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雑誌目次

雑誌文献

medicina3巻8号

1966年08月発行

雑誌目次

EDITORIAL

診断自動化の限界

著者: 高橋晄正

ページ範囲:P.1089 - P.1091

医学の科学性について
 医学は単なる科学である,といい切ることにはいささかのためらいを伴うものがある。しかし,医学の科学性を否定し去ることにもまた大きな抵抗を感ぜざるをえない。医学とはなんであり,科学とはなんであり,医学のなかの科学でない部分はなんであるのか。
 科学は,自然界のなかにある客観的法則をとり出し,これを意識的に適用するものであるという。これによつて,行動における最大の効率と最大の安定性が保証されるという。

今月の主題

いわゆる自家中毒症

著者: 本間道

ページ範囲:P.1092 - P.1096

古今東西さまざまな研究がなされてきた本症について,筆者はまず,その明確な定義を与えたあとで,その症状,原因,本態へと論及し,さらにその治療と予後の問題にまで追究していく……

駆梅療法—反省すべき問題点

著者: 竹内勝

ページ範囲:P.1097 - P.1100

 最近日本の各地で顕症梅毒が増加していることが問題となつている。最近現われた梅毒の特徴と梅毒血清反応陽性のとき臨床家はどう読みとるべきか,その重要な臨床的意義について……。

<話合い>梅毒の現状を探る—梅毒の発見から管理まで

著者: 小酒井望 ,   竹内勝 ,   塩川優一 ,   鈴田達男

ページ範囲:P.1101 - P.1108

 最近,顕症梅毒が増えていると聞くが,その実態はどうか,血清反応の意味,早期治療の問題など,梅毒の最近の問題を探る。

薬の反省

降圧剤

著者: 増山善明

ページ範囲:P.1110 - P.1112

二次性高血圧の鑑別と高血圧の重症度判定が必要
 高血圧の治療を行なう前にまず患者の正しい診断と評価とが必要である。その第1は二次性高血圧の鑑別である。とくに30歳以下の若年者の高血圧や家族性素因の少ないものでは注意しなければならない。腎性・内分泌性・心脈管性・神経性を分けるが,外科的治療の対象となりうる高血圧と慢性腎疾患が含まれる。その第2は脳・心・腎・眼底などの重要臓器の血管障害の程度と病変の進行の速さについての診断である。これには①血圧値とくに最小血圧,②眼底所見(Keith-WagenerおよびScheie分類),③心臓所見(レ線上の心拡大,心電図所見,心不全の程度),④腎障害(PSP15分値,血中尿素窒素.尿沈渣所見),⑤脳血管障害(既往の卒中発作.神経学的所見,頭痛など)の5つの因子について障害度を決め,全体の重症度を見ることが必要である。
 高血圧患者に降圧剤治療を行なうことにはこんにちほとんど異論がない。しかし初診時血圧がかなり高い場合でも,適当な鎮静剤(Phenobarbital,Chlordiazepoxideなど)の投与のみで診察をかさねて経過をみるだけで血圧が正常域近くまで下降する場合もかなりある。

診断のポイント

脚ブロックの臨床的解釈

著者: 石見善一

ページ範囲:P.1113 - P.1115

はじめに
 脚ブロックの臨床的解釈について注意すべき点は多々あるが,もつとも重要と思われるのは第1には脚ブロックはその診断自体のもつ意味は比較的少なく,重要なのは原因疾患の検討およびその対策である。第2には冠硬化ならびに心筋障害の有無を知るのに不可欠とされている心電図が,脚ブロックが存在する場合には,そのために,心臓の器質的疾患の発見にきわめて徴力となる場合が少なくないという事実である。これらはいずれも重大かつ膨大な問題でかぎられた紙面では説明しきれない憾はあるが,あえてこの2点にふれて私の責をはたしたいと思う。

甲状腺腫のない甲状腺機能亢進症

著者: 大野文俊

ページ範囲:P.1116 - P.1118

甲状腺腫は触れないが
 表題の意味は,甲状腺腫を認めえないが甲状腺機能亢進症,あるいは類似の症状を呈するものと理解してよいと考える。また現在では131Iを用いて検査を行なえば正確に甲状腺の認知や,その機能測定が可能となつているから,実地臨床上における表題のごとき症例というのは,外見または触診上,前頸部に甲状腺腫は認めがたいにもかかわらず頻脈,手指振顫〈せん〉,発汗,神経不安などがみられBMR,(Read式によるものでもよい)が増加しているという場合が大部分と思われる。
 このような症例については古くからいくつかの名でよばれてきており,たとえばmasked hyperthyroidism(Charcot),basedoid,formes frustes(Zondek),para-Basedow(Labbe)などや最近ではextrathyroidal hyperthyroidism(Zondek),extrathyroidalhypermetabolism(Bruger)などがある。ところでこのような名でよばれる症例のなかには,病態生理上から甲状腺自体の機能亢進はあるが甲状腺自体はまだ明らかに腫大していないために,あるいは部位的条件のために甲状腺腫として触れがたい症例と,甲状腺機能は正常のため甲状腺腫はないが甲状腺以外の要因により新陳代謝が亢進して一見,甲状腺機能亢進に見えるという症例が混在している。

心因性じんま疹

ページ範囲:P.1119 - P.1121

治療のポイント

乳児下痢症の治療—食餌制限と補液療法のめやす

著者: 浦田久

ページ範囲:P.1122 - P.1123

 乳児下痢症というのは,生後ほぼ2年までの小児の下痢を主徴とする疾患群の総称である。したがって乳児下痢症の範囲は広く,きわめて軽症で特別な治療を必要としないものから,治療が複雑多岐にわたり専門的な知識と経験を必要とする重症なものまでを包括しているわけである。

大酒家の生活指導

著者: 新福尚武

ページ範囲:P.1124 - P.1125

大酒家の3型
 大酒家(大ざけのみ)といわれるものに3型がある。第1の型はいわゆる酒豪で,斗酒を辞さないが,自制が可能で,のむまいとすればのまないでいることができ,日常生活に乱れがなく,作業能力もふつうである。第2の型はいわゆるのんべえで,酒をしきりにほしがり,のみはじめるとだらしがない。しかし酒をのんでないときは常人と変わらず,作業もふつうにできる。第3の型はのんべえであるとともに,酒をのまないときでも長年の飲酒による障害が身体精神の各方面にある。すなわち肝臓,心臓,腎臓,神経系の障害を初め,精神面では知能の低下,意志薄弱,持久性の低下などがあり,作業能力が劣り,生活にも乱れがある。さらに場合によつては,この基礎のうえに急性の精神症状―意識混濁,幻覚・妄想,健忘症候群―などを生ずる。
 以上のような区別は治療を進めるにあたつてはきわめて大事なこととなる。第1のものはほとんど問題がない。飲酒の害がわかれば禁酒できるから,そのように指導すればよい。第2のものはいわゆる嗜癖(addiction,Sucht)で,治療上かなり困難がある。なかなか酒がやめられず,やがては第3の型に移る。第3の型は嗜癖の結果としての中毒(alcoholism)で,治療上はもつとも困難である。

萎縮性胃炎と肥厚性胃炎

著者: 本田利男

ページ範囲:P.1126 - P.1127

 慢性胃炎の胃粘膜病変は粘膜と腺細胞における炎症性変化であるといわれている。したがつて,その著明な病変では胃液分泌と運動機能に障害が現われて胃症状を呈してくるが,軽度の場合には臨床上,ほとんど愁訴がなく疾患としての特徴も少ないものである。

小児の薬用量

著者: 原弘毅

ページ範囲:P.1128 - P.1129

小児と薬剤
 一般に小児に用いられる薬用量は,しばしば少量に過ぎる傾向があるが,危険のない範囲において十分効果が期待できる量(有効量)を用いなければ意味がない。
 有効量というのは,副作用(治療を妨げるような作用)を起こさず,さらに進んで,自然治癒を助けるような量でなければならない。成人では,副作用を現わすような薬剤に対しては,投与量に一定の標準がある。すなわち成人の薬用量に対しては,薬局方で,1回および1日の極量を定めているのである。極量というのは,もちろん有効量と同じく(否,それ以上に)副作用を示さない最大量のことで,わが国では,極量は成人にのみ定められた量で,小児には極量は定められていない。

ファースト・エイド

カット・ダウン

著者: 安富徹

ページ範囲:P.1130 - P.1131

はじめに
 持続的に点滴静注を行なうさいに,静脈を手術的に露出し,これに小切開を加えてポリエチレン・チューブなどを挿入,固定しておくと患者が少しぐらい動いても静脈を確保することができる。このような方法をcut downという。外科領域では広く行なわれているが,内科医の方々はメスを持つのがおつくうなのかあまり行なわれないようである。しかしこの方法はけつして高等な技術や多数の器械が要るわけではない。ショック状態で静脈の出にくい場合や重篤で長時間にわたつて輸血や輸液の必要な症例には,ルーチンに行なうべき方法である。日ごろあまりメスをお持ちにならない方のためにその要点を申しあげよう。

器械の使い方

床頭台のくふう

著者: 島内武文

ページ範囲:P.1134 - P.1136

人手を減らすくふう
 最近の看護婦不足は当分緩和しそうになく,一般に人件費の増加は多数の病院に赤字をもたらしてきた。人手の節約は何にもましてわれわれの当面の課題となつている。ことに従来安価な人手をあてにしていた病院診療所においては,あらためて人手を減らすくふうが必要であり,病院業務の大部分を占める看護についてはことに真剣な合理化の努力が必要となつてきた。いわゆるProgressive Patient Careといつて,集中治療病棟やセルフケア病棟を分けて看護を行なうこころみもその一つである。最近は人手の値段は高くなつた反面,物の値段はかなり安くなつたのであるから,病棟や病室の設備を充実することで少しでも看護婦の仕事を減らすことが考えられねばならない。
 元来洋式建築である病院の病室では,日本の畳の部屋とはちがつて,ベッド・イス・戸だな・洗面台などの造作や家具が必要欠くべからざるものである。まして患者は種々の点でその行動が制限されているので,いつそう設備にくふうが必要である。しかるに従来の病室はベッドがポツンとあるだけの殺風景なものが多く,かろうじて安い人手のサービスでこれを補つていたにすぎない。今後はこれに少なくも床頭台・ベッドテーブルなどの設備がそなえられて患者の便宜につとめなければならない。

正常値

BSP検査法の意義と正常値

著者: 中沢幸胤

ページ範囲:P.1132 - P.1133

 BSP検査は,数多い肝機能検査のなかでも,特に肝疾患に特異的な検査であり,ほかの疾患では異常値のみられることが最も少ない検査法の,一つといえよう。また肝循環動態の異常や胆汁うつ滞の有無をも含めた,肝全体としての機能レベルの指標として,早期診断や予後の判定にきわめて有用であり,その上,測定法も色素をアルカリで発色させて比色計でみるだけという簡便さのため検査施設による測定値の変動も少なく,再現性にもすぐれている。Leon Schiffはその著書の中で,どの方法よりも最も完全に近い肝機能検査法であるとまで推奨している。BSPの正常値についてみても,膠質反応や酵素反応を利用した検査法にくらべて,その範囲も狭く比較的明確で,種々の文献を比較参照してみても,それほど大きな相違は認められないのであるが,なお,対象となる生体側の条件や測定上の問題について留意すべき点も少なくないので,逐次検討していきたい。

他科との話合い

尿路結石—切るべきか切らざるべきか

著者: 藤田拓男 ,   高橋政夫 ,   川井博

ページ範囲:P.1158 - P.1164

 自然排出を期待できるものはどんな結石か。内科における保存療法の期限は。手術はどのような場合に行なうか。手術を禁忌とする場合は,………内科で取り扱う尿路結石患者のふえつつある昨今,具体的な取り扱いについての話合いをもつた。

基礎医学

溶血性貧血の溶血の機序

著者: 福岡良男

ページ範囲:P.1168 - P.1173

 溶血の機序は,近年における免疫血液学,酵素学,電気泳動法の研究,アイソトープによる検査の進展に伴いかなり明らかとなつてきた。

症例 症例からみた心臓疾患の診断(2)

10歳時心臓弁膜症といわれ,現在階段上昇時などに動悸を訴える患者の例

著者: 伊藤良雄

ページ範囲:P.1177 - P.1180

症例
 14歳男子の心電図である。10歳時学校の身体検査で心臓弁膜症といわれたことがある。現在の愁訴は階段上昇や自転車などで動悸を感ずる。チアノーゼは気づかれていない。

レ線像から先天性心疾患をみわける(IV)

著者: 高尾篤良

ページ範囲:P.1181 - P.1184

肺動脈弁狭窄症(図1)
 11歳男児。生後1カ月の健診で先天性心疾患といわれた。生長,発育悪くなかつた。小学5年の競走時,動悸,呼吸困難を訴えた。
 体格栄養中等,チアノーゼなし,胸骨上窩に振顫を触れる。胸骨下半の挙上を触れ,心尖は強盛でない。肺動脈弁口部に収縮期振顔あり,胸骨左縁,1,2,3肋間から頸部にかけ粗い収縮期雑音を聴き.2音は減弱している。心電図:右室肥大・心カテーテル,左右短絡なし,右室圧100/0mmHg,肺動脈圧20/10mmHg,引抜き曲線は弁性狭窄様,レ線所見:心胸廓比50%,右房縁円く膨隆し,左心縁円く,右室肥大を思わせる。大動脈頭小さくない,肺動脈弓は著明に膨隆し,後狭窄性拡大を示す。

食道二重憩室

著者: 八島顕

ページ範囲:P.1185 - P.1187

 消化器の憩室に関しては従来もポツポツ報告されている。その頻度は十二指腸憩室がもつとも多く全体の75%を占め,次いでMeckel,食道,胃空回腸,大腸の順であるといわれる。レントゲン検査の発見率は,食道,胃,十二指腸などの上部消化管は発見されやすい。最近,今まで何回か検査を受けながら見落され,人間ドック検査で偶然発見された食道二重憩室の一例を経験した。

グラフ

顕症梅毒

著者: 岡本昭二

ページ範囲:P.1078 - P.1079

 第二次大戦後激しい流行をした梅毒も,ペニシリンの普及により一時火の消えたようになつていた.しかし,昭和37〜8年頃より新しい顕症梅毒の流行が報じられるようになり,初期には九州と関西地方に発生していたが,現在では全国各地でその発生が報じられている.昨年金沢における日本皮膚科学会のシンポジウムにも、"顕症梅毒"がとりあげられたが、最近経験した患者を中心として簡単な説明を行なつてみる.

線維素溶解現象

著者: 佐藤智

ページ範囲:P.1081 - P.1086

血沈を用いるぐらいの気らくさで
 線維素溶解現象(線溶)の研究は,日本でも最近たくさん発表されてきたが,その大部分は大学の研究室で行なわれたもので,一般病院のものは非常に少ない。それは,この測定法が他の臨床検査法に比して確立していないため,敬遠されているからであろう。
 しかし,みずから手をくだして,少し測定してみれば,それほど困難なものではなく,臨床的に十分役にたつ方法がある。

検査データの考えかたとその対策

クームス試験陽性

著者: 河合忠

ページ範囲:P.1073 - P.1073

 クームス試験は血清中の不完全抗体(例:Rh抗体)を検出する目的で利用されている。不完全抗体は抗原である赤血球と反応し結びついたとしてもそのままでは赤血球凝集は起こらないので,抗原抗体反応が起こつたかどうかは観察できない。クームス試験はこれを肉眼的に赤血球凝集として観察できるように,抗原抗体反応の場へ抗グロブリン血清を加え,これに模型図に示すような橋渡しの役をさせたものである。

If…

検査をやつても業績にならなかつた往昔—松本市金井内科 金井泉氏に聞く

著者: 長谷川泉

ページ範囲:P.1138 - P.1139

難検査は5%以内
 長谷川 先生は臨床検査の草分けのような立場で,多年この途で苦労されてこられたわけですから,開業なさつていても検査はご自分でおやりになりますか。
 金井 簡単なものは全部自分でやりますよ。難検査は臨床検査センターに出しますが。

印象に残った本

心を静め,道をひらく—富永半次郎著—「釈迦仏陀本紀」

著者: 加瀬正夫

ページ範囲:P.1140 - P.1141

 印象に残つた本といえば私が読んだ大多数の本は印象に残つており,ことに医学書については印象に残らなければ仕事にならない。したがつてそのなかからどれか一つ二つあげなさいといわれてもとまどうのである。それは逆にいえばきわめて強烈な印象を受けたものがないからであつて,多くは医師としての日常の仕事に役だつという意味において印象に残つたというのにすぎない。他方医学書以外にも読んだ若干の文芸書はあり,いずれもなんらかの感銘を与えられたが,私が生涯忘れることができず,今後も何度も読みなおしたいし,読まなければならない本が一つある。それは富永半次郎著「釈迦仏陀本紀」ならびに余論である。

私の意見

公衆衛生,予防医学,治療医学の統一を—地研の業務を省みて

著者: 近藤師家治

ページ範囲:P.1142 - P.1143

 この小論の内容は,私が現在,勤務する地方衛生研究所または衛生試験所(以下地研と略称)という所が,いつたい,どんな業務を実施し,また将来どんな方向に進もうとめざしているのかを,よく識つてもらいたいという願いである。その認識から自ら各方面の期待や希望が生まれ,したがつて結論も出ようというものである。

私のインターン生活

あるバイト

著者: 勝呂徹

ページ範囲:P.1144 - P.1144

 「あるバイト」とは変な題名だが,これは熊本大学研修医が発刊している新聞の名称である。アルバイトを洒落てつけたものであろうが,命名者によると「勉強する」という意味であるという。作つた目的は,われわれの仲間に起こる日常のできごと,アルバイトなどの体験談などを全員に知らせる目的であつたのであろうが,最近は内容も豊富でなく,出版責任者も気おちしたのか,一月近くとぎれている。そこでこれに提供した話題の中から小生の体験談を披露しよう。
 時は初夏,熊本の夏は非常にむし暑い。研修医ルームの一台しかない扇風機の前には,いつものごとく四,五人たむろして雑談をやつている。そこへ友人がやつて来て,病院の宿直をたのまれた。主体は結核療養所,その他内科,外科,整形外科の診療もやつている。二百床程の病院であるとのこと。交通の便が非常に悪い。午後五時半の終バスにおくれた。しかたなく他方面行きのバスにゆられて三十分。ここよりテクテクと歩きだした。十分もすれば緑につつまれた郊外にでる熊本のこと。日暮に近い田んぼでは,のこりの田植をいそぐ農夫がセカセカと働いている。しばしあたりを見まわして,道を定めてまた歩きだした。通り過ぎる自動車にむせびながら七時頃病院にたどりついた。

この症例をどう診断する?・13

出題

ページ範囲:P.1076 - P.1076

■症例
男,40歳,公務員
初診 昭和38.8.12

討議

著者: 梅田博道 ,   和田敬 ,   土屋雅春 ,   市川平三郎 ,   高橋淳

ページ範囲:P.1192 - P.1198

この症例のヒント
 梅田 高橋先生のはちよつといままでのとケースが違いますから……これだけでは,ネタ不足のようなので,高橋先生にちよつと解説していただいて……。
 高橋 間接のフィルムが2本ございます。それをちよつと見ていただきます(図1参照)。この患者さんは,38歳の公務員です。昭和38年の8月に私たちの病院にきたわけですけれども,大島の人で,われわれは大島の検診に行つていた。どうも十二指腸潰瘍のような症状だつたので,大島に帰つて検診を受けるということをいつて,帰してしまつたのですね。ちようど大学の休みだつたので。それが,このフィルムなのですね。

ルポルタージュ

Wir haben einen Gott, der da hilft.—Diakonissen-Krankenhaus(Karlsruhe)を見て

著者: 藤沢俊雄

ページ範囲:P.1189 - P.1191

 1965年夏,短かい休暇旅行に,西独のKarlsruheの工科大学にフンボルト財団のStipendiatとして留学中の,旧知の山田恵彦工学博士(東海電極)一家を訪問しました。かねて,中程度の大きさの病院を見学したいと手紙しておいたところ,Diakonissen病院という新教のキリスト教団の病院の見学がかなえられました。ドイツでは公共の施設の見学になかなかめんどうな手続きがあつて,予告なしに行つて,ちよつと見せてもらう,というわけにはゆかないようです。やつかいな,そのAnmeldungをとられた山田博士のお力添えと,ご案内いただき,人間がはいらぬことを条件に,写真撮影もお許しくださつたOberschwester,MinaKorb女史のご厚意に感謝します。

痛みのシリーズ・10

血漿のガラス接触による活性化の機序

著者: 清原迪夫

ページ範囲:P.1174 - P.1175

 体外にとり出された血液や炎症性滲出液では,そのままでは痛みを起こす物質,ないし血液キニンは検出できない。しかし,ガラスと数分接触させると,血液,水疱液,リウマチ患者の関節液,炎症性肋膜液などは,カンタリジンでつくられた水疱をはいだあとの皮膚層に投与するときには痛みを起こし,剔出したラット子宮やモルモット回腸標本の収縮を起こすから,この事実からして血漿キニン活性が検出されるわけである。

統計

周産期死亡の国際比較

著者: 菅沼達治

ページ範囲:P.1075 - P.1075

 周産期死亡"perinatal death"とは,WHOの定義によりますと,妊娠第8月以後の後期死産と生後1週未満の乳児死亡を合計して,出生に対する比率として,みたものであります。
 近年,月齢の進んだ乳児死亡の低下はまことにいちじるしいものがありますが,出生後まもない死亡の改善はそれほどではなく,この時期の死亡は後期死産と共通な原因すなわち母体の健康状態と密接な関係があり,両者を総合して観察することは,公衆衛生の面からは新しい生命を守るための対策の,臨床医学の面からは産科治療技術の水準のそれぞれ一つの指標として有意義なものであります。

文献抄録

γ-グロブリンは肝炎には無効—Medical, News, JAMA Oct. 25, 1565

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.1199 - P.1199

 テキサスとメリーランドでそれぞれ独立して行なわれた2つの研究の結果,γ-グロブリンは,血清肝炎に対する予防剤としては,無効なことが判明した。
 テキサスの研究では,γ-グロブリンの注射を受けた患者は1,703名あつたが,この群における血清肝炎の発生率は,注射を受けなかつた患者3,310名におけるそれを,やや下まわりはしたものの,両群のあいだには有意の差がなかつた。

ニュース

開放型医療施設の問題

ページ範囲:P.1188 - P.1188

 開放型医療施設は,オープン・システム病院や臨床検査センターのように,部外の医師が利用できる医療施設であるが,これについて医療制度調査会は,昭和38年の答申でつぎのように述べている。
 すなわち,開放型病院の問題についてこれまで多くの論議がなされてきたが,それらは主として病院の開放者,管理者の立場からの意見や批判であつた。したがつて,医師,歯科医師が社会的機能を発揮するための医療施設はいかにあるべきかという観点にたつて,この問題は再検討されなければならない。この見地からすると,開放型病院は医師,歯科医師と患者の人間関係の保持,診療の一貫性,開業医の技能の向上,医療施設への投資の節減などの利点が考えられるため,医療施設は原則として開放型の形態をとることが望ましい。とくに国立や公的医療施設は開放型を原則とすべきであり,また,開放型病院や臨床検査センターの育成にもつと力をそそぐべきである,といつている。

健保連の医療保険改善案

ページ範囲:P.1176 - P.1176

 健康保険組合連合会(会長 安田彦四郎氏)はさる5月28日,「医療保険制度に対する基本的考え方」を発表した。これは,医療保険の給付を平均9割とする,軽症患者の費用は自己負担とする,社会的な原因による医療に対する公費負担を増額する,医療機関の体系的整備を推進する,などの方針をうちだしたもので,医療保険制度の抜本的な改正をはかるために,臨時医療保険審議会の設置などが考慮されているおりから,今後の政府による医療保険制度の再検討に,かなりの影響をおよぼすのではないかと考えられている。この報告は,第1医療保険の体系,第2医療保障に対する国の責任,第3医療保険と自治管理,第4保険医療の改善,第5行政機構の整備,からなつているが,そのうちおもなものを紹介するとつぎのとおりである。

話題

F. C. Reubi教授の講演より—利尿剤の作用機序について

著者: 清水直容

ページ範囲:P.1109 - P.1109

 教授の講演は主として利尿剤の作用機序についてであつたが,とくに新しいsulfonamide系利尿剤であるfurosemide〔N-(2-furylmethyl)-4-chloro-5-sulfamyl anthranilic acid〕について述べられた部分が多い。
 利尿剤の作用は尿細管におけるNa再吸収の阻止によつて説明されるが,その阻止機序はかならずしも十分に明らかにされていない。よく知られているように最近の腎生理学ではHenleの係蹄部が主役を演ずるcountercurrent機構を重視し,これによつて生ずる腎髄質の高滲透圧が水の再吸収に重要であるとしている。人間の場合,micropunctureやstop flow法などで尿細管の種々な部分でのサンプルを得ることができないので利尿剤の作用機序,作用部位もクリアランスの概念を用いての間接的な方法で推定する以外に方法がない。Heinemannらが述べたCH2O,TcH2Oなどの概念はこの点有用であつて,Reubi教授も,furosemide投与時,Cosmの著明な増加,CH2O,TcH2Oの減少を見ることから,この薬剤の作用部位を近位尿細管とHenleの係蹄の上行脚の2カ所にあると考えている。

血清肝炎の問題点をつく—第14回日本輸血学会総会から

著者: 村上省三

ページ範囲:P.1165 - P.1165

 第14回日本輸血学会総会は4月1,2の両日,綿貫慈大教授のもとで慈大中央講堂で行なわれた。演題のうちからとくに臨床医家に興味あるものを2,3ひろいあげてみたい。

今月の表紙

「ローマ時代の医療器具」

著者: 本田一二

ページ範囲:P.1100 - P.1100

 ロンドンの大英博物館を訪れると,2階にあるギリシヤ・ローマ時代の生活部門に,各種の医療器具が展示してあつた。ナポリ国立博物館にあるポンペイ発掘の医療器具と,ほぼ同じころのものであろう。
 青銅製のピンセット,スプーン,消息子,鉤,鉗子,外科用のこぎり,小刀などが並べてあつた。説明のラベルに「メスの歯は鉄製であつたため腐蝕した」と書いてあつた。

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きのう・きょう・あした

著者: 山形敞一

ページ範囲:P.1137 - P.1137

 5月23日青函連絡船「大雪丸」で函館港に着いたのは午前11時であつた。教室出身の函館市立病院副院長H博士ら同窓の諸氏の出迎えを受けて駅前のKホテルで小憩後,ハイヤーで当別に向う。途中函館の町を出はずれた七重浜に青函連絡船遭難慰霊碑が立つている。昭和29年ドイツのフライグルクに留学していた私はストックホルムの第3回国際内科学会議に出席の帰途,西ドイツの首府ボンの駅前の特報ビラで洞爺丸の遭難を知つた。そしてフライブルクの下宿に届いていた妻の手紙で,1000名以上の遭難者があり,そのなかにわれわれの媒酌したW医学士夫妻の混つていることを知らされ,痛恨の念を禁じえなかつた。蕗のしげる山街道には黄色いタンポポが咲いており,崖くずれした岬道を走つてゆくと当別岬の白い灯台が見えてくる。当別の磯は浅く,渚に材を立てて拾いあつめた昆布を乾している。当別駅にはトラピスト修道院のH嘱託医がわれわれを待つていて,修道院まで案内してくれた。トラピスト修道院は海岸から一直線にポプラ並木のつづく街道の真正面の丘陵の上に立つた赤煉瓦の異国的な建物である。H医師の案内で丘の上の修道院に着いたのは正午を少し過ぎていたので,直ちにF神父に紹介され,賓客用の食堂で昼食の御馴走になる。流石にフランス系だけあつて肉や馬鈴薯の味つけも良いし,パンもクッキーもバターもなかなかのものである。

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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バックナンバー

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特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

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60巻11号(2023年10月発行)

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特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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