medicina29巻9号

1992年09月発行

カラーグラフ 電子内視鏡による大腸疾患の診断・7

薬剤性大腸炎

著者： 多田正大¹ 長廻紘²

所属機関： ¹京都第一赤十字病院・第2内科 ²東京女子医科大学・消化器病センター

ページ範囲：P.1697 - P.1702

文献概要

　医薬品の本来の目的は，疾病に対する治療効果を図ることであるが，その目的からはずれて生じる副作用は少なくない．特に消化管に生じる副作用の作用機序として，①経口投与された薬剤が消化管粘膜に接触して生じる直接作用，②薬剤の代謝産物が消化管に排泄されて生じる作用，③中枢神経を介して起こる消化管の機能異常とそれに続く器質的障害，④抗生物質投与による菌交代現象による副作用，⑤抗腫瘍剤や抗生物質などによる造血器系への障害によって凝血能が低下して生じる消化管出血，などがあげられる．
　大腸病変の発生機序もいろいろあるが，その結果，腹痛，便秘，下痢といった軽症の副作用から，イレウス，消化管出血，穿孔などの重篤な副作用に至るまでさまざまである．そこで種々の大腸障害のうち，大腸炎として現れる，いわゆる“薬剤性大腸炎”の電子内視鏡像について触れてみたい．