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雑誌目次

雑誌文献

medicina30巻3号

1993年03月発行

雑誌目次

今月の主題 ウイルス肝炎ABC EDITORIAL

ウイルス肝炎の現状と問題点

著者: 矢野右人

ページ範囲:P.400 - P.401

 ウイルス肝炎は,1970年代初期,オーストラリア抗原,いわゆるHBs抗原が臨床的に利用されるようになり,脚光を浴びるようになった.特にB型肝炎ウイルス感染経路が,母子感染という,生下時運命づけされるような形態をとり,生涯感染が持続し,高率に肝癌との関連があることが判明し,肝炎ウイルスの感染,発症,慢性肝障害,肝癌とすべての段階で研究が進められてきた.
 その後,B型肝炎ワクチンの登場,予防法の確立,A型肝炎の診断と疫学の解明,インターフェロンの登場によるB型肝炎の治療,そしてHCV抗体を用いたC型肝炎の診断と,この20年間いくつかの大きなエピソードにより,一段と関心が高められてきた.しかし,ウイルスの持続性感染で,癌にまで関連する本疾患の根本的治療法には結び付いていかなかった.C型肝炎に対するインターフェロン治療で多くの治癒症例が集積され,この治療法が保険適用となって以来,近代ウイルス肝炎研究の歴史の中で,最も大きな山場に差し掛かっていると考えてよい.肝臓研究者のみならず,一般医家の関心も高く,世をあげて注目されるに至った.

肝炎ウイルス遺伝子解析

ウイルス遺伝子理解のために

著者: 高見沢昭久 ,   岡山博人

ページ範囲:P.402 - P.405

●肝炎ウイルス遺伝子は,様々な形態のゲノムDNAあるいはRNAにコードされている.
●ウイルスゲノム上には,ウイルス粒子の構造蛋白と,ウイルス複製に関与する非構造蛋白の遺伝子がコードされている.
●遺伝子のクローニングのPCR法などによるウイルス核酸の検出技術は,疾病の診断,分子疫学調査,さらに遺伝子操作技術によるワクチン開発などにとって極めて有用な手段である.

水系感染としての肝炎ウイルス—HAVとHEV

著者: 内田俊和

ページ範囲:P.406 - P.407

●HAVはピコルナウイルスに属し,遺伝子は単鎖のRNAで,7,478塩基から成る.
●HAVゲノムは1個の読み取り枠を有し,ポリ蛋白がコードされ,ポリ蛋白は翻訳後に約10個の機能蛋白になる.
●HEVはどのウイルスファミリーに属するか不明だが,HAVとは全く異なる.遺伝子は単鎖のRNAで,7,194塩基からなる.
●HEVゲノムは3個の読み取り枠を有する.コードされた蛋白質の性状は完全には解明されていない.

B型肝炎ウイルス

著者: 小池和彦

ページ範囲:P.408 - P.410

●B型肝炎ウイルス遺伝子は約3.2kbの二本鎖,環状DNAからなっていて,増殖の過程ではRNAプレゲノムを中間体としてゲノムの複製を完成させる.
●C遺伝子の遺伝子変異は,肝炎発症のメカニズムに深く関与している可能性がある.また,プレC領域のナンセンス変異と劇症肝炎との関連も考えられている.
●X遺伝子はウイルスのトランス活性化遺伝子であるが,トランスジェニックスマウス,培養細胞で一種の癌遺伝子であることが示され,肝発癌に関与していると考えられている.

C型肝炎ウイルス

著者: 溝上雅史 ,   鈴木馨

ページ範囲:P.411 - P.413

●C型肝炎ウイルス(HCV)は分子生物学的方法により発見された.
●HCVは変異速度が速いウイルスである.
●塩基配列の違いによって数種類のタイプ(geno-type)に分類される.

ウイルス肝炎マーカーの検査と臨床的意義

A型肝炎ウイルスマーカー

著者: 佐田通夫 ,   谷川久一

ページ範囲:P.416 - P.418

●血清診断はIgM抗HAV抗体の測定によって行われる.
●IgA,IgGクラス抗HAV抗体が存在する.
●PCR法によってHAV-RNAの検索も可能となった.

B型肝炎ウイルスマーカー

著者: 宮﨑吉規 ,   赤羽賢浩

ページ範囲:P.419 - P.421

●B型肝炎ウイルスマーカーとしては,エンベロープ(HBs/pre-S)抗原抗体系,HBs抗体,HBe抗原抗体系,DNA polymerase,HBV-DNAなどが測定可能で,おのおのの臨床的意義が明らかにされており,確定診断が可能である.
●遺伝子工学的手法の導入によりHBVの変異株(mutant)の存在が明らかにされ,ウイルスマーカーと病態との関連の解明や,従来のHBV感染症の概念への補足がなされている.

HCV抗体測定系の開発—第一世代と第二世代

著者: 田中栄司

ページ範囲:P.422 - P.424

●HCV第一世代抗体はHCV発見当初開発された測定系であり,C型肝炎の検出率は80%程度である.第二世代抗体は第一世代の欠点を補うために開発された測定系で,C型肝炎をほぼ100%診断可能である.
●C型急性肝炎では,HCV抗体が遅れて陽性となるため注意が必要である.HCV-RNAは発症早期に高率に陽性となる.
●C型慢性肝炎の診断には第二世代のHCV抗体が有用である.
●肝機能正常者でのHCV抗体陽性は過去の感染を示す場合もある.

PCR法によるHCV-RNAの測定

著者: 金子周一 ,   鵜浦雅志 ,   小林健一

ページ範囲:P.426 - P.428

●HCV-RNAは,ウイルス自身の存在を示す唯一のマーカーとして用いられている.
●通常のPCR法は,再現性や簡便性に問題がある.
●ほとんどのC型慢性肝炎の診断には,HCV抗体の測定で十分である.
●HCV-RNAの測定は,病態の解明および急性肝炎の診断やインターフェロン療法のマーカーとして有用である.

DNAプローブ法によるHCV-RNAの定量

著者: 矢野右人 ,   八橋弘 ,   猪口薫

ページ範囲:P.429 - P.431

●DNAプローブ法は,PCR法と全く異なる原理によりHCV-RNAを検出し,さらに定量も可能な測定系である.
●C型慢性肝炎のインターフェロン治療効果は,本法により105/mlコピー以上か以下で高率に予測可能である.
●C型肝炎の病態の把握,治療に,HCV量の測定は今後欠かせない手段となる.

肝生検法と肝組織所見の分類

著者: 山田剛太郎

ページ範囲:P.432 - P.434

●慢性肝炎の組織分類のうち犬山分類の活動性・非活動性は病期を示す分類として,ヨーロッパ分類のCPH, CAHは主として予後の指標として作成された.
●C型肝炎は発症後10年頃までは犬山分類の持続性か慢性肝炎(非活動性),ヨーロッパ分類のCPHに相当する例が多く,その後,一部は炎症が増強して慢性肝炎(活動性),ヨーロッパ分類のCAHに転じて,5年から10年で肝硬変へ進展する.
●インターフェロン治療の効果判定にはHAIスコアが有用である.

ウイルス肝炎進展度と超音波検査

著者: 坂口正剛 ,   鳩野長房

ページ範囲:P.436 - P.440

●超音波検査では,びまん性肝疾患の診断を下すことは限局性肝疾患の診断を行うことより難しい.
●超音波所見の詳細な観察により,肝炎の進展度を推測することはある程度可能である.
●しかし,同時にその限界もあり,病状把握には総合的な判断が必要である.

ウイルス肝炎の臨床

ウイルス肝炎ABCDEの疫学

著者: 石川和克 ,   佐藤俊一

ページ範囲:P.442 - P.444

●A型肝炎の発症は,抗体未保有者が高年齢層へも移行しており,若年者に特徴的ではなくなったが,最近ワクチンが開発され,ウイルスの撲滅が期待される.
●B型肝炎はワクチン,グロブリンによる感染防御の普及により,垂直感染によるキャリアが減少した.散発例はSTDとしての様相が濃い.
●C型肝炎は輸血,注射などによる血液を介しての感染が主で,長年の経過で肝硬変・肝細胞癌への進展が危惧される.
●D型・E型肝炎のわが国における頻度は低く,臨床的に問題になることは少ない.

ウイルス肝炎の感染経路—水平感染

著者: 堺隆弘 ,   瀬戸口洋一 ,   原俊哉 ,   山本匡介

ページ範囲:P.445 - P.448

●B型肝炎は主として新生児の垂直感染,C型肝炎は主として成人の水平感染が重要な感染経路である.
●30〜40年前に,B型肝炎およびC型肝炎の水平感染の高い時期があり,それが最近のC型肝炎の増加,地域差に反映している.
●C型肝炎は,B型肝炎に比し感染性は低いが,家族内感染,医療従事者の感染はあり得る.

B型肝炎の感染経路—母子感染

著者: 多田裕

ページ範囲:P.449 - P.451

●HBs抗原陽性のキャリアの発生原因は,使い捨ての注射器や注射針の使用の普及により,わが国では母子感染が主となった.
●HBVの母子感染の感染経路は,出生時の母体血の児への移行が主と推定される.
●出生直後と生後2カ月のHBIG投与と,2カ月以降の3回のHBワクチン投与により,ごく一部の胎内感染例を除けばキャリア化の予防が可能である.
●母子感染予防処置の全国的な実施により,B型肝炎による異常は近い将来撲滅されることが期待されている.

A型肝炎の臨床所見と経過

著者: 井上長三 ,   矢野右人

ページ範囲:P.452 - P.453

●A型肝炎は,経口感染する肝炎ウイルス感染症であり,劇症肝炎への移行は極めて少なく,慢性化することもない,予後良好な疾患である.
●IgM型HA抗体は,発症5カ月目以後は全例陰性であり,発症12カ月では全例肝機能は正常化している.

B型急性肝炎の臨床所見と経過

著者: 林直諒

ページ範囲:P.454 - P.456

●通常,B型急性肝炎ではトランスアミナーゼ値は2カ月以内に正常化し,HBs抗原は6カ月以内に消失する.確定診断はHBsAgの消失,HBs抗体の陽性化の確認である.
●臨床的には,ⓐ劇症肝炎の早期診断,ⓑキャリア発症ないしB型慢性肝炎の急性増悪との鑑別,が重要である.
●キャリア発症,B型慢性肝炎との鑑別では,IgM型HBc抗体高値,HBc抗体低値,トランスアミナーゼ値発病2カ月以内正常化,HBs抗原6カ月以内陰性化のいずれかの条件が欠けた場合は,組織診断を含めた精密検査が必要である.

輸血後C型肝炎よりみたHCV感染の経過

著者: 古賀満明 ,   猪口薫 ,   矢野右人

ページ範囲:P.458 - P.462

 ●輸血後C型肝炎の潜伏期は,5〜6週に発症するものが最も多いが,2週以内の早期発症例も約5%存在する.
●発症時より,HCV抗体陽性者が約1/3存在し,必ずしもHCV初感染を確認できない例がある.
●GOT,GPTが多峰型を示し,遷延化する例が多いが,5〜10年と比較的短い期間に肝硬変,肝癌へ進展する例もある.
●第二世代HCV抗体スクリーニングにより,輸血後C型肝炎の激減が予測される.

散発性C型急性肝炎の実態と臨床

著者: 加藤道夫 ,   益沢学

ページ範囲:P.463 - P.465

●最近6年間の散発性急性肝炎でのA型,B型,非A非B(C)型の比率は5:2:3である.
●散発性C型急性肝炎の診断は,発症後早期の第二世代HCV抗体あるいはHCV-RNA陽性,C100-3抗体陰性によりなされる.
●散発性C型急性肝炎発症後1カ月の時点でのC100-3抗体陽性率は10〜35%,第二世代HCV抗体陽性率は約70%である.
●HCV-RNAはC型急性肝炎発症時すでに強陽性であり,次第に減少する.
●C型急性肝炎慢性化例ではALTが多峰性のパターンを示し,HCV-RNAが持続陽性となる.

劇症肝炎の臨床と肝炎ウイルス

著者: 坪内博仁 ,   馬場芳郎 ,   迫勝巳 ,   今村也寸志

ページ範囲:P.466 - P.468

●劇症肝炎の病因としてはウイルスが多い.特に,C型を含む非A非B型では亜急性型の経過をとり,予後が不良であるものが多い.
●劇症肝炎の治療に,インターフェロンおよび免疫抑制剤が導入され,生存率の向上が期待されている.
●劇症肝炎の早期診断には,プロトロンビン時間やヘパプラスチンテストとともに肝細胞増殖因子(HGF)の測定が有用であり,そのレベルの著しい上昇は予後が悪いことを示している.

B型慢性肝炎の臨床と経過

著者: 大西三朗 ,   岩村伸一 ,   前田隆 ,   西原利治

ページ範囲:P.470 - P.473

●B型慢性肝炎の病態は,ウイルスの増殖と免疫反応により支配されている.
●B型慢性肝炎の病期は,HBe抗原陽性の活動期とHBe抗体陽性の非活動期に大別される.
●HBe抗原の自然経過におけるseroconversionは年率5%である.
●HBe抗原陽性の慢性活動性肝炎は,1〜10年で肝硬変へ移行する.亜小葉性肝壊死例は,短期間に肝硬変へ進展する.
●慢性肝炎の病態にはウイルスの変異が関与する.

C型慢性肝炎の臨床と経過

著者: 清澤研道

ページ範囲:P.474 - P.477

●C型慢性肝炎は自覚症状に乏しく,健康診断や献血時など,偶然の機会に発見される.
●過去に輸血歴を有する症例が約40%にみられる.
●他覚所見としては,肝腫大が50%以上にみられる.
●自然治癒は約2%のみである.
●肝硬変・肝細胞癌への進展率は,それぞれ10年で30%・20%,20年で65%・50%である.

自己免疫性肝炎と肝炎ウイルス

著者: 福田善弘 ,   米田俊貴 ,   井本勉

ページ範囲:P.478 - P.480

●自己免疫性肝炎(AIH)にHBVの関与は否定的であるが,HCVの関与は少なからずみられる.
●HCVに関連したAIHの治療は,肝病変が自己免疫的機序によるかC型肝炎によるかで決まるが,通常コルチコステロイドから始められる.
●HCVによるAIHの発症機序については今後の問題である.

肝炎ウイルス以外の既知ウイルス感染症に伴った肝障害

著者: 井本勉 ,   山本伸 ,   小林昌樹

ページ範囲:P.482 - P.484

●ウイルス感染症に伴った成人例の肝障害について,鑑別診断を含めて簡潔に述べた.
●これらの肝障害は,おおむね一過性,かつ軽症で,肝以外の臓器障害が臨床像の主体をなすことが多い.
●EBV感染症やCMV感染症では,肝炎が主症候の1つであり,発生件数も漸増しているので,重点的に解説した.

D型肝炎の診断と臨床所見

著者: 岩波栄逸 ,   津田富康 ,   矢野右人

ページ範囲:P.486 - P.489

●D型肝炎ウイルス(HDV)は,B型肝炎ウイルス(HBV)の補助機能なしに増殖はできない.つまり,HDVはHBVに寄生する.
●本邦では今のところ非常に稀な疾患であるが,HBVキャリアの多い地域では,好発地区からの侵入により今後広まる危険性がある.
●D型肝炎は重症肝炎ばかりでなく,B型と同様,慢性では無症候性キャリアから肝硬変,肝癌まで,急性では軽度から劇症までの疾患スペクトラムがある.

肝硬変・肝癌と肝炎ウイルス

著者: 鵜浦雅志 ,   松下栄紀 ,   金子周一 ,   小林健一

ページ範囲:P.490 - P.492

●本邦では肝硬変の80%,肝癌の90%以上の症例に肝炎ウイルスの持続感染が認められる.
●本邦の肝癌は増加傾向にあり,特にC型肝炎例の増加が著明である.
●B型肝硬変,C型肝硬変から肝癌への進展は高率である.
●肝発ガンにおける肝炎ウイルスの意義はいまだ確立されていない.

ウイルス肝炎の治療と予防

急性肝炎の治療

著者: 松嶋喬

ページ範囲:P.494 - P.496

●消化器症状,倦怠感が強い発症初期には,糖液,ビタミンの経静脈投与と安静療法を行う.
●食欲が回復し,ALT<100IU/l,総ビリルビン<2mg/dlとなったら,病棟内の散歩,入浴は自由にさせ,経静脈投与は中止する.
●C型急性肝炎の遷延例に対するインターフェロン療法は,慢性化の防止に有用である.

劇症肝炎の治療

著者: 与芝真

ページ範囲:P.497 - P.499

●従来から劇症化しやすいといわれるB型劇症肝炎が減少し,今後は相対的に非A非B型(一部C型)劇症肝炎が増加し得る.
●このタイプは一般に臨床症状が穏やかかつ緩やかで,亜急性型やLOHFの病型をとりやすい.
●肝不全の進行が緩やかなためか,末期に至るまで脳症が発現しにくく,脳症が発現した際にはすでに不可逆的に肝細胞破壊が進行している例が多い.
●有効な治療のためには,肝不全対策と同時に,いかに早期に進行する肝細胞破壊を食い止めるかが重要である.

慢性肝炎の一般療法

著者: 黒木哲夫

ページ範囲:P.500 - P.502

●一般療法の柱は「肝庇護薬による薬物療法」と「食事・栄養療法」である.
●「肝庇護薬による薬物療法」により肝障害の軽減を,「食事・栄養療法」により肝再生を図るが,いずれも長期治療であり,患者がその意義を理解していなければ成功しない.
●肝炎治療は,一般療法と抗ウイルス療法をどのようなタイミングで,いかにうまく組み合わせて用いるかが課題となる.

B型肝炎の抗ウイルス療法—適応と限界

著者: 荒瀬康司 ,   熊田博光

ページ範囲:P.505 - P.507

●B型慢性肝炎では,e抗原陽性例ないしe抗原陰性でも,GPT異常例では肝炎の鎮静化を図る必要がある.
●e抗原陽性のB型慢性肝炎例にはインターフェロン(以下,IFN)連日投与法での治療効果は不良であり,ステロイド療法との組み合わせなどが必要である.
●e抗原陰性にもかかわらずGPTの異常を繰り返すB型慢性肝炎例には,IFNの間歇投与法が有効である.
●IFNには種々の副作用があるため,その使用には細心の注意を要する.

C型肝炎のインターフェロン療法—適応と限界

著者: 日野邦彦 ,   妻神重彦 ,   加来浩器 ,   下田和美 ,   丹羽寛文

ページ範囲:P.509 - P.512

●C型肝炎に村するIFN療法の適応は,HCV抗体(第二世代)が陽性で,GPTの異常が認められ,かつ肝組織学的に慢性活動性肝炎と診断された例である.
●C型肝炎に対するIFN療法には限界があり,現在,最も有効率が高いと考えられる投与方法でもってしても,約40%前後の有効率である.
●組織学的に進展した症例やHCV-RNA量の多い症例,HCV genotypeがII型の症例の有効率は低率である.

ウイルス肝炎のケア

著者: 藤山重俊 ,   佐藤辰男

ページ範囲:P.514 - P.516

●急性肝炎では,急性期の安静は必要であるが,長期にわたる臥床安静は得策でない.
●慢性肝炎,肝硬変においては,医師と患者との信頼関係を良好に保つことが,長期間にわたる生活管理上重要である.
●急性増悪時を除けば,過度の生活制限により慢性肝疾患患者のquality of lifeを損わないよう,常に配慮する必要がある.
●生活条件を十分に考慮して,健常人とほぼ同じ食事内容が基本となり,バランスのとれた食事を規則正しくとるよう心がけさせる.過栄養による肥満や脂肪肝に注意すべきである.

院内感染とその対策

著者: 小坂義種 ,   山舗昌由

ページ範囲:P.518 - P.521

●病院内に予防対策委員会を設置して,その責任者や専門医を指定し,定期的に講習会や講演会を開催する必要がある.
●汚染器具の消毒や廃棄処理は慎重かつ完全に.
●高齢者はHBワクチンの反応性が低い反面,感染後は重症化しやすいので,3回接種して無反応であったとしても諦めるべきではない.
●劇症肝炎をしばしばもたらす変異株ウイルスはHBe抗原陰性を呈する.
●HCV抗体のチェックもHBs抗原と同様に全患者にすることが望ましい.

肝炎ウイルス感染の実態と予防

著者: 八橋弘 ,   矢野右人

ページ範囲:P.522 - P.524

●HAV感染の予防は,免疫グロブリンの投与によるが,今後はHAワクチンが実用化され主流となる.
●HBV感染の予防は,HBワクチンの使用によりほぼ確立している.

座談会

C型肝炎インターフェロン治療の現況と展望

著者: 原田英治 ,   林紀夫 ,   清澤研道 ,   矢野右人

ページ範囲:P.526 - P.536

 矢野(司会)本日は,お忙しいところをお集まりくださいましてありがとうございます.
 C型肝炎の治療について座談会を始めさせていただきます.C型肝炎の治療といえば,今の話題は何といってもインターフェロン(以下,IFN)治療です.IFN治療の行われている概数を,各社から市場に出ているIFNの量から換算すると,現時点で輪切りにして,大体2万5000人というものすごい数の人たちがIFN治療を受けていることになります.この現況に関して,IFN治療がどのような肝疾患患者に行われているのか,ご意見をお聞かせ下さい.

対談 内科診療のあゆみ・3

呼吸器疾患の変遷と診療の進歩

著者: 川上義和 ,   尾形悦郎

ページ範囲:P.556 - P.567

呼吸器領域における身体所見の重要性
 尾形 私は昭和32年に医師免許を取得しましたが,当時の呼吸器診療といえば,まず打聴診と肺活量測定が診療のメインでした.そういう目で今の診療を見ますと,例えば循環器領域などでは,最近は胸部X線写真を1枚撮れば,打診はそんなに重要視する必要はないなどという意見も出ているようです.ただ,私は古いせいか,やはり打診をすれば,その現場でかなりの情報が得られると思っているんです.聴診についても同様で,呼吸音が聞こえるか否か,呼吸音と合わせて第2肺動脈音などに注意すれば,例えば自然気胸などが見つかることだってあり,やはり昔のクレンペラー時代の診断学は現在でも生きている気がします.
 今考えてみますと,当時の診断学の本には難しい症候名がいろいろありましたね.昔の人はphysical examinationによる所見を詳細に記載して,それと病因との関係を明らかにしていったという意味で,確かに大変尊敬すべきだとは思うのですが,最近の呼吸器疾患のアプローチとして,physical examinationはどのような位置を占めているのでしょうか.

電子内視鏡による大腸疾患の診断・13

表面型病変(2)—平坦・陥凹型大腸sm癌

著者: 鶴田修 ,   有馬信之 ,   豊永純

ページ範囲:P.540 - P.544

 従来,大腸癌の初期形態として隆起型(I型)早期癌が最も重要視されていたが,近年,表面型(II型)早期癌が数多く報告されるに至り1〜4),進行癌への発育,進展の初期形態としては隆起型よりむしろ表面型早期癌のほうが主体をなすと考えられてきている.
 特に表面陥凹型(IIc)は表面隆起型(IIa)に比べ,より小サイズのうちから粘膜下層へ浸潤するものが多く存在し3,4),臨床的に発見および処置に十分な注意をはらわねばならない.

演習

心エコー図演習

著者: 羽田勝征

ページ範囲:P.545 - P.548

55歳,女性が呼吸困難のため救急入院した
既往歴 不明
家族歴 特になし

内科医のための胸部X-P読影のポイント・17

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

著者: 池田顕彦 ,   西村浩一

ページ範囲:P.550 - P.554

症例
 患者 55歳,男性,新聞社勤務
 既往歴・家族歴 特記事項なし.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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