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『J型カーブ』とは何ですか.
著者: 築山久一郎1
所属機関: 1神奈川県立がんセンター・循環器科
ページ範囲:P.2088 - P.2088
文献購入ページに移動A 高血圧の治療上,降圧の程度を増すと冠動脈の灌流圧が冠循環の自動調節能の下限閾値を越えて低下し,このため降圧により冠循環障害をきたし虚血性心疾患の罹患率や死亡率は低下せず,むしろ増加すると生理学的に想定されてきた.Cruickshank JMら(1987)は高血圧902例を平均6.1年降圧薬治療すると,虚血性心疾患合併例で治療中の拡張期圧85〜90mmHgで心筋梗塞死が最低頻度となると発表した.治療中の拡張期圧がこれより高くても低くても心筋梗塞死が高頻度で,治療中の血圧値と心筋梗塞死の頻度の関係が『J』の関係を示すことから『J型カーブ』と呼ばれ,類似するSamuelsson Oら(1987,1990)やAIderman MH(1989)などの疫学的報告が続いた.『J型カーブ』の最低となる血圧範囲は拡張期圧85〜90mmHgとする見解が多いが,最近,81mmHg程度とする報告もあり,虚血性心疾患合併例でなくとも観察されている.しかし,批判も多く,その存在はなお論争中である.
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