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雑誌目次

雑誌文献

medicina28巻5号

1991年05月発行

雑誌目次

今月の主題 糖尿病診療の実際

理解のための10題

ページ範囲:P.866 - P.869

糖尿病診断の実際

日常診療における糖尿病診断

著者: 岩本安彦

ページ範囲:P.756 - P.759

ポイント
1)糖尿病の診断は,問診,身体所見,臨床検査を総合して行うようにする.
2)糖尿病の症状があり,随時血糖が200mg/dl以上,朝食前血糖(静脈血漿)が140mg/dl以上であれば糖尿病と診断してよい.
3)糖尿病の症状があり,75gGTTで「糖尿病型」を満たせば糖尿病と診断してよい.
4)病型の鑑別,合併症の診断も重要である.

糖尿病のスクリーニングと管理

著者: 立道昌幸

ページ範囲:P.760 - P.762

 糖尿病の成因は不均一であり,発症,経過が個々の症例により非常に多彩なため,スクリーニングにおいても一元的に論ずることの困難な疾患である.ただ糖尿病を診療する場合重要なことは,血糖値管理を含め,糖尿病特有の合併症,とりわけ血管病変の進展をいかに食い止めるかである.
 近年の大規模な疫学研究により,高血糖状態のみならず正常血糖でも高インスリン血症を作り出す生体環境では,動脈硬化への感受性が著しく高いこと1),それに関連して生命余命が有意に低いこと2)が明らかになった.血管病変の進展には非可逆的な面があり,糖尿病の診断が下される以前からすでにその危険に暴露されているということである.とすれば,高インスリン状態を作り出すいわゆる耐糖能異常群からの管理が必要となってくる.

境界型例の経過観察と患者指導

著者: 関川暁 ,   富永真琴 ,   佐々木英夫

ページ範囲:P.764 - P.765

 人間ドックや住民検診で多数例に糖負荷試験を行うと,その40〜70%が糖尿病型にも正常型にも属さない境界型と判定される.境界型が糖尿病型へ移行する前段階と考えると,その扱いは実地診療上,重要と思われる.以下,境界型例の定義,経過観察,患者指導について解説する.

血糖コントロールのために

治療の基本設計

著者: 鈴木進 ,   豊田隆謙

ページ範囲:P.766 - P.769

 糖尿病患者の治療計画を立てるにあたっては,1)治療の目標,2)病態の特徴に基づく治療のあり方を十分理解したうえで,患者個人の年齢,生活環境,理解力などの背景を十分考慮して,個々人について具体的な長期戦略を立てることが重要である.この意味で治療計画はすべて患者個人に合わせたオーダーメイドであるべきであるが,ここでは一般的な治療計画の考え方を述べる.

治療への動機づけをどうするか

著者: 坪井修平 ,   牧野泰裕

ページ範囲:P.770 - P.771

ポイント
1)動機づけには,初診時教育が大切である.できれば,教育入院させる.
2)糖尿病協会加入によって患者間の連帯感を強め,体験談発表を重視する.
3)合併症の恐ろしさを強調することは,逆効果を招くことがある.
4)万歩計,血糖自己測定器,手帳など自己管理に必要な用具を常備させる.
5)家族など,周りの人達の教育とともに,社会一般への啓蒙にも努める.
6)受診中断と民間療法にのめり込むことの怖さを繰り返して話す.
7)医師,コメディカルスタッフの意見の統一,人格の向上,家庭訪問,地区開業医・保健婦との連携も忘れてはならない.
8)コントロール困難なケースでは,スタッフによる家庭訪問も実施する.

食事療法の基本と指導方針

著者: 山吹隆寛 ,   刘伶

ページ範囲:P.773 - P.775

 ●糖尿病食事療法のあり方
 糖尿病治療の基本方針と目標は,病態の基盤となっているインスリン作用不足を解消し,代謝異常を正常化することと,合併症の発生・進展を防止することであり,それによって糖尿病のある人生を健康で充実した人生とし,天寿を全うすることとある.この治療理念に基づく食事療法は以下のような食生活でなければならない.

肥満糖尿病例の対策

著者: 三浦順子 ,   大野誠 ,   池田義雄

ページ範囲:P.776 - P.777

ポイント
1)肥満NIDDMでは肥満の是正が基本である.
2)通常の減食療法では肥満を是正しえない症例にVLCDは有効な治療手段のひとつである.
3)VLCD後にみられる体重の逆戻りの防止には行動療法の併用が有用である.

運動療法の指導とその理論的背景

著者: 藤井暁

ページ範囲:P.778 - P.780

ポイント
1)代謝増悪時の運動はかえって血糖上昇,血中ケトン体上昇をもたらす.
2)合併症対策のみならず運動処方決定のためにもメディカルチェック,とくに多段階運動負荷試験が必須である.
3)運動内容としては,全身を動かす有酸素運動と筋力補強運動・柔軟体操の組み合わせが良い.
4)運動療法の日常生活への組み入れに際しては,とくにインスリン治療下の患者では自己血糖測定の導入が望ましい.

経口血糖降下薬の使い方

著者: 山東博之

ページ範囲:P.781 - P.783

ポイント
1)朝食前血糖が高い非肥満糖尿病患者には原則としてSU剤を使用する.
2)肥満糖尿病患者でも朝食前血糖が著しく高い場合は食事療法とSU剤を併用する.
3)糖尿病増悪因子(肥満,感染,副腎皮質ホルモン服用,慢性飲酒など)がなくて,グリベンクラミドを最大量(10〜15mg)投与しても空腹時血糖が高い場合はビグアナイド剤を併用する.
4)空腹時血糖をコントロール後,食後高血糖のコントロール(減量の徹底,食後運動,高線維食など→食前に速効型インスリン注射)に移行する.
5)急いで血糖を下げると眼底出血を誘発する場合がある.
6)感染が併発したときは一時的にインスリンに切り換える.

NIDDMのインスリン療法

著者: 河盛隆造

ページ範囲:P.784 - P.786

 NIDDMの治療方針として,1)NIDDM発症リスクの高い人における早期発見,2)適切な食事療法と運動療法の指導,3)有効である間は,SU剤を適切に使用,4)SU剤が無効となれば,すなわち十分量のインスリン分泌が見られなくなった際には,中止し,5)直ちにインスリン治療を行うこと,が一般的である.
 インスリン療法は,インスリン製剤面で,さらにインスリンペンの登場といった投与手段の面で進展をみたが,投与のソフト面は未だ十分完成したとはいえない.SU剤二次無効NIDDMで,インスリン投与が必須であるにもかかわらず,長期にわたり放置されている例も少なくない.たとえインスリン療法が実践されているとしても,その大多数に対して,中間型インスリン1日1回注射療法が一般的であり,血糖管理状況も低血糖の発症を恐れるあまり,良好に維持されているとはいいがたいのが現状であろう.

インスリン注射療法の指導

著者: 中山秀隆 ,   青木伸

ページ範囲:P.788 - P.791

ポイント
1)IDDMの多くは強化インスリン療法の適応となる.いずれの強化インスリン療法を選択するかは患者の性格,理解度,対処能力なども十分配慮して決める必要がある.
2)強化インスリン療法施行者はSMBGの併用が必須であり,それにより予期し得ない高血糖や無自覚低血糖の発見に役立つ.
3)Somogyi効果ならびに暁現象はともに空腹時高血糖をきたすが,Somogyi効果を回避するにはインスリンの減量,暁現象を回避するには多くはインスリンの増量を要するので対応を誤らないように注意する.
4)NIDDMまたは耐糖能異常者でも妊娠した際や計画妊娠に際して早期にインスリン療法が必要になることが多い.
5)インスリン療法が長期に必要な患者には,その必要性を理解させ,患者教育を十分にしたうえで患者の能力を見極め,いずれのインスリン治療方式が真に適切かを決める必要がある.

IDDMの血糖コントロールのアルゴリズム

著者: 河盛隆造

ページ範囲:P.792 - P.794

ポイント
1)すべてのIDDMで,24時間にわたるインスリン基礎分泌と,毎食後のインスリン追加分泌を代替すべく,basal bolus4回注射法が必須といえる.
2)血糖応答反応,血漿ケトン体などのモニターにより,投与インスリン効果の過不足を絶えずチェックしなければならない.
3)厳格な血糖制御を維持すれば,インスリン抵抗性が消失し,インスリン需要量が減少する.
4)併発症(とくに感染症,身体的・精神的ストレスなど)やステロイド剤の併用時などでは,インスリン抵抗性が強まり,インスリン需要量が著増する.
5)SMBGに基づくインスリン投与量変換のアルゴリズムを有効に活用するには,血糖応答反応を動揺させる諸因子のrule outが必要である.

経過観察のために必要な検査とその評価—代謝指標

著者: 荷見澄子 ,   大森安恵

ページ範囲:P.796 - P.797

ポイント
1)血糖コントロールの経過観察に繁用される検査法はHbA1Cとフルクトサミンの測定である.
2)HbA1Cは測定時点よりさかのぼって過去1〜3カ月の長期のコントロールを反映する.
3)フルクトサミンは過去2週間の比較的短期のコントロールを反映するが,蛋白量の変動によって,みかけ上,高値,または低値に出やすい.

高齢者糖尿病の治療の考え方

著者: 北村信一

ページ範囲:P.798 - P.799

 高齢者糖尿病の治療は一般の糖尿病の場合と基本的には同じであるが,高齢者に特有な臨床像にも対応できるように考える必要がある.

合併症への対応

糖尿病エマージェンシー—予防と治療

著者: 坂本美一

ページ範囲:P.800 - P.804

 糖尿病患者に見られるエマージェンシーの病態には種々のものがある.初診時にすでに緊急処置が必要なものから,継続的に治療していてエマージェンシーの病態を引き起こすものもある.ここでは内科的に糖尿病患者にみられる緊急病態に対する治療と予防について述べる.

血糖コントロールは合併症の発症と進展を阻止しうるか

著者: 佃克則 ,   岡芳知

ページ範囲:P.805 - P.807

ポイント
1)厳格な血糖コントロールにより,糖尿病性合併症の発症と進展をある程度抑制することは可能と考えられている.
2)合併症の発症・進展を阻止するために,どの程度の血糖コントロールを,いつ開始すべきかは未だ明らかではない.

糖尿病性網膜症への対応

著者: 高塚忠宏

ページ範囲:P.808 - P.810

 以前,東京大学・第3内科が行った約2,500名の糖尿病症例の網膜症発生率に関する調査では,糖尿病歴5年で約15%の症例に,そして糖尿病歴10年では約50%の症例に毛細血管瘤の発生が認められ,さらに,この時期に徹底した血糖の管理,ならびに体重の管理が行われた症例では,その後10年間で網膜症の進行する確率は約7%ときわめて低く押さえられたと報告1)している.
 このように,糖尿病性網膜症は,糖尿病発症後に厳密な血糖管理が行われている症例では発生頻度が低い疾患であるが,その一方で,いい加減な血糖管理下にあっては増殖性糖尿病性網膜症から失明に至る疾患である.

糖尿病性腎症—自然経過と早期発見法

著者: 堀出直樹 ,   吉川隆一

ページ範囲:P.812 - P.813

ポイント
1)糖尿病性腎症では早期診断,早期治療が重要である.
2)早期診断の決め手は尿中微量アルブミンの測定である.

糖尿病性腎症—食事療法のあり方

著者: 中尾俊之

ページ範囲:P.814 - P.816

●病期,病態と食事療法
 糖尿病性腎症では,腎障害の進展度により病態が異なる.これに合わせて食事療法のありかたも異なったものとなる.
 食事管理上よりみると,本症を,1)潜在期,2)慢性腎炎様症候期,3)ネフローゼ期,4)腎不全保存療法期,5)腎不全透析療法期(①血液透析,②CAPD)に区分して考えると好都合である.

網膜症,腎症を有する糖尿病患者の身体活動—許容量の決め方

著者: 布井清秀

ページ範囲:P.817 - P.819

●糖尿病性合併症がある時の運動の是非
 運動には末梢循環改善,筋へのインスリン作用増強,脂質代謝改善などを介した血管障害予防効果が期待される1,2).実際,運動能(physical fitness)がある人は心血管病や癌による死亡が少ない3)
 合併症がある場合も,身体活動を保つことは必要不可欠である.しかし,合併症を有する糖尿病患者においては,過度な運動によるさまざまな弊害や合併症の進展が起こる可能性が高いので(表1),総合的な病態把握による運動の適応の決定と注意深い運動の施行が必要である.

虚血性心疾患を有する糖尿病患者の運動療法

著者: 三田村秀雄

ページ範囲:P.820 - P.821

ポイント
1)運動療法を処方する際には,虚血性心疾患の有無を知り,その量を加減しなければならない.
2)糖尿病患者では,胸痛の有無から虚血性心疾患の有無を推定してはならない.
3)症状に頼らず,客観的な方法で定期的に虚血の有無,程度を確認することが重要である.

糖尿病による消化管障害の治療

著者: 本郷道夫 ,   豊田隆謙

ページ範囲:P.822 - P.824

ポイント
1)糖尿病における消化管運動機能障害は自律神経障害を基礎とした運動機能低下である.
2)消化管運動機能低下には消化管運動機能亢進剤が有効である.
3)胃運動機能障害は消化器症状だけでなく,血糖調節にも関係する.
4)糖尿病性便秘には摂食量の低下による食物線維の減少も関与している.
5)糖尿病性下痢は運動機能低下による腸管内細菌の増殖により起こる.

神経障害—早期発見のための検査法

著者: 鈴木吉彦

ページ範囲:P.826 - P.827

●神経障害を早期に発見するには機能的異常を検知する必要がある
 種々ある検査の中で,糖尿病性神経障害を早期に検知するのは振動覚測定とされる.理由は,一般に,単神経自体障害より複数神経の協調障害のほうが機能的レベルでの低下を認めやすく,なかでも振動伝達が多数の有髄線維の協調によって中枢へ伝達されるため,早期発見に適した特性を有しているからである.このため振動覚異常は形態学的変化のない高血糖によるなどの機能的異常にも敏感に反応するとされる.
 他にも心拍変動測定や神経伝導速度測定検査などもあるが,前者は加齢の影響,後者は測定技術や温度の影響を受けやすいことより,再現性が悪く,信頼性に欠ける短所がある.

有痛性神経障害の薬物療法

著者: 姫井孟 ,   内田耕三郎

ページ範囲:P.828 - P.830

 糖尿病患者に見られる有痛性の神経障害は夜間不眠を伴い,その苦痛は耐え難い場合が多い.しかし,糖尿病患者が四肢の疼痛を訴えた場合,すべてが糖尿病性神経障害に基づくものとは限らない.脊椎変形症による坐骨神経痛や下肢の閉塞性動脈硬化症に起因する疼痛,アルコール性神経炎やがん性疼痛など,鑑別を要する疾病は多い.年齢,性別,罹病期間,コントロール状態を参考に除外診断をすることが大切である.
 糖尿病のコントロールに際して,急速な血糖降下は,高血糖状態に晒されていた神経線維を取り巻く浸透圧のバランスを崩すことになり,治療後にpost treatment neuropathyを惹起して,激しい疼痛が起こることは良く知られている.長期間高血糖状態にあった患者では,徐々に血糖を下げることが大切である.

糖尿病患者の足の予防と指導

著者: 渥美義仁

ページ範囲:P.832 - P.833

 糖尿病患者の足が壊疽になると,長期入院を要したり,切断となり,患者のquality of lifeは著しく低下する.糖尿病の足合併症のもっとも効果的な治療法は予防である.
 予防には足病変の危険性生が高い患者を既往歴や診察から選びだし,その危険度に応じた足の診察を行うのが効果的である.神経障害のある患者では,足に病変が出現しても自覚できないことが多いので,足に対する日常生活上の注意や,病変を早く発見できる自己管理の方法を患者に教育すべきである.

糖尿病を伴った高血圧患者の治療

著者: 猿田享男

ページ範囲:P.834 - P.836

ポイント
1)糖尿病を伴う高血圧の治療は,総カロリーおよび糖質の制限と減塩食の摂取など,食事療法が大切である.
2)降圧薬としては,糖尿病の程度および合併症をみて選択する.合併症のない糖尿病を有する高血圧では,ACE阻害薬,α1遮断薬,Ca拮抗薬などがよい.
3)腎症を生じ,血清クレアチニン2.0mg/dl以上となればACE阻害薬を避け,Ca拮抗薬やフロセミドを少量使用する.
4)神経障害が進行してくれば,α1遮断薬は避けたほうがよい.β遮断薬を使う場合はβ1選択性とし,血糖降下薬の使用者では低血糖の遷延に注意する.

糖尿病患者に合併する高脂血症の治療

著者: 中井継彦 ,   鈴木仁弥

ページ範囲:P.838 - P.839

ポイント
1)糖尿病に合併する高脂血症の治療の基本は食事療法である.
2)定期的に運動を行うことにより血漿コレステロール,TGは低下し,HDL-Cは増加する.
3)薬物を用いる場合は,高脂血症の病態に応じて薬剤を使い分ける必要がある.

高インスリン血症と動脈硬化症

著者: 細川和広

ページ範囲:P.840 - P.841

ポイント
1)インスリンは動脈の平滑筋細胞の増殖や壁での脂肪合成を促進することにより,動脈硬化を促進する.
2)高インスリン血症は,動脈硬化,肥満,高血圧をもたらす.
3)食事,運動療法の基本を無視した過剰の薬物療法は避けるべきである.

血小板・内皮細胞相関と血管障害—Aspirin,Dipyridamoleは有効か

著者: 久保明

ページ範囲:P.843 - P.845

ポイント
1)糖尿病における血管内皮細胞,血小板の機能異常は多彩であり,血糖のコントロール状況,合併症など影響する因子も多い.
2)現時点では,抗血小板剤投与は対象を慎重に選んで行わなければならない.

生活指導

糖尿病患者の生活指導の考え方

著者: 松岡健平

ページ範囲:P.846 - P.847

 糖尿病ほど生涯にわたる長い自己管理を必要とし,患者と医療側の密接な連携を要する疾患は他に類例を見ない.糖尿病治療には代謝異常の是正と合併症対策の2つの柱があるが,治療の最終目的である長期合併症の発症と進展の阻止には,良好な代謝コントロールを達成し,維持するという大前提がある.
 ところが,代謝コントロールの基本である食事療法,運動療法,インスリン注射を含む薬物療法は患者の日常生活そのものであり,医師の治療方針の決定は,患者が提供する情報により組み立てられる場面が多い.したがって,日常生活指導は,糖尿病のprimaryhealth careより,hospital based primary careにまでわたるものであり,治療上の重要な一部を占める.

思春期IDDM患者の日常生活の指導指針

著者: 池内優仁 ,   貴田嘉一

ページ範囲:P.848 - P.849

ポイント
1)思春期IDDM患者の心理は,悲しみ,怒り,不安と再建の間を揺れ動いている.
2)糖尿病外来では,糖尿病そのものに対する診察はもちろんのこと,日常生活に対する相談にも主眼が置かれる.
3)思春期IDDM患者の学校生活での大きな問題のひとつは受験勉強であるが,できるだけ規則的な生活をするよう指導する.
4)糖尿病キャンプなどへの積極的参加は自己の確立と将来のquality of lifeにつながるものと思われる.

妊娠,分娩時に注意すべきこと

著者: 大塚博光 ,   飯島宙 ,   海老原肇 ,   丸岡充 ,   矢吹寛 ,   浜田宏

ページ範囲:P.850 - P.851

ポイント
1)妊娠前より血糖をコントロールし,奇形発生を防ぐ
2)妊娠中は非妊娠時より血糖コントロールを厳しくし,合併症や新生児異常を防ぐ.

最近の話題から

インスリン受容体遺伝子,膵アミロイドと糖尿病

著者: 牧野英一

ページ範囲:P.852 - P.854

ポイント
1)インスリン受容体遺伝子異常によりインスリン抵抗性糖尿病が起こる.
2)NIDDM発症の一部に,この遺伝子異常が関与する可能性がある.
3)NIDDMの大部分に膵アミロイドが認められる.
4)NIDDMの成因に,この膵アミロイド沈着が関与している可能性がある.

鼎談

糖尿病診療の実際—ケアと教育へのアプローチ

著者: 金澤康徳 ,   守屋美喜雄 ,   松岡健平

ページ範囲:P.856 - P.865

 松岡(司会) 今日はお忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます.
 わが国の糖尿病患者は大体200万人くらいいると言われております.今のところ正確な数値はあげられていませんが,潜在患者まで入れると400万人.いずれにしろインスリン非依存型糖尿病(以下,NIDDMと略)がそのほとんどを占めるのではないかと思います.

カラーグラフ 冠動脈造影所見と組織像の対比・27

冠動脈内膜剥離術

著者: 堀江俊伸

ページ範囲:P.872 - P.874

●冠動脈内膜剥離術
 広範な狭窄を伴い,run・off不良な冠動脈に対して冠動脈バイパス手術は困難であり,手術を施行してもその成績は不良である.
 1956年,末梢動脈狭窄例に対して,動脈を縦切開し,肥厚した内膜を中膜から剥離,摘出する内膜剥離術が施行され,次いで冠動脈に応用された1).しかし,冠動脈内膜剥離術のみでは冠動脈の開存率は低く,1960年代になり冠動脈内膜剥離に冠動脈バイパスグラフトを併用することによって比較的良好な成績が得られるようになった.

Oncology Round・17

肛門外表部にPaget病を伴った直腸癌

著者: 山科元章 ,   浜田節男 ,   片山勲

ページ範囲:P.876 - P.878

 Paget病は女性の乳頭あるいは乳輪部の皮膚にみられる悪性上皮性腫瘍としてよく知られており,その過半数の症例に乳癌の合併が認められることも注目されている.一方,同一の皮膚腫瘍は,男女を問わず,外陰部や腋窩の皮膚,また肛門の扁平上皮粘膜にも認められ,extramammary Paget's diseaseと総称され,症例数は少ないが,mammary Paget病と同様,関心を集めている.今回は,比較的まれな部位である肛門に典型像を示したextramammary(非乳頭型)Paget病症例をとりあげる.

グラフ 内科医のための胸部X-P読影のポイント・2

肺炎球菌肺炎

著者: 池田顕彦 ,   中島明雄

ページ範囲:P.880 - P.884

症例
 患者 23歳,男性
 主訴 高熱,黄色喀痰を伴う咳嗽
 現病歴 生来健康であり,気管支・肺疾患の既往はない.10日前感冒に罹患し3日後軽快したが,2日前より黄色膿性痰,38℃以上の発熱を生じ,また次第に吸気時に増強する左胸痛(胸膜痛)を認めるようになり当科を受診した.

講座 図解病態のしくみ 膠原病・8

血管炎症候群

著者: 橋本博史

ページ範囲:P.885 - P.895

 血管炎症候群(vasculitis syndrome,Christian & Sergent,1976)は,血管炎を基盤としてもたらされる多種多様の臨床病態ないし疾患群を総称したものである.したがって,血管炎を主病変とする独立した疾患もあれば,他の疾患に血管炎を伴う病態も含まれる.ここでは,血管炎症候群の分類,発症要因,病理,臨床像,治療,予後について述べる.

検査

検査データをどう読むか

著者: 露岡清隆 ,   神奈木玲児

ページ範囲:P.898 - P.902

 患者:M. T.,70歳,男性.主訴:全身倦怠感,食欲不振,腰痛.家族歴,既往歴:特記事項なし.現病歴:昭和62年12月中旬より,全身倦怠感,食欲不振,腰痛,口渇を訴え,近医にて治療を受けていたが,症状の増悪,体重減少(5kg)などを認めたため精査目的で本院内科入院となる.現症:身長170cm,体重70kg,脈拍98/分.整.血圧150/80.軽度意識障害あり(3-3-9度方式のI-1).顔貌無欲状.可視粘膜軽度貧血状.黄疸なし.舌表面に小血腫を認める.口蓋扁桃腫脹なく,表在性リンパ節触知せず.心肺打聴診上異常なし.肝脾触知せず.下肢浮腫なし.腰痛のため著明な体動制限を認めるが腰背に骨圧痛,叩打痛なし.

演習 内科専門医による実践診療EXERCISE

左季肋部痛,呼吸困難/失見当識,異常行動

著者: 植竹健司

ページ範囲:P.903 - P.906

 73歳の男性,会社員.喫煙歴:30本/日.飲酒歴:日本酒3合/日,毎晩飲み歩いている.現病歴:入院前日の晩,大量の飲酒後数回嘔吐をしていたところ,突然左季肋部付近が激しく痛み,近医を受診.ブスコパンの筋注を受け多少軽快したが,再び疼痛増悪,呼吸困難も加わり,本院を受診.外来で検査中,shock状態となり,緊急入院した.
 理学的所見:顔面苦悶状,体温37.5℃,BP 60mmHg(触診),P 122/min整,呼吸数40/min.貧血黄疸なし,頸部皮下気腫あり.呼吸音:喘鳴および両側胸部でcoarse crackleを聴取.心音:心雑音なし.腹部:左季肋部に圧痛あり,筋性防御なし.四肢:浮腫なし.

循環器疾患診療メモ

神経性無食欲症と心電図異常

著者: 佐藤裕史 ,   山科章 ,   高尾信廣

ページ範囲:P.907 - P.909

 神経性無食欲症(Anorexia nervosa;以下AN)は,家族病理を背景とし,自立障害,成熟拒否,body-imageの障害などから拒食をきたす精神障害であるが1),拒食の結果生じる著しい痩せからさまざまな身体障害をきたし,死に至ることもまれではない.
 死亡例の多くは突然死とされ,心電図異常,ことにQT延長の関連している可能性が諸外国の文献で指摘されている.本邦ではANとQT延長との関連について言及した文献はほとんどないが,筆者らは最近,AN患者で,著明な徐脈,II度房室ブロック,心収縮能低下があり,一時的ペースメーカー挿入後にT波の陰転化とQT延長をきたした1例を経験している(表1,図1,2).

呼吸器疾患診療メモ

溺水のプライマリケア

著者: 喜屋武幸男

ページ範囲:P.910 - P.912

 溺死はわが国の不慮の事故死の3大原因の1つとされ,毎年約6,000人の死亡患者を数えている.その対策として,予防,救助,治療に分けて論議ができるが,ここでは治療を中心に述べてみたい.

血液疾患診療メモ

白血病で見逃されやすい危険な病態

著者: 岡田定

ページ範囲:P.913 - P.915

 白血病の病態としては,
 1)芽球を主体とする白血病細胞が正常骨髄を置換し,正常造血が抑制されるために起こる貧血,顆粒球・血小板減少
 2)白血病細胞から遊離される凝固前駆物質による播種性血管内凝固症候群(DIC)
 3)白血病細胞の骨髄外への増殖,浸潤による臓器腫大(ワンパ節腫脹,肝脾腫)と機能障害,中枢神経白血病,腫瘤形成,歯肉・皮膚浸潤などがよく知られている.
 これらの病態の他に比較的稀ではあるが,対処が遅れると致命的になりえる病態に,hyper-leucocytic syndrome(白血球著増症候群)とtumor-lysis syndrome(TLS;腫瘍融解症候群)がある.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻13号(2023年12月発行)

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60巻11号(2023年10月発行)

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60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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