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雑誌目次

雑誌文献

medicina29巻3号

1992年03月発行

雑誌目次

今月の主題 高脂血症の日常診療

理解のための10題

ページ範囲:P.467 - P.470

高脂血症の臨床診断

臨床症状について—見逃してはならない所見

著者: 馬渕宏

ページ範囲:P.385 - P.388

 ほとんどの高脂血症は無症状であるが,よく注意すれば重要な臨床症状が見出される.ここではどのような症例に高脂血症を疑い検査を進めるかを述べる.高脂血症は原発性高脂血症と二次性高脂血症に分けられるが,二次性高脂血症については省略する.

高脂血症の診断法—採血条件から評価まで

著者: 白井厚治

ページ範囲:P.390 - P.393

ポイント
 高脂血症の診断は,増加しているリポ蛋白を明らかにすることから始まる.日常診療では総コレステロール,中性脂肪,HDLコレステロールを測定し,その量と比などから増加したリポ蛋白を推定しWHO分類にそって型の診断を行う.臨床所見と併せるとこれによって高脂血症の診療は十分可能である.重症例や難治例には詳細なリポ蛋白分析や,個々の病態の成因に関わる検査を行うことにより,一層正確な診断が可能となり予後診断と治療方針の決定に役立つ.

血中のリポ蛋白とその成分の測定法と計算法

著者: 山村卓

ページ範囲:P.394 - P.397

ポイント
1)血清脂質は蛋白質と結合したリポ蛋白として血中に存在しており,それゆえ高脂血症は高リポ蛋白血症の観点から理解されている.
2)血清脂質代謝に関する臨床検査は多数の項目について実施されているが,血清脂質としての検査,リポ蛋白からみた検査,アポ蛋白の検査に分けられる.
3)高脂血症の診断は主に血清コレステロール,トリグリセライド値の測定によって行われるが,その病的意義・治療の選択の点からすると,少なくともリポ蛋白レベルでの異常についての検討が必要である.
4)血清アポ蛋白の測定によってアポ蛋白の量的異常・欠損症の多くが比較的容易にスクリーニングできる.

リポ蛋白値をどう読むか

著者: 佐々木淳

ページ範囲:P.398 - P.400

ポイント
1)脂質は血中に溶けて運搬されるべく,蛋白(アポ蛋白)と結合したリポ蛋白の形をとる.したがって,脂質の動きはリポ蛋白の動きとして把えなければならない.
2)リポ蛋白の中のカイロミクロン・レムナント,VLDLレムナント,β-VLDL,IDL,LDLの増加は動脈硬化を促進する.
3)III型高脂血症ではVLDL(β-VLDL),IDLが増え,LDLが減少する.
4)高コレステロール血症のなかに高HDLコレステロール血症が含まれているのでLDLコレステロールの測定が必要である.

アポ蛋白の値をどう読むか

著者: 板倉弘重

ページ範囲:P.401 - P.403

ポイント
1)アポ蛋白はリポ蛋白の構成成分として脂質の転送,代謝調節に重要な役割を果たしている.
2)アポAIはHDLを構成し,その低下は動脈硬化のリスクを高める.
3)アポBはLDLを構成する主要アポ蛋白で,その増加は動脈硬化のリスクを高める.
4)同一のアポB遺伝子から小腸ではアポB48が,肝ではアポB100が生成される.
5)アポCIIはリポ蛋白リパーゼの活性化に重要であり,その遺伝子異常により高カイロミクロン血症をもたらす.
6)アポE遺伝子変異種により血清脂質レベルに差異が認められる.

二次性高脂血症をどうするか

著者: 篠宮正樹

ページ範囲:P.404 - P.405

 他に原因があって高脂血症が起こるものを二次性高脂血症と呼んでいる.二次性高脂血症を起こす原因が種々あるだけでなく,高脂血症そのものの発生機構も種々であることから,その臨床像は多様で変化に富んでいる.糖尿病,肥満,慢性透析,ステロイド投与,Cushing症候群,ネフローゼ症候群,甲状腺機能低下症などによる高脂血症がよくみられる.高脂血症による動脈硬化については,原発性のものと同じ影響をもつと考えられる.以下に,日常臨床において遭遇することの多いものについて述べる.

酵素,受容体からの診断

著者: 川上正舒

ページ範囲:P.406 - P.408

 高脂血症の診断に用いられる検査としては,血中のコレステロール(Cho),トリグリセリド(TG),HDL-Cho,これにアポ蛋白測定とリポ蛋白電気泳動が加えられるというのが一般的に行われているところである.多くの場合,これらの検査のみでも日常診療上には大きな不都合はない.しかし,高脂血症の病態解析や稀な遺伝性の疾患の診断には,より詳細な検討が必要となることもある.病院の検査室や検査センターでは扱っていない検査も多いが,いくつかの酵素,コレステロール合成の前駆物質,リポ蛋白受容体の測定とその臨床的意義について概説したい.

遺伝子診断法

著者: 後藤田貴也 ,   山田信博

ページ範囲:P.410 - P.413

ポイント
1)遺伝子増幅法や非放射性プローブの導入によって,遺伝子診断は一般臨床検査法の一部になりつつある.
2)高脂血症の病因となる遺伝子変異は多様であり,体系立った遺伝子診断法を確立するためには,一連の病因遺伝子の同定と分類が必須である.

高脂血症の治療

治療の原則

著者: 中村治雄

ページ範囲:P.414 - P.416

ポイント
1)治療開始レベルとして,総コレステロール220mg/dl以上,トリグリセライド150mg/dl以上,LDL-コレステロール150mg/dl以上,HDL-コレステロール40mg/dl以下.
2)基本的には食事療法が原則として施行され,ついで薬物療法,特殊療法が併用される.
3)治療目標値は220〜180mg/dlの総コレステロール値で,危険因子,動脈硬化の有無により多少の修飾が行われる.HDL-コレステロールは40mg/dl以上に維持したい.
4)治療開始3ヵ月後までは,月に1回有効性と安全性を確認すべく,自覚症状のチェック,採血を行うべきである.
5)治療目標値に達しても最低4〜5年は治療を続けるべきである.

食事療法の方法と効果

著者: 山本実

ページ範囲:P.418 - P.421

ポイント
1)食事療法はすべての高脂血症に対して第一選択の治療法であるが,主として非家族性高脂血症が適応となる.
2)総コレステロール220mg/dl,トリグリセライド150mg/dl以上,HDL-コレステロール40mg/dl以下については食事療法を行う.
3)血清脂質に影響を及ぼす食事因子として,総カロリー,コレステロール,総脂肪,飽和脂肪酸,多価不飽和脂肪酸(n-6とn-3),一価不飽和脂肪酸,炭水化物(糖質),植物線維,アルコールがある.
4)高コレステロール血症に対しては,コレステロール,総脂肪,飽和脂肪酸,総カロリーを減らし,多価不飽和脂肪酸(n-6),一価不飽和脂肪酸,植物線維を増やす.
5)高トリグリセライド血症に対しては,総カロリー,炭水化物,総脂肪,飽和脂肪酸,アルコールを減らし,多価不飽和脂肪酸(n-3),植物線維を増やす.
6)コレステロール,トリグリセライド両方とも高い場合は,4)と5)を併用し,特に減量を指導する.
7)食事療法は個人差があるので定期的に血清脂質,体重を測定し,効果のない場合は修正しながら最低3ヵ月間行う.

運動療法の方法と効果

著者: 近藤和雄

ページ範囲:P.422 - P.425

ポイント
1)運動によるリポ蛋白代謝への影響は,リポ蛋白リパーゼの活性化を主として,カイロマイクロン,VLDLの合成低下と,合成処理の両方に効果が期待できる.
2)運動の種類としては,全身を動かす有酸素運動で,持続的に毎日実施できるものが望ましい.
3)運動により期待できる効果はTGで約17%,TCで約11%の低下である.

高脂血症治療薬の作用点

著者: 中谷矩章

ページ範囲:P.426 - P.428

ポイント
1)抗高脂血症薬には,作用機序の解明が不十分なもの,作用機序が多岐にわたっているものが多い.
2)コレステロール低下薬の作用機序は,吸収抑制,合成抑制,異化・排泄の促進である.
3)LDLレセプターの働きは,血中のコレステロールレベルに最も大きく影響する.
4)トリグリセライド低下薬の作用機序は,合成抑制と異化の促進である.

高脂血症治療薬の使い分けと併用

著者: 藤岡考之 ,   斎藤英治 ,   八杉忠男

ページ範囲:P.430 - P.433

ポイント
 高脂血症治療の基本は食事療法であり,それで不十分な場合には薬物療法の適応となる.さらに単独療法が無効な場合には併用療法が用いられる.
 高脂血症各型によって選択する薬剤が異なる.IIa型の第一選択薬剤は陰イオン交換樹脂,プロブコール,HMG CoA還元酵素阻害剤である.II bおよびIV型ではクロフィブレート系のニコチン酸である.III型ではクロフィブレート系薬剤である.これらの薬剤で効果が不十分な場合には作用機序の異なる薬剤を組み合わせた併用療法を行う.

高脂血症治療薬を変える時,止める時,追加する時

著者: 石川俊次

ページ範囲:P.434 - P.437

ポイント
 高脂血症治療薬を変えるのは,今まで使用している薬物の効果が不十分であったり,副作用が出現したり,副作用の出現が予想される場合である.高脂血症治療薬を追加するのは,他の薬物との併用でより大きな効果を得たい場合である.高脂血症治療薬の中止は,重篤な副作用出現の時,高脂血症治療の必要がなくなった時である.

高脂血症治療目標値の考え方

著者: 木下誠 ,   寺本民生

ページ範囲:P.438 - P.441

ポイント
1)血清コレステロール値は虚血性心疾患の発症頻度と密接に関係している.
2)血清コレステロール値を低下させることで冠動脈狭窄病変が改善することが知られている.
3)高コレステロール血症の治療目標値はhigh risk groupにおいてLDLコレステロール130mg/dl以下,その他は160mg/dl以下と考えられている.

小児の高脂血症の治療

著者: 村田光範

ページ範囲:P.442 - P.444

 高脂血症の治療には,一般的な生活指導,食事療法,薬物療法,特殊療法があり,これらの原則的な問題は小児も成人も同じであると考えてよい.小児の特殊性は,これらの各種の療法による介入の基準と介入の時期について明確な意見の統一がないことである.
 心筋梗塞による死亡率がきわめて高い欧米先進諸国と違って,わが国では動脈硬化による病変についての一般社会の認識は,まだそれほど深いものではないことから,わが国ではようやく小児期の高脂血症の治療が問題になってきたところである.

老年者の高脂血症の治療

著者: 大荷満生

ページ範囲:P.446 - P.448

ポイント
1)血清脂質は加齢により大きく変化する.血清総コレステロールや血清トリグリセライドは,20歳頃より上昇し,60歳前後を頂点としその後軽度に低下する.
2)高齢者の高脂血症は,若年者と同様に動脈硬化性疾患の危険因子であり,治療を行う必要がある.
3)高齢者の高脂血症の治療は,食事療法や運動療法などの一般療法から始める.食事療法は成人の場合と同じであるが,高齢者では,貧血,低蛋白血症,骨粗鬆症などの合併症をもつことが多く,バランスのよい食事指導が必要となる.また,散歩や禁煙の指導も好ましい影響を与える.
4)高齢者の薬物療法は,腎機能をはじめとする各臓器の機能低下を考慮する必要があり,投与量は少量から開始する.また副作用の出現に注意を払う.

糖尿病に合併した高脂血症の治療

著者: 西晴子 ,   中井継彦

ページ範囲:P.450 - P.452

ポイント
1)糖尿病に合併する高脂血症の特徴はトリグリセライド多含有リボ蛋白(カイロミクロンおよびレムナント,VLDL)の増加とHDLの低下である.また,グルコシル化,酸化リボ蛋白が増加する.以上,動脈硬化惹起性の変化である.
2)治療の基本は食事療法であり,運動療法も若干の効果が期待できる.
3)薬物療法は高脂血症の病態に応じて薬剤を使い分ける必要がある.フィブラート系薬剤およびHMG-CoA還元酵素阻害剤が主として用いられる.

皮膚科領域の高脂血症(黄色腫)の治療

著者: 藤田優

ページ範囲:P.454 - P.456

ポイント
1)皮膚における黄色腫は高脂血症のskinmanifestationとして重要である.
2)黄色腫の治療は高脂血症の治療に準じ,その消長は治療の効果を反映する.しかし,効果の発現までの期間は黄色腫の臨床形態により異なる.
3)他の黄色腫と同様に眼瞼黄色腫の治療にはプロブコールが有効である.

ネフローゼ症候群の高脂血症治療

著者: 山田陽一 ,   湯川進 ,   大谷晴久 ,   的場克己 ,   宗正敏 ,   野本拓

ページ範囲:P.458 - P.460

ポイント
 ネフローゼ症候群の高脂血症治療は動脈硬化や虚血性心疾患の発症予防以外に,糸球体病変の進展,増悪を防ぐためにも重要である.

脂肪肝を伴う高脂血症—インスリン抵抗性を中心に

著者: 小薗康範 ,   広瀬信義

ページ範囲:P.461 - P.463

ポイント
 インスリン抵抗性とそれに続発する高インスリン血症は,肥満,糖尿病,高血圧,虚血性心疾患,脂肪肝,高脂血症などいわゆる成人病と関係していることが明らかになってきた.上記疾患をみたらインスリン抵抗性の存在を疑い,個々の疾患の治療と併せてインスリン濃度を低下させるように努める.脂肪肝を伴う高脂血症ではインスリン感受性を高め,脂質低下作用のあるフィブラート系薬剤が第一選択となる.

LDL吸着療法の効果

著者: 岸野文一郎

ページ範囲:P.464 - P.466

ポイント
1)LDLアフェレーシスは,コレステロール値が高い症例ほど効果がある.
2)ホモ型FHでは,アフェレーシス後のコレステロールが150mg/dl以下になるまで除去することが重要である.

カラーグラフ 電子内視鏡による大腸疾患の診断・3

クローン病(2)

著者: 樋渡信夫

ページ範囲:P.471 - P.474

●緩解期の内視鏡所見
 最近は完全中心静脈栄養法や成分栄養法により,臨床的緩解ばかりでなく,“内視鏡的緩解”(内視鏡的に潰瘍,炎症所見が消失した時期)に導入することも可能となった2)
 さらに,クローン病の診断がつかないまま,不明熱(血液疾患,膠原病疑いなど)としてステロイド療法を受けたあとに紹介された症例では,部分的に緩解像を呈することもある.また発症初期には自然緩解することもあり,内視鏡的緩解像も理解しておく必要がある.

Oncology Round・22

化学療法・免疫療法併用で寛解した癌性腹膜炎

著者: 武越裕 ,   吉田憲一 ,   森永正二郎 ,   片山勲

ページ範囲:P.475 - P.479

 原発巣がいずれの臓器にあるかを問わず,癌が腹膜に播種して腹水を伴うとき,癌性腹膜炎(悪性腹水)と呼ばれる.これは癌の末期徴候であり,診断後の生存期間は2〜3カ月のことが多く,治療しても効果はあまり期待できないものとされてきた.しかしながら,近年は化学療法・免疫療法(生体反応修飾療法)の著しい進歩により,状況は大きく好転しつつある.今回は,新しい治療法の適用により寛解したと思われる癌性腹膜炎の1例を提示する.

グラフ 内科医のための胸部X-P読影のポイント・10

サルコイドーシス—BHL症例

著者: 田中茂 ,   長井苑子

ページ範囲:P.486 - P.492

症例
患者 60歳,女性
主訴 霧視

演習

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.480 - P.485

心エコー図演習

著者: 水重克文 ,   平林浩一 ,   松尾裕英

ページ範囲:P.493 - P.497

 47歳の女性が労作時呼吸困難と前胸部痛を訴えて来院した.
 既往歴 幼少期に関節腫脹を伴う原因不明の発熱があった.
家族歴 特記事項なし

講座 図解病態のしくみ 肝臓病・2

肝疾患の検査法

著者: 清水幸裕 ,   渡辺明治

ページ範囲:P.500 - P.510

肝機能検査
 肝臓は生体の代謝の中心臓器であり,機能検査もそれを反映して生化学検査が中心となる.しかしながら,単独で肝疾患を診断できる検査はないため,種々の検査を組み合わせ,しかも経時的に測定する必要がある.

臨床医のための分子生物学・2

「メンデルの豆」の分子生物学

著者: 長野敬

ページ範囲:P.512 - P.517

●遺伝学開基の大聖人,メンデル
 現代の研究の流れは,遺伝子に向かってとうとうと集まりつつある.流れが集まりすぎて,洪水でも起こしそうな現状の一端については,前回にも紹介した.
 一世紀半の昔には,遺伝理論の流れはまだ地下の伏流水にすぎなかった.この地下水に実験データの錫杖をつき立てて,認識の明るみに導いた「遺伝学の弘法大師」は誰かといえば,もちろんそれはメンデル(Johann Gregor Mendel,1822-84).そしてメンデルといえばエンドウ豆.彼が実験結果をブリュン地方のささやかな学会で,2回にわたって発表したのは1865年で,活字にまとめて論文としたのは翌年(1866)だった(図1).

心療内科コンサルテーション・3

不定愁訴患者にどう対応するか

著者: 岡孝和

ページ範囲:P.518 - P.521

 内科を訪れる患者のなかで,いわゆる不定愁訴患者の占める割合は決して少なくない.そのなかには適切な治療を受ければすみやかに愁訴が改善するにもかかわらず,複数の医療機関を長年にわわたって転々としている者もいる.以下に不定愁訴患者を診察し,治療するうえでのポイントを簡単に述べるので,日常臨床で参考にしていただきたい.

総合診療minimum requirement

高血圧の治療・2—β遮断剤,Ca拮抗剤の使い方

著者: 伊藤澄信

ページ範囲:P.522 - P.525

Point
●β遮断剤
 心筋梗塞発症後1年は再発予防に効果がある.
 分類は大きな意味を持たないが,脂溶性か水溶性かで副作用の出方が異なる.
 投与禁忌が多いので注意することが大切.
●Ca拮抗剤
 ニフェジピンの仲聞とジルチアゼムでは効果,副作用が異なる.
 ニフェジピンの副作用には過度の降圧,便秘,逆流性食道炎がある,高齢者の高血圧にはファーストチョイスになるうる.
 ジルチアゼムでは伝導障害に注意.

呼吸器疾患診療メモ

医師の禁煙活動

著者: 伊礼壬紀夫

ページ範囲:P.527 - P.529

 長年の数多くの疫学的,医学的研究の結果,煙草の健康に対する悪影響が認識されるようになり(表1),WHOは煙草を「今世紀最大の疫病」,「予坊しうる最大の病気・病死の原因」として,約20年前から世界の国々に対して煙草の抑制,規制をするよう,くり返し勧告をしてきた.欧米では肺癌死の80〜90%は煙草によるものと推定され(日本では約70%),気管支炎死亡の75%が,膀胱癌死亡の40%が,虚血性心疾患の25%が,そしてすべての癌死亡の30%が煙草によるものと推定されている.さらに,間接喫煙によって肺癌の危険率は25〜35%上昇するとも報告されている.このような煙草関連疾患のために世界で年間約300万人が死亡し,社会経済学的にみても,煙草は社会に対して膨大な損失を与えているとされている(表2).また,世界の森林の約12%は,煙草の葉の生産のために伐採されているという試算もある.しかし,日本はWHOの勧告を無視し,煙草産業,つまり政府(日本たばこ産業の株はすべて大蔵省保有)が率先して煙草の販売,消費を促進し続けているという,信じがたい世界の非常識国になってしまった.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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