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酸素吸入
著者: 稲田豊1
所属機関: 1昭和大・麻酔科
ページ範囲:P.273 - P.275
文献購入ページに移動 全身麻酔のもとに小手術を行なつた患者においてさえ,術後数時間は動脈血PO2が低下しHypoxiaの状態にあることを1962年にNunnらが発表して以来,術後酸素療法の意義および価値が改めて認識されるに至つた。この際,動脈血PCO2はそんなに高くなく,またすみやかに元の状態に戻ること,マスクによつて吸気の酸素濃度を中等度に上げてやると動脈血酸素飽和度が正常に帰ることなどの事実にもとづいて,肺内ガス分布異常,つまり一部の肺胞のunder-ventilationが原因として最も考えられると結論している。酸素療法はこのような術後患者に施行されるのみではなく,内科方面においても古くから末期患者,呼吸困難を訴える患者などに対して行なわれていた。しかし,金属製またはガラス製の漏斗ないしマスクを顔面から数cmの距離にぶら下げておいて,酸素をポコリ,ポコリと流す従来の方法は肺胞気中酸素濃度を上昇せしめるという点では全く無効である。この場合には,4l/minの酸素を流しても肺胞気中酸素濃度は14%に留まる。したがつて,どうせやるならもつと有効な酸素療法が望まれるわけである。
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