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雑誌目次

雑誌文献

medicina30巻1号

1993年01月発行

雑誌目次

今月の主題 出血傾向の臨床 Introduction

凝固系の働き

著者: 小山高敏 ,   青木延雄

ページ範囲:P.6 - P.9

●血液凝固は,フィブリン塊が出現して血液流動性を失うまでのcascade状生化学的反応である.
●血液凝固反応は,刺激を受けた血小板や傷害を受けた内皮細胞膜リン脂質上で促進される.
●血液凝固機序は,組織因子によって惹起される外因系と,陰性荷電異物面との接触により始動する内因系とがある.止血には主として外因系が関与すると考えられているが,外因系が凝固の開始に働き,内因系は凝固の維持に働いているとも考えられる.
●凝固因子の欠損により,出血傾向が生じる.

血小板機能の理解

著者: 瀧本泰生 ,   藤村欣吾

ページ範囲:P.10 - P.15

●血管損傷部位のコラーゲン線維とvWFを介しGPIb/IXが,またコラーゲン線維とGPIa/IIaが結合することにより粘着反応が起こる.
●血小板膜上のreceptorに各種ligandsが結合すると,アラキドン酸経路やCa2+の動員,カイネースによるリン酸化などを通じて血小板が活性化される.
●骨格蛋白の再構築により変形および放出反応が起こる.
●活性化されたGPIIb/IIImaとフィブリノーゲンが結合することにより凝集反応が起こる.

線溶系のしくみ

著者: 斎藤英彦

ページ範囲:P.16 - P.18

●線溶は凝固の結果生じた線維素(フィブリン)を溶解するのみならず,組織修複,血管新生,排卵などにも関与する.
●フィブリン形成後にはじめて線溶が始動する.
●線溶系は2種類のインヒビター(α2PI,PAI)により制御を受けている.
●血管内皮細胞はt-PA,u-PA,PAI-1を産生・分泌する.
●血管内皮細胞は,プラスミノゲン,t-PA,u-PAのリセプターを持つことによっても線溶系に大きな役割を果たす.

出血傾向のある症例へのアプローチ

著者: 吉田信彦

ページ範囲:P.20 - P.24

●日常経験する出血傾向は,ITP,再生不良性貧血,白血病,薬による血小板減少,肝硬変,DIC,ビタミンK欠乏症など後天性の疾患が多い.
●先天性・遺伝性の出血傾向は家族歴や既往歴の聴取により,ある程度判断できる.血友病やvonWillebrand病,血小板無力症が多い.
●出血時間,関節穿刺,肝生検などは凝固のスクリーニング検査を予め行い,慎重に施行する.
●症例によっては血小板機能を抑制しない鎮痛剤を投与する.ワーファリンは妊婦に禁忌である.
●薬による色調変化と,血尿や下血の誤認に注意.
●偽性血小板減少症は意外に多い.

出血傾向にはどのような検査を行うか

著者: 安藤泰彦

ページ範囲:P.26 - P.30

●出血性疾患の診断は,スクリーニング検査によって見当をつけ,精密検査で診断に至る.
●出血時間の延長は,血小板の量(血小板数)または質(血小板機能)の異常による.
●血小板減少症の診断には,骨髄巨核球数が重要な手がかりを与える.
●血小板機能異常症は血小板凝集能検査でスクリーニングを行い生化学的特殊検査で診断する.
●凝固因子異常症はAPTT,PTによって見当をつけ,因子の測定を行う.
●ループスアンチコアグラントでは,出血傾向はみられず,血栓傾向,習慣性流産の頻度が高い.

凝固異常による出血傾向

凝固異常の臨床的とらえ方

著者: 高松純樹

ページ範囲:P.32 - P.35

●凝固異常による出血は,特徴ある臨床症状を示すことも多く,詳細な問診が必要である.
●凝固異常による代表疾患である血友病では,筋肉内出血,関節出血などの深部出血が特徴である.
●臍帯脱落部の出血は無フィブリノゲン血症,第XIII因子欠乏症に特徴的である。
●DICでは採血部位,外傷部位からの出血が特徴である.

第Ⅷ因子欠乏症(血友病A)

著者: 三上貞昭

ページ範囲:P.36 - P.38

●血友病Aの遺伝子解析が数多くの症例で行われてきている.
●血友病Aの治療に用いられる第Ⅷ因子製剤の改良には著しい進歩がみられる.

von Willebrand病

著者: 藤村吉博 ,   吉田英里

ページ範囲:P.39 - P.42

●従来,von Willebrand因子のmultimer解析によってなされていたvon Willebrand病の病型分類は,患者genomic DNAのPCR増幅および塩基配列決定を用いて分子レベルで明らかにされるようになった.

先天性無フィブリノゲン血症

著者: 白幡聡

ページ範囲:P.43 - P.45

●先天性無フィブリノゲン血症は,常染色体性劣性遺伝性疾患で,本邦では約30例の報告がある.出血症状は軽〜中等症の表在性出血が多く,特に新生児期に発現する臍出血が特徴的.
●先天性異常フィブリノゲン血症は,免疫学的方法で測定したフィブリノゲン量が正常であるにもかかわらず,トロンビン時間により測定したフィブリノゲン量が著減しているのが特徴で,25種類以上の構造異常が明らかにされている.臨床症状は,フィブリノゲンの多彩な機能を反映して,出血傾向,血栓傾向,創傷治癒の遅延などが認められる.

急性前骨髄球性白血病と癌にみられるDIC

著者: 定方宏人 ,   小林紀夫

ページ範囲:P.46 - P.48

●播種性血管内凝固症候群(disseminated intra-vascular coagulation:DIC)の病態はきわめて多様であり,その発症機転も基礎疾患や誘因によりさまざまである.
●悪性腫瘍や急性白血病では,これらの腫瘍細胞あるいは活性化された単球/マクロファージの組織因子(tissue factor:TF)が,外因系血液凝固を活性化し,DICを発現する.

敗血症とDIC

著者: 北原光夫

ページ範囲:P.50 - P.52

●敗血症の状態から敗血症ショックへと進行すると,DICの頻度は非常に高くなる.
●DICの出現機序は,エンドトキシンと血管内皮細胞との接触,またマクロファージとの接触によるものであり,これが連鎖反応を引き起こす.
●治療の主体は,今のところ抗生物質の投与と補液と出血傾向の是正にある.

肝疾患と凝固異常

著者: 金山正明

ページ範囲:P.54 - P.56

●劇症肝炎,非代償性肝硬変,重症型アルコール性肝炎などの重症肝疾患では,しばしば出血傾向がみられるが,その成因は主に,肝で生産される凝固因子の減少と脾機能亢進や脾内プール増大による血小板減少の組み合わせである.
●凝固異常を示す肝疾患には,ビタミンKの投与,新鮮凍結血漿による凝固因子の補充を行う.
●劇症肝炎や重症アルコール性肝炎では比較的高頻度に,肝細胞癌合併肝硬変や非代償性肝硬変でも時にDIC症候群を合併する.
●DIC合併例にはAT III製剤とヘパリンの併用やメシル酸ガベキサートの投与を行う.

ワーファリン使用と出血

著者: 佐野雅之 ,   早野元信

ページ範囲:P.57 - P.59

●ワーファリンはビタミンK依存性凝固因子の産生を阻害し,凝固障害を引き起こすので,使用中は常に出血の危険がある.
●ワーファリン投与中の抗血小板剤,解熱鎮痛剤,セフェム系抗生物質の併用には,特別な注意を要する.
●出血時は投与を中止し,ビタミンKを補充する.
●コントロールの基準はプロトロンビン時間だが,国際的な標準となるINRに換算すると,施設間での比較が容易である.

ヘパリン使用と出血

著者: 新名主宏一

ページ範囲:P.60 - P.62

●ヘパリン製剤には,低分子ヘパリン(LMWH)と未分画ヘパリン(UFH)の2種類がある.
●LMWHの特長は,生理的止血機転を強く阻害することがなく,出血症状をはじめ副作用が少なく使用しやすいことである.UFHの特性は,抗凝固活性が強い反面,出血症状も発現しやすいことである.
●UFH使用時には,APTTにより投与量をモニターし,過量投与にならぬよう慎重に投与すべきであり,重篤な出血症状発現の際は抗ヘパリン剤(硫酸プロタミン)の投与が必要である.

後天性凝固阻止因子

著者: 渡辺清明

ページ範囲:P.64 - P.66

●後天性凝固阻止因子にはループスアンチコアグラント(LA),および第VIII因子阻止物質など各種凝固因子に対する阻止因子がある.
●本阻止因子はAPTT,TPの延長とcirculatinganticoagulantの検査が陽性になることで見いだされる.
●LAは抗リン脂質抗体と密接に関連する.
●LAはin vitroでは凝固阻止作用があるが,これを認める患者には血栓症が多い.
●凝固因子阻止物質は,血友病の治療中に認められることが多く,出血の原因となる.時に分娩後,輸血後,薬物投与後などにもみられる.

全身性線溶

著者: 中村裕一

ページ範囲:P.67 - P.69

●全身性線溶の原因は,活性化系の過剰と抑制系の低下に大別される.
●循環血中でプラスミンが大量に生じた場合には,フィブリノゲンや他の凝固因子も分解する.この際生じたFDPはDダイマーを含まない.
●合成抗線溶薬(tranexamic acid,ε-amino-caproic acid)は,プラスミンのフィブリンへの作用を阻害し,線溶亢進による出血に対して有効である.

血小板と出血傾向

血小板減少症へのアプローチ

著者: 得平道英 ,   半田誠

ページ範囲:P.72 - P.76

●血小板は生体内において,一次止血と呼ばれる止血機構の最も大切な働きを担っており,血小板減少症の診断は臨床的に重要である.血小板減少の機序および診断を考えるうえで,血小板の生成と分布および崩壊の過程を知ることが必要である.

特発性血小板減少性紫斑病

著者: 塚田理康

ページ範囲:P.78 - P.80

●特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は,抗血小板抗体・免疫複合体による免疫性血小板減少症である.
●血小板数が5万/μl以下になると出血症状が出現する.
●急性型と慢性型に分けられ,急性型は小児,慢性型は成人女子に多くみられる.
●ITPの除外診断に骨髄巨核球数算定,血小板結合IgGの定量は不可欠である.血小板寿命の測定により診断が確定する.
●第1選択は副腎皮質ホルモン投与,有効率が最も高いのは摘脾療法である.

血栓性血小板減少性紫斑病

著者: 服部晃 ,   布施一郎 ,   帯刀亘

ページ範囲:P.81 - P.83

●微小血管病性溶血性貧血(正色性貧血,高間接型ビリルビン血症,網赤血球増多,破砕赤血球症),血小板減少(出血),腎障害,精神神経所見,発熱の症候群に注意する.精神神経症状は動揺する.免疫異常を示唆する所見があることがある.
●播種性血管内血液凝固症との鑑別が困難な例や時期がある.
●早期診断が重要.診断,治療の進歩により,致死率が著しく改善された.
●血漿交換・輸注を行う.特に前者が有効.抗血小板剤を併用する.ステロイドがよいことがある.

骨髄抑制による血小板減少

著者: 田所憲治 ,   高橋孝喜

ページ範囲:P.84 - P.85

●巨核球は種々のサイトカインの働きによって多能性幹細胞から分化増殖し,血小板を産生する.この巨核球の低形成,無形成は血小板の減少をもたらす.
●末梢での破壊による血小板減少との区別は,骨髄での巨核球数の減少の確認による.
●原因は先天性の巨核球低形性と後天性の骨髄抑制に分類される.後者は癌などの浸潤による造血の場の障害と,幹細胞,前駆細胞の障害に分けられる.
●治療は原因療法,原因の除去が主で,出血時やそのおそれがある時のみ血小板輸血を行う.

薬剤による血小板減少

著者: 菊池正夫

ページ範囲:P.86 - P.88

●薬剤の副作用には臨床医は十分に熟知すべきである.
●副作用として血小板減少の記載のある薬剤を患者に投与する時には,定期的に血液検査を行い,早期発見に努める.
●血小板減少症の患者に遭遇した時は,薬剤の服用歴に関しての問診を十分に行うことが重要である.
●血小板減少の起因が薬剤と考えられる時は,ただちに薬剤を中止することが治療の第一歩である.

先天性血小板機能異常症

著者: 間瀬勘史

ページ範囲:P.90 - P.92

●血小板数が正常にもかかわらず,出血時間が延長していれば,血小板機能異常を疑う.
●血小板機能異常症は粘着・凝集・放出異常に分類される.
●病型診断には血小板凝集検査が有用である.
●治療は新鮮血小板輸注が基本となる.

薬剤による血小板機能異常

著者: 川合陽子

ページ範囲:P.93 - P.95

●血小板機能異常を来す薬剤は,作用機序の面から,アラキドン酸代謝阻害剤と環状ヌクレオチド代謝に関係する薬剤などに分類される.
●日常臨床で汎用される使用用途から分類すると,抗生物質,抗血栓剤,心疾患治療薬,Volume Expanders,向精神薬,抗腫瘍剤などに分類される.
●汎用される薬剤の中でも,アスピリン,インドメタシンなどの非ステロイド系抗炎症剤,アンピシリンやチカルシリンなどのペニシリン系抗生剤は,特に注意する必要がある.

血液疾患と血小板機能異常

著者: 森啓

ページ範囲:P.96 - P.98

●血液疾患の出血傾向には,血小板数の他に血小板機能も問題である.
●骨髄増殖性疾患では,エピネフリン凝集低下が多くみられ,二次性血小板増多症の鑑別にも役立つ.
●骨髄異形成症候群では,血小板機能低下が高頻度にある.

血管異常による出血傾向

Allergic purpura

著者: 櫻川信男

ページ範囲:P.100 - P.102

●皮膚症状(紫斑),関節症状(疼痛),腹部症状(胃腸・腎障害),神経症状,限局性浮腫などを示す.
●感染症,食物,薬剤,昆虫刺傷などが誘因となり,IgA免疫複合体に起因する全身性血管炎によってもたらされる免疫複合体病である.
●3〜7歳に好発し,春に多い.炎症反応所見腎障害所見,免疫グロブリンの変動のほか,T-リンパ球増加による白血球増加をみるが,凝血学的には毛細血管抵抗試験陽性のみみられる.
●急性期腎障害に抗血栓療法を試み,関節痛,浮腫,消化器症状にはステロイド剤を用いる.
●予後は良好.早期診断と適切な治療が重要.

出血性血管拡張症

著者: 田口博國

ページ範囲:P.104 - P.106

●出血性血管拡張症は全身の微少血管の障害が起こる遺伝性疾患である.
●針先大〜3mmの微少血管拡張が鼻粘膜,口唇,舌,手掌,消化管粘膜,肝などにみられる.
●病変部からの出血が起こり,しばしば鉄欠乏性貧血の合併がみられる.
●治療は対症的に局所の止血を行い,貧血に対しては鉄剤の投与がなされる.

出血傾向のある患者への実際的対応

頭部外傷

著者: 松元渉 ,   丸山征郎

ページ範囲:P.107 - P.109

●頭部外傷の多くは出血性であり,また頭部の特殊性から脳外科的治療が最優先され,脳外科医と密接に連携しながら注意深く治療していかなければならない.
●出血傾向のある患者の出血に対する治療の原則は,欠乏成分を補うことであり,各種輸血製剤,凝固因子製剤を使用する.

口腔外科的治療

著者: 宇野雅史

ページ範囲:P.110 - P.112

●出血傾向のある患者に対する口腔外科的治療には,内科と口腔外科医の綿密な治療連携が必要.
●出血性素因の把握には,種々の凝血学的指標に加えて出血性素因の家族歴,既往歴,薬剤服用歴などの詳細な病歴採取が必要.
●血小板減少症例には,原疾患の治療により十分な血小板数増加が期待できない場合,血小板輸血にて,血小板の補充を行う.
●血友病重症例には,補充療法を併用する.
●抗凝固療法施行症例には,術前3〜6日前に中止か減量を考えるが,凝固亢進状態の顕著な症例には,ヘパリンによる抗凝固療法も考慮する.

腹腔内出血

著者: 門田俊夫

ページ範囲:P.114 - P.115

●出血傾向を示す患者の診断には,まず,出血の既往,アスピリンなどの薬剤の内服の有無を問診することが重要である.
●出血傾向を示す患者に腹腔内出血が生じた場合,原因の検索と同時に,血小板輸注,新鮮凍結血漿,新鮮血,時に「なま血」の準備を始める.
●動脈閉塞,脳梗塞,心筋梗塞などの患者に最近広く用いられている抗凝固剤(ワーファリン,チクロピジン,アスピリン,ヘパリン)には,特に注意が必要であり,それらの特性や薬理作用について日頃から習熟しておく必要がある.

観血的手技・手術

著者: 野村武夫

ページ範囲:P.116 - P.118

●出血傾向を見逃さないように気をつける.
●出血の機序を十分見極めて対策を講ずる.

薬剤による出血への対応—血栓溶解療法,抗血小板剤の効果と合併症

著者: 石川欽司 ,   内藤武夫

ページ範囲:P.120 - P.123

●急性心筋梗塞に対する血栓溶解療法による出血:出血が生じれば,これを止血する手段はない.出血性素因の事前鑑別,急性心筋梗塞確診例のみへの使用が肝要のみへの使用が肝要である.
●心筋梗塞予防のための抗血小板剤による出血:消化器症状の問診,糞便潜血反応を行う.

対談 内科診療のあゆみ・1【新連載】

循環器領域—虚血性心疾患を中心に

著者: 山口徹 ,   尾形悦郎

ページ範囲:P.127 - P.137

 尾形 私自分が医師になった時代よりさらに昔のことはともかく,私が免許を取って始めた頃を過去だとすると,昭和32年ですか,その頃は循環器疾患の診療も,今から考えてみるとずいぶん限られていて,いくつかのコアよりなっていたような気がします.

電子内視鏡による大腸疾患の診断・11

単純性潰瘍,Behçet病

著者: 河南智晴 ,   木下芳一 ,   長廻紘

ページ範囲:P.139 - P.143

 潰瘍を主体とする大腸疾患には,Crohn病をはじめとして様々なものがある.それらの多くは多発である.単発の非特異性潰瘍の代表として単純性潰瘍とBehçet病を挙げることができる.この両者は典型例においては特徴的な病像を呈する.

Oncology Rround・25

画像診断で腫瘍の局在診断に苦慮した十二指腸乳頭部癌の1例

著者: 高木省治郎 ,   藤原俊文 ,   山田茂樹 ,   山中恒夫 ,   宮田道夫 ,   片山勲

ページ範囲:P.145 - P.148

 近年,人間ドックや外来における検診で,悪性腫瘍のスクリーニングとしてCEAやCA 19-9などの腫瘍マーカーが用いられており,その上昇は何らかの腫瘍の存在を示唆することが多い.また,その精査において腹部超音波,腹部CT検査などの画像診断が,腫瘍の診断や局在について多くの情報を提供してくれる.そのため癌の早期診断や根治治療率が向上してきていることはよく知られている.しかし時としてこれらの検査にもかかわらず,診断に苦慮する症例に遭遇する.今回はそのような一例を紹介したい.

演習

心エコー図演習

著者: 小山潤 ,   別府慎太郎

ページ範囲:P.149 - P.152

 64歳女性が労作時の呼吸困難を主訴に来院した.
 既往歴 特記すべきことなし
 家族歴 特記すべきことなし

図解病態のしくみ 肝臓病・7

慢性肝炎

著者: 清水幸裕 ,   渡辺明治

ページ範囲:P.154 - P.164

 慢性肝炎は,幅広い病態を総称したものであり,その概念も欧米と日本では異なる点が少なくない.臨床的には,約10〜20%が2〜10年で肝硬変に移行することが明らかとなっており,その病態の把握と,肝硬変への進展の阻止が重要となる.

内科医のための胸部X-P読影のポイント・15

肺結核(1)

著者: 松井祐佐公

ページ範囲:P.166 - P.172

症例
患者 34歳,男性,印刷会社勤務
主訴 咳,血痰,微熱,体重減少

心療内科コンサルテーション・8

心身症,神経症,ヒステリー,詐病はどう違うか

著者: 安藤勝己 ,   美根和典

ページ範囲:P.176 - P.179

 胃潰瘍の患者に「消化器病」といった一般的な診断名をつけて,専門医に紹介する医師はまずいないと思われる.しかし,大学病院という特殊性もあるのか,当科で診療に当たっていると,「心身症」という診断をつけられ,かなり厄介ばらい的なニュアンスで紹介されてくる患者も多いことに気づかされる.このようなことが起きるのは,心身医学に対する理解不足が直接の原因であろうが,その底には心身症の患者にかかわるのは面倒だといった治療者側の認識があるからだと思われる.患者は治療者の接し方によっていろいろな顔を見せるものであり,患者を敬遠するような対応からは,心身症は病気でない病気,神経症は気のせい,ヒステリーはわがままといったような理解の仕方が出てきてもおかしくない.
 しかし,このような対応は,病気ではないから治療は必要ないという形で患者を切り捨て,疎外するばかりか,治療者にもしばしば不愉快な結果をもたらす.心身症の病態を治療的な見地から理解することは,結果として患者も治療者も楽になることにつながると考えられる.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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