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雑誌目次

雑誌文献

medicina29巻11号

1992年10月発行

雑誌目次

増刊号 図解 診療基本手技 第2集 病歴のとり方

患者との接し方

著者: 津田司

ページ範囲:P.6 - P.9

 わが国では,問診=病歴聴取という教育がなされている.この背景には,疾患中心主義,つまり体の症状を客観的(科学的)に捉えて診断治療するという考えが根強く存在するからである.この場合は,患者といかによい関係を作るかについてはあまり力点が置かれないようである.
 しかし,現実の医療の場では,医師-患者関係の如何によって得られる情報に差がでたり,治療効果にも差がでることはよく経験するところである.したがって,効果的な診療をするにはどうしても医師-患者関係が大切となる.いかに上手に患者と接するかが重要となるわけである.

病歴のとり方の技術

著者: 松村理司

ページ範囲:P.10 - P.12

●病歴の位置
 わが国では,これまで病歴のとり方の学習はなおざりにされてきた.研修医にとって,この面でのロール・モデルはきわめて探しにくい.一般病院の先輩医は,いそがしい外来診療や諸検査に振り回されている.大学病院の諸先輩は,研究室にこもったきりだ.
 病歴や身体診察がほぼ無料に近いことも災いしてきた.近年の画像検査の発展も,病歴軽視の傾向に拍車をかけた.

病歴のとり方の具体例(1)—胸部

著者: 福井次矢

ページ範囲:P.13 - P.15

 胸部症状のおもなものには胸痛,呼吸困難,動悸,咳,痰,喀血,乳房のしこりなどがある.そのような症状の鑑別診断には胸部以外の臓器の疾患も考慮しなくてはならないことが少なくない.反対に,胸部臓器の疾患を鑑別診断上考えなくてはならないという意味で,失神ないしその前兆症状(presyncope)も“胸部症状”に含まれよう.
 病歴聴取には医師-患者関係の確立や治療の一環としての意義も含まれ,胸痛や呼吸困難を訴える患者のうち,かなりの者で心理社会的側面についての配慮が治療上必要になるが,病歴聴取の最大の役割は何といっても疾病の有無とその種類の目星をつけることにある.つまり,患者が述べる“身体についての主観的な異常感覚とその解釈”を介して,医師が医学知識を駆使し,患者の体内で実際に起こっている病態生理を推理するという知的営みである.

病歴のとり方の具体例(2)—腹部

著者: 木戸友幸

ページ範囲:P.16 - P.18

 腹痛の中で,的確で迅速な病歴を要求されるのは,急性腹症の場合である.本稿ではおもに急性腹症の可能性が高い場合の病歴のとり方を解説し,その中で,慢性の場合の注意を若干あげることにする.

病歴のとり方の具体例(3)—感染症・発熱

著者: 伊藤澄信

ページ範囲:P.20 - P.21

●病歴のとり方
 健康であった人が急に発熱したときは一般に感染症を疑うが,症状の経過を注意深く聞くことによって原因疾患を推定することができる(表1,2).感染症で高い発熱を生じる臓器は実質臓器で,胃,腸管,膀胱などの管腔臓器では一般には高熱を発することはない.呼吸器系感染(肺炎,上気道炎),腎盂腎炎,胆道系感染が発熱をきたす感染症のビッグ3である.
 熱型はときに病因を探るうえで有効なことがある(表3).体温の1日平均値は年齢とともに低下する.発熱パターンは通常朝6時頃に低く,夜10〜12時頃にかけて最高に達する変動を示す.体温の上昇時に悪寒,体温降下時に発汗が起こる.高齢者,腎不全,肝硬変患者では体温上昇が顕著でないことがある.

インフォームドコンセント

著者: 伊賀六一

ページ範囲:P.22 - P.24

 新医療法が国会で可決承認され,わが国の医療社会でも「インフォームドコンセント」を現実の問題として把握し,対応の在り方について具体的な検討が迫られる段階にきた.新医療法で「医療の担い手が,医療を提供するにあたり,適切な説明を行い,医療を受ける者の理解を得るよう配慮することに関し,検討を加え,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること」という付則が加えられ,インフォームドコンセントが法の形で医療に導入される素地ができたからである.
 アメリカではインフォームドコンセントの内容と範囲が法的に確定されている.すなわち,それは医師としての義務と責任であり,患者の立場からは当然の「知る権利」,「自己選択権」であり,それが十分でない場合には,法的な責任が問われる.そのため米国では医療訴訟をあおる結果となり,防衛的医療のため医療費高騰の一因となるという矛盾した現象をもたらした事実も全く否定できない.このようにインフォームドコンセントが法として確定されることは,一歩間違えば問題の本質から外れた方向に進展する可能性もある.

処方箋の書き方

著者: 小林祥泰

ページ範囲:P.25 - P.28

 処方箋は,医師が薬剤を処方する際に必ず記載しなくてはならないものである.処方箋は英語ではprescriptionという.ラテン語のpre(前に),scriptum(書く)からきたもので,written before(前もって記す)に由来する.独語ではRezeptがよく使われ,日本では古くからRezeptを略してRpが略語としてよく使われてきた.英米ではRx,Rなどと略す.
 該当患者に対する投薬内容が調剤を担当する薬剤師に正確に伝わることが処方箋の必須条件であるが,それだけでなく,医療事故を防ぐため,記載内容については医師法により規定されているので,その内容だけは是非頭にいれておく必要がある.医師法施行規則第21条には「医師は,患者に与える処方箋に,患者氏名,年齢,薬品名,分量,用法,発行年月日,使用期間および病院もしくは診療所の名称,所在地,または医師の住所を記載し,記名捺印または署名しなければならない」とある.一般には上記の項目を毎回手書きするのは大変なので,病院の名称,住所などの印刷されている処方箋を使い,患者名などもインプリンターで印字することが多い.

身体所見のとり方

診察のすすめかたと全身のみかた

著者: 伴信太郎

ページ範囲:P.30 - P.34

 本稿では“診察のすすめかたと全身のみかた”について総論的に述べる.“全身のみかた”ということについて最も大切なことは“全身に目を配る”という医師の心構えである.患者の健康上の問題は,患者の訴えているところだけ,あるいは自分の専門としているところだけに存在しているわけではないことを認識しておくことが最も大切であるとまず強調しておきたい.

頭部・顔面

著者: 浅利正二

ページ範囲:P.35 - P.39

●頭痛のみかた
 頭痛は種々の頭蓋内外組織の機能異常・疾患により発生し,日常の診療において遭遇する自覚症状のうちで最も頻度の高いものの1つである.
 本稿では,まず頭痛診断の一般的手順について述べ,次いで頭痛を来す代表的疾患について概説する.

著者: 湖崎淳

ページ範囲:P.40 - P.41

 眼の所見というと眼底検査と思われがちであるが,明るいペンライトがあるとかなりの所見がとれる.系統的にみるには眼球の表面から奥へ進むのが見落としがなくてよい.
 眼は左右それぞれも重要だが,両眼のバランスも重要である.

頸部

著者: 宮崎康

ページ範囲:P.42 - P.44

●頸部診察の意義
 日常診療で問題となる頸部の疾患は,甲状腺とリンパ節の異常がほとんどで,特に甲状腺の結節,腫大が多い.特徴的な自覚症状がない患者で,意識的な触診が,橋本病,バセドウ病,亜急性甲状腺炎,そして甲状腺癌などの診断に結びつくことが多い.同様に,リンパ節の触知が,癌,悪性リンパ腫などの診断の糸口になることも決して少なくない.ともするとおろそかになりがちだが,頸部の意識的な診察,触り癖をいつも心がけたい.

乳房・腋窩

著者: 山田寛保

ページ範囲:P.45 - P.47

 乳房・腋窩は,視触診という最も基本的な診療手技が重要な役割をもつ表在性の臓器で,女性の関心も強く,積極的に経験を積むことが大切である.診察の時期は,乳房の腫れる生理前はなるべく避け,生理終了後1週間前後の乳房が最も軟らかくなった時期が適当である.外来と検診の場合の実際の手順を述べる.

胸部

著者: 三野眞里 ,   岩田猛邦

ページ範囲:P.48 - P.52

 診療の第一歩は患者の話に注意深く耳を傾け,医学的知識に基づいてその訴えを整理し,いくつかの疾患を想像しながら理学的検査を進めていくことである.種々の臨床検査は,診断の正当性や重症度の判定に重要であるが,患者の訴えや理学所見を無視した,むやみやたらな臨床検査の羅列は何ら意味を持たない.問診法とともに理学所見の知識と手技に習熟し,得られた臨床検査成績にフィードバックをかければ,患者の病態を把握することが容易となり,大きな過ちを犯すことが少なくなる.
 本稿では特に,呼吸器疾患に関連した基本的な胸部理学所見につき解説し,呼吸器疾患と関連のある胸部外所見,さらには臨床の場で特に重要と思われる呼吸不全の理学所見につき述べていくこととする.

心臓・血管系

著者: 柳川幸重

ページ範囲:P.54 - P.59

 現代の心臓・血管系の検査は,理学的な身体の所見から推定される心臓・血管系の情報を,具体的かつ定量的に捉えようとしたものである.心臓の聴診,頸静脈の拍動・怒張などから推定されていた心血行動態の情報は,心音図と心エコー図,ドプラー,心カテーテルによって直接的,定量的に得られるようになった.しかし,現代でも的確な検査の適応の決定には身体所見の理解が必要であり,また,異常値を適切に解釈するためには,診察により患者の状態を把握していることが必須となる.診察法を学んでいく最良の方法は,身体所見と検査で得た情報とを比べて,常に自分の判断にフィードバックをかけておくことである.

腹部

著者: 小泉俊三

ページ範囲:P.60 - P.63

 腹部の診察にはいつも何がしかのあいまいさが付きまとう.あいまいなものだからつい丁寧な診察は省略して,“最新”の画像診断法で「答え」を知りたくなるし,腹壁の向こうにある臓器の中のこまごまとした変化を知るのに超音波やCTにかなうはずもなかろうと考えてしまう.盃一杯の腹水も見逃さないという名人芸的な診察術がすぐ自分の身に付くとも思えないし,そのことにどれほどの意義があるのかと反問したくもなる,といったところが近年の一般内科医の偽らざる気持ちではなかろうか.いくら「問診と診察が診療の基本」といわれても,腹部の診察所見のこのあいまいさ(fuzziness)が画像偏重の弊害を助長しているのは事実である.
 とりわけ,超音波診断装置が簡便に扱えるようになった結果,聴診器が耳の延長であったように超音波プローブは触診する手の延長と見なされる傾向がある.事実,研修医諸君の間でも,問診・診察技法の研修と同様,超音波検査の腕も磨きたいとの要望は強い.

肩・背部

著者: 向原茂明

ページ範囲:P.64 - P.66

 いわゆる肩こりや背部痛を主訴に内科を受診する患者は多い.当科を受診した患者88名の診断名を表1に示す.肩こりに代表される筋痛症が大部分であるが,関節や脊椎骨および神経系に原因がある疾患を見逃してはいけない.また,神経症など精神的な原因が関与しているものが多く,治療上考慮が必要である.表2に合併症を示す.神経症や癌に対する不安が多く,胃潰瘍や胆石症など消化器疾患も見落としてならない.そのために系統だった診察が必要であり,局所の所見のみでなく,全身を把握する必要がある.

神経系

著者: 高木誠

ページ範囲:P.67 - P.70

 神経学的診察のおもな目的は神経系における病変の局在診断を行うことである.そのためにはまず表1にあげたような各系統別の診察を順次進めて所見を集め,最後にこれらの所見を整理統合して病変の局在についての1つの結論を導くという手順がとられる.
 神経学的診察は目的意識なしにただ漫然と進めても成果は少なく,重要な所見を見落とすことになりやすい.したがって診察を始める前に,個々の症例においてどの項目を重点的に診察すべきか,どのような所見を見落とさないように注意すべきかについて,問診や視診などによりある程度の見当をつけておく必要がある.

四肢

著者: 竹内郁男

ページ範囲:P.72 - P.73

 四肢は,見過ごされやすい大事な所見の宝庫である.例えば,血圧の左右差,軽度の浮腫,ミオトニアなどは,全身的疾患を正しく把握するためにきわめて重要なポイントであるが,意外と容易に見落とされる.
 四肢の些細な所見から,全身の病態を解き明かすことは患者にとって大きな利益であるとともに,臨床家にとっての喜びでもある.まずは宝を探すような気持ちで,四肢の診察に臨みたい.

皮膚

著者: 幸田弘

ページ範囲:P.74 - P.76

 診察の第一歩は視診である.患者と語りながら皮膚をゆっくりと注意深く観察しよう.

直腸・肛門

著者: 貞広荘太郎

ページ範囲:P.77 - P.79

 消化器病の臨床において,直腸肛門診はルチーンに行うべき検査である.しかし直腸肛門部の診察には,患者に不安と羞恥心が伴うため,問診で患者と十分に会話を交わし,検査の内容を十分に説明したうえで診察を進める必要がある.

男性器

著者: 相戸賢二

ページ範囲:P.80 - P.82

 正確な解剖学的知識をふまえた理学的検査が,診断の基本であり,これができてはじめて無駄のない検査計画が導かれる.
 男性器の診察は,ベッドに仰臥させた患者の(右利きなら)右に立って行う.患者は下半身は下着まで外しバスタオルをかけて,診察部分だけ露出することで羞恥心を最小限にすることができる.殿部に約1メートル幅の防水布を敷いておくと,分泌物や不意の排尿の処理に便利である.

女性器

著者: 伊藤博之

ページ範囲:P.83 - P.85

 女性器に対する診察(内診)は,通常,婦人科診察台(いわゆる内診台)上で軽い砕石位にて行うが,その成否のカギは,いかにして患者の理解,協力が得られるかにかかっている.実際の診察にあたっては,ほとんどの患者は(特に初診時では)緊張状態にあるので,どうすれば羞恥心を和らげ,リラックスさせられるかを考える.具体的には内診の際に,さりげない会話,例えば患者の特技・趣味(スポーツや音楽など)について,ちょっと一言,話を交えるだけでも急に打ちとけ,スムーズに診察できることを何度も経験している.さらに,診察に際し,患者に少しでも不快な思いをさせないための配慮も必要である(表1).
 さらに,内診に必要な基本的な条件を一括して表2にあげる.

基本的な臨床検査と画像診断法

尿検査

著者: 芝紀代子

ページ範囲:P.88 - P.92

 日本臨床病理学会では「日常初期診療における臨床検査の使い方」に関する小委員会を作り,日常初期診療における臨床検査の使い方,「基本的検査」を設定した1).それによると基本的検査(1)(2)があり,表1のように尿検査についてもいくつかの項目が選択されている.
 尿には排泄物というイメージがつきまとうため軽視しがちであるが,体内の異常の多くは尿検査に反映してくる.したがって初診患者の診察時,尿検査の情報は正確に把握しておかなくてはならない.本稿では尿検査を基本的検査として用いる場合について記述する.

大便検査

著者: 伊藤機一

ページ範囲:P.93 - P.96

 大便の検査は腸管系疾患の診断に不可欠である.最近の免疫法の便潜血検査,ウイルス抗原検査法の開発は目を見張るべきものであるが,従来の外観観察,細菌検査,寄生虫検査,簡易化学検査も多くの診断情報が得られ,基本的重要検査として今なお不動の地位を占めている.大便容積の約半分は細菌およびその死骸からなり,その大部分は病原性のない常在菌であるが,ときには赤痢菌やサルモネラなど病原菌を含むことがあるので,検体の取り扱いには注意を要する.

末梢血検査

著者: 土屋達行 ,   河野均也

ページ範囲:P.97 - P.100

 末梢血検査は一般スクリーニング検査の1つとして,また血液疾患の診断や治療過程の観察に不可欠の検査とされ,日常診療で数多く利用されている.現在,そのほとんどは中央臨床検査部や,検査センターで行われているが,これらの検査の一部は緊急検査としてベッドサイドで行われることもまれではない.
 本稿では末梢血検査のうち,主治医が行うことが多い項目について述べる.

電解質検査

著者: 花井順一 ,   内田俊也

ページ範囲:P.101 - P.109

●総論
 生体内の細胞は,体液という内部環境の中で細胞機能を営んでいる.体液は適切な水分量と適切な種々の電解質濃度を含み,飲食という経口摂取による大きな変動にもかかわらず,それら体液の状態は常に一定の範囲内に保たれている.これをホメオスターシス(恒常性)という.たとえば脱水により細胞外液が減少すると,血漿浸透圧が上昇し,抗利尿ホルモンが分泌されて,腎での水再吸収を高めて水分量の喪失を防ぐなどの例で理解しやすい.このように体液のホメオスターシスは異常が生じたことを感知するセンサーが生体に存在し,そのシグナルが腎に伝達され,腎ではそのシグナルに適切に反応して異常を補正するメカニズムが働くことで維持されている.このような微妙な調節機能はおもに尿細管でなされるめ,電解質異常は尿細管での調節異常であることが多い.
 本稿では電解質の読み方における基本的な事項について記載する.

肝機能検査

著者: 池上文詔

ページ範囲:P.110 - P.112

 肝臓は合成,解毒,異化など多種多様な代謝機能を営み,かつ再生力も旺盛であるために,肝障害時の機能的な変化を腎障害時のクレアチニンのように特異的に反映する検査は少ない.さらに一般的には肝機能検査の中に肝障害の原因を探す検査も含まれている.

その他の血液化学検査

著者: 宇治義則 ,   岡部紘明

ページ範囲:P.113 - P.116

●血糖
 血中の糖(グルコース,ブドウ糖)の測定は糖尿病の診断治療指標として最も有用な検査であり,内分泌疾患,糖代謝に関与する臓器の疾患の診断にも欠くことのできない検査である.測定値は検体の種類(全血or血漿,静脈血or耳朶や指先の毛細管血),測定法などにより異なるので注意を要する.一般に全血は血漿より10〜15%低値で,毛細管血は静脈血より10%高値であり,採血時に解糖阻止剤(フッ化Naなど)を加え解糖を阻止する.採血は早朝空腹安静時に行う.運動,ストレスなどにより血糖値は変動する.また,種々の薬剤の服用が血糖値を変動させる場合があるので注意を要する.早朝空腹時血糖が140mg/dl以上あるいは食後1〜2時間後の血糖値が200mg/dl以上の場合には糖尿病が推測されるが,早朝空腹時血糖が140mg/dl以下でも糖代謝異常がある場合があるので,ブドウ糖負荷試験や尿糖の検査を行って臨床的総合判定を行う(表1,2).

血清検査

著者: 伊藤喜久

ページ範囲:P.117 - P.119

●血清検査とは
 血清検査は,主に抗原抗体反応の原理にもとづく分析法(定性,定量,抗体活性)を駆使して,血中に出現,変化する炎症・腫瘍関連抗原,免疫関連物質(特異抗体,補体,急性相反応物質,サイトカイン)などの変動を評価する検査で,病因の特定,疾患の補助診断,病期・病勢・予後や,治療効果の判定などに用いられる.血中の抗原,免疫関連物質の検出は,生体から精製,あるいは遺伝子工学的に生合成した抗原を免疫原として,異種の動物に免疫して得られた特異抗体との反応を利用したものであり,一方,生体内に生じた特異抗体は,対応する特異抗原との反応性から検出が行われる.疾患の病態特性に応じた種々の原理による定性,定量法が開発されている.また補体のように,生物活性としても評価されるものもある.

血液ガス測定

著者: 中谷龍王

ページ範囲:P.120 - P.122

●血液ガス測定により得られる情報とその意味
 1)酸素化の評価
 ・動脈血酸素分圧PaO2
 ・ヘモグロビン酸素飽和度SaO2

細菌染色法

著者: 佐野純子 ,   高橋幸則

ページ範囲:P.123 - P.125

●グラム染色1)
 Hans Christian Joachim Gramにより考案された染色法で,現在,わが国ではHucker変法が広く行われており本法について述べる.

細菌培養法

著者: 佐野純子 ,   高橋幸則

ページ範囲:P.126 - P.128

 臨床細菌検査に影響を及ぼす要因には,検査材料の採取部位,時期,方法,保存,輸送および検査担当者の知識,技術,経験,熱意などがあげられる.また,患者の病態,感染部位により検出される菌種がある程度限定され,医師からの検査室への情報の伝達も重要である.本稿では検査材料採取時の注意事項,採取法,市販細菌検査用保存,輸送培地について述べる.

心電図

著者: 大林完二

ページ範囲:P.129 - P.133

 心電図とは,心臓の作業心筋および刺激伝導系特殊心筋の各細胞に生ずる電気現象である膜電位を,総合的に心臓全体として体表面から心電計で記録したものである.現在,日常臨床で広く用いられている心電図は,標準12誘導心電図で三次元の心電現象を分かりやすくするため,二次元の平面に置き換えて記録するような誘導法が用いられている.

胸部X線写真

著者: 渡辺文彦 ,   水野富一

ページ範囲:P.135 - P.138

●胸部X線写真の撮り方
 1)正面像
 ①PA view(posteroanterior view;後前像):通常の正面像である.2m前後のフィルム・管球間距離で立位,深吸気位で撮影する.管球の高さは第5胸椎で後ろから前にX線が入射され,鎖骨胸骨端は第4肋骨後方に重なる.正しく正面で撮影されることが大切である.写真上では左右の鎖骨胸骨端と脊椎との間隔が等しいこと,また脊椎の棘突起が椎体の中心にあることに注意する.
 ②AP view(anteroposterior view;前後像):多くの場合,子供や重症者,起立不能の患者で臥位にてX線を上から下に入射し撮影する.立位のAP view(フィルムを体の後ろにつけX線を前から後に入射する)は,PA viewとともに読影することで肋骨と重なる陰影の発見が容易になり,肺癌検診などに利用される.

腹部X線写真

著者: 永田博司

ページ範囲:P.139 - P.143

●撮影方法
 1)ルーチン撮影
 背臥位正面像(半切)と立位正面像(半切)を撮る.背臥位像のほうが情報量が多く,臓器,腫瘤,石灰化像の位置と大きさ,ガス像の分布を推定するのに有用である.立位は液面像(niveau)と横隔膜下のfree air(遊離ガス像)を描出するのに適している.しかし,立位では腸管は一塊となって骨盤内に下垂し,臓器の輪郭を追うことは困難である.腸閉塞の場合,立位では液体が下垂した腸係蹄に流入するため,閉塞部位を同定するのには腹臥位の写真のほうが診断的価値がある.
 2)消化管穿孔の疑い 横隔膜下のfree airを証明するには,腹部正面像のほうがより適している.患者が重症で立位をとれないときは左側臥位で撮る.この体位ではガス像が均質な肝右葉に接して映るので,診断しやすい.小穿孔では5分間ほど,立位あるいは左側臥位を維持した後に撮影すればfalse negativeを減らせる.

上部消化管造影法

著者: 今井裕 ,   杉野吉則 ,   天羽洋 ,   藤沢裕久 ,   熊倉賢二

ページ範囲:P.144 - P.146

 上部消化管X線検査は,集団検診をはじめとして非常に普及しているが,検査の方法は千差万別である.しかし,X線診断装置,検査法,造影剤には科学的な理論があり,これを良く理解して検査すべきである.本稿では,筆者らの施設における上部消化管X線検査法の実際について述べる.

注腸造影法

著者: 藤澤裕久 ,   天羽洋 ,   今井裕 ,   杉野吉則

ページ範囲:P.147 - P.150

 注腸造影法について,筆者らは以下の点に重点をおいて施行している.全大腸を盲点なく二重造影像として撮影すること,検査中に透視を活用して,造影剤の流れを前壁側と後壁側に分けて観察して,微細な病変を探したり,存在診断だけでなく質的診断までできるような写真を撮ること.本稿では,このための検査法について述べる.

頸部エコー

著者: 原澤有美 ,   小原孝男

ページ範囲:P.152 - P.154

●装置と方法
 頸部の超音波検査に用いる装置には水浸式機械走査型,メカニカルセクタ走査型および電子走査型があるが,電子走査型には頸部の各方向から十分な検査が行える利点があり,現在では最も普及している.探触子は高周波数(7.5〜10MHz)のものを用いる.
 患者の体位を仰臥位にし,肩の下に適当な高さの枕を入れて頸部を十分に伸展する.探触子の焦点距離に応じて1〜2cm厚の音響カップラー(水嚢,ポリマーゲルコンダクターなど)を皮膚面に密着させ,その上から検査を行う(図1).

心エコー

著者: 吉田清

ページ範囲:P.155 - P.160

 現在の超音波診断装置には,パルス反射法により主として生体軟部組織の形態的診断を行う超音波断層法と,赤血球からのドプラー効果を利用して血流速度を測定することにより生体の機能を評価,測定する超音波ドプラー法とがある.いずれも体表面から非侵襲的にリアルタイム表示により検査が可能で,循環器領域の検査の中で最も重要な位置を占めるようになっている.

腹部エコー

著者: 安原一彰 ,   木村邦夫 ,   中村広志 ,   岩垂信 ,   大藤正雄

ページ範囲:P.161 - P.165

 腹部疾患の診療にとって,応用範囲の広いエコー検査は重要かつ必要不可欠な基本手技である.本法は非侵襲的な検査であり,リアルタイムに診断ができ,さらに治療方針の決定に発展できるという有用性を持つ.
 検者は種々の角度から多数の画像情報を得ることができるが,同時に解剖学に基づいて情報を関連づけながら検査を進める必要がある.また診断に必要な所見の描出もすべて検者の手技によるため,診断に必要な画像を適切に描出する能力も要求される.

婦人科エコー

著者: 高橋稔 ,   本多洋

ページ範囲:P.166 - P.173

 近年の超音波断層装置の進歩により,解像力の飛躍的な向上がもたらされ,超音波診断技術も高められた.産婦人科領域では,従来の経腹法に加え,新たに経腟法が導入されて,診断精度の一層の向上がはかられるとともに,ドップラー装置も導入され,種々の領域での臨床応用が試みられている.
 本稿では,産婦人科エコーの基本手技について,経腹法を中心に述べることにする.

頭部CT

著者: 鎌田憲子

ページ範囲:P.174 - P.179

 X線CT装置の普及に伴い,頭部CT検査はほとんどスクリーニング的に日常診療の場で行われており,脳血管障害や脳腫瘍の診断に欠くことのできないものとなっている.
 しかし,CT像はX線吸収値の差をコンピュータで計算させて撮像したものであるので,変性疾患のようにあまり吸収値に差のでないような病態の診断に対しては有用ではないことも多い.また,横断画像以外の断面を得ることは難しいという制約や,beam hardeningのようなアーチファクトを生じやすいという欠点などもある.このような欠点があることから,もはやX線CTの時代は終わったような意見を述べる研究者もあるが,検査に要する時間や装置の普及度などを考えると,まだまだX線CTの果たすべき役割は大きいと思われる.筆者の個人的な意見ではあるが,X線CTとMRIとはお互いに相補の関係で進んでゆくものと思われる.

胸部CT

著者: 水谷良行 ,   蜂屋順一

ページ範囲:P.180 - P.182

 近年,X線CT装置の性能向上とその普及により,CTは呼吸器疾患の診断に不可欠な検査となってきた.最近では,1回の息止めで必要とする領域を連続してスキャンする高速連続スキャンや電子ビームを用いた超高速CTなどが開発され,実用化されているが,本稿では最も普及している一般的なCT装置による胸部CTの実施方法について解説する,

腹部CT

著者: 鈴木正行 ,   高島力

ページ範囲:P.183 - P.188

 CT検査は単純CTと造影CTとに分けられる.一般に腹部実質臓器の場所占拠性病変(SOL)の検査には造影CTが必要となることが多い.管腔臓器も最近の秒単位のスキャン時間の装置を使用すれば良好な描出が可能である.泌尿器科,婦人科疾患の評価にも有用であるが,婦人科疾患の場合は被曝の問題があり,若年者の頻回の使用は好ましくなく,超音波検査やMRIの意義が大である.
 本稿では検査法について造影CTの方法とともに述べ,ついで読影法について記述する.

診療手技 注射法

成人の注射法

著者: 高見茂人

ページ範囲:P.192 - P.195

 注射は,経口与薬に比べて,薬物が急速に,かつ消化液などの影響を受けずに,安定して吸収されるという利点がある.したがって,経口摂取が不可能な場合や,経口投与では薬効が期待できない場合(消化管での吸収障害,肝での代謝など)のほかに,薬剤の有効血中濃度を速やかに得て,また確実に維持したいときには,注射が行われる.
 しかし,注射は医療事故のなかでトップを占め続け(事故全体の過半数),末梢神経麻痺,ショック,感染など重大な障害を引き起こす危険性がある.また,筋肉内注射の濫用による,小児における大腿四頭筋拘縮症の多発というにがい教訓は,安易な注射の適応に厳しい反省を求めることになった.

小児の注射法

著者: 武内可尚

ページ範囲:P.196 - P.199

 注射という苦痛を伴う処置に対し,乳幼児では特別の取り組み方が必要である.初め協力的にみえても,実施途中で暴れだしたり,手で払いのけたりするものである.安全に,確実に目的を達成するための要諦は次のようになる.
 1)小児の保護者に対し,不信感を与えないよう言動に注意しなければならない.

血管確保

著者: 真栄城優夫

ページ範囲:P.200 - P.203

 血管確保は,救急に際し,蘇生法のABCに次いで重要である.これは日常診療においても繁用され,すべての医師が習熟していなければならない手技の1つである.

中心静脈カテーテル挿入法とその管理

著者: 笹生正人 ,   中江純夫

ページ範囲:P.204 - P.206

 穿刺による中心静脈カテーテル挿入法は,日常臨床の場で広く利用されている.本稿では,その適応,禁忌,注意点,合併症,および管理などを中心に記述する.

皮内反応

著者: 岩本逸夫 ,   高林克日己

ページ範囲:P.208 - P.209

●適応
 ①ツベルクリン反応.
 ②抗生物質,アレルゲンの即時型反応.

穿刺および生検法

胸腔穿刺法と胸膜生検

著者: 村杉雅秀 ,   新田澄郎

ページ範囲:P.210 - P.214

●胸腔穿刺法と胸腔ドレナージ法
 胸腔穿刺,胸腔ドレナージは胸腔内に貯留した気体(空気,ガス),液体(胸水,血液,膿など)の診断あるいは治療の目的で行われる.疾患としては気管支,肺胞瘻などの気胸,炎症性,悪性胸膜炎,血胸,急性および慢性膿胸,乳糜胸などがあげられる.呼吸器科のみならず,緊張性気胸,血胸など救急外来で遭遇することも多く,さらに中心静脈栄養のライン確保時(特に鎖骨下静脈穿刺時)の合併症などに対しても必要な重要な手技の1つである.

心膜穿刺法

著者: 堀越茂樹

ページ範囲:P.215 - P.218

●心膜穿刺法
 心嚢内には正常でも少量の心嚢液が存在するが,内圧はほとんどゼロである.なんらかの原因で心嚢内に液体が貯留した場合,貯留液量が80〜120mlまでは内圧の上昇は少ない.しかし,それ以上になると,急速に貯留した場合には50 ml加わっただけで内圧は著しく上昇し,心腔の拡張障害をきたし,ショックに陥ることがある.一方,徐々に貯留した場合には,数100ml貯留してもあまり影響を及ぼさない場合さえある.このことは,貯留液量よりも貯留速度,すなわち急速に上昇する心嚢内圧が血行動態に大いに関係していることを示す.
 実際には,心嚢内圧が上昇し,CVPが15〜20cmH2O以上になると心腔の拡張障害をきたし,末梢血管収縮,頻拍などによる代償機構がくずれ,非代償性となり,急激に血行動態が悪化する.このような状態,すなわち心タンポナーデのとき,可及的速やかに心膜穿刺を行い,心嚢内液を排除し減圧を図る必要がある.特に,急性心タンポナーデではわずか20〜30mlの排液で血行動態は劇的な改善をみせるものである.

腹腔穿刺法

著者: 小林国男

ページ範囲:P.219 - P.221

 腹腔穿刺法は1906年にSalomonらによって臨床応用され,初期は腹膜炎の鑑別診断に用いられた.1940年代からは4分画穿刺法(four quad-rant paracentesis)が行われるようになり,腹部外傷による腹腔内出血の診断に用いられるようになった.1960年代に入って,腹腔内出血の診断には正診率がより高い腹腔洗浄が普及し,腹腔穿刺単独よりも腹腔洗浄と合わせて行われるようになってきた.しかし,最近では腹部超音波検査法の普及により,腹腔穿刺の臨床的利用価値はかなり低下してきていることは否めない.

肝生検法

著者: 柴田実

ページ範囲:P.222 - P.224

 1883年にEhrlichが行った肝生検は,各種血液検査や画像診断が進歩した今日でも,診断確定や病態把握に重要である1).しかし,肝生検は侵襲的検査であるため,適応を検討し専門施設で熟練した医師またはその指導のもとに行う必要がある.
 本稿ではびまん性肝疾患の肝生検法を解説し,あわせて肝腫瘍などの限局性肝疾患の超音波下生検法に言及する.

腎生検法

著者: 戸村成男 ,   丸茂文昭

ページ範囲:P.225 - P.227

●適応
 以下に述べる1)〜5)のような腎疾患の診断,予後判定,進行の監視,適切な治療法の選択に腎生検は有用である.慢性腎不全では出血などの合併症の危険が高いこと,また硬化性病変を示す例が多く,原疾患の鑑別診断が困難であることから,一般に腎生検の適応とはならない.

骨髄穿刺・生検法

著者: 岡田定

ページ範囲:P.228 - P.230

 骨髄穿刺・生検は,血液疾患の診断や治療効果の判定上必須の検査であり,全身性疾患の診断にも必要なことがある.

腰椎穿刺法

著者: 大生定義

ページ範囲:P.231 - P.233

●目的
 表1に掲げた.今回は表1の1)と2)について主に述べる.

Douglas窩穿刺法

著者: 徳川英雄

ページ範囲:P.234 - P.236

 なんらかの原因で,腹腔(腹膜腔)に血液や浸出液が存在すれば,その変化は下方に位置する骨盤腔内にも達している可能性が大きい.なかでも骨盤腔の最深部,すなわち女性における「直腸子宮窩」,男性における「直腸膀胱窩」はDouglas窩といわれ,立位においても臥位においても最低位にあり,腹腔内浸出液が最も貯留しやすい部位である.Douglas窩穿刺法はこの間腔を穿刺し,貯留内容を採取することによって,腹腔内の炎症性病変や子宮外妊娠,卵巣腫瘍,鈍的外傷による臓器損傷などを診断する補助手段とされたり,気腹法などの検査に応用されているものである.
 近年,わが国ではCTスキャンやエコー検査が広く普及し,肉体的苦痛や精神的不快感を伴う旧来の検査はこれらにとって代わられる傾向にあり,また,抗生物質・抗菌剤の発達に伴って膿瘍の発生頻度が著しく減少していることもあり,Douglas窩穿刺法を施行する機会は極めて少なくなりつつある.

膀胱穿刺法

著者: 飯高喜久雄 ,   酒井糾

ページ範囲:P.238 - P.239

 膀胱穿刺の適応には,カテーテル導尿のできない尿閉,尿道より排出できない膀胱内の凝血あるいは尿路感染症などがあげられる.
 カテーテル導尿のできない尿閉の原因として,尿道鏡や不用意なカテーテル導尿による尿道損傷後や,淋菌などの尿道炎後に起こる尿道狭窄あるいは前立腺肥大症などがある.また,検査施行時に尿道炎などがあるため,カテーテルにより逆行性に菌が導入される心配がある場合や,完全包茎のため導尿ができない場合などにもカテーテル導尿の代わりに膀胱穿刺が行われる.腎尿路系よりの大量出血による膀胱内の凝血に対しても,稀にではあるが経尿道的に排出できない場合には膀胱穿刺後に太いカテーテルを留置することがある.

関節腔穿刺法

著者: 佐野茂夫

ページ範囲:P.240 - P.245

●適応
1)診断のための関節穿刺
(1)関節貯留液採取
(a)変形性関節症と慢性関節リウマチ.
(b)外傷後の関節血腫:穿刺した血液に脂肪滴が含まれれば,骨からの出血と考え,関節内骨折を疑う.

皮膚生検法

著者: 上出良一

ページ範囲:P.246 - P.248

●目的
 皮膚生検は皮膚病変の病理組織学的診断が主目的であるが,それ以外に,病変の拡がりや治癒の確認,また小型の腫瘍では治療も兼ねて行うこともある.

種々のチューブ挿入法

経鼻胃管

著者: 革嶋恒徳

ページ範囲:P.249 - P.251

●用具
 ①サンプチューブ
 ②キシロカインゼリー

Sengstaken-Blakemore tube

著者: 大坪毅人 ,   高崎健

ページ範囲:P.252 - P.254

 Sengstaken-Blakemore tube(S-B tube,図1)をはじめとするバルーンタンポナーデ法は,食道静脈瘤出血に対する一時的止血法であり,その原理は機械的圧迫による極めて単純なもので,誰にでも,どこでも簡便に実施できる成功率の高い止血法である.
 上部消化管出血を認めた場合,まず緊急内視鏡を施行し,出血部位を確認する.静脈瘤からの出血であった場合には直ちに内視鏡的硬化療法を試みる.しかし,止血効果が不十分である場合や,全身状態から内視鏡の施行が不可能なときにはS-B tubeによる一時的止血を行い,後日,硬化療法などによる恒久的止血を行う.

イレウスチューブの入れ方

著者: 山本康久

ページ範囲:P.255 - P.258

 イレウスの診断は比較的容易であるが,手術時期を逸すると,きわめて重篤になるため注意を要する.直ちに開腹手術の適応となる急性例を除けば,通常イレウスチューブ挿入下での経過観察が重要といえる.

チェストチューブの入れ方

著者: 名和健 ,   江口研二

ページ範囲:P.259 - P.262

 胸腔ドレナージのコツは,ドレーン挿入までの前処置を確実に行うことである.また,担癌患者に対するドレーン留置は,感染などのリスクを考慮すると,可能なかぎり短期間にとどめるべきである.

尿路カテーテル

著者: 伊藤文夫 ,   東間紘

ページ範囲:P.263 - P.267

●尿路力テーテル法
 尿路カテーテル法は,図1に示すように,挿入部位とアプローチの方法によって,大きく4つに分類される.
 これらの手技のうち,一般診療上重要である導尿法と,経皮的腎瘻術についてここでは述べ,膀胱瘻造設については,「膀胱穿刺法」の項(238頁)を参照されたい.

輸血・輸液法

輸血

著者: 浅井隆善

ページ範囲:P.268 - P.273

 輸血が実際に行われるようになったのは1901年にLandsteinerによりABO式の血液型が発見され,1930年代後半にRh式血液型が発見されてから後のことである.わが国では1951年の血液銀行の設置開始により血液事業が本格化し,1964年の閣議決定による売血から献血への移行,そして1970年代になり成分輸血が行われるようになり,急速に輸血療法が進歩してきた.この間,医学の進歩もめざましく,輸血による補助療法は不可欠のものになってきている.

血液型判定と交差適合試験

著者: 平野武道 ,   半田誠

ページ範囲:P.274 - P.281

 1900年,LandsteinerらによってABO式血液型が発見されて以来,数多くの血液型が発見されてきた.血液型の表現型は国,人種によって出現率が異なる.赤血球の血液型抗原には免疫原として非常に強いものがあり,血液型不適合による副作用として,ABO式血液型不適合輸血でみられる即時性溶血(血管内溶血,IgM由来)と,その他頻回輸血,あるいは妊娠などの二次免疫によって生じる遅延性溶血(血管外溶血,IgG由来)がある.このような重篤な副作用を防止するためには,血液型の正確な判定と抗体スクリーニングをセットで検査し,交差適合試験を実施することにより,輸血の安全性の向上を図る必要がある.

輸液

著者: 齊藤博

ページ範囲:P.282 - P.284

 生命の起源は海にあり,進化の過程で動物およびヒトの体液の浸透圧は海水の約1/3でほぼ一定となっている.ヒトの体を構成する細胞の外部環境,すなわち細胞外液の組成は,海水のイオン組成(Na 455mEq/l,K 9.7mEq/l,Cl 535mEq/l)のまさに1/3のイオン濃度に近いのである.輸液の基本は,この細胞外液量を正常に維持できるように補佐するものであり,水とNaの適切な補給がその基本にある.

高カロリー輸液

著者: 大森義信 ,   小越章平 ,   田宮達男

ページ範囲:P.285 - P.287

 高カロリー輸液(total parenteral nutrition:TPN)は上行あるいは下行大静脈にカテーテルを留置し,高濃度糖,アミノ酸,電解質,ビタミン,微量元素などの生体に必要な栄養成分を投与する方法で,栄養管理には不可欠である.そして,医療施設の大小に関係なく広く普及しており,外科系の研修医のみならず,内科系の研修医にとっても重要な治療法の一つである.しかし,非経腸的,すなわち非生理的栄養法であること,カテーテル敗血症などのいろいろな合併症もあり,その適応,施行には十分な注意が必要である.

経腸栄養法

著者: 柏崎修

ページ範囲:P.288 - P.290

●経腸栄養法(図1)
 経腸栄養法は図1のごとく大きく2つに分けられるが,通常経腸栄養というと経管栄養を意味することが多い.経腸栄養に用いられる栄養剤は,天然の食品を主体とした天然流動食と,カゼイン,ブドウ糖,蔗糖などある程度消化された状態の栄養素を使った人工流動食とがある.1 ml当たり1 kcal以上のものを特に濃厚流動食と呼んでいる.人工濃厚流動食は残渣が少なく半消化態栄養剤であり,蛋白水解物の代わりにアミノ酸を用いたのが成分栄養(エレメンタル・ダイエット)と呼ばれ,消化態栄養剤である.

外科的治療手技

局所浸潤麻酔法

著者: 鈴木篤

ページ範囲:P.291 - P.294

 局所浸潤麻酔法は,皮内および皮下組織に,効果発現の早い局所麻酔剤(局麻剤)を浸潤させて麻酔効果を得る容易な手技であるが,基本的事項をわきまえないと効果が十分でなく,かつ必要以上の薬剤投与をもたらしかねない.
 本稿では,内科系医師や研修医がベッドサイドおよび外来で行う処置を中心に具体的手技について述べる.

止血法

著者: 鈴木篤

ページ範囲:P.295 - P.298

 待機的な小外科処置は外科系医師に依頼して行う場合が多くなっているとはいえ,基礎的止血法は臨床医の基本的手技であり,当直時や緊急処置時における出血に対処できるためには,日常的に小外科手技に自らが携わる心がけが大切である.本稿では,そのようなベッドサイドにおける小外科的処置の中で,研修医・内科系病棟勤務医などが遭遇する出血に対する実践的な止血法について述べる.

切関・排膿法

著者: 柵瀨信太郎

ページ範囲:P.299 - P.302

●適応と禁忌
 軟部組織に細菌感染が起こると,血管拡張,血管壁透過性亢進,白血球や大食細胞の出現などのびまん性炎症反応が生じ,発赤,腫脹,疼痛,熱感をきたす.起炎菌が黄色ブドウ球菌,嫌気性菌の場合には組織壊死を起こしやすいため,中心に細菌を貪食した白血球,大食細胞,壊死組織から成る膿が貯留し,周囲は肉芽組織により被包化され膿瘍となる(図1).膿瘍形成を起こす代表的疾患を表1に示す.
 切開排膿は,膿瘍形成に対して適応となる.臨床的には,炎症性腫脹の中心に軟化,波動,限局性圧痛の出現した時期に行う.

創傷の処置

著者: 柵瀨信太郎

ページ範囲:P.303 - P.306

●創周囲皮膚の洗浄
 皮膚に付着した泥・油・血液などを流水(水道水),石けんを用いて洗浄する.
 剃毛は感染予防のためには必要なく,縫合に際し邪魔になる場合にのみ行う.創内に落ちた毛髪は,異物として感染の原因となるので確実に除去する.眉毛は一度剃毛すると生えてこないことがあり,また生えたままのほうが縫合の目安となるので,決して剃毛してはならない.

創傷後の感染防止

著者: 門田俊夫

ページ範囲:P.307 - P.309

 創傷治療の歴史は,外科学の歴史そのものといってよい,皮肉にも19世紀から今日に至る数々の戦争が,この分野の発展に大きく寄与した.創傷には,熱傷のように組織の欠損を伴う場合と,切創のように組織欠損を伴わない場合に大別されるが,いずれも治療にあたっては,感染の予防に主眼を置いて対処する必要がある.
 創傷の感染は,非特異性の皮下軟部組織感染症であるwound infectionと,破傷風やガス壊疽に代表されるような特異的感染症に分けられる.本稿ではそれらの感染予防を中心に述べる.

熱傷の処置

著者: 安田和弘

ページ範囲:P.310 - P.312

 熱傷(火傷という表現は使わない)は,本来予防すべきものであり,いったん受傷すると完全に元どおりにすることは難しい.小児など若年者ほど瘢痕などの醜形を残しやすく,母親を中心に,日常生活において熱傷の危険を回避するよう指導することが重要である.
 いったん受傷したときの処置方法は,熱傷面積や熱傷の深さにより大きく異なる.さらに年齢,受傷部位,全身状態を考慮に入れて,重症度を判定しなければならない.

脱気法

著者: 村山章裕 ,   雨宮厚

ページ範囲:P.314 - P.315

 胸腔内に貯留した気体を除去するためには,胸腔穿刺(thoracentesis)あるいはチェストチューブ挿入(tube thoracostomy,chest tube insertion)が必要となるが,排液を目的とした場合とは少々異なる考え方,手技を必要とする.以下,その差に注目しつつ,主にチェストチューブによる脱気法について述べる.

救急手技 救急蘇生法

救急蘇生法の手順

著者: 田中行夫

ページ範囲:P.318 - P.321

●救急蘇生法の手順
 救急蘇生法はBLS(basic life support)とALS(advanced life support)より成り,心肺蘇生術(cardiopulmonary resuscitation:CPR)の目的は,できるだけ早く心臓と肺の機能を回復させ,脳をはじめ全身の重要臓器に血液を送り込むことである.CPRを効率的に行うためには,救命処置の知識と技術を統合し,組織化することが必要である.

気道の確保

著者: 益子邦洋

ページ範囲:P.322 - P.326

 気道の確保は,救命処置のABCのうちのA(Airway)に相当し,救急蘇生法の最も基本的な項目である.それゆえ,医学の道を志すものすべては,正しい知識と技術を修得し,いついかなる場合にあっても適切な気道確保が行えるようにしておかなければならない.

人工呼吸法

著者: 当麻美樹

ページ範囲:P.327 - P.330

 人工呼吸法は,呼吸が停止している場合や,自発呼吸による換気量が著しく少なく,チアノーゼや冷汗が認められる場合に施行されるが,その方法は,補助器具を用いることなく行う呼気吹き込み法と,種々の器具を用いて行う方法に大別される.しかしながら,その方法のいかんを問わず,人工呼吸を施行する上で最も重要なことは,確実に気道の確保が行われているか否かであり,気道確保が不確実な場合には,その効果がないばかりか,胃内への大量の送気による胃内圧の上昇により横隔膜が上昇し,それに伴う肺内含気量の低下や,嘔吐による気道閉塞などをきたし,患者の状態を悪化させることとなるので十分な注意が必要である.

酸素投与法

著者: 寺崎秀則

ページ範囲:P.331 - P.334

 酸素投与は,医療の広い分野で行われている.厳密な使用からセレモニー的使用まで幅が広い.ヒトは酸素なしでは生きられないから,酸索投与が起死回生のはたらきをする一方で,誤った使用により不幸な結果になることもある.

人工呼吸器の使い方

著者: 市川敬太 ,   天羽敬祐

ページ範囲:P.335 - P.337

 ひとくちに人工呼吸器といっても,単純な作動形式のものから,BIPAPモードやPressure Sup-port Ventilation(PSV)やVolume Supprt Venti-lationのような換気法が可能な新しい人工呼吸器まで様々である.使用に際してはこれらの特徴をよく把握しておかなければならない.

心マッサージ

著者: 青木重憲

ページ範囲:P.338 - P.341

 心マッサージは心肺蘇生法ABCのC:Circulationに属し,これなくして突然死を救命することはできない.Eisenbergら1)が1979年に報告しているように,心停止から4分以内に傍に居合わせた人が一次救命処置(Bystander CPR:Cardiopulmonary Resuscitation)を始め,それに引き続き8分以内に二次救命処置が行われれば43%の救命率があるが,Bystander CPRが始まるのに8分以上かかれば救命率は数%にすぎない(表1)という事実から考えても,心停止を起こしているときには間髪をいれずに心肺蘇生を始めなければいけない.しかしながら,わが国ではBystander CPRはほとんど行われていないのが現状である.このため,われわれ医療従事者は自らが的確な心マッサージを行えることはいうまでもなく,さらに一般の人々にもきちんと教育,啓蒙できるように理解することが必要である.本稿では医療従事者が一般の人々に教育するときのことも念頭において基本的なことから述べる.

救急薬品の準備と投与

著者: 田中啓治 ,   竹田晋浩

ページ範囲:P.342 - P.344

 CPCR(cardiopulmonary cerebral resuscitation)の際に用いられる主要な薬剤を目的別に表1に示した.太字で示す薬剤は,従来より必須と考えられてきたものである.しかし,なかにはその使用法にかなりの修正が加えられているものもある.1986年JAMAに掲載されたStandards and Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiac Careなどに基づき,これら薬剤の特徴と使用法について述べる.

心腔内薬物注入法

著者: 井野威

ページ範囲:P.345 - P.347

●適応
 心腔内薬物注入の適応は心停止状態における心肺蘇生術時に限られる.心肺蘇生を行う際には救急医薬を投与するために静脈ラインの確保が必須である.しかしながら,心肺蘇生の初期には気管内挿管や静脈ライン確保を行う時間的余裕のないことが多い.心停止の状態で静脈ラインの確保を行う余裕がなく,エピネフリンを緊急に投与する必要があると判断された場合に心腔内薬物投与が必要となることがある.本法は心臓マッサージ,気道確保,静脈ライン確保,重炭酸ナトリウム(メイロン)静注によるアシドーシスの補正などの一連の蘇生術の流れの中で行われるべきものであることは言うまでもない.1988年の日本救急医学会編「救急蘇生法の指針」(改訂草案)1)の中に薬物(エピネフリン)の特殊な投与法として記載されているが,静脈路確保ができない状況下で時間的余裕のない場合にのみ使用すべきであるとされている.また,1986年のAHAのガイドライン2)に記載されている救急蘇生時の薬物投与法からその概要を列記すると以下のごとくである.

心電図モニター

著者: 船内武司 ,   石村孝夫

ページ範囲:P.348 - P.352

 近年,心電図モニターの普及により心電図の持続的監視は一般的なこととなっている.心疾患を有する患者のみならず,急性疾患での全身状態悪化時や手術,処置時などにも必要であり,また直接モニターからの情報が治療に結びつくことも少なくない.本稿ではモニターを使用する際の注意点および緊急処置を必要とする不整脈について述べてみる.

除細動

著者: 坪井英之

ページ範囲:P.353 - P.355

 除細動とは,致死的不整脈である心室細動を除去し,正常調律に戻すことをいう.
 その方法として,①前胸部叩打法,②電気的直流除細動法,③薬剤による方法,などがあるが,一般臨床,特に救急の場面では,その効果の確実性から,電気的直流除細動が広く用いられている.

緊急ペーシング

著者: 小宮山伸之 ,   布施勝生

ページ範囲:P.356 - P.358

●適応
 1)徐脈性不整脈
 ①急性心筋梗塞における房室ブロック(MobitzII型,完全房室ブロックなど):下壁梗塞に伴うものが多いが,前壁中隔梗塞に合併することもある.前者では数日で回復することが多いが,後者では急速に進行し,予後不良となる例が多い.いずれも徐脈により血行動態が維持できない場合に一時的ペーシングの適応となる.
 ②Adams-Stokes発作を伴う高度徐脈(洞不全症候群,高度房室ブロック,完全房室ブロック,徐脈性心房粗・細動など)

循環動態のモニタリング

中心静脈圧測定法

著者: 堀木紀行 ,   林田憲明

ページ範囲:P.359 - P.361

 中心静脈圧(CVP:central venous pressure)とは,上大静脈や下大静脈など胸腔内の大静脈圧のことである.手技が容易であり,ショックなど循環動態が不安定な患者の管理にきわめて有効である.

Swan-Ganzカテーテル法

著者: 片山克彦 ,   大江透

ページ範囲:P.362 - P.367

 Swan-Ganzカテーテル(以下,SGカテーテル)とは,1970年にDr SwanとDr Ganzらによって発表された右心カテーテルで,一般的にはbal-loon tipped flow directed pulmonary arterycatheterと呼ばれる.SGカテーテルは,その先端についた径13mmのバルーンを拡張させ血流にのせることにより,X線透視下でなくても比較的安全に右心房→右心室→肺動脈へとカテーテルを進めることができる.しかし,本法は観血法であり重篤な合併症も存在するため,適応は慎重に決定されるべきである.

動脈圧測定法

著者: 田中孝

ページ範囲:P.368 - P.370

 動脈圧測定は医療の現場において,常に基本的な処置であるが,特に救急患者の場合,速やかに正確な動脈圧を知る必要がある.動脈圧測定法には観血的測定法と非観血的測定法があるが,まず非観血的に測定し,異常な低血圧や血圧変動の激しい場合には,観血的測定法によって動脈圧を的確に把握する必要がある.

内科医に必要な救急処置

緊急内視鏡検査法

著者: 白井孝之 ,   椎名泰文

ページ範囲:P.371 - P.373

●概念と適応,禁忌
 緊急内視鏡検査とは消化管出血後24時間ないし48時間以内に行われる内視鏡検査,ならびに急性腹症や消化管異物の発生後速やかに行われる内視鏡検査をいう.
 消化管出血が最も頻度の高い適応で,中でもTreitz靱帯より口側からの出血である上部消化管出血がその60〜70%を占める.本検査の施行により,出血源の検索と止血処置が連続して可能である.上部消化管では異物およびアニサキス虫体の除去を目的とした検査がこれに次ぐ.下部消化管では,出血の原因検索および止血のほかに,S状結腸軸捻の整復の目的にも緊急内視鏡検査が行われる.緊急内視鏡検査の禁忌は著しく全身状態が悪い場合や消化管穿孔のある場合,また下部消化管では中毒性巨大結腸症も挙げられる.

緊急血液浄化

著者: 川口良人 ,   酒井聡一

ページ範囲:P.374 - P.376

 生体内部環境の恒常性を維持するための排泄・調節機能が不全に陥った場合に,それらの機能を代行するために実施する救命のための人工的操作を緊急血液浄化ととらえ,その適応や装置について概説する.

急性中毒の治療

著者: 山下衛

ページ範囲:P.377 - P.382

 急性中毒患者は初期治療により予後が左右される.そのため,できるだけ速やかに患者を評価し,中毒物質を体内から除去し,拮抗剤の使用,対症療法を行う.

内科医のための耳鼻科救急

著者: 杉田麟也

ページ範囲:P.384 - P.387

 内科医あるいは当直医がみる可能性のある耳鼻咽喉科領域の救急疾患として,①鼻出血,②耳痛,③めまい,④異物などが考えられる.本稿ではこれら疾患に対する処置方法を述べる.

内科医のための眼科救急

著者: 近藤武久

ページ範囲:P.389 - P.394

 救急専門の施設であっても,全科の専門医が毎日24時間体制で待機しているといった理想的な救急体制を組めるところは極めて少ないであろう.そして,救急外来の宿命として,その内容が夜間診療所や休日診療所の様相を呈したり,あるいは内科や外科の当直医がある程度,自分の専門外の疾患のファースト・エイドにも対応せざるを得ないのが救急外来の一般的な姿であろう.また日常の内科診療に際しても,眼科的な救急処置を要する疾患を合併している例や,あるいは比較的迅速に眼科医へ紹介したほうが良いといった例などが紛れ込んでくることも決して稀なことではないであろう.
 本稿ではそのような場合における遭遇頻度の高い眼科疾患を取り上げ,診療に際しての注意事項などを述べることとする.

気管内吸引・気管支洗浄

著者: 矢木晋

ページ範囲:P.395 - P.397

 呼吸不全の治療において,しばしば人工気道を用いた気道確保がなされる.喀痰の吸引は,気道の清浄を保ち肺合併症を予防するのに重要な役割を果たし,呼吸管理のうえで欠かすことのできない手技である.しかし,多くの場合,患者は酸素療法や人工呼吸器による換気がなされている.気管内吸引操作により酸素投与や換気が中断するため,種々の危険を含んでいることも事実であり,正しい知識と技術をもって操作にあたることが大切である.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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