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雑誌目次

雑誌文献

medicina31巻1号

1994年01月発行

雑誌目次

今月の主題 消化器疾患の治療法—1994年の再評価 食道疾患

逆流性食道炎/食道潰瘍

著者: 関口利和

ページ範囲:P.6 - P.10

ポイント
●逆流性食道炎は,消化液の胃から食道内への逆流によって発症する.
●食道潰瘍は原因を問わず,損傷が粘膜下層,筋層まで及ぶ病理組織学的名称である.
●病態は多岐にわたっているが,重要なのは下部食道括約部(LES)の機能低下と食道酸排出能の遅延である.
●よって,理論的には消化管運動改善剤が有効と考えられるが,臨床の場では酸分泌抑制剤が有用である.
●ヒスタミンH2受容体拮抗剤やプロトンポンプ阻害剤の開発によって,内科的治療効果は急激に向上した.
●内科的治療では病態が改善されないので,投薬を中止すると再発する率が高い.
●狭窄を続発することが多いので,継続治療を要する.

食道静脈瘤

著者: 六倉俊哉

ページ範囲:P.12 - P.18

ポイント
●食道静脈瘤の治療としては,緊急,待期,予防のいずれを問わず,内視鏡的硬化療法が第一選択の治療法である.
●胃静脈瘤に対しても,内視鏡的硬化療法が積極的に行われているが,止血困難のこともあり,他の治療法についても熟知している必要がある.
●内視鏡的静脈瘤結紮術は,硬化療法に比し,さらに安全に施行し得る新しい治療法であり,普及しつつある.
●経内頸静脈的肝内門脈大循環短絡術は,開腹手術を要しないシャント術であり,硬化療法での止血困難例に対し,よい適応である.
●食道静脈瘤に対する根本的治療として,肝移植の行われる日が待たれる.
●ウイルス性肝炎の多い本邦においては,肝炎ウイルスの撲滅が,肝硬変,肝癌,食道静脈瘤の予防として最も重要である.

食道癌

著者: 小川道雄 ,   山崎勝美

ページ範囲:P.20 - P.23

ポイント
●最近の食道癌に対する手術の方針は,二元化の傾向にある.拡大手術は3領域郭清術(頸部,胸腔内,腹腔内リンパ節の郭清)であり,縮小手術は内視鏡的食道粘膜切除術と非開胸食道抜去術である.
●画一的な食道癌治療が反省され,症例によって治療法の選択がなされるようになった.
●QOLを考慮して縮小手術を積極的に取り入れるために,high risk groupに対してルゴールを用いた色素内視鏡検査を行って,症状のない早期の食道癌の発見に努めるべきで ある.

胃・十二指腸疾患

慢性胃炎

著者: 宮原透

ページ範囲:P.24 - P.28

ポイント
●胃炎の分類は種々存在しているが,未だ確定的なものはない.
●慢性胃炎(萎縮性胃炎)の進展は,Helicobacter pyloriとの関連が論議されているが,現時点においては加齢による変化と捉えるのが妥当であり,愁訴との直接的な結びつきはない.
●慢性胃炎に急性の変化が加わった時は,急性胃炎,胃潰瘍の治療に準じる.
●腹部不定愁訴の患者で,慢性胃炎以外に器質的病変を認めない際は,消化管運動改善剤,心身医学的なアプローチも必要と考えられる.

胃・十二指腸潰瘍

著者: 白井孝之

ページ範囲:P.30 - P.34

ポイント
●胃・十二指腸潰瘍の治療は大きく,①初期治療,②維持療法,③合併症の治療に分けられる.
●①における現在の治療の主軸はH2-RAとPPIであり,これらを使いほとんどの例で一定期間内の治癒が見込める.
●再発の問題はなお解決されておらず,維持療法期間をも含めて治療の質が問い直されている.
●詳細な機序は不明ながら,Helicobacter pylori(H. pylori)の除菌による再発率の低減が注目され,すでに一定の成果を上げている現行の維持療法の成績を凌駕する数字を示している.
●潰瘍の合併症のうち,出血に対する内視鏡的止血法はほぼ全国的に普及し,出血例の緊急手術件数を減少させたが,その手技もエタノール局注法以外にいくつかのバリエーションが生まれ,選択の幅が出てきている.

出血性潰瘍

著者: 荒川正一

ページ範囲:P.36 - P.39

ポイント
●出血性潰瘍は胃・十二指腸潰瘍の合併症である.
●高齢者の出血が増えている.
●出血性潰瘍は上部消化管出血の約50%である.
●緊急手術を回避するために積極的保存的治療が行われる.
●内視鏡は亜緊急に行うことがよい.
●内視鏡的止血法は局注止血法,ヒートプローブ止血法,高周波止血法が奨められる.
●止血後の再出血を予測することが重要.
●内視鏡検査と内視鏡的止血法の必要な症例を確定することが今後の課題.

早期胃癌

著者: 多田正弘 ,   沖田極

ページ範囲:P.40 - P.43

ポイント
●2cm以下の潰瘍を有さない深達度mの高分化型腺癌が内視鏡的治療の適応である.
●組織切除法が第一選択の治療法である.
●切除標本で適応の決定ならびに効果判定を行う.

進行胃癌

著者: 中島聰總 ,   大山繁和 ,   太田惠一郎

ページ範囲:P.44 - P.47

ポイント
●胃癌の外科治療の歴史は,1881年のBillrothの胃切除に始まった.
●現在のわが国における標準的な術式は,梶谷,陣内,中山らによって1960年頃ほぼ確立された.
●胃下部進行癌に対する膵頭十二指腸切除術は,膵への直接浸潤のみが絶対的適応であることが明らかとなった.
●左上腹部内臓全摘術は,P1程度の腹膜播種を有する,あるいは潜在的腹膜播種を有する症例が良い適応である.
●拡大リンパ節郭清は大動脈周囲リンパ節に及んでおり,より合理的な郭清部位,適応などについて検討されている.
●さらなる進行胃癌の治療成績向上のためには,肝転移,リンパ節転移に対する薬剤強度を高めた術前化学療法,腹膜播種の治療あるいは予防を目的とした術中あるいは術後化学療法が必須である.

小腸・大腸疾患

炎症性腸疾患

著者: 北洞哲治 ,   林篤 ,   大原信

ページ範囲:P.49 - P.53

ポイント
●潰瘍性大腸炎の病因は不明と言わざるを得ないが,その病態は明らかになりつつあり,治療法の工夫とともに治療成績は向上しつつある.
●本症治療で肝要なことは,病態をよく把握し,従来の治療を再評価し,病期に適した治療薬を組み合わせ,きめ細かな治療を心掛けることである.
●Crohn病は病因・病態も不明のままである.最も有効な治療法は成分栄養療法を基本とした薬物療法の併用であるが,未だ満足できるものとは言えない.今後の研究に期待するところ大というのが実状である.

過敏性腸症候群—治療の変遷と再評価

著者: 桜井幸弘

ページ範囲:P.54 - P.57

ポイント
●過敏性腸症候群の正しい定義を理解する.腹痛を伴う器質的疾患のないことを強調しておく.慢性の便秘,腹痛のない下痢は除外される.
●治療の第一は器質的疾患の除外にあり,次いで症状の理解と対症療法をきちんと行うこと.訓示や精神分析のみでは患者は納得しない.
●治療の原則は今も昔も変わりない.
●腸機能改善剤に注目すること.

感染性腸炎

著者: 高橋裕 ,   上野文昭

ページ範囲:P.58 - P.61

ポイント
●感染性腸炎はself-limitingであり,自然治癒が期待できるので,治療の基本は補液による脱水の改善を優先する.簡便な経口補液で十分であるが,重症例では輸液を行う.
●止痢剤で有効なものは,次サリチル酸ビスマスと麻薬系薬剤(リン酸コデイン,loperamide)であるが,濫用により症状が重篤化することもある.
●抗菌剤使用の要否・薬剤選択は病原菌により決定する.しかし,病態の重症度や基礎疾患によっては便染色を参考に見込み投与(empiric thrapy)を行うことがあるが,安易な使用は,厳に慎むべきである.

大腸ポリープと早期癌—内視鏡治療の適応と限界

著者: 五十嵐正広 ,   勝又伴栄

ページ範囲:P.63 - P.68

ポイント
●5mm以下の隆起型は,ホットバイオプシー,表面型はストリップバイオプシーで切除.
●5mm以上で隆起型はスネアポリペクトミー,表面型はストリップバイオプシーが適応.
●切除適応は,有茎性病変は基部20mm以下,無茎性病変や表面型腫瘍ではnon-liftingsign陰性が条件で30mm以下.
●m癌では,切除端に癌が陰性であれば内視鏡治療のみで治療終了.sm癌では,断端陰性,脈管侵襲陰性,高分化型癌の条件を満たせば内視鏡治療のみでよい.

進行大腸癌

著者: 棟方昭博 ,   福田真作 ,   対馬健一

ページ範囲:P.69 - P.72

ポイント
●生活様式,特に食生活の欧米化に伴い,大腸癌の発生率は年々増加してきている.
●大腸集検の普及,検査法の進歩により,大腸早期癌の発見率は年々増加しているが,手術可能症例だけみても未だ約70%は進行大腸癌である.
●直腸癌の外科治療において,肛門機能を温存した肛門括約筋温存術や排尿・性機能の温存を目的とした自律神経温存手術が行われている
●手術不能進行大腸癌の内科的治療として,5-FUの効果増強を目的としたbiochemicalmodulationが注目されている.

肝疾患

B型慢性肝炎

著者: 飯野四郎

ページ範囲:P.74 - P.78

ポイント
●B型慢性肝炎の治療法は未だ確立されたとは言い難い.
●確実な治療法は存在しないが,以下の治療法が行われている.
1)副腎皮質ホルモンの離脱療法
2)インターフェロン療法
3)1)を先行させ,2)を追加する療法
4)SNMC療法
5)肝臓用剤の使用
●1カ月間に限定されたインターフェロン療法では不十分であるため,現在,長期投与の試みが始められている.

C型慢性肝炎

著者: 清澤研道

ページ範囲:P.81 - P.84

ポイント
●C型慢性肝炎の治療は病因が同定される以前は非特異的な一般療法が行われていたが,診断が確立してからは抗ウイルス療法,特にIFN療法が一般化している.
●ただしIFNの著効率は約40%であり,今後さらに治療法の改善,開発が望まれる.

劇症肝炎

著者: 与芝真

ページ範囲:P.86 - P.90

ポイント
●欧米では劇症肝炎の治療法として肝移植が定着している.破壊された肝の機能を回復させるのには最も完壁な方法だから,一応のゴールであり,この後の治療法の変遷は考えにくい.ただし,劇症肝炎時の肝移植は成功確率が相対的に低いので,他に有効な方法があれば,一部の適応の見直しがあるかもしれない.
●肝移植が早急に実現しない国では,強力な肝補助法の開発や肝細胞破壊の進展阻止など今後も変遷が続くであろう.肝補助法としては有力なものが登場しつつあり,近い将来は標準的方法となる.肝細胞破壊の阻止についても実現に向けて努力がなされている.

重症アルコール性肝炎

著者: 上野義隆 ,   森谷晋 ,   堀江義則 ,   石井裕正

ページ範囲:P.91 - P.95

ポイント
●近年,本邦のアルコール性肝障害においても予後不良な重症アルコール性肝炎症例の増加が認められている.
●本疾患は,アルコール性肝炎のなかでも臨床症状が重症で,発症から約1カ月で劇症肝炎様の病態を呈し,多くは死の転帰をとることが多い(表1).
●本疾患と通常のアルコール性肝炎との病態を比較すると,本疾患では発熱,意識障害,黄疸,腹水などの発現頻度が有意に高く,血液生化学検査ではアルブミン値,プロトロンビン時間の有意な低下,白血球数,総ビリルビン値などの有意な増加が認められる(表2,3).
●一般臨床医の本疾患に対しての認識はまだ少なく,また通常のアルコール性肝炎と異なり,禁酒にもかかわらず,臨床症状の改善が認められないこともある.したがって,早期かつ的確な診断,適切な薬物療法が重要である.

原発性胆汁性肝硬変

著者: 田中直見 ,   松崎靖司 ,   大菅俊明

ページ範囲:P.97 - P.100

ポイント
●ursodeoxycholic acid(UDCA)がScheuer III期までには著効を示す.
●Scheuer IV期の進行例については欧米では肝移植が行われ,5年生存率70%以上の好成績が得られている.
●病態に応じた治療法,例えば免疫学的胆管破壊や線維化進展に対する治療法は未だ確立していない.

肝硬変に伴う腹水,浮腫

著者: 柴田実

ページ範囲:P.102 - P.108

ポイント
●肝硬変による腹水と他の原因による腹水との鑑別を正確に行う.
●Na制限食が治療の基本である.
●治療には定石的手順があり,安易な利尿剤,血漿製剤の投与を避ける.
●利尿剤の過剰投与は肝性脳症,急性腎不全,電解質異常などの副作用をきたす.慎重かつ緩徐に治療を進め,利尿がついたら早めに減薬する.
●難治性腹水には腹水穿刺,腹水濃縮再注入,Le Veen shuntなどの治療法がある.腹水穿刺は従来は禁忌であったが,最近はアルブミンを補給しながらの積極的な排除も行われている.

肝硬変に伴う出血傾向

著者: 金山正明

ページ範囲:P.110 - P.113

ポイント
●肝硬変に伴う出血傾向の成因は,凝固因子の産生障害による欠乏と血小板の減少が主体である.
●出血傾向に対する治療は原因である肝病変が非可逆性であるため,一過性の効果しか期待できないが,速効性であることが重要である.
●欠乏している凝固因子や血小板を直接補充することが,最も確実で速効的である
●実際に出血をしている場合,局所的治療と並行して,プロトロンビン時間が20秒以上に延長している場合は新鮮凍結血漿を,血小板数が30,000/μl以下の場合は濃縮血小板を補充する.
●DIC症候群合併例では,濃縮アンチトロンビンIIIとヘパリンの併用を行う.

肝性脳症

著者: 渡辺明治

ページ範囲:P.114 - P.120

ポイント
●肝性脳症の発現機序に基づく新しい治療法の登場とその衰退.
●肝不全治療法の二重盲検試験による評価.
●肝性脳症の予防法と治療法—脳症の早期診断が重要.
●低蛋白食,二糖類,非吸収性抗生物質,分枝鎖アミノ酸製剤が基本的な治療法.

肝細胞癌

著者: 山崎隆弘 ,   沖田極

ページ範囲:P.122 - P.125

ポイント
●小肝細胞癌に対するPEITの治療効果は外科的切除に匹敵するくらい有用である.
●進行肝癌に対してはTAEが行われているが,その限界も明らかになってきたことから,PEITの併用も行われている.
●高度進行肝癌に対しては,皮下埋込み式リザーバーを用いた抗癌剤動注療法が,QOLの面からも有用である.
●今後,免疫療法におけるBRM,放射線療法,温熱療法などの肝癌治療の再評価が必要である.
●肝癌には多中心性発癌の性格があることから,今後,肝癌予防が期待される.

膵・胆道系疾患

重症急性膵炎

著者: 吉田憲司 ,   竹内正

ページ範囲:P.126 - P.130

ポイント
●重症膵炎の死因は,発症早期には循環不全,呼吸不全,腎不全,後期には敗血症が多く,その対策が重要である.
●早期重症膵炎の治療に最も重要なのが,水分・電解質管理である.
●重症膵炎には,intensive careによる全身管理が必要となる.
●抗酵素剤は初期より十分量を投与し,重症膵炎の場合にはDICに準じた量を持続点滴で投与する.
●胆石膵炎,重症膵炎には,予防的抗生剤投与を考慮する.
●重症膵炎の後期には,膵膿瘍をはじめとする感染がその予後を悪くする.

胆嚢内結石症

著者: 石原扶美武 ,   柴本由香 ,   戸田剛太郎

ページ範囲:P.132 - P.136

ポイント
●胆嚢内結石症の治療法は,近年各種治療法が開発されてきており,症例・病態に応じた最も適切な治療を選択すべきである.この際大切なことは,患者に胆石症およびその治療について十分な説明をすることである.
●無症状胆石は原則として経過観察でよい.
●コレステロール胆石例で適応に適う例は経口胆石溶解療法,ESWLを行う.
●症状の頻発する例,胆嚢に病変を有する例,黄疸や膵炎合併例,肝機能増悪例,大胆石例,胆石充満例などは外科的治療を行う.
●治療法選択に際しては,適応を考慮することも大切だが,無効例に対しては臨機応変に対応する.

総胆管結石症

著者: 中島正継 ,   向井秀一 ,   早雲孝信

ページ範囲:P.137 - P.141

ポイント
●総胆管結石症では閉塞性黄疸や胆道感染を伴いやすく,急性閉塞性化膿性胆管炎は最も重篤な合併症である.
●したがって,結石除去を目的とした根治療法が不可欠であるが,従来は開腹による外科的切石術が唯一の治療法であった.
●最近の20年間に内視鏡的切石術を中心に各種の非観血的治療法が発達しており,根治療法の概念が根本的に変換しつつある.
●内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)を基本手技とする経口経乳頭的内視鏡下切石術(PTEL)は,外科的切石術に代わる第一選択の治療法として高く評価されている.

胆道系感染症

著者: 永田博司

ページ範囲:P.143 - P.147

ポイント
●胆道系感染症の治療の原則は不変であり,①感染のコントロール,②胆道の閉塞機転の解除,③体液と電解質バランスの維持である.したがって治療の方針は,①抗生物質の経静脈的投与,②胆道のドレナージ,および③全身管理の3点である.
●抗生物質の投与と全身管理は,すべての症例に対して初期から行われる.抗生物質,全身管理は長足の進歩を遂げているが,これらのみでは胆道感染を完全に治癒させることはできない.問題は,近年多様化してきたドレナージの各手技のいずれを選択し,どういうタイミングで行うかである.
●治療の最終目標である閉塞機転の除去は従来,外科手術によってきたが,内視鏡的あるいは超音波,CT誘導下の閉塞解除術が発達し,それらの適応範囲が広がってきている.

悪性腫瘍による胆道閉塞

著者: 門田俊夫

ページ範囲:P.148 - P.151

ポイント
●胆道ドレナージ法の呼称にはそれぞれPTCD,ERCPなどの略号が用いられややこしいが,これらは半ば『公用語』であるため,それぞれをきちんと整理して,理解しておく必要がある.
●さらにドレナージ法を内痩術,外痩術に分類して,それぞれの利点,欠点を理解することも必要である.
●手術前の一時的減黄術の是非に関しては,議論が分かれている.現時点での大勢は,単なるbypass手術では減黄術は必要ない.肝臓切除を要する手術や,低アルブミン,腎機能不全,胆道感染が疑われる場合には,術前の減黄を2〜4週間行う.
●切除不能癌に対するドレナージ法の選択は,個々の症例に応じ,quality of lifeの向上を第一目標とする.

カラーグラフ 生検による組織診断・1【新連載】

生検組織診の意義

著者: 坂本穆彦

ページ範囲:P.177 - P.182

はじめに
 疾患や病態を診断するためには様々な立場からの数多くの手技・手法があるが,病理組織学的診断histopathological diagnosisは,最終的な診断すなわち確定診断(確診)と位置づけられている1).病変の診断は,原則的には病理(学的)診断によって最終的に決定されるということは現代の臨床診断学のセントラル・ドグマである.
 したがって,臨床医にとっても病理診断が如何なる基盤の上に成り立っているかにつき,その要点を理解しておくことが必要であることは言うまでもなかろう.

グラフ 内科疾患と骨・関節病変・1【新連載】

腎性骨異栄養症

著者: 福田国彦 ,   川口良人

ページ範囲:P.169 - P.175

症例
 患者:慢性腎不全にて血液透析を15年間受けた35歳,男性.
 現症:19歳時,ネフローゼ症候群と診断.20歳時,血液透析を開始.35歳時(3カ月前),転倒にて左大腿骨頸部骨折.

MRI演習・1【新連載】

脳卒中発作(I)

著者: 荒木力

ページ範囲:P.163 - P.167

Case
 62歳,女性.夕食後,突然気分が悪くなり,続いて意識が朦朧となり,緊急入院となった.直ちに単純CTを施行したが異常は認められなかった.図1は続いて施行した発作後3時間のMRIである.

図解 病態のしくみ—遺伝子・サイトカインからみた血液疾患・1【新連載】

急性前骨髄球性白血病

著者: 木崎昌弘

ページ範囲:P.183 - P.189

 ●はじめに
 急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)は,FAB(French-American-British)分類ではM3に相当し,急性骨髄性白血病の約15%を占めている.歴史的には1950年代に,多数の異常な前骨髄球と出血傾向を有する白血病として記載された.
 APLは,臨床的にはDIC(disseminated intravascular coagulation)を高頻度に合併し,特異な染色体異常15;17転座[t(15;17)]を有することが特徴である.近年の分子生物学の進歩により,15;17転座に起因する遺伝子異常,すなわち転座の切断点は17番染色体上ではレチノイン酸レセプター(RARα)遺伝子にあることが明らかとなり,また15番染色体からPML(promyelocytes)遺伝子がクローニングされるなど,分子レベルでの病態の解明が進んでいる.さらには,オールトランス型レチノイン酸(all-trans retinoic acid:ATRA)の経口投与による分化誘導療法により高率に完全寛解が認められ,臨床的にも,また分子レベルでの病態解明の上からも,APLは最も注目されている血液疾患である.

薬を正しく使うためのDrug Information—副作用について・1【新連載】

適切な薬の使い方の原則

著者: 多賀須幸男

ページ範囲:P.190 - P.191

 言うまでもなく,最少の薬剤で最善の効果を引き出すことが薬物療法の基本であるが,まず何よりも患者に害を与えないことが出発点でなくてはならない.しばしば添付文書に現れる「効果が副作用より大きいと考えられる場合に限り使用する」という当たり前の文言は,薬を使用するときの大原則である.副作用についての連載の序論として,薬物治療をめぐって感じている事項を書いてみたい.

臨床医に必要な老人をみる眼・1【新連載】

老人の高血圧症

著者: 小野歩 ,   藤田敏郎

ページ範囲:P.192 - P.194

◆はじめに
 急速な高齢化社会の到来とともに,高齢者の高血圧症を治療する機会が増えてきたが,その取り扱いには壮年者のそれと異なる点が多い.すなわち,高齢者では様々な身体機能の低下があり,降圧薬の副作用が出現しやすいため,その選択には特別な注意を要する.

SCOPE

対談:動脈硬化症の成因とリスクファクター

著者: 山田信博 ,   阿部隆三

ページ範囲:P.197 - P.208

 阿部 山田先生は,動脈硬化と高脂血症や糖尿病との関わりについて,臨床からmolecular biologyまで,幅広い研究を進めておられます.そこで,動脈硬化の成因に関して最近の動向をいろいろお聞きしたいと思います.
 まず動脈硬化の成り立ちに関して,最近の考えを教えて下さい.

medicina Conference・5

頻回に続く頭痛と動悸を主訴に救急外来を受診した35歳の女性

著者: 細川和広 ,   古家恵子 ,   浜重直久 ,   藤田敏郎 ,   山田富美子 ,   峯田日出也 ,   小畑利之 ,   原田一郎 ,   飯田栄俊 ,   玉木和美 ,   増田茂夫

ページ範囲:P.210 - P.227

主訴:頭痛,動悸
家族歴:娘に副腎性器症候群

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.155 - P.162

これからの医療と医療制度・1【新連載】

医療施設の体系化

著者: 寺崎仁

ページ範囲:P.195 - P.195

 日本の医療制度の基本となる法律は,昭和23年に制定された「医療法」である.医師なら誰でも知っていることとは思うが,わが国の医療施設はその医療法によって,収容患者数20人以上の「病院」と,19人以下の「診療所」とに大別されている.その他,医療法には総合病院や助産所などの規定もあるが,基本的には「病院」と「診療所」の2つに医療施設が分類されているに過ぎず,医療法制定後の幾多の改正に際しても,この施設体系に関する事項は手つかずのままで推移してきたのである.つまり,大学病院などの1,000床を超えるような極めて大規模な病院と,わずか20数床の小規模病院とが,制度上は同じ施設体系として取り扱われていたのである.
 しかし,近年のめざましい科学技術の進歩に伴い,医療技術の高度化や専門細分化が進む一方で,人口の急激な高齢化による疾病構造の変化,また国民の生活水準の向上により多種多様な医療サービスが求められるようになるなど,医療を取り巻く環境が非常に大きく変貌してきたのである.端的に言えば,国が戦後一貫して政策的に推し進めてきた医療サービスの供給体制を,量的整備から質的な整備へと転換を図ろうとしているのであり,制度上も医療施設の「体系化」や「類型化」と呼ばれるような,施設体系の再構築が必要とされるようになったのである.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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