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雑誌目次

雑誌文献

medicina30巻13号

1993年12月発行

雑誌目次

今月の主題 循環器疾患の画像診断 何を診断できるか—適応と限界

心エコー法

著者: 大木崇 ,   福田信夫 ,   井内新

ページ範囲:P.2240 - P.2243

●Mモード法は形態異常と機能異常のいずれについても診断できるが,特に心臓内構造物の運動異常や時相分析の評価にすぐれている.
●断層法は二次元表示であるため,心臓の空間的形態異常や病変の拡がりを評価できる.
●心エコー法による診断情報は検者の知識とテクニックに依存する.

ドプラ心エコー法

著者: 竹中克

ページ範囲:P.2244 - P.2247

●ドプラ法とは,ドプラ原理を利用して,超音波により非観血的に血流速度を測定する方法である.
●ドプラ検査には,カラードプラ法,パルスドプラ法,連続波ドプラ法の3種類がある.
●ドプラ検査でわかるのは,血流速度,血液の流れ方,血流量,圧などの情報である.

コントラスト心エコー法

著者: 鄭忠和

ページ範囲:P.2248 - P.2251

●末梢コントラストエコー法は,肺を通過しないコントラスト剤を注入し,右心系の血流を可視化して短絡疾患や三尖弁逆流を診断する.
●心筋コントラストエコー法は,冠動脈内にコントラスト剤を注入し,その支配灌流領域を断層心エコー図に可視化する.
●経静脈性左室造影法では,肺・毛細管を通過するコントラスト剤を末梢静脈に注入し,左室内腔をコントラストエコーで造影する.
●ドプラ信号増強コントラストエコー法は,狭窄血流や逆流血流のドプラ信号をコントラストエコー法を用いて増強する.

負荷心エコー法

著者: 黒田敏男 ,   島田和幸

ページ範囲:P.2252 - P.2254

●負荷心エコー法には主に運動負荷および薬物負荷による2方法がある.
●両者の有意冠動脈病変検出におけるsensitivityは80〜90%程度である.
●薬物負荷の1つであるドブタミン負荷心エコー法は,心筋viabilityの検出方法としても注目されている.

安静時201Tl心筋像による生存心筋量の評価

著者: 田中健 ,   相澤忠範

ページ範囲:P.2257 - P.2260

●再灌流療法の進歩により,心筋梗塞の壊死から心筋を救い得るようになった.しかし,生き残った心筋の量を評価するのに心電図は不適なことが明らかとなった.
●安静時201T1心筋像は生存心筋を直接画像化している.正常部位を100%とした201Tl摂取率により,任意の部位における生存心筋の定量的評価が可能となった.
201Tl摂取率が60%以上で正常以下の領域は壁運動が保たれている非貫壁性梗塞であり,40%以上で60%未満の領域は壁運動が低下している非貫壁性梗塞と考えられた.

心プールシンチグラフィ

著者: 小西得司

ページ範囲:P.2262 - P.2263

●核医学検査の利点は非観血的検査法ということである.
●心プールシンチグラフィは心内短絡の診断や心機能および局所壁運動解析が可能である.
●心筋梗塞などの局所異常を示す疾患では,心機能解析には心プールシンチグラフィが最適である.
●右室,左室の同時解析が可能である.
●不整脈頻発例では解析が不正確である.
●心エコー法に比し被曝と高価な欠点がある.

負荷心筋シンチグラフィ

著者: 西村重敬

ページ範囲:P.2264 - P.2266

●心筋血流トレーサーとして,201Tlと99mTc-MIBIが用いられ,201Tlの初期分布は,血流量と心筋への取り込み率で決定され,相対的な濃度差がイメージングされる.
●より軽度の狭窄病変を検出するために,運動負荷法,薬物負荷法を行う.
●適応は,冠動脈疾患のスクリーニング,診断のついた例の機能的重症度の評価,予後の推定,治療効果の判定である.
201Tl SPECTの冠動脈疾患の有無に関する診断能は,感度90%,特異度70%程度である.

ポジトロン断層法

著者: 玉木長良 ,   小西淳二

ページ範囲:P.2268 - P.2270

●ポジトロン断層法(PET)は,11C,13N,15Oなどで標識された生理的物質を投与し,心筋内の血流量やエネルギー代謝などを定量的に解析できる新しい画像診断法である.
●ブドウ糖類似物質である18FDGを用いて糖代謝を解析することにより,代謝の残存する虚血心筋を同定できる.
●この手法は心筋viabilityを判定する最も信頼できる画像診断法と考えられ,虚血性心疾患の治療方針を決定するうえで重要な情報を提供できる.

X線CT

著者: 松山正也

ページ範囲:P.2272 - P.2274

●X線CTの循環器領域における応用では,心拍による影響を無視しえないが,その高い濃度分解能と横断画像を生かした診断法は,従来のX線診断法にない特徴を有している.
●心内外の石灰化,脂肪組織の低吸収域を利用した心基部や心膜疾患の診断,造影剤の静脈内投与による心腔内や心室壁の異常など,代表的な疾患を例にあげその有用性を述べた.

超高速CT

著者: 寒河井博 ,   高元俊彦 ,   坂本二哉

ページ範囲:P.2276 - P.2279

●電子銃を用いた,全く新しい原理による超高速CTでは,スキャン時間が50msecと著しく短縮され,拍動性の臓器(心・大血管系)への応用も可能になった.
●撮影法にはvolume mode,flow mode,cinemodeの3つがある.
●あらゆる心疾患への適用が行われ効果をあげているが,今回は肥大型心筋症例につき症例を提示し,解説を加えた.
●将来的にはX線学的組織診断法などの応用開発により,情報量のさらなる増加が期待される.

MRI

著者: 渡辺滋

ページ範囲:P.2280 - P.2282

●循環器領域ではスピンエコー(SE)法とグラディエントエコー法が汎用され,特に後者はシネMRIとして利用される.
●SE法は心血管の形態診断,心筋の性状診断,血流評価に有用である.特に急性期心筋梗塞では梗塞部は高信号として明瞭に検出される.
●シネMRIは心機能診断,血流評価に有用である.特に弁逆流,心内短絡流,大動脈解離の交通口の流れの評価に有用である.
●最近のMRIによる血管造影の進歩は著しく,今後大いに期待される方法である.

経食道心エコー法

著者: 友近康明 ,   松﨑益徳

ページ範囲:P.2284 - P.2287

●経食道用超音波探触子の種類・構造上の特徴を解説した.
●経食道心エコー法の心臓・大血管系へのアプローチの方法と,本法で得られる代表的な断面像をシェーマと実際に得られた画像で説明した.
●経食道心エコー法によって得られる代表的な心血管病変の説明と,一部実際に得られた画像でその画像診断上の特徴を解説した.

血管内超音波法

著者: 出川敏行 ,   中村茂 ,   山口徹

ページ範囲:P.2288 - P.2292

●新しい形態学的評価法として血管内超音波の臨床応用が盛んに行われるようになった.
●中年期以降の成人では,軽度〜中等度の動脈硬化の進行から,冠動脈のほとんどの部位で3層構造として観察できる.
●血管内超音波法によって石灰化の部位,プラークの分布を判定し,インターベンション手法を選択できる可能性があり,さらに臨床応用が期待される手法である.

冠動脈造影法

著者: 田村勤

ページ範囲:P.2295 - P.2298

●冠動脈造影は冠動脈狭窄の有無,狭窄形態,攣縮の診断ができる臨床上,最も有用な検査法である.
●造影所見により,冠動脈バイパスやPTCAなど治療法の選択・決定を行う.
●冠動脈造影といえども絶対的なものでなく,限界がある.

心室造影法

著者: 沖中務 ,   中西成元

ページ範囲:P.2300 - P.2302

●心室造影法は,各種心疾患の診断,病態の把握,治療方針の決定において有用な検査法である.
●シネ心室造影で得られた画像から,形態評価のみならず,心室容量,心筋重量,心機能,局所壁運動異常,残存心筋の有無など多くの情報を得ることができる.
●心室造影には,不整脈,塞栓症,造影剤の心筋内注入,肺水腫,腎不全など重篤になりうる合併症があり,十分注意が必要である.

IVDSA

著者: 天羽健 ,   荒木力

ページ範囲:P.2304 - P.2305

●血管造影の中でも,比較的簡単に行われるIVDSAについて,大動脈系の疾患と静脈系の疾患に分けてまとめる.
●大動脈系の疾患では,胸部大動脈瘤や大動脈解離が代表的なもので,IVDSAとともにCTやMRも総合的に使われる.
●静脈系の疾患では,上大静脈症候群の際,IVDSAで有用な所見が得られることがある.
●しかし,IVDSAはある程度の時間は必要で,侵襲性のある検査であることを忘れてはならない.

血管内視鏡

著者: 野村雅則 ,   木村衛

ページ範囲:P.2306 - P.2308

●血管内視鏡検査は,細径で柔軟性に富んだカテーテルが開発され,臨床上,安全で容易に行えるようになった.
●血管内視鏡による冠動脈内腔の形態,色調の肉眼的観察から,冠動脈病変のより詳細な診断が可能となった.特に血栓,粥腫など血管内腔,壁異常の病態の評価に有用である.
●他の手法(血管内エコーなど)との併用により,診断精度を高めることができる.

どう診断するか—選択と読み方

リウマチ性僧帽弁膜症

著者: 増田喜一 ,   別府慎太郎

ページ範囲:P.2312 - P.2316

●リウマチ性僧帽弁膜症の形態的,機能的診断に対して行われてきた心臓カテーテル法,心血管造影は,既に過去の検査法となり,現在ではもっぱら超音波法が利用される.
●リウマチ性僧帽弁膜症の特徴である弁および弁下部病変の解剖学的変化の認識,それに基づく狭窄性・逆流性病変の診断,さらには合併症の画像診断に心エコー図が適している.
●超音波法は,検者および被検者依存性の高い検査法であり,必ずしも明瞭な画像が得られないという本法の限界も供せ持つため,次の手段としてCT,血管造影法などを考慮する.

僧帽弁逸脱

著者: 鈴木真事 ,   山口徹

ページ範囲:P.2318 - P.2321

●現状では,僧帽弁逸脱症の診断に最も適した検査法は断層心エコー法であり,Mモード心エコー図所見は補助的な役割にすぎない.
●カラードプラ法の併用により,僧帽弁逸脱の部位と僧帽弁逆流程度の診断が可能である.
●僧帽弁腱索断裂の診断には経食道心エコー法が最も有用である.
●正常人を病気であると誤診しないためにも,断層心エコー図による軽度の逸脱所見のみで病的状態であると診断してはいけない.

大動脈弁膜症

著者: 三神大世 ,   北畠顕

ページ範囲:P.2322 - P.2325

●大動脈弁膜症の存在診断,重症度評価および成因診断は,心エコードプラ法によりほぼ十分に行いうる.
●心尖部または胸骨右縁からの連続波ドプラ法により,大動脈弁狭窄の正確な重症度評価が可能である.
●大動脈弁逆流の存在と重症度はカラードプラ法により簡易に評価できるが,本法の限界に注意を要する.
●大動脈弁膜症の手術適応判定には,その重症度とともに,左室収縮能とその経時的観察が重要である.

人工弁機能不全

著者: 吉田清

ページ範囲:P.2326 - P.2330

●人工弁機能不全の診断に際しては,それぞれの弁の特性を理解し,移植直後の成績との比較をすることが重要である.
●カラードプラ法では,人工弁逆流ジェットは過小表示されることが多い.
●僧帽弁位の人工弁機能不全の診断には,経食道心エコー図が極めて有用である.
●人工弁狭窄の診断には,連続波ドプラ法による弁通過血流速度の経時的観察が重要である.

感染性心内膜炎

著者: 中村憲司 ,   酒井吉郎 ,   椎名哲彦

ページ範囲:P.2332 - P.2335

●感染性心内膜炎は,vegetation以外に弁瘤,弁穿孔,腱索断裂,心筋膿瘍,細菌性動脈瘤などの病変がある.
●人工弁や器質化した弁尖に付着するvegetationの検出には注意が必要である.
●大動脈弁輪部の評価には,経食道超音波検査法が有用である.
●本症の診断に際しては,血行動態の評価も重要である.

狭心症

著者: 山科章

ページ範囲:P.2337 - P.2340

●狭心症の診断は,基本的には病歴,虚血を裏づける心電図変化からなされる.
●非侵襲的画像診断には負荷201T1心筋シンチが繁用されるが,その目的は,①心電図によって虚血の診断ができないとき,②重症度の評価のため,③病変冠動脈の推定のため,④複数の冠動脈病変があるときinterventionを行う目標冠動脈決定のため,⑤陳旧性心筋梗塞では,梗塞後狭心症に関係する心筋viabilityの評価,残存虚血の証明のため,などである.
●各種画像診断所見を参考に,冠動脈造影所見から最終的な治療方針を決定する.

心筋梗塞

著者: 原和弘

ページ範囲:P.2341 - P.2345

●ドプラ法,経食道エコー法を加えた心エコー法は,心筋梗塞症の左室壁運動異常と合併症のベッドサイド診断に有用である.
●シンチグラム,X線CT,MRIは,梗塞量の推定に有用である.
●梗塞後の心筋のviabilityの臨床的評価には,タリウムシンチグラムと,壁運動異常を観察できる左室造影法・エコー法・心プール法などが有用である.

肥大型心筋症

著者: 福島研吾 ,   永田正毅

ページ範囲:P.2346 - P.2349

●肥大型心筋症の診断には肥大部位の把握,流出路狭窄の有無,心機能評価の3点が重要である.
最近では,末期に拡張型心筋症様病態を示す拡張相肥大型心筋症の存在も注目されている.
●画像診断の中心は現在も心エコー図,心臓カテーテル法であるが,CT,MRI,核医学検査による評価が可能になった.

拡張型心筋症

著者: 横田慶之 ,   川合宏哉 ,   横山光宏 ,   宝田明

ページ範囲:P.2350 - P.2354

●拡張型心筋症は左室の拡大と収縮能低下を原因不明にきたす心筋疾患であり,その診断は除外診断の上に成り立つ.
●本症の大多数例で心電図,胸部X線の両者またはいずれかの異常がみられ,特に心電図は感度の高い検査法である.また,心エコー法により本症の基本病態のみではなく,重症度,合併症に関する多くの情報が得られる.
●冠動脈造影や心筋生検法,各種核医学的検査やCT,MRIなどの画像診断法を適宜駆使することにより,本症の明確な診断を行うことができる.

解離性大動脈瘤

著者: 許俊鋭 ,   松村誠 ,   尾本良三

ページ範囲:P.2356 - P.2361

●Stanford A型急性大動脈解離は緊急手術の適応である.
●Stanford B型急性大動脈解離は原則として内科的降圧治療を行うが,破裂所見,大動脈分枝の血行障害がみられる場合は,緊急手術適応である.
●急性期の診断は,無侵襲でベッドサイドで施行できる経食道心エコー図(TEE)が最も有効である.
●慢性期の診断は心血管造影,DSA,CT,MRI,TEEを含む超音波法が行われ,それぞれ相補的な地位を占める.

座談会

虚血性心疾患の画像診断をめぐって

著者: 西村重敬 ,   出川敏行 ,   中村憲司 ,   山口徹

ページ範囲:P.2363 - P.2375

 山口(司会) 本日はお忙しいところをお集まりいただき,ありがとうございます.今月の主題「循環器疾患の画像診断」に関連して,特に虚血性心疾患の画像診断について,第一線で御活躍の先生方からお話を伺いたいと思います.
 循環器領域では画像診断が非常に発達していることもあって,さまざまな診断法があるわけですが,実際にそれをどう選択して,どう使いこなしていくかは皆さんの考え方の違いもありますでしょうし,実際の臨床の場ではなかなか選択に苦慮する場合があるかと思います.その辺の選択をめぐって,虚血性心疾患の代表である狭心症を中心に,もし時間があれば急性心筋梗塞についてもお伺いしたいと思います.

座談会 内科診療のあゆみ(最終回)

臨床医学の進歩と変遷—サイエンスからアートへ

著者: 日野原重明 ,   北原光夫 ,   福井次矢 ,   赤塚祝子 ,   尾形悦郎

ページ範囲:P.2419 - P.2431

 尾形(司会) 本日は『medicina』の本欄の最終回としまして,日野原先生をはじめ北原先生,福井先生,赤塚先生と,それぞれご専門の領域をお持ちになりながら,長い間臨床医学の第一線でご活躍されてこられた先生方にお集まりいただき,これまでの臨床医学を振り返るとともに,今後の臨床医学の在り方を探ってゆきたいと思います.
 私は内分泌代謝学を専門としている内科医ですが,これまで11回にわたり本欄の司会を務めさせていただき,各専門領域の先生方と対談をして参りました.これまで続けてきた感想としては,内科医は普遍的な知識を身につけると同時に,自分の専門領域を持ち,また他の専門領域をも正しく理解すべきだということでした.

電子内視鏡による大腸疾患の診断・22

画像処理 2.炎症

著者: 辻晋吾 ,   川野淳 ,   房本英之 ,   鎌田武信

ページ範囲:P.2380 - P.2384

 潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患では,炎症の程度は疾患の予後と密接に関連すると考えられているが,従来の肉眼診断は主観的・定性的であり,内視鏡検査により予後を推定するためにはより客観的・定量的な炎症の評価法を開発する必要がある.
 電子内視鏡は画像を内視鏡先端のCCDにより電気信号に変換し,これをモニター上で画像に再構成するため(図1),コンピュータを用いた画像処理や画像解析に適している.筆者らはすでに可視・近赤外光源を用いた電子内視鏡をコンピュータ画像解析装置に直結し,潰瘍辺縁の粘膜血行動態の解析や粘膜下の血管走行の異常や粘膜下血行の変動の解析に応用してきた.本稿では,電子内視鏡画像解析法を用いた大腸の炎症の定量的評価法を紹介する.

図解病態のしくみ—肝臓病・15

肝癌

著者: 南部修二 ,   月城孝志 ,   渡辺明治

ページ範囲:P.2386 - P.2400

 原発性肝癌はわが国において最近10年間で著増している.第10回原発性肝癌追跡調査報告書1)によると,そのうち95.1%が肝細胞癌で,3.3%が胆管細胞癌であり,肝細胞癌がほとんどを占める.また一方では,肝癌の成因の研究,診断,治療の進歩には著しいものがみられる.本稿では,原発性肝癌のほとんどを占め,慢性肝疾患を診療する際に常に注意を払わなければならない肝細胞癌を中心に,その病態,診断,治療などについて述べ,胆管細胞癌についても概説したい.

SCOPE

多断面経食道心エコー図

著者: 高元俊彦

ページ範囲:P.2401 - P.2405

経食道心エコー図の発展
経食道心エコー図(transesophageal echocar-diography:TEE)が臨床の場で汎用されるようになり,最近における装置の技術革新も著しい.これまで広く普及している前胸壁からのアプローチに比べれば,探触子の食道内挿入にやや経験を要し,また被検者にとって多少の不快感を伴う検査法ではあるが,肥満,肺気腫,胸郭の変形などにより前胸壁から鮮明な画像が得られないとき,あるいは術野の汚染が問題になるような開心術,大血管の手術時などにおいては特に有用な検査法といえる.
歴史的にみると,TEEの技術開発は1970年代後半に開始された1).本邦でも1977年,Hisanagaら2)によって本格的な器械操作型二次元経食道心エコー装置が開発され,その画質は現代のものにも匹敵するほどであったが,探触子をオイルバッグ様のもので包埋したために被検者にとっては異物感を伴い,また探触子の加熱による安全性の問題も残していた.また,single beamの探触子を先端に装着したflexible wire様のものを食道電極のように挿入し,食道内から左室前壁運動をMモードエコー図にて記録する方法が松崎らにより試みられた3)

遺伝子治療はどこまで進んだか—アメリカでの現状と癌治療への応用

著者: 河上裕

ページ範囲:P.2407 - P.2417

●はじめに
 遺伝子治療とは,細胞内に遺伝子を導入し,疾患を治療する方法である.遺伝子の分子機構が解明され始めて,1967年にNirenbergによりその医学的,社会的意味が問われて以来,DNAの取り扱い方については,種をも変え得る点で,安全性,また倫理的側面から何度も討論が繰り返されてきた1,2).現在では,生殖細胞遺伝子治療においては導入された遺伝子が子孫へ継代され,また個体全細胞の遺伝子が変化するため,導入された遺伝子を後で取り除くこともできず,技術的,倫理的に問題が多すぎ,臨床応用の対象にはなっていないが,体細胞遺伝子治療は疾患によっては可能であると考えられている.
 1980年代に入り,技術の進歩とともに遺伝子治療が可能になりつつあるとき,審査を経ずに施行され,問題となった初期の遺伝子治療(Rogers1971年,Cline 1980年)も契機となり,米国ではその審査,監視システムの確立に努力がそそがれた.

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「medicina」第30巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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