH-RHを自動間欠注入ポンプを用いて間欠投与する.
3)二次性徴の発来には1年以上の治療継続を要することがある.

尿崩症・SIADHの治療

著者: 長坂昌一郎 ,   斉藤寿一

ページ範囲:P.1958 - P.1960

ポイント
1)中枢性尿崩症の多尿は,DDAVPによりコントロールする.その際,低Na血症の発現に注意する.
2)SIADHの低Na血症には,水制限,フロセミドー高張食塩水投与などを行う.低Na血症の急速な補正後に,橋中心髄鞘溶解をきたすことがある.

甲状腺ホルモン剤,抗甲状腺剤の使い方

著者: 高須信行 ,   小宮一郎

ページ範囲:P.1962 - P.1967

ポイント
1)甲状腺機能低下症にはT4を投与する.血中T3を120ng/dl,T4を8μg/dl,TSHを0.5〜2.5μU/mlにする.
2)T4を投与するに当たり注意すべきことは,①甲状腺ホルモン投与は狭心症,心筋梗塞を誘発することがあるということと,②副腎皮質機能が低下している患者にT4を投与すると,Adrenal Crisisを引き起こすことである.
3)甲状腺機能低下症のなかには甲状腺ホルモン投与を中止することができる患者がいる.このような患者をどのようにしてみつけるか?
4)バセドウ病は抗甲状腺剤で治療する.MMIとPTUがある.血中T3を120ng/dl,T4を8μg/dl,TSHを0.5〜2.5μU/mlに維持する.
5)MMIとPTUの副作用には,薬疹,掻痒,肝機能障害,無顆粒球症,白血球減少がある.
6)緩解の目安はTRAb消失とT3抑制試験陽性である.

妊娠時の甲状腺疾患の治療

著者: 百渓尚子

ページ範囲:P.1968 - P.1970

ポイント
1)甲状腺機能異常の是正により問題なく出産可能である.母親に必要な治療は児にも好ましい.
2)抗甲状腺剤でFT4値を非妊娠時の正常域に維持すると,児もほぼ正常機能で出生する.
3)バセドウ病の確証のない妊娠初期の甲状腺機能亢進症にはヨードを投与するのも手.
4)甲状腺機能低下には初めから十分量のサイロキシンを投与し,TSHを正常化する量で維持する.

悪性腫瘍に伴う高力ルシウム血症の治療

著者: 佐藤幹二

ページ範囲:P.1972 - P.1975

 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症(malignancy-associated hypercalcemia;MAH)は一般には末期症状であり,その予後もきわめて不良である.事実,最近10年の間に当内分泌センターに入院したMAH患者(約20名)で現在も存命中のものは,副甲状腺癌患者のみである.
 MAHは多彩な臨床症状を呈してくるので,臨床症状からだけでは診断できないことが多い.したがって原因不明の全身倦怠感,体重減少,口渇,多飲,食欲不振などが生じてきた場合には,なにはともあれ血清カルシウムとリンおよび血清アルブミン濃度を測定してみることである.

最近のトピックス

抗下垂体抗体

著者: 小林功

ページ範囲:P.1976 - P.1977

 血中抗下垂体抗体の存在が知られるようになったのは,1975年頃からで,Bottazzo一派の報告に始まると考えて異論はないように思われる1).彼らは下垂体前葉細胞(PRL,GH,LH,FSH分泌細胞など)に対する自己抗体を検出し,やがてインスリン依存型糖尿病(IDDM)の16.6%に抗下垂体抗体を認めるという興味ある成績を発表した.
 一方,本邦でも最近,抗下垂体抗体は視床下部一下垂体病変に関する症例報告にしばしばみられる検査項目になりつつある(ただし保険適用にはなっていない).このような背景には杉浦らの抗下垂体抗体測定法の開発2,3)がある.

甲状腺ホルモン不応症

著者: 中村浩淑

ページ範囲:P.1978 - P.1979

 甲状腺ホルモン不応症は,標的細胞が甲状腺ホルモン作用に反応することができない症候群であり,一般に先天性の遺伝性疾患と考えられている.最近の急速な研究の進展によって,本症の多くがT3レセプター遺伝子の異常によるものであることが明らかとなってきた.

甲状腺ホルモンと骨粗鬆症

著者: 伴良雄 ,   坂本桂造

ページ範囲:P.1980 - P.1981

 甲状腺機能亢進症に骨病変が認められることは既に1891年,von Recklinhausenが報告している.1927年,BernhardtはX線所見で,骨陰影の減弱と皮質骨の菲薄化を初めて報告し,1938年,BartelsらはX線所見は最初に短骨と扁平骨に見られ,次いで椎骨と長管骨に変化が見られることを報告している.
 近年,骨代謝の研究の進歩と共に長寿社会になり,骨粗鬆症が注目を浴びてきた.甲状腺機能亢進症は続発性骨粗鬆症のひとつであり,その治療により,改善する.また甲状腺ホルモンの過剰投与が骨粗鬆症の進展危険因子になることが指摘されている.

高カルシウム血症とPTHrP

著者: 長﨑光一 ,   山口建

ページ範囲:P.1982 - P.1984

 癌患者に見られるさまざまな腫瘍随伴症候群の中で,高カルシウム血症はもっとも頻度が高いもののひとつである.一般に悪性腫瘍に合併した高カルシウム血症の程度は強く,かつ急速に進行し血清カルシウム値が12mg/dlを越えると患者の予後はきわめて不良になり,直接の死因となる.国立がんセンターの集計では癌患者の3.5%,進行癌患者に限れば約10%の症例で10.6mg/dl以上の高カルシウム血症が認められており,癌患者の診療上,非常に重要な病態である.
 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症の多くは,腫瘍から産生された高カルシウム血症惹起因子に由来することが明らかとなり,humoral hypercalcemia of malignancy(HHM)というひとつの疾患単位として認められている.

偶発性副腎腫瘍の扱い方

著者: 西川哲男 ,   吉田明子 ,   木野智重

ページ範囲:P.1986 - P.1987

 最近の超音波診断学,CT検査法,さらにはMR診断法の進歩により,腹部臓器のより詳細かっ鮮明な画像診断が可能となりつつある.その結果,これらの検査法の進歩する以前の時代と異なり,偶然副腎腫瘍病変の発見される機会が飛躍的に増加しているこの頃である.
 すなわち,高血圧症,糖尿病,胆石症,肝機能異常などの疾患で,しばしば超音波検査,腹部CT検査が施行され,時に副腎部の病変が発見されることが稀ではない.このような場合,発見された副腎病変を,とくに副腎偶発腫瘤と呼び,Incidental Adrenal TumorあるいはIncidentalomaと欧米でも呼ばれている.

甘草エキスによる偽アルドステロン症

著者: 宮森勇 ,   蘇馬隆一郎

ページ範囲:P.1988 - P.1990

ポイント
1)偽アルドステロン症は,和漢薬の多くに含まれる甘草およびその有効成分であるグリチルリチンの過剰摂取により引き起こされる.
2)偽アルドステロン症の臨床症状としては,高血圧,低カリウム血症,浮腫が重要であり,低レニン低アルドステロン血症を呈する.
3)偽アルドステロン症の成因として,グリチルリチンおよびその水解産物であるグリチルレチン酸による11β-水酸化ステロイド脱水素酵素(11β-HSD)活性阻害作用が注目されている.

座談会

日常診療における内分泌疾患—どのように内分泌疾患を発見するか

著者: 佐藤幹二 ,   鈴木洋通 ,   福山次郎 ,   阿部好文

ページ範囲:P.1992 - P.2005

 阿部(司会) 内分泌疾患はあまり経験しないので,興味を持たれる方が少ないということをお聞きしますが,大学で内分泌専門外来をやっておりますと,実際には,たくさんの患者さんがきちんと診断されないまま,長い間悩み,いくつかの病院をまわられてから,紹介されたり,自分からいらっしゃる.ただ,命にかかわるようなことがないということで,発見されないうちに時間が経ってしまっている.ですから実地医家の先生方が思っておられるほど内分泌疾患は稀なものではなく,見逃されていることが多いと思います.佐藤先生,まず甲状腺の患者さんというのは,どのくらいの頻度でいるものでしょうか.

カラーグラフ 冠動脈造影所見と組織像の対比・33

PTCA施行後の再狭窄に対するAtherectomy

著者: 堀江俊伸

ページ範囲:P.2010 - P.2012

●PTCA施行後の再狭窄に対して冠動脈Atherectomyを施行した例
 症例 58歳,男
 現病歴 胸痛発作があり,心電図上V2〜V4においてST上昇が認められた.冠動脈造影上,前下行枝に99%狭窄を認めたため,ウロキナーゼ72万単位を冠動脈内に注入し,90%狭窄にまで改善した.2日後にこの残存狭窄に対してPTCAを施行し,30%にまで開大した(図1A〜C).退院時の造影所見では前下行枝の狭窄は50%であった.とくに狭心症状はなかったが,6カ月後の再造影では前下行枝の狭窄は75%に進行しており,ulcerationを伴う偏心性の複雑病変を示したため(図1D),Atherectomyを施行し,0%にまで開大した(図1E,F).摘出標本は16個であり,組織標本を作成し,検討した(図2).

グラフ 内科医のための胸部X-P読影のポイント・8

肺癌(4)—肺癌に合併した縦隔陰影

著者: 小山弘 ,   松井祐佐公

ページ範囲:P.2014 - P.2019

症例1
 患者 49歳,男性
 主訴 乾性咳嗽
 現病歴 3カ月前より冷気の吸入などにより増悪する乾性咳嗽が出現.1カ月前から体動時に左胸部痛があり当院内科受診し,喘息を疑われ呼吸器科紹介となる.胸部X-Pにて異常陰影を指摘され,精査のための入院待ちの間,呼吸器科初診の1週間後に嗄声出現した.

演習 内科専門医による実践診療EXERCISE

発熱,乾性咳嗽/意識消失発作,痴呆

著者: 矢木晋

ページ範囲:P.2021 - P.2024

 68歳女性,無職.既往歴に胃潰瘍で胃切除術を施行.家族歴は特記すべきことはなく,アレルギー歴もない.
 現病歴:生来健康であった.3月10日頃より,30℃台の発熱が出現し,自宅安静をしていたが解熱しないため,3月17日近医を受診し解熱剤の投与を受けた.しかし発熱は持続し,乾性咳嗽,全身倦怠感も認めるようになったため,3月24日当院を受診した.胸部X線撮影を行ったところ,右上・中肺野に異常陰影を認めたため入院となった.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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