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雑誌目次

雑誌文献

medicina3巻6号

1966年06月発行

雑誌目次

EDITORIAL

専門医についての私見

著者: 佐々木智也

ページ範囲:P.785 - P.787

 医学教育についての論議が,現在ほどにさかんであつたことはないが,その議論は起こるべくして起こつたものである。医療行為に対する報酬額をめぐる問題,インターン制度の存否,無給医局員の問題,さらにまことに残念ながら診療の過失,医師の犯罪など,すべて医学部学生に対する教育と,卒業後の修練に再検討を迫る重要問題である。文部省もようやく「大学病院における教育研修制度懇談会」(仮称)を設けて重い腰をあげ,国会でも医学教育に関する公聴会が開かれるなど,公式な場での検討も行なわれている。ここに述べる専門医制度は,世界各国において広く行なわれている重要な臨床医の制度であるので,多くの医学関連出版物にすでに数々の意見が示されているが,これまでの論者とやや異なつた立場の者として私見を述べるのも無意味ではあるまいと考える。

特集 蛋白尿

蛋白尿の検査—アンケートの結果をながめて

著者: 丹羽正治

ページ範囲:P.822 - P.824

 尿検査は患者を診療するさいのもつとも基本的な検査の一つとして従来から広く実施されている。その重要性は各種臨床検査の急速に発達したこんにちでも少しも変わらず,大病院でも全体の検査件数の1/2ないし1/3を占め,それより小規模な施設ではおそらくその過半数に達しているものと思われる

蛋白尿の症例

1.多発性骨髄腫

著者: 和田攻

ページ範囲:P.794 - P.795

症例
 長○川○さ 51歳 女子
 内科臨床診断 多発性骨髄腫

2.SLE

著者: 本間光夫

ページ範囲:P.795 - P.798

はじめに
 腎臓は極端に急速な血流に依存している臓器である関係上,血管がおかされる膠原病疾患群とくにSLEの場合には容易に障害が起こつてくる。副腎皮質ステロイドホルモン出現以前には,SLEにおける腎障害は,それほど問題にならなかつた。しかし最近ではSLEに見られる各種症状群のなかで,腎障害がもつとも重症なもので,本症死因の大事な部分を占めている1)。副腎皮質ホルモンは少量でもSLEの目につく臨床症状を抑制または鎮静し,比較的無症状の状態を維持することができるが,そのような状態下でも腎臓障害は急速に進行している2)。しかしPollakら3)が大量のステロイドを投与すると,lupus腎炎における活動性の腎障害も鎮静しうることを発表して以来とくに注目されるようになつた。そこでここに腎障害を呈した2例の定型的なSLEの症例を報告し,その治療経過について述べてみたい。

3.起立性蛋白尿

著者: 東條静夫 ,   成田光陽 ,   桧垣有徳 ,   吉野明昭

ページ範囲:P.799 - P.803

 こんにちorthostatic proteinuriaとして述べられている一群の対象はかなり多様の内容を含むものと思われる。周知のようにその定義も明確ではなく,またlordotic,juvenile,cyclic,postural,intermittent,constitutionalなど種々の名称が使用されているようにかならずしも統一された概念をもつたものでなく,なお検討されるべき問題を含んでいる。最近われわれは数例の本症と思われるものを経験したが,そのうちの2例につき諸検査成績を述べ若干の考察を加えてみたい。

4.心不全に伴う蛋白尿

著者: 塩田登志也

ページ範囲:P.803 - P.804

症例
 植○泰○ 23歳,男,公務員
 臨床診断名:うつ血性心不全(Ⅲ度),僧帽弁狭窄兼閉鎖不全,心房細動,絶対性不整脈,多極性定期外収縮,肝腫大。

5.アミロイドージス

著者: 増山幸男

ページ範囲:P.804 - P.806

 アミロイドージスの腎症状ことに蛋白尿は浮腫とともに,アミロイドージスの主症状または随伴症状として認められることが多い。11歳のときに蛋白尿を指摘され,18歳でうつ血性心不全と尿毒症のために死亡した原発性アミロイドージスの1例について述べる。

6.泌尿器疾患における蛋白尿

著者: 大越正秋

ページ範囲:P.806 - P.807

症例
 1.24歳 男子
 現病歴 生来健康であつたが昭和40年3月に行なわれた入社試験のための身体検査のさい,尿中に蛋白と赤血球が陽性であることを発見され,腎炎であろうということで,医師の検査を受けるようすすめられ,入社できなかつた。患者はただちに近くの内科医の診察を受け,慢性腎炎の診断をくだされ,安静,減塩食その他の治療をつづけた。

7.小児の蛋白尿

著者: 佐藤仁

ページ範囲:P.807 - P.809

Asymptomatic proteinuriaの症例
6歳の男児(昭和30年7月14日生)
診断 asymptomatic proteinuria

<話合い>

蛋白尿をめぐつて

著者: 日野原重明 ,   斎藤正行 ,   大野丞二 ,   坂詰正巳 ,   佐藤仁 ,   沢直樹

ページ範囲:P.810 - P.821

 日野原(司会) きようは,内科を専門にしている読者に対する座談会でありますが,幅の広い内科医を対象にしておりますので,きようの蛋白尿はできるだけ幅広くとりあげていただきたいと思います。その意味で,小児科,泌尿器の専門の先生方にもおいでを願い,また,その検査に関連のある臨床検査の専門家にもご出席願つたわけであります。

腎炎、ネフローゼ以外の蛋白尿の症例,他

健康診断時に発見された蛋白尿,他

著者: 外山春彦

ページ範囲:P.809 - P.809

 蛋白尿は腎炎およびネフローゼに証明できるのはもちろんであるが,今回,健康診断時に発見した蛋白尿について報告する。
 健康診断時の検尿はuristixにて検出したが,このさいの検尿(蛋白)の結果のうち,年齢別分布は表1のようであつて,蛋白尿は65名(9.4%)も発見されたが,ことに40歳以上にもつとも多く62名(12.3%)であつた。この蛋白尿のあつたものの病類は表2のようである。もつとも多かつた疾患は高血圧症で15名(23.1%)となつている。つぎが低血圧症5名(7.7%),慢性胃炎4名(6.2%)で,その他はわずかであつた。しかし生理的蛋白尿と考えられる病名のつかなかつたものが34名もあつたが,この内訳として肥満型19名(29.2%),やせ型15名(23.1%)であり,これら病名のつかなかつたものはほとんどが40歳以上であつたことから,この蛋白尿は老齢化からくる新陳代謝障害からと考えられる。ここにご覧にいれたデータは健康者を対象として検出したもので一般外来診療のものとは異なつていよう。

診断のポイント

口渇

著者: 小林勇

ページ範囲:P.825 - P.827

 生体は体内の水分が欠乏したとき,抗利尿ホルモン(ADH)分泌を介して腎からの水再吸収を増加させるが,これだけでは喪失を防ぐに十分ではない。このようなときに赤信号として渇感が生じ,水分摂取が促がされ,初めて水欠乏が是正されることになる。すなわち口渇多飲は間脳下垂体後葉-尿細管系とならんで,生体にとって体液量および滲透圧の維持に欠くことのできない重要な機構である。現在では口渇はAnderssonらの実験結果にもとづき,視床下部にあるとされる渇中枢(thirstcenter)から中枢性に生ずると一般に考えられている。渇中枢に対するおもな生理的刺激はADH分泌の場合と同じく,体液滲透圧の上昇か体液量の減少である。

肺嚢胞症

著者: 宝来善次

ページ範囲:P.828 - P.829

 肺嚢胞症とは,臨床的には一般に炎症などによる直接的な肺間質部の破壊を原因としない"肺内の異常空間"と定義されており,厳密には疾患群の総称である。したがつて,この疾患の臨床的な分類を確認することは診断の第一歩となる。多少の異論はあろうが,その臨床的分類はつぎのようになされている。

治療のポイント

食欲抑制剤

著者: 平田幸正

ページ範囲:P.830 - P.831

 欧米において,食欲抑制剤として,すでに発売されているものの多くは,覚醒アミンであるamphethamineの系統に属する。
 わが国においては,食欲抑制剤なるものは,厚生省から承認されていない。もともと食欲抑制作用を目的として作られた薬のなかで,わが国で市販されているものは,おそらくCafilonのみであると思われるが,これもわが国では食欲抑制剤としてではなく,精神賦活剤として承認されている。しかし,最近,このamphethamineの系統に属しながら,精神興奮作用がほとんど認められず,食欲のみを抑制するというfenfluramine(Ponderal)などが出現したことは,肥満症の増加と相まつて今後,わが国においても,食欲抑制剤というものの存在が認められるにいたるものと思われる。

ファースト・エイド

救急疾患をめぐつて

著者: 川上武 ,   帯刀弘之 ,   毛利子来 ,   橋本貫一 ,   斎藤悦郎 ,   十念一浩

ページ範囲:P.853 - P.857

 救急というと外傷と思われやすいが,救急車の出動状況をみても,意外に内科系患者が多い。
 突発的で,病態をつかみにくいところで,医師はとにかく,なんらかの処置をしなければならない。臨床医家にとつて急患は大きな悩みの一つになつている。「救急疾患にどのように対処したらよいか」第一線の医師の方々に,その経験と解決の方向をさぐつていただいた……。

器械の使い方

眼底カメラの使いかた

著者: 山田酉之

ページ範囲:P.858 - P.859

 どの眼底カメラにも詳細な説明書がついており,これを熟読し,かつ購入時によく指導を受け練習すれば,眼底写真はだれでもとれるようになる。カメラの細部は機種によりかなり異なるので,ここでは共通的な注意を具体的に簡単に述べる。

正常値

腎クリアランス—その意義と正常値について

著者: 宮原正

ページ範囲:P.868 - P.869

 腎クリアランスは腎の構成単位の機能を別個に知る方法としてこんにち臨床的ならびに腎病態生理の研究に広く用いられている。以下本稿では日常臨床的に使用されている糸球体濾過値(GFR),腎血漿流量(RPF),および前二者ほど一般的ではないが尿細管排泄極量(TmpAH),尿細管再吸収極量(TmG)などの正常値およびこれらがどのようにしてきめられ,また何を意味するかについて述べてみたい。

基礎医学

Acid-Base Terminology—おたがいに使う言葉の誤解を避けよ

著者: 河合忠

ページ範囲:P.862 - P.866

 酸塩基平衡の異常はなぜ理解しにくいのだろうか。化学的に容易に理解される体液中緩衝物質の調節作用に加えて,生命が示す複雑な,しかし合目的な臓器調節作用があるためである。ところが,問題をいつそう複雑にしているのは,われわれ医師が使う言葉のいたずらなのである。ある医師の言葉は生命の動きにできるだけ忠実に表現しようとするが,他の医師の言葉は検査データーを中心に話を進めようとするのである。同じ言葉が,それを用いる医師によつて意味を異にしているために,新しく学ぼうとする医師を混乱させるのである。では,アシドーシスあるいはアルカローシスとは何を意味すべきなのだろうか。

症例 心電図のよみ方(6)

冠硬化心電図

著者: 難波和 ,   廓由起枝

ページ範囲:P.873 - P.876

症例
症例1 K. I. 56歳.男
 半年前から,労作時に約5分間持続する前胸部絞扼感を訴えており、安静により緩解していた。血圧120/88mmHg,血清Cholesterol 200mg/dl,安静時のE. C. G. は,Tv4がやや低いほかに、とくに異常を認めないので,一応single two steptestを行なつたところ負荷直後に,STはII,aVL,aVF,V4,V5で下降しTはI,II,aVL,V4〜V6で二相性(-,+)となつた。ST,Tの変化だけではなく,PTaの部分がII,aVF,V4〜V6で下降し,心房,心室ともに冠不全状態にあることがわかる。20分後には,いずれの変化も消失し安静時のECGに戻つた。Intensain(450mg/日)を投与したところ,2週間後には,安静時のECGで,TV4はTV5,V6とほぼ同じ高さになり,double two steptestによつてもまつたく変化を示さないようになつた。

レ線像から先天性心疾患をみわける(II)

著者: 高尾篤良

ページ範囲:P.877 - P.881

読みかたの基本(つづき)
左心房
 正面像では左房は時に左心耳の一部が少し左心縁を形成する以外は心縁を形成しない。しかし,左房が拡大するにつれ,後ろ右方へ膨隆し,軽度の場合には,右心縁中央部の重複陰影(図1)としてのみみられることがある。左心耳は少し出た程度である。さらに左房が拡大すると,右方へも左方へも心縁をこえてひろがる。

双胎間輸血症候群

著者: 西村昻三 ,   長基顕 ,   富山良雄 ,   岩坪哲哉 ,   渡辺昭彦 ,   吉岡仁子 ,   舘石捷二 ,   生田治康

ページ範囲:P.884 - P.888

 最近胎盤の検索の進歩につれ,一絨毛膜性の双胎胎盤には,それぞれの胎児の血管系のあいだに吻合の多いことが知られるようになつてきた2)。これらの血管吻合を介して,一絨毛膜性の胎盤をもつ一卵性双胎では,両者のあいだに血液の交流が起こり,もしその血液分布に差を生じた場合には,一方に多血,他方に貧血を生ずるのみならずいままで類似をその特徴とされてきた一卵性双胎のおのおのの大きさについても,かかる変化が長期にわたつて存在する場合には,かなりの差を生ずることがある。かかる現象を名づけてTwin-to-twin transfusion syndrome1),Twin transfusionsyndrome8),Placental transfusion syndrome3),Intrauterine parabiotic syndrome7)などとよんでいるが邦訳では双胎間輸血症候群または胎内パラビオーゼ症候群とでもすべきであろう。
 本邦ではわれわれが胎盤の血管吻合の証明により確診した最初の例を2年前に小児科学会にて報告してから,小児科領域では守屋,南部,飯野,高川,奥山,大浦,入来らによる学会報告がつづいており,注意して観察すればかなりの頻度で見られるのではなかろうかと思われる。本稿では当院において本症候群と確診をくだした例や,本症候群に属するものと思われた症例の紹介かたがた本症候群の成因,診断,症状,治療などにつき述べたいと思う。

話題

新しいリハビリテーションの理論と実際—健康管理研究協議会2月例会から

著者: 秋山房雄

ページ範囲:P.769 - P.769

 健康管理に従事している医師,保健婦,厚生担当者たちの勉強の場として,すでに長い歴史をもつている健管協が,2月例会としてとりあげた,「新しいリハビリテーションの理論と実際」には,約250名の参加者があり,その道の第一人者である4名の講師から,つぎのような講義があつた。
 まず,福井圀彦博士(鹿教湯温泉療養所長)は「脳卒中のリハビリテーション」について述べられ,従来,ともすれば,再発をおそれて,長期にわたり,絶対安静を患者に命じ,そのためみじめな関節の強直状態をつくつて再起を妨げていたが,最近では,早期に,計画的なリハビリテーションを行なうことによつて,きわめてよい成績を得ていること,およびリハビリテーションの具体的方法を,多数のスライドを用いて説明された。 脳卒中のリハビリテーションには,3つの要素が含まれていて,その一つは,脳卒中発作以前の異常(動脈硬化,高血圧,糖尿病,その他脳の血管の異常など)の管理であり,第二は,脳卒中そのものによつて起きてきた麻痺,失語症,失行症などの改善,第三は,発作後にひきつづいて起こつてくる種々の変形の予防および治療である。

"腰痛をめぐつて"—実地医家のための会35回例会から

著者: 木島昻

ページ範囲:P.771 - P.771

 「実地医家は人間を生物の部分としてではなく,社会生活をいとなむ人間としてまるごと見てゆかねばならない。また疾病のごく初期においてつねに診断と治療指針の説明を求められる立場にある」という会の主旨をわきまえて,第35回例会も開催された。その日,2月13日(日)冴えかえる戸外に比べ会場の日本都市センターの講堂は,遠来の仙台・新潟・名古屋の会員もまじえて70数人,人間疎外の診療はやめようという連帯感に和気あいあい,熱つぽくふくらんでいた。

グラフ

双胎間輸血症候群

著者: 西村昻三

ページ範囲:P.774 - P.775

 一卵性双胎の約70%は一絨毛膜性胎盤を有するが,この一絨毛膜性胎盤には,それぞれの胎児の血管系に吻合がほとんど常にみられ,絨毛膜血管吻合体(Chorio-angiopagus) と考えられている.この血管吻合を介して両児間に血液偏在が生じたものが双胎間輸血症候群であるが,その発生には動静脈吻合が主役を演ずることが多い.この血液偏在の程度とその生じた時期,すなわち在胎中か,分娩経過中か,あるいは両者の合併によるかにより症状もことなつてくる.在胎中比較的長期にわたり発生した真性の場合には,受血者は大きく,多血,高血圧,心肥大,羊水過多などを伴い,給血者は小さく,貧血,低血圧,羊水過少などを伴うことが多い.診断に際し胎盤が一絨毛膜性であることを確めるとともに血管吻合の証明が大切である.治療は必要に応じ,多血児には瀉血または部分的交換輸血を,貧血児には輸血を行なう.

肺胞蛋白症

著者: 河辺秀雄

ページ範囲:P.777 - P.780

症 状
 Rosenが1958年に肺胞内をリポイドを多量に含む蛋白性物質が満ち,しかも炎症性の反応のない特有な疾患を27例集めて,Pulmonary Alveolar Proteinosisという病名で報告してから約80例が世界各地から報告された。日本では1960年に岡が初めて肺胞蛋白症として報告してから5例報告された。20〜50歳に多く,男に多い。症例の多くは塵埃の多い所での作業や揮発性物質を吸入する職業に関係しているが,原因は明らかでない。初め息ぎれ,咳,倦怠感,体重減少などあり,かるい発熱,胸痛,黄色い痰,時には血痰もあり,末期ではチアノーゼ,ばち状指,両肺下野の水泡音がある。二次的細菌感染も加わり,真菌ではNocardiaの合併したものが多い。初め胸のX線所見のほかには一般の臨床検査ではめだった所見がないが血清リポイドは増加の傾向にあり,SLDHは高く,病状が軽快すると低くなる。肺機能検査では拘束性所見と拡散障害がめだつている。肺の生検では,肺胞は,無構造または顆粒状物質で満たされ,PAS染色(Periodic acid-Schiff)陽性である。肺胞壁には炎症性の反応がめだたない。肺胞内物質はリポイド,コレステロール,糖質,アミノ酸,核酸,燐脂質を含んでいる。ムチンも含まれている。喀痰のPAS染色で陽性物質が証明されることもある。

血清蛋白の超遠心分析法

著者: 平山千里

ページ範囲:P.781 - P.782

 超遠心分析法は,沈降法と浮上法にわかれる。つまり,血清タンパクを遠心力の場においた場合,沈降または浮上する原理を応用した分析法である。
 血清タンパクを超遠心沈降法で分析すると,4S,7S,19Sの3主要分画に分離できる。Sというのは,沈降定数の単位で,創案したSvedbergの頭文字である。4Sは主としてアルブミン,7Sは主として免疫グロブリンより構成され,19Sはマクログロブリンである。したがつて,超遠心沈降法は,パラプロティン血症の分析に不可欠の方法であつたが,現在免疫学的分析法がより正確な診断法となつた。
 超遠心浮上法は,血清を高比重の溶液中で遠心した場合,リポタンパクが浮上する原理を応用したもので,現在リポタンパクの分析に広く用いられている。

If…

"scharfe Beobachtung und genaue Methodik"—阪大名誉教授 大阪府立病院長 堂野前維摩郷氏に聞く

著者: 長谷川泉

ページ範囲:P.834 - P.835

忘れえぬ稲田先生のご教訓
 長谷川 先生がもしお医者さんになつてなかつたら,どんな方面に進んでおられたでしようか。
 堂野前 はつきりした理由あつて医学を志したわけではないのです。中学の卒業まぎわになつて,工科へ行こうか医科にしようかと決めかねていました。そこでぼくの親しくしていたクラスメートのひとりと相談した結果,医者は多くの人を助けることができるのだから,医科へ行こうではないかということになり,八高三部,東大医学部というコースで医者になつたわけです。だからもし医科でなかつたらおそらく工科を選んでいたでしよう。

私のインターン生活

Tanzen und Arbeiten—臨床教育の現状に思う

著者: 垣花昌明

ページ範囲:P.840 - P.840

 世のなかには,実際に応用してみる機会はまずあるまいというようなことをずうずうしくも夢みていることが多いものです。電車のなかで隣の婦人が首つぴきで読んでいる週刊誌の記事が「あなたはそのときどうする?初めて男性にバーに誘われたら」さて,どれほどそんな危険度にあふれた妙齢の女性なのかと思つて,まじまじとくだんの彼女を眺めてみると,なんとまあ,同じ頁に広告を出している美容整形外科医をまず訪問するのがさきであると思いたくなるようなことがよくあります。
 研修医K先生のダンスは混雑した会場でもめつたにパートナーを他のカップルにドスンとぶつけない,つまりまるで東京のタクシーに似た奇妙なテクニックを発揮することで定評があります。ものには順序があるのはダンスも同じことで,気がるに手を握り,正当な理由で女の腰に腕をまわせるあそびと考えるほど単純ではありません。壁に45°の角度から踊りはじめ,時計の針と逆の方向にホールを進行しなければいけないというれつきとした交通の流れを取締まる規則があるのです。

この症例をどう診断する?・11

出題

ページ範囲:P.772 - P.772

■症例
48歳,男性
主訴:せき,息ぎれ,胸部圧迫感

討議

著者: 梅田博道 ,   田崎義昭 ,   和田敬 ,   市川平三郎 ,   金上晴夫

ページ範囲:P.890 - P.895

この症例のヒント
 梅田 まず,金上先生から,この症例のポイントを一つご説明願いましようか。
 金上 僕がいつも出すのはびまん性肺疾患が主なんですけどね。この患者は,咳,息ぎれ,胸部圧迫感を訴えていて,じん肺の職業歴は全然なく,おけ屋です。

痛みのシリーズ・8

「痛み」の新説gate control theory

著者: 清原迪夫

ページ範囲:P.870 - P.871

Specificity theoryとpattern theory
 痛みの感覚の成立するしくみについては,問題が問題だけに古来多くの議論がなされているが,従来の諸説は,一応二つの系統に分けて考えられよう。その一つは,現在なお臨床で用いられているspecificity theoryである。すなわち,末梢受容器は自由終末であり,その感覚伝導神経はAδとc線維で,脊髄に入つてからは脊髄視床路を上行し,視床に入る経路をとるというのである。これに対して,痛みについては特定受容器も伝導線維もなく,末梢から痛みのパターン形成が行なわれるというpattern theoryである。これは考えかたとしての起源は古いが,最近のWeddelら英国解剖学者グループの刻明な研究で強調されてきたもので,その簡単な例は,自由終末しか見られないことから,痛みのみが唯一の感覚と考えられてきた角膜が,温度覚を有する事実である。赤外線照射で温感を,コンタクトレンズ接着のとき冷感を感じるのである。また,ある領域に一本だけ感覚神経を残した皮膚では,痛みの感じというよりは不快感を感じ,痛みの感覚の成立のためには多くの神経終末が重畳交錯していなければならないという。このことは,古くからprotopathic sensationとepicritic sensationの差別として説明されてきたことを修正するものである。

Bed-side Diagnosis・7

A Case of Acute Diarrhea and Pain in a Middle Aged Man

著者: 和田敬

ページ範囲:P.882 - P.883

In a Conference Room:
 Dr. A (Intern):The case to be presented* here today concerns acute diarrhea and pain in the right upper quardrant. The patient is a 34-year-old engineer who had been in excellent health until about 10 days ago when he developed watery diarrhea associated with chills and fever. He felt nauseated and vomitted at the time he consulted his physician. The physician thought the patient had gastroenteritis. However, usual measures* failed to control the symptoms.

統計

主要疾患の在院期間

著者: 菅沼達治

ページ範囲:P.832 - P.832

 厚生省が毎年行なつている患者調査のうち,退院患者の在院期間について観察してみましよう。これは全国から1/10抽出した病院における昭和39年6月中に退院した患者についてのものです。
 図は在院期間によつて退院患者の累積百分率を示したものでありますが,肺炎のように急性な疾患は20日未満で70%が,30日未満では90%がすでに退院してしまいます。がんを初めとする三大成人病は,ほぼ同様な曲線を示し,2カ月〜3カ月未満で80%前後が退院しますが,それ以後では退院患者の数は減つて長期の入院を示しています。さらに慢性の経過をとる精神病や結核では,5カ月以上6カ月未満で,前者が65%,後者が40%程度退院するにすぎません。

文献抄録

"薬で学習と記憶が強化できるかもしれない"—JAMA (Jan 3) 1966, Medical News

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.889 - P.889

はじめに:
 学習learningと記憶memoryは生物すべてに通じて存在する現象である。進化の階段をのぼるにつれて,学習と記憶のはたらきも強化される。
 皮質のある個所に電気刺激を加えると,突如として患者の意識のなかに過去の事件のじつに生々しい回想がうかびあがるという,きわめて劇的な事実にぶつかつたのは,たしかPenfieldであつたと思う。記憶の反応が得られるのは,脳の左右の下部,つまり側頭葉に刺激電流を深く刺入したときにかぎるのである。

ニュース

前途多難な健保法の改正

著者:

ページ範囲:P.867 - P.867

 健康保険法改正案の国会における審議については,3月10日の鈴木厚相の提案理由説明にひきつづき,同月中に3日間にわたつて衆議院社会労働委員会で社会党系の議員などから医療制度の問題など,医療保険の基盤となる問題について質問が行なわれただけで,この法案の内容に直接ふれる審議はほとんど行なわれていない。
 社会党としては,今後同法案の具体的な問題点について,きめこまかく政府を追求するもようであるが,同党ではすでに,保険料率を政府案の千分の70から千分の65に引き下げる,国庫負担の3割定率化をはかる,家族の給付を7割に引き上げる,40年度までの累積赤字は国庫で年次的に補てんする,といつた基本的な態度を決めており,政府・与党に対してこのような線にもとづいた同法案の修正をせまる方針といわれている。

日本病院協会の医療制度改革試案

著者:

ページ範囲:P.872 - P.872

 日本病院協会(会長:橋本寛敏氏)は,さる3月「医療制度ならびに診療報酬体系改革試案」を発表した。これは同協会が財政的に危機にひんしている現在の医療保険制度の改善をはかるために,昨年7月から同協会の経済委員会(委員長:神崎三益氏)を中心に検討してきた結論で,具体的な対策として,家庭医(登録医)制度の確立,病院の診療報酬の医師の技術料と病院経営費への分離,追加(自由)料金制の新設,病院などの固定設備費の公費負担制,医薬分業,薬品の配給制,薬剤費の患者一部負担制,病院薬局の独立などを提案している。

今月の表紙

「循環器学に貢献した医人の画像」その2

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.827 - P.827

 今月の表紙は,メキシコ市にある国立心臓研究所の講堂の入口の広間にある壁画で,1965年6月号(Vol.2,No.6)に紹介した絵と向かいあつているものである。これは所長のI. Chavez(1963年度の世界心臓病学会会長)の懇請によりいずれも(メキシコの画家の第一人者であつたDiego Riveraが筆をふるつたもので,循環器学の歴史を示すよき資料であるとともに,立派な芸術作品である。
 この絵の上端の中央には弦線心電計を発明したオランダのWilhelm Einthovenが機械の後に立ち,その向かつて左下には,心筋硬塞を狭心症と区別したJ. B. Herrickが右手をあげて立ち,またそのすぐ向かつて右には,肺性心を記載したP. D. White博士が左手に書類を持つて立つている。Herrickの向かつて左には房室ブロックを記載したKarl F. Wenckebachが正面を凝視している。また中央には奔馬性調律を記載したフランスのP. C. Potainが患者の胸に耳をあて,その右にはW. Roentgenが手の骨の写真を持ち,左下にはフラスコのそばにジギタリス葉を持つW. Witheringが見える。

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きのう・きょう・あした

著者: 榊原仟

ページ範囲:P.833 - P.833

学会に思う
 きようで外科学会総会が終つた。学会シーズンが始まり,私が直接関係している幾多の学会に出席しはじめてからすでに1カ月以上。この間奈良に京都に千葉にとびまわり,東京での2週間が終つて一応終了したかたちになつたが,ひきつづき小さな集まりがいくつかある。同僚の各科の諸先生も同じで,この一カ月くらいは大学がほとんど機能を停止しているといつてもよいありさまである。秋にも同じような一シーズンがくるだろう。
 この春の諸学会で得たところは大きい。各方面の新しい知識が与えられたし,いろいろな方とお会いできて楽しかつた。

内科雑誌メディチーナに寄せられた御意見

ページ範囲:P.838 - P.839

 今年のはじめ,メディチーナへのご意見をお願い致しまして,ご返信いただきました「言葉」をここに掲載いたします。もつて編集部の自戒といたす所存でございます。誌上をかりて,厚くお礼申しあげます。

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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