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雑誌目次

雑誌文献

medicina28巻9号

1991年09月発行

雑誌目次

今月の主題 大腸疾患診療の新時代

〈Editorial〉日本人の大腸疾患の新時代

著者: 吉田豊

ページ範囲:P.1490 - P.1492

●時代背景と大腸疾患
 胃の病気は日本,大腸の病気は欧米.この観念は消化器を専攻する医師ならば,ほとんど常識的にもっている.
 湾岸戦争で欧米との間に,いささかの国民意識の差を突きつけられた格好ではあったが,明治以降今日まで我が国が欧米を目標に,追いつけ追い越せのマラソンレースをやってきたことは事実である.

内科医のための大腸疾患診断実践講座

大腸疾患の疫学—診断の第一歩はまず疫学を知ることから

著者: 深尾彰 ,   久道茂

ページ範囲:P.1494 - P.1496

ポイント
1)大腸癌,とくに結腸癌訂正死亡率は1950年から1988年の間に,男で3倍強,女で2.5倍に増加している.
2)大腸癌のリスクを上げる要因としては高脂肪食,肉食,アルコール,家族歴,下げる要因としては高線維食,緑黄色野菜,喫煙,出産などが挙げられている.
3)炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎,クローン病)の疫学指標は乏しいが,わが国の有病率はかなり低いことが推定される.

これだけは知っておきたい病歴・身体所見・ルーチン検査のチェックポイント:とくに大腸癌を見落とさないために

著者: 上野文昭

ページ範囲:P.1498 - P.1500

ポイント
1)まず大腸疾患の存在を疑うことから診断の第一歩が始まる.
2)直腸診を省略しないこと!
3)原因の明らかでない貧血では,大腸疾患を疑う.
4)便潜血が陰性であっても,大腸疾患を否定する根拠にはなりにくい.
5)注腸X線や大腸内視鏡検査は,以前のような特殊検査ではない.

大腸疾患診断のための検査の組み立て方

著者: 桜井幸弘

ページ範囲:P.1502 - P.1505

ポイント
1)大腸疾患の増加.若年者では,クローン病,中高齢者では,大腸憩室症・大腸癌を念頭におく.
2)疾患を念頭においた問診の重要性.
3)便潜血反応を上手に利用する.
4)注腸X線検査・大腸内視鏡検査の長所・短所を心得ておく.
5)新鮮大量血便はすぐに専門家へコンサルト.

大便の一般検査と微生物学的検査を見直そう

著者: 伊藤機一 ,   秋山真人

ページ範囲:P.1506 - P.1508

 大腸疾患の診断に大便の検査は不可欠である.免疫学的便潜血検査,細菌毒素やウイルス同定法の技術革新は目を見張るものがある.

便潜血検査と大腸癌スクリーニング

著者: 塩飽徳行 ,   森幸司

ページ範囲:P.1510 - P.1512

ポイント
1)免疫便潜血検査は便の中にヒトの血液が含まれているか否かを見る検査であり,大腸癌に特異的な検査ではない.
2)免疫便潜血検査は無症状者を対象とした大腸癌スクリーニングにはリスクが少なく,大腸の精検への動機づけによい検査法である.
3)免疫便潜血検査は大腸早期癌には感度の低い検査である.そこで,偽陰性を減らすために2日以上または同日2カ所の採便による検査を行う必要がある.
4)便中のHbは早くから抗原性を失うため,便を低温に保存し,できるだけ早く検査を行う必要がある.
5)免疫便潜血検査はキットの特徴を理解し,検査目的にあったものを使用する.

腹部エコーとCT画像でわかる大腸病変

著者: 水野富一

ページ範囲:P.1514 - P.1518

ポイント
1)検査時や読影時に実質臓器のみならず,腸管にも目を向けることが腸管病変の診断の第一歩である.
2)エコー検査上,正常の腸管はガスの存在により,認識しにくく存在感のない臓器である.一部の腸管のみが明瞭に描出された場合は腸管の病変を考える.
3)起源不明の異常腫瘤の内部にガス像がある場合,臨床的に膿瘍の可能性が低ければ,腸管由来の病変が強く疑われる.
4)エコーやCTで診断可能な大腸病変は,癌,平滑筋(肉)腫,リンパ腫,虫垂粘液腫,脂肪腫,憩室炎,虫垂炎,急性腸炎,腸重積など多種にわたる.

大腸癌と腫瘍マーカー—診療にどう用いるか

著者: 大倉久直 ,   菅野康吉

ページ範囲:P.1520 - P.1521

 大腸癌にはCEAを筆頭に,CA19-9,SLX,NCC-ST-439などのマーカーが知られている.これらの腫瘍マーカーは,早期癌では普通は陰性であり,進行癌でも病期IIとIIIの場合は陰性のほうが多いため,初診者に診断の目的で用いる意義は低い.しかし,血清腫瘍マーカーが陽性値の時には進行癌である確率が高く,予後不良の指標になる.また,術後のフォローアップでは,肝,肺,骨などの遠隔転移時に,自覚症状や画像検査で異常が発見されるより1〜6カ月も早く上昇するので,再発の早期発見に役立つ.

よくある大腸疾患:日常診療の視点から

よくある下痢の診断と治療

著者: 森下鉄夫 ,   武藤章弘 ,   長濱貴彦 ,   森木隆典 ,   澤口健太郎 ,   土屋雅春

ページ範囲:P.1522 - P.1525

ポイント
1)よくある下痢とは,一時的で3週間以内に治癒し,長期にわたり日常生活を侵害することのない,そして一生の内で何回も罹りうる下痢である.
2)下痢の病態は,浸透圧性,分泌性,粘膜障害性,濾過亢進性,運動異常性などの下痢の機序から考えると,理解は容易である.
3)炎症性腸疾患との鑑別が重要である.炎症性腸疾患は慢性の長期間にわたる下痢疾患であるが,潰瘍性大腸炎では粘血便・血便がほぼ必発で,X線,内視鏡検査で必ず有意の所見を呈する.クローン病は,若い成人で下痢とともに腹痛や体重減少が顕著で,肛門病変,小腸X線検査所見,肉芽腫などの病理組織学的所見が重要である.
4)治療の基本は,脱水を是正する補液と止痢である.補液は経口補液がまず試みられるべき方法であるが,止痢剤は感染性腸炎の症状をむしろ長期化・重症化させることがあり,注意を要する.

よくある便秘の診断と治療

著者: 平塚秀雄

ページ範囲:P.1526 - P.1529

ポイント
1)“よくある便秘”の大半は,機能性便秘である.
2)老人性便秘の多くは,結腸性(弛緩性)便秘か直腸性便秘である.
3)便秘の鑑別診断上,見逃してならないのは器質性便秘(とくに大腸癌)である.
4)入院患者の便秘は,常に念頭において対処しなければならない.
5)便秘の治療には,指導箋が有用である.

薬剤による下痢と便秘

著者: 佐竹儀治

ページ範囲:P.1530 - P.1532

ポイント
1)投薬によって人為的に便通異常を起こさせることがある.
2)下痢を起こさせるものとしては,降圧剤,抗生物質,抗リウマチ薬,抗腫瘍剤などに気をつけるべきである.
3)便秘を起こさせるものとしては,抗コリン剤,抗うつ剤,抗パーキンソン剤,制酸剤などに注意を払うべきである.
4)薬物の作用を熟知して処方することと患者の訴えを注意深く聴くことが大切である.

日常診療における過敏性腸症候群の捉え方

著者: 北洞哲治 ,   仲村洋 ,   鈴木紘一

ページ範囲:P.1534 - P.1536

ポイント
1)IBSは除外診断とともに積極的診断を心がけるべきである.
2)IBSは心身症としてとらえ,心身両面からのアプローチが必要である.
3)IBSの治療は全人的医療という立場からなされることが大切である.

日常診療における大腸憩室症の捉え方

著者: 勝又伴栄 ,   内藤吉隆 ,   五十嵐正広

ページ範囲:P.1538 - P.1540

ポイント
1)大腸憩室は腸内圧により粘膜が大腸壁の脆弱部より圧出されて形成される仮性憩室である.
2)低線維食が大腸憩室症の成因の一つと考えられている.発生には地域性,民族性特色がある.
3)大腸憩室症の5%前後に憩室炎,穿孔,憩室出血などの合併症が発生する.また大腸癌やポリープの併存例もある.
4)急性憩室炎は保存的に,慢性憩室炎による腸狭窄には待期手術,穿孔や大量出血には緊急手術が必要となる.

薬剤性大腸炎の診断と治療

著者: 林繁和

ページ範囲:P.1542 - P.1544

ポイント
1)薬剤性大腸炎の大部分は抗生剤によるもので,これには偽膜性大腸炎と出血性大腸炎がある.
2)診断には問診,便細菌学的検査,緊急大腸内視鏡検査が重要である.

感染性腸炎と化学療法

著者: 大貫寿衛

ページ範囲:P.1546 - P.1548

ポイント
1)化学療法の要否・薬剤選択は病原微生物によって決定する.
2)病原体未決定の時期には疾病の重症度や下痢の型を参考にする.
3)new quinoloneは感染性腸炎の大部分に対して有効であるが,小児には原則として用いない.
4)数種類の疾患について化学療法実施上の問題点を述べる.

炎症性腸疾患—今日の標準的診断と治療

著者: 朝倉均

ページ範囲:P.1550 - P.1554

 炎症性腸疾患には,潰瘍性大腸炎,クローン病,腸結核,Behcet病,単純性結腸潰瘍,虚血性大腸炎,抗生物質起因性大腸炎,大腸アメーバ症,アフタ様大腸炎(大腸リンパ濾胞増殖症),キャンピロバクターや細菌性赤痢などの細菌性腸管感染症,エイズに伴う腸症,放射線照射性大腸炎,深在性嚢胞性大腸炎Mucosal prolapse syndromeなど多数の疾患がある.これらの疾患の患者は,便通異常(下痢,血便,粘血便,時に便秘),腹痛,腹部不快感,発熱(微熱から高熱まで)を愁訴として来院してくる.ここで問診による病歴の聴取と診察が行われる.
 消化器疾患の診断を進めるに当たっての基本となる検査には,糞便検査,有熱患者では細菌培養検査,一般血液検査,画像検査,生検,および直腸指診がある.とくに痔疾患などの肛門部病変の診断には,直腸指診は欠かせないものであり,クローン病診断のきっかけともなることがある.

虚血性大腸病変—今日の標準的診断と治療

著者: 馬場理加 ,   長廻紘

ページ範囲:P.1556 - P.1558

ポイント
1)突然の腹痛とそれに続く下血を主訴とする.
2)虚血性大腸炎の背景因子として動脈硬化症,高血圧,糖尿病,膠原病が多いといわれている.高齢者に多い.これらの合併症のない若年者にも発症し,女性に多い.
3)区域性腸炎(segmental colitis)で,好発部位は左側大腸.内視鏡では急性期に特徴的な区域性の出血,イチゴ状発赤,浮腫がみられる.X線では母指圧痕像,縦走潰瘍などがみられる.

大腸ポリープと大腸癌—今日の標準的診断と治療

著者: 小林世美

ページ範囲:P.1560 - P.1563

ポイント
I.スクリーニング
1)直腸出血は大腸癌の比較的初期に起こる症状である.
2)大腸癌患者の第一度近親者(親子,同胞)は大腸癌のハイリスク者である.
3)直腸指診では大腸癌の約3分の1が触診可能である.
4)便潜血検査は無症状者の大腸癌スクリーニングに有用であるが,1cm以下の腺腫の拾い上げには役立たない.
5)Sigmoidoscopyは大腸癌の約80%の発見に役立つ.
6)簡易式大腸X線検査は実地医家でのスクリーニング検査および簡易精密検査として有用な方法である.
II.精密検査
1)精密検査の第一次選択は注腸X線検査である.
2)内視鏡検査は病変の良悪性の鑑別,および平坦,陥凹型病変の発見に威力を発揮する.
III.治療
1)内視鏡的に切除可能な病変はすべて内視鏡治療の対象になるが,とくに5mm以上の場合,sm癌もありうるので切除すべきである.組織検査の結果,腺腫とm癌は治療が終了するが,sm癌は原則として開腹腸切除を行う.
2)sm癌および進行癌はリンパ節廓清を含めた開腹手術を行う.
3)根治療法の不能症例では姑息手術や制癌剤投与などを行う.

内科医に必要な大腸ポリポーシスの基礎知識

著者: 鈴木荘太郎

ページ範囲:P.1564 - P.1566

ポイント
1)遺伝性と非遺伝性疾患があり,家族歴を中心とした問診が重要である.
2)大多数は上皮性で非上皮性は稀である.
3)腺腫性ポリポーシスはポリープ数が100個以上,過誤腫性病変では散在性である.
4)遺伝性ポリポーシスの腺腫性は癌化と他臓器癌が高頻度で,過誤腫性では色素沈着や他臓器癌,あるいは先天奇形などを合併する.
5)非遺伝性の炎症性ポリポーシスは治癒再生過程に出現,消退する.他に原因不明の未分類のポリポーシスがある.

Simple ulcerとその周辺疾患の診断

著者: 今井裕 ,   杉野吉則

ページ範囲:P.1568 - P.1570

ポイント
1)単純性潰瘍は,明らかな原因がなく,またクローン病などの既知の確立した疾患とも異なる.
2)好発部位は回盲部,とくに回盲弁上である.
3)潰瘍は,境界明瞭な円形ないし卵円形で,下掘れ傾向が強い.
4)組織学的には,慢性活動性の非特異性炎症所見を示すU1-IVの潰瘍を特徴とする.

内科診療でよくみる全身疾患と大腸病変

著者: 六倉俊哉

ページ範囲:P.1572 - P.1575

ポイント
1)循環器疾患
虚血性腸炎,上腸間膜動脈塞栓症,Angiodysplasia
2)糖尿病
便秘,脂肪性下痢
3)膠原病
血管炎,虚血性腸炎,潰瘍,出血,穿孔,腸管拡張,便秘,潰瘍性大腸炎,大腸癌
4)腎疾患
便秘,Pseudo-obstruction,麻痺性イレウス,虚血性腸炎,潰瘍,出血,穿孔,Angiodysplasia,大腸癌
5)神経疾患
便秘,下痢,麻痺性イレウス
6)内分泌疾患
便秘,下痢
7)血液疾患
出血,潰瘍,穿孔,腸閉塞,感染,偽膜性腸炎,Angiodysplasia
8)薬剤
便秘,下痢,出血性腸炎,偽膜性腸炎,腸間膜動脈塞栓症

日常診療でよく使われる大腸疾患治療薬の基礎知識

著者: 高橋裕 ,   上野文昭

ページ範囲:P.1576 - P.1578

ポイント
1)日常診療でみる大腸疾患に対して,必要な治療薬の種類はさほど多くない.
2)限られた数の薬物の薬理作用,代謝動態,効果,副作用に熟知したい.
3)対症療法は必要最小限にとどめ,病態を再検討し,早期に適切な特異的治療を行う必要がある.

大腸疾患診療:現在から近未来まで

大腸運動機能と直腸肛門機能からみた慢性便秘

著者: 佐々木大輔 ,   須藤智行

ページ範囲:P.1579 - P.1581

ポイント
1)大腸運動機能や直腸運動機能の不全による機能的慢性便秘には痙攣性便秘と弛緩性便秘とがある.
2)痙攣性便秘の大部分は便秘型過敏性腸症候群であり,弛緩性便秘の大部分は単純性(常習性便秘)である.
3)器質的疾患に伴う便秘でも,便秘の病態生理を考慮した治療法の選択を行う.

大腸疾患への免疫学的アプローチ

著者: 日比紀文 ,   原歩 ,   金井隆典 ,   林篤 ,   細田泰雄 ,   大原信 ,   土屋雅春

ページ範囲:P.1582 - P.1584

 潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)の免疫学的側面とその免疫療法について概説した.UCでは,リンパ球機能異常に基づく自己免疫機序や即時型アレルギーの関与などがみられる.一方CDでは,単球,マクロファージ異常と免疫能低下が中心である.
 病因病態に免疫機序の関与する大腸疾患は数多くあるが,本稿では潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)にポイントをしぼって述べる.UCとCDは臨床像,X線像,内視鏡像および組織像の違いが明らかにされて来るとともに,その免疫学的異常の相違も次第に明らかにされてきた.まず両者の免疫学的な知見を解説し,次に免疫異常是正の認識に立った免疫統御療法について述べる.

炎症性腸疾患治療薬の新時代

著者: 松本誉之 ,   北野厚生 ,   小林絢三

ページ範囲:P.1585 - P.1587

ポイント
1)病態に即した治療法の選択
2)新しいsalicylate
3)ステロイドantedrug
4)難治症例に対する工夫,補体活性阻害剤など

炎症性腸疾患における在宅経腸栄養療法の将来

著者: 平川博之 ,   福田能啓

ページ範囲:P.1588 - P.1590

ポイント
1)現時点では,在宅経腸栄養療法の適応疾患(炎症性腸疾患ではクローン病や放射性腸炎など)と適応薬剤(成分栄養剤,エレンタールのみ)が限定されている.
2)クローン病では,薬物療法による緩解維持が困難な症例があったが,在宅経腸栄養療法が再燃防止に有用であり,理想体重1kg当たり30kcalの成分栄養剤を摂取するよう努める.
3)成分栄養療法中は必須脂肪酸や亜鉛などの欠乏に注意する.

分類困難な大腸炎・潰瘍性病変

著者: 藤沼澄夫 ,   酒井義浩

ページ範囲:P.1591 - P.1593

ポイント
1)分類困難な炎症性腸疾患を診断するには既知の炎症性疾患を熟知する必要がある.
2)詳細な病歴や肉眼形態像より疾患名を想定しなければならない.
3)診断過程における十分な情報を病理医に提供することが重要である.
4)臨床経過や薬物に対する反応性を観察することも大切である.

大腸の平坦・陥凹型早期癌—幻から実在へ

著者: 工藤進英 ,   日下尚志 ,   木俣博之 ,   藤井隆広

ページ範囲:P.1594 - P.1600

ポイント
1)早期大腸癌430病変の中で,平坦・陥凹型は60病変(14.0%)を占めた.
2)存在診断は,淡い発赤と褪色調で発見された.
3)質的診断には,空気変形と無名溝消失所見が重要であった.
4)拡大内視鏡・実体顕微鏡でのpit patternはIIIs,V型を呈した.
5)微小癌の治療の原則はstrip biopsyである.

微小大腸癌(5mm以下)の内視鏡診断と治療

著者: 岡本平次

ページ範囲:P.1602 - P.1603

ポイント
1)微小大腸癌は稀な病変ではない.
2)多くは隆起性病変であるが,少数ながら隆起の目立たない病変や陥凹を呈する病変もある.
3)内視鏡的「硬さ」,緊満感,陥凹,発赤などが手掛かりとなって,1/3は切除前に診断可能であった.
4)癌例においては対象は小さければ小さいほど癌の初期像を表していると考えられ,微小癌を数多く発見し,分析することは,癌発生解明の糸口となることが期待される.

内視鏡的ポリペクトミーで根治できる大腸癌

著者: 多田正大 ,   清水誠治

ページ範囲:P.1604 - P.1606

 高周波電流を用いたいわゆる内視鏡的ポリペクトミー(endoscopic polypectomy,以下ポリペクトミーと略する)の導入によって,大腸癌の治療法は一変した.そしてポリペクトミーによって治療された早期大腸癌や腺腫の集積によって,臨床的にも病理的にもそれらの特徴が浮き彫りにされるにつれて,治療方針についてもコンセンサスが得られるようになった.

最近海外で注目されている大腸疾患

著者: 霞朝雄

ページ範囲:P.1607 - P.1609

●コラーゲン形成大腸炎(Collagenouscolitis)
ポイント
1)数年以上に及ぶ慢性水様性下痢.
2)注腸レントゲン検査,大腸内視鏡で著変がみられず,生検で炎症性細胞浸潤と大腸上皮直下にコラーゲンの形成がみられる.
3)稀な疾患
4)主に白人,中年女性.
5)治療は対症療法.ステロイド,スルファ サラジンも使われる.

大腸外科の近未来への動向

著者: 雨宮厚 ,   笹壁弘嗣

ページ範囲:P.1610 - P.1612

ポイント
1)悪性疾患
進行度分類:癌のbiologyまで考慮したより正確な分類法の確立
診断:微小転移検出のためのより鋭敏な診断法の開発
治療:QOLを重視した機能温存・縮小手術の適応拡大,補助化学・放射線療法の積極的併用,再発に対する効果的な治療の模索
予防:食餌療法による一次予防の可能性の検討,ハイリスク患者のスクリーニングによる二次予防の検討
2)炎症性疾患
憩室炎:経皮的膿瘍ドレナージ,一期的切除の安全性の証明
潰瘍性大腸炎:括約筋温存手術手技の確立
クローン氏病:二次合併症発症前の早期手術の良否検討
3)外傷:鋭的外傷の一期的縫合の安全性確認
4)機能疾患:大腸切除の適応となる慢性便秘疾患の的確な選択
5)外科手術学:腹腔鏡的大腸切除,レーザーによる焼灼切除,吻合器の改良,吻合不全の予防

座談会

大腸疾患診療のcontroversy

著者: 酒井義浩 ,   久道茂 ,   光島徹 ,   上野文昭

ページ範囲:P.1613 - P.1628

 上野(司会) 本日はご多忙の中ご遠方よりお集まりいただきましてありがとうございます.
 本日先生方にお話を伺うテーマは「大腸疾患診療のcontroversy」という少し耳慣れないタイトルなので,最初にイントロダクションをさせていただきます.最近は医師会の先生方,あるいは若手の研修医の間でも,大腸の疾患に対する興味が深まっているようです.ひと頃日本で消化器というと胃の病気という認識があったわけですけれども,どうも最近では大腸疾患が増えているのではないかという認識が広まっているようです.

カラーグラフ 冠動脈造影所見と組織像の対比・31

Marfan症候群の冠動脈病変

著者: 堀江俊伸

ページ範囲:P.1630 - P.1632

●狭心痛を認めたMarfan症候群
 症例 25歳,女
 24歳時に胸部X線写真から大動脈弁輪拡張症,大動脈弁閉鎖不全症を指摘された.この頃より夜中から起床時にかけて狭心痛が出現するようになった.発作時の心電図ではII,III,aVF,V4〜V6においてST低下を認め,ニトログリセリン舌下錠が有効であった.
 心臓カテーテル検査では左室拡張終期圧32mmHgと上昇し,左室拡張終期容積は273.3ml/m2と著明な拡大を認めた.しかし冠動脈には有意な狭窄を認めなかった(図1).

グラフ 内科医のための胸部X-P読影のポイント・6

肺癌(2)—塊状影症例

著者: 松井祐佐公 ,   小山弘

ページ範囲:P.1640 - P.1646

症例
 患老 63歳,男性
 主訴 胸部異常陰影の精査
 現病歴 1988年の検診では,明らかな腫瘤影は認めなかった.1990年は検診を受け忘れ,1991年3月の検診で左上肺野に6×6cmの塊状影を認め,精査治療目的で当科を受診した.

演習

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1634 - P.1639

血液疾患診療メモ

POSによる診療のアプローチ

著者: 岡田定

ページ範囲:P.1648 - P.1651

 患者が医療施設を最初に受診する時には,医療上のさまざまな問題を抱えていることが多い.そのような患者を診る時には,自分の専門分野の限られた範囲の視点だけにとらわれてはいけない.患者が自分の得意分野である疾患に罹患しているかどうかに注目する前に,もっと広い視点で患者の持っている問題を総合的に把握し,分析し,解決することを考えるべきである.
 自分の専門領域の疾患にしか注目しないということは,「病気を見て病人は見ない」ということに繋がる.血液疾患の診療もその例外ではない.本項の「血液疾患診療メモ」には逆説的であるが,血液疾患診療のアプローチの前に,すべての疾患に共通した診療のアプローチを体得することが重要である.

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の臨床像

著者: 宮城征四郎

ページ範囲:P.1652 - P.1654

 慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pul-monary Disease;COPD)は,慢性気管支炎,肺気腫およびいくらかの可逆性を残した気管支痙攣や狭窄などの要素が輻輳する慢性気管支喘息などの症候群であって,ときに1疾患としての取り扱いが困難な病態である.
 とくに患者の協力が必要とされる肺機能検査や選択的肺胞気管支造影法などの気道に関する形態学的検査,気道過敏性テストなどが不可能となる末期状態や急性増悪時には,本症候群の構成要素としての基礎疾患を厳密に区分することはきわめて困難であり,COPDと一括して取り扱うほうが臨床的に便利であり,事実,そのように取り扱われてきた.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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