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雑誌目次

雑誌文献

medicina30巻5号

1993年05月発行

雑誌目次

今月の主題 症例にみる血液浄化療法の進歩 Editorial

治療学における血液浄化療法の役割

著者: 川口良人

ページ範囲:P.788 - P.789

●今日の治療医学において血液浄化療法は極めて有力な治療手段となりつつある.
●しかしながら,方法,治療成果としてほぼ完成された疾患,病態もあるが,いまだ試験段階ないしは薬剤治療が奏効しない場合の最後の試みとして実施されているに過ぎない分野も少なくない.
●本治療がいかなる疾患に行われているか,その根拠は何であるか,またその成果とともに,本治療により生ずるさまざまな新たな病態についても理解していただきたい.

血液浄化療法の基礎

血液浄化療法の歴史と現在の問題点

著者: 太田和夫

ページ範囲:P.792 - P.796

●現行の主要な血液浄化法は①血液透析,②血液濾過,③腹膜灌流,④血液吸着,⑤プラスマフェレーシス,の5種類で,血液透析患者は現在11万人以上,最長例は25年を超えた。
●腹膜灌流はCAPDとして普及,全透析患者の4.7%に達した.血液濾過はフィルターに透析液も流す血液濾過透析法や,持続的血液濾過法,push and pull法など,改良工夫されている.
●血液吸着は直接吸着と血漿を分離し,吸着する血漿吸着となる特異性の向上が計られている.プラスマフェレーシスは人工肝臓や免疫療法に用いられ,効果を発揮している.

血液浄化機材の進歩

著者: 峰島三千男

ページ範囲:P.798 - P.802

●汎用の血液浄化療法は拡散,限外濾過,吸着のいずれかを原理としている.
●血液透析は主に拡散によって溶質を除去するため,小分子溶質ほどその除去効率は高い.
●腹膜透析における溶質移動は腹膜を介した拡散,限外濾過による.
●血液濾過は限外濾過のみを原理とするため,その溶質除去は膜の透水性ならびに分画特性に強く依存する.
●血液吸着では活性炭を吸着剤とするが,その溶質除去には平衡吸着量ならびに吸着操作法が重要となる.

血液浄化における生体適合性と不適合性

著者: 小岩文彦 ,   秋澤忠男 ,   越川昭三

ページ範囲:P.804 - P.808

●血液浄化療法に伴って生じた生体に有害な反応や種々の合併症を指標に,治療自体の安全性を規定する概念を生体適合性という.
●生体適合性には,血液浄化膜と血液が接触した際に生じる補体活性化や,凝固・血小板系の活性化,サイトカインの流入など多くの規定因子がある.
●長期にわたり生体適合性の低い血液浄化素材を連用すると,さまざまな合併症を生体に及ぼす危険性がある.

病態と血液浄化療法

電解質是正のための血液浄化療法

著者: 飯田喜俊

ページ範囲:P.810 - P.815

●電解質異常は血液透析および腹膜透析により是正が可能である.
●血液浄化法の電解質動態に及ぼす影響は異なっているため,病態,治療目標によって,選択,用い方を決めるべきである.
●考慮される電解質異常としては低Na血症,高Na血症,高K血症,低Ca血症,高Ca血症,高Mg血症,高P血症,代謝性アシドーシスなどがある.
●血液浄化法は絶対的なものでなく,治療効果には限界があり,欠点もあるので,それらを熟知して用いるべきである.

循環器疾患と血液浄化療法

著者: 稲永隆 ,   佐内透 ,   木村玄次郎

ページ範囲:P.818 - P.821

●薬物療法に反応しない重症心不全のうつ血状態の改善に血液浄化療法が有効なことがある.
●心血管系合併症を有する末期腎不全患者では血行動態の面からは血液透析よりも腹膜灌流のほうが適している.
●維持透析患者の死因の約半数は循環器系合併症によるものである.
●透析患者では,薬剤の排泄経路や透析性の有無に注意し,投与量,間隔を決める必要がある.
●冠動脈疾患が高頻度にみられる家族性高コレステロール血症にLDLアフェレーシスが有効で,粥状硬化病変の改善がみられる.

腎不全以外の腎疾患と血液浄化療法

著者: 石津隆 ,   小山哲夫

ページ範囲:P.822 - P.825

●急速進行性糸球体腎炎(RPGN)では,早期に血漿交換療法を含めた積極的な治療を行うことが,腎機能予後の改善の上で重要である.
●血漿交換療法は即時的効果の期待できる治療法であるが,その効果は一次的であるので,併用療法や後療法が重要である.
●巣状糸球体硬化症やその他の難治性腎疾患に対しても血液浄化法が応用されている.しかし,適応,方法,併用療法に関しては未解決の問題が多い.今後,多くの症例に応用し,検討していく必要がある.

腎不全(急性・慢性)における血液浄化療法―体外循環

著者: 青池郁夫 ,   下条文武 ,   荒川正昭

ページ範囲:P.828 - P.833

●急性腎不全/MOFの血液浄化療法に際してはブラッドアクセスとしてテンポラリーアクセスを用い,出血や凝固異常の防止のために抗凝固療法を行う.
●急性腎不全/MOFの血液浄化法としては血液透析(HD),持続血液濾過(continuous HF)が行われる.
●慢性腎不全ではブラッドアクセスとして内シャントや人工血管を用い,抗凝固療法を行う.
●慢性腎不全の血液浄化法としてはHD,HF,ECUM,血液濾過透析(HDF),modified HDF,pushed and pull HDFが行われる.

腎不全(急性・慢性)における血液浄化療法―腹膜透析

著者: 藤井正満 ,   白井大禄

ページ範囲:P.834 - P.839

●末期慢性腎不全においてCAPD(連続携帯式腹膜透析)療法は血液透析と対等の治療法である.
●CAPDは簡単な器具のみで施行できる在宅療法で,より完全な社会復帰が期待できる.
●相対的適応には,ブラッドアクセスの作製困難,体外循環が困難,乳幼児,血液透析施設への通院が困難,などがあげられる.
●相対的禁忌には,広範囲の腹膜癒着などのため有効腹膜透析面積が低下している場合などがある.
●重大な合併症として腹膜炎,腹膜透析不全がある.

慢性腎不全における血液浄化療法—経口吸着剤

著者: 小出桂三

ページ範囲:P.842 - P.847

●経口吸着剤は腎不全患者体内に産生された尿毒症毒素や代謝産物を消化管内で吸着・除去し,尿毒症症状の改善,透析導入の遅延をもたらすもので,保存期慢性腎不全の非観血的血液浄化療法といえる.
●経口吸着剤クレメジンは腎不全初期から内服することが望ましい.
●クレメジンの副作用は少なく,消化器症状,皮膚症状が主なものである.
●クレメジンは慢性腎不全における水・電解質異常,酸・塩基平衡異常,内分泌・代謝異常には効果がない.

血液疾患と血液浄化療法

著者: 菊池正夫 ,   池田康夫

ページ範囲:P.848 - P.852

●血液浄化療法により飛躍的に予後が改善された血液疾患は血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)である.その他過粘稠症候群,クリオグロブリン血症などで応用されている.
●TTPの特徴は溶血性貧血,血小板減少症,精神神経症状,発熱,腎障害で,診断には末梢血標本で破砕赤血球の存在の確認が必要である.
●TTPの第一選択の治療は,新鮮凍結血漿を用いた血漿交換療法である.1回血漿交換量,頻度,回数は病勢をよく反映する血小板数,血清LDH値を指標として,個々の症例により異なる.

肝不全,胆・膵疾患における血液浄化療法

著者: 天野泉

ページ範囲:P.854 - P.858

●肝不全,胆疾患の血液浄化療法の主役は,血漿交換法でありCHDFの併用も効果的である.
●血漿交換法は置換液として大量のFFPを使用するため,血液凝固因子やオプソニン蛋白の補給が可能となる.
●高ビリルビン血漿を伴う肝不全には血漿吸着法が適し,活性炭による血液吸着法は血中アミノ酸濃度補正に有効である.
●敗血症性肝不全にはエンドトキシン直接血液吸着法も期待できる.
●重症急性膵炎には腹膜灌流法を申心として,血漿交換法やCHDFを併用してもよい.

膠原病と血液浄化療法

著者: 有村義宏 ,   神谷康司 ,   長澤俊彦

ページ範囲:P.860 - P.865

●膠原病の血液浄化療法には,疾患活動性を抑制するための血漿交換療法,腎不全で生じた尿毒症に対する透析療法などがある.
●血漿交換療法は,SLEや悪性関節リウマチなどでステロイドや免疫抑制剤などの薬物療法が無効の場合に用いられる.
●SLEの末期腎不全には,急速進行型と慢性進行型の2型がある.
●急速進行型ループス腎炎では急性腎不全に準じた透析と強力な免疫抑制療法が必要である.
●慢性進行型ループス腎炎では慢性腎不全に準じた透析療法が必要である.

神経・筋疾患に対する血液浄化療法

著者: 松永宗雄 ,   馬場正之

ページ範囲:P.866 - P.870

●血液浄化療法が試みられた神経筋疾患には,①Guillain-Barré症候群,②慢性炎症性脱髄性多発根神経炎,③多発性硬化症,④重症筋無力症,⑤Neurologic paraneopnastic syndrome,⑥多発性筋炎・皮膚筋炎,⑦Crow-Fukase症候群,⑧HTLV-1 associated myelopathy(HAM),⑨膠原病に伴う神経筋障害,などがある.
●施行上重要な点は,①適応の有無の厳密な検討,②施行前後の正しい神経学的評価,③神経症候や検査データの推移の把握,④施行回数や間隔の臨機応変な対応,などである。
●施行に関し評価が固まっていない疾患もある.

多臓器不全(MOF)と血液浄化療法

著者: 平澤博之 ,   菅井桂雄 ,   大竹喜雄

ページ範囲:P.872 - P.877

●MOFの治療には集学的なアプローチが必要であるが,なかでも血液浄化療法は各種の有効性が期待でき,必須の治療法である.
●各種の血液浄化療法のなかでも,CHF/CHDFは重症患者にも施行可能であり,また循環系に与える影響も少なく,第一選択の血液浄化療法である.
●CHF/CHDFには水分・電解質の厳密な管理といった従来の有効性のほかに,最近ではMOF発症の病因物質の1つである各種humoral mediatorを除去する効果をも期待でき,より積極的に使用されるようになってきている.

脂質代謝異常と血液浄化療法

著者: 酒井聡一 ,   徳留悟朗 ,   早川洋

ページ範囲:P.878 - P.882

●原発性高脂血症の中でも家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)は冠動脈疾患で死亡する危険性が高く,早期診断,早期治療が必要である.常染色体性優性遺伝によるLDLレセプター異常症で,ホモFHならびにヘテロFHの2つに分類され,重症例では抗脂血剤に不応の場合が多く,LDL吸着の絶対的適応である.
●二次性高脂血症の中で,巣状糸球体硬化症由来のネフローゼ症候群は抗脂血剤に不応の高脂血症が特続し,既存の腎障害を悪化させる.LDL吸着による脂質代謝異常の是正が必要である.

臓器移植における血液浄化法―ABO血液型不適合腎移植

著者: 高橋公太

ページ範囲:P.884 - P.888

●血清抗A抗B抗体は十分除去する.移植直前の抗体価は16倍以下にする.
●移植前は免疫吸着や血漿交換などのため血漿総蛋白値は低下しているので,術前に補正する.
●術中も血漿蛋白質の補充をし,循環動態の安定に努める.
●血清抗A抗B抗体価は移植直後は上昇しないので,腎移植をして全身状態が安定した後に脾摘をする.
●赤血球成分はレシピエントの血液型の赤血球を輸血する.凍結血漿は間違いを少なくするため原則としてAB型にする.

急性薬物中毒の血液浄化療法

著者: 田部井薫 ,   浅野泰

ページ範囲:P.890 - P.895

●急性薬物中毒の治療原則は,呼吸・循環系の確保と,初期治療としての胃洗浄,腸洗浄,下剤投与,強制利尿などによる薬物の除去ならびに排泄の促進で,次に各種血液浄化法が適応となる.
●血液浄化法の施行にあたっては,原因薬物の同定,薬物の体内動態,代謝経路,透析性などを十分に検討し,血液浄化法を選択する.
●さらに,患者の病態にあわせて,抗凝固薬の選択,使用する器具の選択なども重要である.
●血液浄化法は体外循環であり,透析施設のない診療機関での施行は慎重でなければならない.

内分泌疾患と血液浄化療法

著者: 阪口勝彦 ,   岸野文一郎

ページ範囲:P.896 - P.899

●重篤な甲状腺クリーゼには血漿交換療法が有効である.
●腎機能低下を伴う高Ca血症には透析療法が有効である.
●抗インスリン抗体により,大量のインスリンを要する症例や,血糖コントロール不良症例では,血漿交換療法を考慮する必要がある.

皮膚疾患と血液浄化療法

著者: 山田裕道 ,   高森建二 ,   小川秀興

ページ範囲:P.902 - P.907

●皮膚科領域における血液浄化療法(plasmaexchange:PEとplasmapheresis:PP)は主に自己免疫性水疱症(尋常性天疱瘡:PV,水疱性類天疱瘡:BPなど)に行われている.
●PVやBPでは流血中に存在する自己抗体が病因と深く関与しているので,PEやPPにてこれらを除去することの治療的意義は大きい.
●ステロイド剤や免疫抑制剤の投与ができない症例,または投与しても改善がみられない重篤な症例が適応となる.
●PEやPPの治療効果は良好で,治療後の寛解期間は長く,重篤な副作用もほとんどない.

透析アミロイド以外のアミロイドーシスと血液浄化療法

著者: 磯部敬

ページ範囲:P.908 - P.914

●アミロイドーシスとはアミロイド蛋白が諸々の臓器に沈着した病態で,予後不良であり,治療法も確立されていない.
●アミロイドーシスの治療としては,①アミロイド前駆体蛋白の生成阻止・減少,②前駆体蛋白の分解促進,③前駆体蛋白の血中からの直接除去,が考えられるが,血液浄化療法は③を目的にしている.
●血液浄化療法としては腹膜透析,CAPDで有効例が報告されているが,筆者らは血液浄化療法+DMSO療法がアミロイドーシスの治療として有望であると考えている.

熱傷と血液浄化療法

著者: 若林靖久

ページ範囲:P.916 - P.920

●熱傷をはじめとする外傷,術後患者の体液異常の病態生理の知識が初期治療に不可欠である.
●熱傷の初期治療の目標は臓器,組織への血液灌流量を十分に保つことにある.
●有効循環血液量の評価を誤ると急性腎不全に移行しやすい.最近は感染期の敗血症の一臓器障害としての非乏尿性急性腎不全の発生が多い.
●体液区分の変動に対する予備能力の低いこと,糖,ナトリウム代謝異常を伴うことが多いこと,さらに異化亢進も強いため,進行性の腎機能障害と診断された時点より早期に血液浄化療法を開始するのが好まれる傾向にある.

産科疾患と血液浄化療法

著者: 中林正雄 ,   原田誠 ,   武田佳彦

ページ範囲:P.922 - P.925

●血液浄化療法は血液中の有害物質の除去により疾患を治療する,という考えから発達した.
●産科疾患で適応となる代表的な疾患は母児血液型不適合による胎児溶血性疾患である.
●胎児の血液型抗原が母体と異なる場合に,胎児血が母体循環に混入すると,胎児血液型抗原に対する抗体が母体側で産生され,胎盤を通過するIgG型抗体が胎児に移行して胎児赤血球を破壊する.
●現在では血液浄化療法により母体側の抗D抗体を除去し,胎児輸血や胎外治療が可能な週数まで妊娠を継続させることが期待できる.

がん治療における血液浄化療法

著者: 峠哲哉

ページ範囲:P.926 - P.929

●がん治療における血液浄化療法の主目的は,血清中の免疫抑制機序を除去し,免疫応答性を高めることにある.
●血液浄化療法により腫瘍縮小効果や一時的な抗腫瘍効果が認められ,performance statusを含めた患者のQOLは高まるが,血液浄化療法単独では限界があり,化学療法,免疫療法との併用が望ましい.
●筆者らは血液浄化療法とLAK細胞養子免疫療法の併用を試みているが,末期がん症例にもかかわらず,高い奏効率を得ている.今後の有望な治療法の1つと思われる.

座談会

血液浄化療法の応用と今後の展開

著者: 秋澤忠男 ,   飯野靖彦 ,   平澤博之 ,   川口良人

ページ範囲:P.931 - P.942

 川口(司会)“medicina”5月号の特集として「血液浄化療法」が取り上げられましたが,血液浄化療法はその適応範囲が広く,特に最近では日常の治療医学の上で血液浄化療法は欠かすことのできないものとなっています.血液浄化療法は専門医や特別な技能を持つ人のみが知っていればよい治療法ではなく,血液浄化療法を行えばかなりの疾患の病態を改善できるということ,さらに血液浄化療法に頼らなければ治療ができないような末期的病態が存在するということは,一般的な医学知識として臨床医に広く要求されるものです.
 よく考えてみると,血液中の汚れた余分な物質を除去しようという考え方は昔から臨床医学で試みられていました.しかし,それをいかに効率よく,いかに安全に,しかも適切な効果が得られるかという方法論を考ますと,血液浄化療法は近代的でモダンな治療法だと思います.

対談 内科診療のあゆみ・5

神経疾患診療の基本と最近の進歩

著者: 黒岩義之 ,   尾形悦郎

ページ範囲:P.978 - P.987

 尾形 私の個人的な経験ですが,neurologyといいますと,まず思い浮かぶのが豊倉康夫先生の大変meticulousな神経所見のとり方とinterpretationです.あの,診察技術とanatomyとを対比した,芸術ともいえる組み立てがまず頭に浮かぶのです.一方で,最近の医療機器の進歩によって,ちょっと意識障害のある患者,あるいはあった患者が来ると,すぐCTを撮ります.meticulousな神経所見をとる前にそういう検査をすぐやっています.それがいい悪いではなくて,そういう機器が導入されてからは,そのようにやらないと速やかな治療方針の決定もできない,と考える人が増えているように思います.
 次に私が思い浮かべることは,先ほどの豊倉先生のmeticulousな診察に加えて,精細な文献的チェックです.その病気の原因が何であるかは別として,こういう疾患像があるということを神経内科では非常に明確にしていますね.これは何も豊倉先生だけではなくて,有名なneurologistは皆さん実に精密に患者の病態を記載しています.

電子内視鏡による大腸疾患の診断・15

表面型腫瘍の色素拡大電子スコープ所見

著者: 工藤進英 ,   飯沼元 ,   小野真一 ,   中嶋孝司 ,   日下尚志 ,   中村穣志

ページ範囲:P.944 - P.949

 電子内視鏡はファイバースコープにかわる新しい消化管内視鏡診断装置として開発された.ファイバースコープと比較し,解像力に優れ,画像処理などの可能性も有し,これからの発展が大いに期待されるところである.
 最近開発された拡大電子スコープは,大腸の最も微細な病変の診断が可能な手法である.通常観察から,瞬時のズーム操作により100倍まで倍率を切り換えられる拡大電子スコープは,病変部のピットパターン(pit pattern)から生体内において組織診断を客観的に類推することを可能にした.生体内において組織診断が可能になることは,臨床家の究極の目標である.ポリープ,腺腫を対象としていた時代の拡大内視鏡とは異なり,平坦・陥凹型癌の鑑別診断が問われる時代になり,今後その重要性はさらに高くなっていくことが予想される.

図解病態のしくみ—肝臓病・10

アルコール性肝障害

著者: 康山俊学 ,   桑原芳弘 ,   渡辺明治

ページ範囲:P.950 - P.960

概念(定義)
 アルコール性肝障害は,長年にわたる過剰飲酒が原因となって脂肪肝から肝硬変に至るまでの多彩な肝病態を示し,禁酒により臨床症状や検査成績の明らかな改善が認められるのを原則とする.したがって,1日のアルコール摂取量とその継続期間が問題となる.飲酒者の定義として毎日,日本酒に換算して1日平均3合以上の飲酒を少なくとも5年以上続けた場合を常習飲酒家といい,1日平均5合以上を10年以上続けた場合は大酒家としている.肝障害は積算飲酒量に依存し,長期にわたっての大量飲酒者に発生する.

演習

心エコー図演習

著者: 横田慶之

ページ範囲:P.961 - P.966

心不全症状が次第に増悪した57歳の男性
 既往歴 特記すべき事項なし
 家族歴 特記すべき事項なし

内科医のための胸部X-P読影のポイント・18

過敏性肺臓炎

著者: 松井祐佐公 ,   長井苑子

ページ範囲:P.968 - P.974

症例
 患者 55歳,女性.会社事務員
 主訴 呼吸困難(H-JII度),乾性咳嗽

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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