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雑誌目次

雑誌文献

medicina29巻2号

1992年02月発行

雑誌目次

今月の主題 胆道系疾患1992

理解のための10題

ページ範囲:P.318 - P.320

胆道系疾患診断の基本と最近の進歩

胆道系疾患のベッドサイド診断と検査の進め方—An Overview

著者: 伊藤慎芳

ページ範囲:P.204 - P.207

 胆道系疾患は,その中心となる胆石症,胆道腫瘍ともに,年々増加傾向にある.また,診断,治療面でも近年急速な進歩があるため,とくに注目を集めている領域である.
 胆石の治療法は,この数年間できわめて多種多様になり,患者側の選択の幅が広がった感があるが,最善の選択をするにも正しい診断が必要なことは,言うまでもない.

胆道系疾患の画像診断の基本

著者: 水野富一

ページ範囲:P.208 - P.212

ポイント
1)検査法選択の基本とは侵襲度,費用,安全性,効果を考慮して行うことである.
2)胆道系疾患の画像診断には上記項目をすべて満足させる超音波検査が第一選択となる.
3)超音波検査でなんらかの異常所見があった場合,相補的検査として,より客観性のあるCTを行う.
4)ERCP,血管造影などの侵襲性のある検査は適応を十分考慮して行う.

腹部エコーによる胆道系疾患の診断—最近の進歩

著者: 福田守道 ,   平田健一郎 ,   三谷正信 ,   辰口治樹 ,   望月環 ,   伊東佳澄 ,   吉田茂夫

ページ範囲:P.213 - P.219

 超音波診断法は装置性能の向上,とくに分解能,コントラストの改善,操作性の向上などにより,腹部臓器の診断法として広く普及を見,とくに頻度の高い胆石症を含む胆道系疾患については,ほとんどの施設で超音波検査が第一段階の検査法として実施されるようになった.
 胆道系の超音波診断に関しては,胆嚢のように腹壁上から容易に描出できる部分と,総胆管のように部位によっては容易に視覚化しえない部分も存在するのが問題である.したがってこれらの特性を十分に理解し,解剖学的な構築を理解して検査にあたることが肝要であり,とくに所見についてはそのpitfallも含めて評価できるのでなければ,時に大きな誤りを冒すことすらある1,2)

腹部CTによる胆道系疾患の診断—最近の進歩

著者: 松枝清 ,   板井悠二

ページ範囲:P.220 - P.223

 高速連続スキャン,テーブル移動下スキャンなどのダイナミックシステムの進歩や,thin slicescanによる空間分解能の向上により,CTはさらに有用性の高い胆道系の画像診断法として位置付けられるようになっている.胆道系のCT解剖を再確認し,胆道癌の進展度診断および胆嚢小隆起性病変のCT診断について,最近の知見を交えて概説する.

ERCPによる胆道系疾患の診断—最近の進歩

著者: 河原弘規

ページ範囲:P.224 - P.226

ポイント
1)ERCPによる胆道系疾患の診断は,得られたERCP像の読影によるものと,ERCPの手技を用いた診断法がある.
2)ERCP像による胆管読影の基本型は,片側変形,両側変形,閉塞,透亮の4型である.
3)最近の進歩としては,経口的胆管内視鏡(PCS)の早期胆道癌に対する有用性が期待されている.

肝機能検査による胆道系疾患の鑑別診断

著者: 柴田実

ページ範囲:P.228 - P.229

ポイント
1)肝機能検査でGOT,GPT,LDHなどの逸脱酵素の上昇に比べて,ビリルビンや胆道系酵素の上昇が優位な場合,胆道系疾患の存在が疑われる.
2)胆道系疾患と鑑別を要するには肝内胆汁うっ滞型の肝疾患が主であるが,肝疾患以外でも胆道系疾患に類似した検査成績を示すことがある.

RI胆道スキャンの適応と有用性

著者: 鈴木豊

ページ範囲:P.230 - P.234

ポイント
1)胆道スキャンで,肝細胞レベルから十二指腸までの胆汁の流れを観察できる.
2)US,CTで検出された病変と胆道との交通の有無を診断できる.
3)急性胆嚢炎の診断および除外診断に有用である.

腫瘍マーカーとその正しい使い方

著者: 元雄良治 ,   澤武紀雄

ページ範囲:P.236 - P.237

ポイント
1)現在,胆道癌の有用な腫瘍マーカーとして,糖蛋白抗原のCEA,糖鎖抗原では1型糖鎖のCA19-9,2型糖鎖のSLX,母核糖鎖のCA72-4,コア蛋白のCA125,構造未決定のDU-PAN-2やNCC-ST-439などがあげられる.
2)CA19-9などの1型糖鎖抗原は胆道癌における陽性率が約80%と高く,スクリーニングに適しているが,胆管炎や閉塞性黄疸を中心として,偽陽性の出やすいことに注意する必要がある.
3)SLXやNCC-ST-439は胆道癌での陽性率は50〜60%だが,特異性が高い.
4)組み合わせ診断には,1)CA19-9などの1型糖鎖抗原,2)SLXかNCC-ST-439,3)DU-PAN-2,4)CEAの3〜4種の組み合わせが適切であろう.

腹痛の鑑別からみた胆道系疾患の診断

著者: 門田俊夫

ページ範囲:P.238 - P.239

 胆道疾患は,急性腹痛を起こす疾患の中でもっともポピュラーな疾患のひとつである.その腹痛を細かく見ると,1)自律神経を介した心窩部から臍周囲への間欠的な疼痛を特徴とする内臓痛(visceral pain),2)腹膜の神経が炎症などで刺激されて生じ,筋性防御や発熱を伴う腹膜痛(parietal pain),3)これらと関連した神経の刺激で離れた部に生ずる関連痛(referred pain)の3つに大別される.
 胆道疾患の場合,これらが単独あるいは複合した疼痛として生じ,時として非常に複雑な病状を呈する.したがって胆道疾患の正しい診断のためには,taking history and physical examination(患者の訴えや病歴を十分聞き,全身をくまなく診察すること)がなににもまして重要なステップである.

黄疸の鑑別診断からみた胆道系疾患の診断

著者: 板倉勝

ページ範囲:P.240 - P.241

ポイント
1)黄疸の出現の仕方,付随した症状と所見(掻痒,疼痛の性状,尿・便の性状,発熱の有無,肝腫大・胆嚢腫大など)を的確に把握することが大切である.
2)間接ビリルビン優位(直接ビリルビン25%以下)か,直接ビリルビン優位(直接ビリルビン50%以上)かを明らかにする.

胆道系疾患治療法の基本と最近の進歩

胆道系疾患の治療方針—An Overview

著者: 石原扶美武

ページ範囲:P.242 - P.246

ポイント
1)治療方針を決定する際には画像診断にて症例の病態を正確に把握することが大切である.
2)胆石症の治療方針としては,胆管胆石は原則として外科的治療が中心となる.
3)胆嚢胆石の場合は,胆石および胆嚢の状態,臨床症状などから,症例に応じた各種治療法を選択する.
4)胆道感染症の治療は化学療法,ドレナージ療法およびEST,外科的治療に大別されるが,高齢者やハイリスク例などでは的確でしかも早急な判断を下す必要がある.
5)胆嚢小隆起性病変は,画像診断におけるその直径と形状が治療方針決定のポイントとなる.
6)胆道癌は早期手術が原則である.進行癌に対しては各種治療を組み合わせた集学的治療が行われる.

外科的手術とその適応に関する再評価

著者: 雨宮厚 ,   村山章裕

ページ範囲:P.247 - P.250

 数ある治療法のなかでも胆道疾患に対する手術療法はもっとも効果的な治療法のひとつとされており,治療の中心的役割は外科医が果たしてきた.しかし近年,内科薬物療法や体外衝撃波による砕石術,また内視鏡や腹腔鏡によるアプローチなどconventionalな開腹術によらない侵襲のより軽度な治療法が次々と開発された結果,標準療法とされてきた胆道外科手術療法の位置づけが大きく変わろうとしている.
 本稿では,開腹による外科手術療法のうち,とくに胆摘,総胆管切開,バイパス術および悪性疾患に対する根治切除術を取り上げ,それぞれの1992年度における役割・位置づけについて外科医の立場で記してみた.

胆汁酸製剤による胆石溶解療法と肝内胆汁うっ滞の治療

著者: 田中直見 ,   松崎靖司 ,   大菅俊明

ページ範囲:P.251 - P.253

ポイント
1)経口的胆石溶解療法はコレステロール胆石のみが適応となる.
2)胆石溶解療法による完全溶解には長期間の治療が必要であり,完全溶解しても再発がかなりある.
3)体外衝撃波胆石破砕療法(ESWL)との併用療法も用いられつつある.
4)肝内胆汁うっ滞に対する治療としてはウルソデオキシコール酸(UDCA)が第一選択である.

胆道系疾患の内視鏡的治療—経皮的アプローチ

著者: 山川達郎 ,   本田拓

ページ範囲:P.254 - P.256

ポイント
I.経皮経肝的アプローチの利点と問題点
1.利点
 1)直視可能で安全性が高い.
 2)繰り返し検索が容易
 3)部位による制限が少ない.
 4)砕石,摘出鉗子の的確な使用が可能
2.問題点
 1)侵襲性
 2)PTBDの手技の煩雑性とやや高い合併症発生率
 3)PTBD瘻孔の拡張に伴うやや高い合併症発生率
II.適 応
 経皮経肝的胆管鏡,経皮経肝的胆嚢鏡は,経皮経肝的胆管ドレナージから発展した胆道疾患の診断,治療法であるが,その適応は経十二指腸的アプローチの利点を勘案して決定されるべきである.

胆道系疾患の内視鏡的治療—経乳頭的アプローチ

著者: 早雲孝信 ,   中島正継

ページ範囲:P.257 - P.259

ポイント
1)基本的手技は内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)である.
2)胆管結石の除去や閉塞性黄疸の減黄が内視鏡的治療の中心である.
3)胆管結石の大半(95%以上)は内視鏡的治療が可能である.
4)内視鏡的減黄法は経皮経肝的減黄法に対応する優れた方法である.

体外衝撃波による胆石症の治療の適応と限界

著者: 平田信人 ,   藤田力也 ,   菅田文夫

ページ範囲:P.260 - P.262

ポイント
1)胆石の体外衝撃波治療のよい適応は,直径20mm以下のコレステロール系非石灰化単一結石である.
2)胆嚢が機能を有していること,すなわち胆嚢管が開いていることが大切である.
3)重要な合併症は急性膵炎で,2〜3%の頻度で発生する.

腹腔鏡下胆嚢摘出術—米国における現状

著者: 北浜昭夫

ページ範囲:P.264 - P.265

ポイント
 腹腔鏡下胆嚢摘出術の利点をまとめると,
1)傷が小さい(美容上の利点)
2)入院の必要度が少ない.
3)術後疼痛が少ない.
4)医療費の患者自己負担の軽減
5)早期職場復帰が可能(職場,個人両方の利点)
6)合併症は開腹手術と同程度かより良い.

腹腔鏡下胆嚢摘出術—わが国の現状と将来

著者: 大上正裕 ,   若林剛

ページ範囲:P.266 - P.268

ポイント
1)腹腔鏡下胆嚢摘出術は,開腹胆嚢摘出術と比較して,術後の疼痛が少なく,早期退院,早期社会復帰が可能であり,美容上の利点もある.
2)胆石に対して,同様に侵襲の少ない体外衝撃波破砕療法(ESWL)と比較しても,適応が広く,なによりも根治術である.
3)本法の施行には,まず適応の設定が重要である.一般的には,胆石症では,急性胆嚢炎を認めず,上腹部開腹術の既往がなく,総胆管結石を認めず,DICやERCPで胆嚢が描出されるものが適応となるが,手技の習熟によりさらに適応は拡大される.また手術適応のある胆嚢ポリープは本法の良い適応である.
4)わが国でも1990年より急速に普及してきており,今後数年のうちに胆石症・胆嚢ポリープの手術の第一選択となってくるものと考えられる.

胆道系疾患における抗生剤の正しい使い方

著者: 小林芳夫

ページ範囲:P.270 - P.271

ポイント
1)内科領域で扱う胆嚢炎の起因菌はグラム陰性桿菌がほとんどを占める.
2)Escherichia coliおよびKlebsiellaPneumoniaeがもっとも多い.
3)第一選択薬剤は胆道系に移行の良いセフェム系である.
4)敗血症へ進展している場合,アミノ配糖体系を併用投与する.
5)胆嚢ドレナージが施行されている症例でしばしば種々の細菌が検出されるが,無症状例では抗生剤の投与は不要である.
6)チフス菌やパラチフス菌の胆嚢内保菌者の除菌の第一選択薬剤はAmpicillinおよびそのprodrugである.
7)胆石症のある場合,薬剤投与で胆嚢内保菌者の除菌は不可能のことが多い.
8)肝膿瘍では一般細菌のみならずEnta-moeba hystolyticaによる場合があることに注意する.

病態に応じた胆道系疾患の診断と治療

胆道系悪性腫瘍の早期診断

著者: 窪川良広 ,   有山襄 ,   須山正文

ページ範囲:P.272 - P.274

ポイント
1)早期胆道癌の拾い上げにはUS,EUSが有用である.
2)深達度診断はCT,ERCP,PTCD,血管造影を施行し,総合的に判断する.

胆嚢小隆起性病変(径20mm以下)の鑑別と手術適応

著者: 土屋幸浩

ページ範囲:P.276 - P.277

 予後不良な胆嚢癌の早期診断を背景として,超音波で検出される小さな隆起性病変(成人の3〜5%に検出される)の臨床での取り扱い方が問題である.また,最近の高分解能超音波装置を用いることで,早期の胆嚢癌のうち,丈の低い腫瘍の検出も可能であり,粘膜に着目した診断も必要となる.

無症候性胆石症の自然史とそのマネージメント

著者: 梶山梧朗

ページ範囲:P.278 - P.279

 無症候性胆石(無症状胆石)を扱ううえにおいてつねに問題として取り上げられてきたものは,そのうち何パーセントが有症状化するか,目前の無症状胆石を持つ患者が将来有症状化するか否か,胆石の存在が胆嚢癌の危険因子となるかどうかといった点である.そしてそれらの点から,目前の患者に対して手術をはじめとする治療を現時点で行うべきか否かの判断を下すことが必要である.
 これらの判断は臨床医にとってもっとも切実に必要に迫られた課題であり,今までにも繰り返し論じられてきたが,決定的な結論が得られるに至っていない.
 加えて近年,純内科的胆石治療法といえる経口胆石溶解療法や体外衝撃波胆石破砕療法が登場し,普及しつつあるが,たとえこれらの適応基準に当てはまった場合でも,すべての無症候性胆石に実施することには大きな疑問が持たれる.

急性胆嚢炎・胆管炎の内科的治療の限界とドレナージ手技,開腹手術のタイミング

著者: 島田昇二郎 ,   中山和道 ,   木下壽文

ページ範囲:P.280 - P.281

ポイント
1)胆嚢穿孔またはその疑いがあるものは緊急手術の適応
2)急性胆嚢炎の大部分は保存的治療により緩解するが,24〜48時間の保存的療法に反応せず,症状の急性増悪するものは手術の適応
3)急性閉塞性化膿性胆管炎は予後不良,早めのドレナージが必要である.

胆石膵炎の診断と治療

著者: 杉山恵一 ,   中野哲

ページ範囲:P.282 - P.284

ポイント
1)胆石膵炎には原因疾患である胆道病変(胆石・総胆管結石)と結果としての急性膵炎という2つの病態が存在する.
2)胆石膵炎の重症度,治療方針は胆道病変・膵病変,それぞれの病態の程度により大きく異なる.
3)胆石膵炎の予後を良好なものにするためには,胆道病変と膵病変の両病態を正確に把握し,それぞれの病態に適した加療をできるだけ早く開始することが重要である.

肝内結石症の診断と治療

著者: 佐々木睦男 ,   遠藤正章 ,   吉原秀一 ,   山崎総一郎 ,   久保田穣 ,   須郷貴和 ,   小野慶一

ページ範囲:P.285 - P.287

 近年,肝内結石症(以下,本症と略)は次第に減少する傾向にあり,またその病型についても肝内型の占める比率が上昇していることが報告されている.本症の治療成績については,成因に関する新知見や各種の截石法の発達により次第に改善しているものの,未だ再発に悩む症例に遭遇することも少なくない.そこで,これまで当教室で経験した症例について検討を加え,本症に対する診断と治療について述べてみたい.

胆道系悪性腫瘍の非開腹的治療の適応と実際

著者: 折居和雄

ページ範囲:P.288 - P.289

ポイント
1)診断を正確に行い,外科手術の可能性を検討する.
2)手術不能と判断した場合,病変部位,補助療法などを考慮し,安全に行いえる内瘻法を決定する.
3)内瘻後に発生する胆管炎などの合併症に対し,早期診断,早期治療を常に心がける.

膵・胆管合流異常の診断と治療適応

著者: 露口利夫 ,   税所宏光 ,   篠崎正美 ,   山口武人 ,   崔馨 ,   大藤正雄 ,   木村邦夫

ページ範囲:P.290 - P.292

ポイント
1)合流異常の3主徴は腹痛,黄疸,腹部腫瘤である.
2)合流異常は先天性胆管拡張症を伴うことが多い.
3)合流異常は高率に胆道癌を合併する.

胆道機能異常の概念,診断と治療

著者: 上野文昭

ページ範囲:P.294 - P.295

ポイント
1)いわゆる“biliary colic”を呈する患者で,画像診断上,その原因を説明できる病変がない場合には機能異常が疑われる.
2)本疾患は胆嚢摘除後症候群の重要な病態と考えられる.
3)症状に伴い原因不明の肝機能異常と総胆管の拡張を認める場合にはOddi括約筋の異常である可能性が高い.
4)治療法は未だ確立していないが,ESTが有効であるとの報告が多い.

糖尿病合併胆石症のマネージメント

著者: 永田博司

ページ範囲:P.296 - P.297

ポイント
1)糖尿病患者のなかで,とくに肥満例に胆石の保有率が高い.
2)糖尿病患者が急性胆嚢炎を合併し,内科的治療で症状が持続した場合は,より早期に手術を決断すべきである.
3)糖尿病患者が高齢あるいは心血管,腎合併症があると急性胆嚢炎の手術のリスクは高くなる.
4)糖尿病患者のsilent stoneは手術すべきではない.

肝硬変合併胆石症のマネージメント

著者: 荒川正一

ページ範囲:P.298 - P.299

ポイント
1)肝硬変患者は胆石の保有率が高い.2)胆石は黒色石が多い.
3)急性期胆嚢炎の症状は内科的な治療で治まることが多い.
4)外科的な治療はできるだけ避ける.
5)抗生物質は第2世代セファロスポリンが有効である.
6)症状のない時には食欲を落とさないように脂肪食も許可する.

妊娠時胆石症のマネージメント

著者: 六倉俊哉

ページ範囲:P.300 - P.301

 胆石症が中年の肥満の女性に多くみられることはよく知られた事実であるが,とくに多産婦に多いと言われており,妊娠あるいは女性ホルモンが胆石の形成に関与していると考えられている.実際に,妊婦に腹部エコーをあててみると,胆石を認めることは決して稀なことではない.ところが,妊娠中に胆石発作や胆嚢炎のため手術を要するというようなことは,きわめて稀なことである.
 本稿では,妊娠と胆石形成との関連および妊娠時胆石症のマネージメントの方法について述べる.

胆嚢摘出術後のマネージメント

著者: 谷村弘 ,   杉本恵洋 ,   佐々木政一

ページ範囲:P.302 - P.304

●術後1週間以内の治療上の注意点
1)ショック
 術後出血は,肝床部または肝動脈の付近の剥離面から起こる.緊急手術を要することもある.腹腔鏡下胆嚢摘出術のようにクリップを使用している際には,クリップの位置がずれて数日後になってから出血する恐れがある.

座談会

胆石症治療の多角的アプローチ

著者: 石原扶美武 ,   門田俊夫 ,   山川達郎 ,   上野文昭

ページ範囲:P.306 - P.317

 上野(司会)私の学生の頃は,胆石で治療が必要とあらば手術が唯一の治療法で,治療法の選択についてあれこれ迷う必要はありませんでした.その頃国家試験をパスしていてよかったなと思いますが,最近では,同じ病態の胆石に対してもいろいろなアプローチの仕方があり,したがって,最近の若い先生方は少なからず迷うところもあると思います.そこで今日は胆石症の病態に応じて,日常の診療でどういう治療法を考えていったらよいかということをお伺いしたいと思います.
 まず,1992年の時点で胆石症に対する多くの治療手技がありますが,これまでの歴史的な流れの中からどのような治療法が生まれてきたかということを簡単にお話しいただけますか.

カラーグラフ 電子内視鏡による大腸疾患の診断・2

クローン病(1)

著者: 樋渡信夫

ページ範囲:P.321 - P.324

●クローン病の診断
 クローン病はいまだ原因不明であり,潰瘍性大腸炎とともに,炎症性腸疾患と総称されている.
 その診断は,臨床および病理所見の特徴(積極診断)と,類縁疾患の除外(除外診断)とにより,総合的に行うのが原則である(図1).内視鏡診断はその一部をなすものであるが,典型例ではそれほど困難ではない1).しかし,発症初期や栄養療法後では典型像が揃わなかったり,非典型像を示したりして,診断に難渋することがある.また長期経過例では肛門部病変や狭窄のために,病変全体を観察することは不可能となり,内視鏡診断には限界がある.

Oncology Round・21

乳糜胸腹水を伴ったKrukenberg腫瘍

著者: 菅三知雄 ,   高野敦 ,   伊原勝雄 ,   片山勲

ページ範囲:P.333 - P.336

 近年,エポニム(人名を冠した術語)の使用は,特定の場合以外には慎むべきものとされている.たとえば子宮頸癌の摘出術標本の病理検索で一側の卵巣に転移巣を認めた場合には,Krukenberg腫瘍とは呼ばずに単に子宮頸癌の卵巣転移とするほうが正しい.Krukenberg腫瘍という診断名が相応しいのは,主として胃癌の転移により両側卵巣が著しく腫脹した場合である.
 興味深いことに,Krukenberg腫瘍の患者の多くは30歳代の若年婦人であり,原発巣はそのつもりで探求しても簡単には発見し得ない程度の小病巣のことが多く,しかも両側卵巣とともに原発巣を切除したあとは,癌の根治手術と同様な数年間の寛解を得ることがある.卵巣腫瘍という術前診断で試験開腹が行われた場合,約6%の頻度でKrukenberg腫瘍に遭遇するといわれている.今回はこのKrukenberg腫瘍というエポニムが相応しい症例を提示しよう.

演習

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.326 - P.331

心エコー図演習

著者: 田内潤 ,   山本一博 ,   増山理 ,   北畠顕

ページ範囲:P.337 - P.342

44歳の女性が労作時息切れを訴えて来院した
 既往歴 特記すべきことなし
 家族歴 特記すべきことなし

講座 図解病態のしくみ 肝臓病・1【新連載】

肝臓の形態と機能

著者: 渡辺明治

ページ範囲:P.344 - P.352

 最近の肝臓病に関する研究の進歩は目覚ましく,病因と病態の解明,画像診断の普及による診断精度の向上,ウイルス学的治療や予防に大きな成果がみられる.C型肝炎ウイルスや肝発癌機構に関する分子生物学的研究も重要であるが,肝臓の構造と機能との関わり合いを解明することはこの分野の永遠のテーマであり,過去にもその成果が肝臓病の診断と治療に生かされた例は多い.物質輸送や蛋白・胆汁分泌に果たす細胞骨格(cyto-skeleton)の役割,肝細胞の機能の調節と肝微小循環に関与する類洞壁細胞の機能が明らかにされてきた.
 肝臓病シリーズの第1回目として,肝の構造と機能との関連を中心に,肝の病態成立の理解に重要と思われるいくつかの事項を取り上げた.

臨床医のための分子生物学・1【新連載】

医学の「分子化」

著者: 長野敬

ページ範囲:P.353 - P.358

 研究室の看板を掲げているからには,科学研究費,略して科研費の申請は,毎年秋の大事な年中行事だ.労多いわりに,功は少ない行事だが,それはともかく,プロジェクトが組み替えDNAを用いるテーマである場合に,科研費の書式では,原票の所定欄に(組)と記入していた.警察の(暴)とか税務署のマルサも連想され,どうもスマートな記号法と言いかねるのだが,とにかく以前には,そう書く決まりになっていた(たまたま一昨年からの書式では,この嫌味に反応するかのように,マルで囲まなくても良いことになった!).
 この風習が何年前に始まったのか,正確な記憶がなかった.大学の事務部局に尋ねてみたら,古い綴りを親切に調べてくれた.昭和56年(1981)には,すでにシステムは採用されていた.それ以前は書類の保管期限を過ぎているようで,はっきりしない.もう少し後から始まったように,何となく思っていたのだが,すでに十年経っていたのだ.十年ひと昔か……感概にふけっている場合ではない.原稿を進めなければならない.

心療内科コンサルテーション・2

内科領域で心理テストをどう用いるか

著者: 小宮山博朗

ページ範囲:P.360 - P.363

 心理テストは,一般に精神疾患(心因性疾患)やその発症と経過に心理社会的要因が関与している心身症に対して,心理状態や精神症状,性格傾向や行動パターンなどを客観的に評価する目的で用いられる.
 身体疾患の診断と治療を日常業務とする内科臨床においてこれをどのように活用できるであろうか.内科医が心理テストの施行を考えるとすれば,次のような場面であろうか.

総合診療minimum requirement【新連載】

高血圧の治療・1—降圧利尿剤,ACE阻害剤の使い方

著者: 伊藤澄信

ページ範囲:P.364 - P.366

Point
●降圧利尿剤
 降圧利尿剤による治療では虚血性心疾患の発症頻度は減少しない.
 降圧利尿剤を増量することは無意味.腎不全には禁忌.
 電解質バランスに注意.
●ACE阻害剤
 副作用に過度の降圧,高カリウム血症がある.腎不全,腎動脈狭窄症には投与禁忌であることに注意.
 輸出細動脈を拡張させ,蛋白尿を減少させる.
 乾咳はいちばん多い副作用,その頻度は製剤によって多少異なる.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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