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雑誌目次

雑誌文献

medicina31巻4号

1994年04月発行

雑誌目次

今月の主題 First-line検査 Editorial

First-line検査—その有効な使い方

著者: 中原一彦

ページ範囲:P.656 - P.657

ポイント
●「First-line検査」とは,「正しい診断を下すために最初に選択すべき検査」という意味である.
●「First-line検査」は,すべての検査を対象にしている点と,「異状なし」というためのminimum requirementを含んでいる点で,従来の「セット検査」と異なる.
●「First-line検査」はあくまで目安であり,個々の症例に即したきめの細かい対応が必要である.機械的な無思考的な診断は厳に慎むべきである.

一般症状からみたFirst-line検査

発熱

著者: 高野愼

ページ範囲:P.658 - P.660

ポイント
●発熱の原因は多様であるので,病歴,身体所見を十分に把握して,鑑別すべき疾患・病態を絞ったうえで検査を行う.
●First-line検査として,末梢血,検尿,検便,血液生化学検査,CRP,赤沈,胸部X線検査などが挙げられる.
●好中球増多,CRP上昇,赤沈亢進のみられる発熱は一般細菌感染症のことが多いが,結節性多発動脈炎などのリウマチ性疾患の可能性も考慮する.
●白血球減少を伴う発熱では,ウイルス性感染症,腸チフス,一部の重症細菌性感染症のほか,全身性エリテマトーデス,顆粒球減少症などを否定する必要がある.
●First-line検査にて鑑別すべき発熱の原因疾患を限定した後,診断確定のための検査を選定し,施行する.

全身倦怠感

著者: 後藤守孝 ,   合地研吾 ,   松田重三

ページ範囲:P.662 - P.663

ポイント
●全身倦怠感を診断する際,患者の自覚症状,病歴,他覚所見などを正確に把握することは言うに及ばないが,さらにfirst-line検査や特殊検査を駆使してアプローチを行う.
●決して器質的疾患を見落としてはいけない.
●あらゆる検査を駆使しても,なお診断が得られないような場合も少なくない.そのような場合は,精神神経疾患や慢性疲労症候群,AIDSも念頭に置く必要がある.

肥満

著者: 後藤尚 ,   小沼富男 ,   武部和夫

ページ範囲:P.664 - P.666

ポイント
●単純性肥満は,全肥満の95%以上を占める.
●単純性肥満は,症候性肥満を除外して判定される.
●肥満症は,医学管理下におかれるべき肥満例への臨床診断名である.
●各々特徴的な臨床徴候を有する症候性肥満は,全例が治療の対象となる.
●単純性肥満において肥満症と診断する根拠は,健康障害となり得る可能性を有することである.
●肥満における併発症の検索は肥満症の診断に必須であり,内科(糖・脂質代謝,循環器,呼吸器,消化器の各疾患),婦人科,皮膚科,整形外科など,多くの領域でなされる必要がある.
●体脂肪分布異常は,将来の健康障害の可能性を考慮して肥満症診断の基準にて提唱されている.
●体脂肪率のみによって判定されるみえない肥満が近年増加している.

体重減少

著者: 上野貴之 ,   松本俊夫

ページ範囲:P.668 - P.669

ポイント
●6カ月で5kg以上,あるいは1カ月で1kg以上の体重減少をみたら,原因疾患の存在を考え,精密検査をする必要がある.この際,体内水分量の変化ではなく,lean body massの変化であることを確認する.
●体重減少は,①食事摂取量低下,②吸収障害,③代謝亢進,④エネルギー利用障害のいずれかの機序で起こる.
●原因疾患は,悪性腫瘍,消化器疾患,感染症,内分泌代謝疾患,腎不全,精神疾患のいずれかである場合が多く,病歴,臨床症状から必要な検査計画を立てる.
●原因疾患が見出せない場合でも,潜在する原因の検索を持続しつつ,最低半年間は経過観察する必要がある.

頭痛

著者: 畑隆志

ページ範囲:P.670 - P.673

ポイント
●頭痛を主訴に医療機関を訪れるものは極めて多いが,器質的疾患を有するものは少ない.しかし,それが機能的頭痛であっても治療の対象であるので,確定診断をつけることは重要である.
●鑑別診断で最も重要な点は詳細な病歴聴取である.神経徴候と組み合わせれば,ほとんどすべての鑑別診断が可能である.
●臨床検査のなかでは頭部X線CTと髄液検査が重要であるが,すべての医療機関で実施できるものではないため,病歴と神経学的徴候から詳細な検査が必要と思われたら,専門家のいる施設に送ることも重要である.

めまい

著者: 井之口昭 ,   小宗静男

ページ範囲:P.674 - P.676

ポイント
●めまい患者の初診時には,耳鼻咽喉科,一般内科,整形外科的検査を行い,末梢前庭性の障害か中枢性の障害かをまず鑑別することが大切である.
●鼓膜所見より中耳疾患の有無を検索する.
●聴力検査から伝音性,感音性難聴の有無を鑑別する.
●体平衡検査で平衡障害の有無を,眼振検査でめまいが末梢性か中枢性かを鑑別する.
●第Ⅷ神経を除く脳神経,小脳症状の有無を検討する.意識障害があれば末梢性ではない.
●内科的検査から,全身疾患に伴うめまいの可能性を検討する.最近は,うつ病,心身症による心因性めまいも増えている.

呼吸困難

著者: 山城一郎 ,   秋山一男

ページ範囲:P.678 - P.680

ポイント
●迅速な救命処置を要する気道閉塞と緊張性気胸の除外診断.
●問診(発症様式,随伴症状,既往歴,職業歴,喫煙歴など)や理学的所見(バイタルサイン,呼吸様式,体位,チアノーゼ,頸静脈怒張,浮腫,呼吸音,心雑音の有無など)から原因疾患を推測し,検尿,末梢血液検査,生化学検査,胸部X線,心電図,血液ガスの組み合わせを検討する.

咳嗽・喀痰

著者: 藤井忠重 ,   田中正雄 ,   武田正

ページ範囲:P.681 - P.687

ポイント
●咳嗽・喀痰の診断では,原因とともにその程度,喀出困難度および合併症の診断も重要である.
●咳嗽・喀痰の詳細な問診,理学的所見およびX線像でほぼ診断の方向が示される.
●病変の存在診断には,X線像,CT,Ga-67シンチなどが用いられ,CTは詳細な形態診断,微細病変の解析にも優れ,適応が広い.
●肺機能は,病変の重症度や部位の診断のほか,一部の疾患の診断基準や間質性病変の早期検出に用いられる.
●気管支肺胞洗浄は,起炎菌,腫瘍・特殊細胞や特殊物質の検出,細胞分画やリンパ球の解析で診断,病態解析に役立つ.
●肺生検には,経気管支,経皮,胸腔鏡下,開胸などの方法があり,症例,病変により適宜選択される.

動悸

著者: 徳山淳 ,   山口徹

ページ範囲:P.688 - P.689

ポイント
●まず,動悸が心臓由来なのか,他の症患が原因なのかを見極める.
●動悸のFirst-line検査法としては,心電図,胸部X線,心臓超音波法を実施する.
●不整脈に対する治療の必要性を判断するのには,24時間持続心電図(ホルター心電図)が最適である.
●不整脈の最終診断および治療法の決定には,電気生理学的検査法(EPS)が最も有効な方法である.

胸痛

著者: 井上大介

ページ範囲:P.690 - P.691

ポイント
●病歴の聴取の重要性:胸痛の部位,性質,持続時間,随伴症状,悪化あるいは軽減させる体位や要因など.
●狭心症,急性心筋梗塞,解離性大動脈瘤,急性心膜炎,肺塞栓,自然気胸をまず念頭に置いて,診察,検査を進めること.
●鑑別診断のため,心電図,胸部X線,心エコー図,血液生化学,胸部CT,動脈血ガス分析をFirst-line検査として挙げた(表1).

腹痛

著者: 金子栄藏

ページ範囲:P.692 - P.693

 ポイント
●主要臓器と腹痛の関連を示した(図1).腹痛の原因は多岐にわたるが,腹部臓器はそれぞれ決まった部位に症状を呈するので,まず症状,理学的所見から原因臓器を推定する.
●腹部臓器の神経支配は,腎など一部の臓器を除いて多くは両側支配であり,そのため障害部位に関係なく正中部に症状を訴えることがある.例えば急性虫垂炎は,しばしば上腹正中痛で発症し,経過とともに右下腹部に限局してくる,したがって,常に経過を観察することが大切である.
●超音波検査は,腹部の診療には胸部における聴診器と同様に重要である.

嘔気・嘔吐

著者: 井上正規

ページ範囲:P.694 - P.696

ポイント
●吐気・嘔吐を呈する疾患は多岐にわたり,他の症状と随伴していることが多い.特に頭痛,神経症状や胸部所見,代謝性疾患の有無,薬物服用などの基礎疾患の診断が重要である.
●内科治療は根本的原因に対する治療が重要だが,抗ドーパミン剤やフェノチアジン系薬剤が対症療法として用いられる.

食欲不振

著者: 足立靖 ,   矢花剛

ページ範囲:P.698 - P.700

ポイント
●食欲不振は主観的な愁訴で,悪心・嘔吐,腹痛などの諸症状を随伴することが多く,個人差も大きく,客観的に捉え難いことが多い.
●消化器疾患の他,広範な疾患に普遍的にみられる.
●ストレス,精神状態の影響も大きく,うつ状態に伴うことも少なくない.
●薬剤の副作用,中毒の他に,女性では妊娠による可能性もある.
●高齢者では各種悪性疾患などの唯一の初発症状であることも少なくない.
●複数の要因に基づくことが多いので,十分な問診と的確かつ細心の身体所見の把握が,検査を進めていくうえで重要である.

下痢・便秘

著者: 早川滉

ページ範囲:P.702 - P.705

ポイント
下痢
●面接・問診・診察で救急処置の必要性の有無の推定
●ショック,脱水状態の有無,粘血便を含む便の性状
●急性か慢性か,感染性か非感染性かの鑑別
●病原菌および諸検査による病因の決定
便秘
●面接・問診・診察で,急性か慢性か,機能的か器質的かの鑑別
●全身状態,血便の性状による器質的病変の推定
●器質的病変の鑑別診断と除外
●機能性病変の性格分析

浮腫

著者: 小岩文彦 ,   出浦照國

ページ範囲:P.706 - P.708

ポイント
●浮腫は全身性と局所性に分けられる.
●全身性浮腫をきたす原因には,心性,腎性,肝性,内分泌性,栄養障害性,特発性および薬剤性がある.
●浮腫の鑑別診断は,病歴と理学所見をもとにまず初めにfirst-line検査より行い,その疾患が疑われたら次の検査を行って,病態の把握,治療方針の決定をする.
●浮腫をきたす特定の疾患を除外するために行う検査の選択も,治療方針の決定には重要である.

関節痛

著者: 渡辺一雄 ,   西間木友衛

ページ範囲:P.709 - P.713

ポイント
●関節痛のFirst-line検査としては,末梢血・尿一般検査,ESR・CRPおよび関節単純X線撮影を行う.
●First-line検査の検査結果が正常でも,除外できない疾患が多いため,診察結果を参考に検査を進める.
●リウマトイド因子を過大評価することは避ける.

筋肉痛

著者: 栗原照幸

ページ範囲:P.714 - P.716

ポイント
●限局した筋肉痛か,全汎的な筋肉痛かをみる.
●痛みのみか,筋力低下があるか否かをみる.
●筋肉の腫脹,外傷の有無,激しい運動後の痛みかを明らかにする.
●First-line検査は,赤沈,白血球数と分画,血清K,血清CK,尿の色(赤ければミオグロビン検査),乳酸,ピルビン酸,心電図.
●筋力低下があれば,さらに針筋電図,筋生検.
●治療は原因によって異なるが,ステロイド剤を用いる疾患もある.例:多発筋炎,側頭動脈炎,膠原病に伴う筋痛と筋炎.

異常症状からみたFirst-line検査

意識障害

著者: 星野晴彦

ページ範囲:P.718 - P.720

ポイント
●意識障害の6割は,中枢神経疾患以外の疾患,すなわち全身の疾患が原因となっている.
●まずvital signのチェック
●神経所見を確実に取ること
●画像診断は,意識障害の原因究明の一手段に過ぎない.
●血液検査ではあらゆる可能性を考えてチェック項目を検討する.
●意識障害の原因は1つとは限らない.

痙攣

著者: 宇高不可思 ,   重松一生

ページ範囲:P.722 - P.723

ポイント
●“痙攣”には,convulsion以外にspasmやmyoclonusなども含まれる.その鑑別には,病歴,現症のほか,筋電図,脳波,誘発電位などの電気生理学的検査が必要である.
●痙攣(convulsion)は,真性てんかん,症候性てんかん,内科的疾患による二次性痙攣,心因性痙攣の4種に大別される.その原因の鑑別には,本人,家族および目撃者より詳細に問診を行い,first choiseの検査として,血液生化学検査,CT,MRI,脳波などの画像診断を行う.
●原因の究明と並行した速やかな治療が必要である.

ショック

著者: 能沢孝 ,   井上博

ページ範囲:P.724 - P.726

ポイント
●患者の臨床的特徴より,ショックの有無を素早く判断する.
●輸液などの対症療法により,循環動態の維持・改善を図る.
●対症療法を継続しつつ,ショックの鑑別診断を行い,それぞれの原因に対する治療を行う.
●鑑別診断に際し,各々のショックの病態を理解し,少数の基本的検査項目で的を絞る.

チアノーゼ

著者: 笠井俊夫 ,   永田正毅

ページ範囲:P.728 - P.729

ポイント
●病歴と理学所見,血液ガス分析,胸部X線写真などで多くは診断可能である.

胸水・腹水

著者: 杉山幸比古

ページ範囲:P.730 - P.732

ポイント
胸水
●胸水は,心不全,腎不全,低蛋白血症,リンパ流のうっ滞などによる漏出液と,結核,膿胸,癌,膠原病などによる滲出液とに分けられる.
●漏出液と滲出液は,蛋白濃度,LDH値などを参考に鑑別する.
●滲出液では結核性と癌性の鑑別が重要であり,細胞診,ADAなどにより鑑別する.
●最終的診断法としては,従来,コープ針などによる胸膜生検が行われてきたが,近年は胸腔鏡下の胸膜生検が非常に有用で,侵襲も比較的少ない.腹水
●蛋白濃度,LDH値,アルブミン濃度差などを参考に,漏出液と滲出液とに分ける.
●滲出液では癌性腹水が重要であり,細胞診,腫瘍マーカーを用いて他の腹水と鑑別する.
●結核性腹水の頻度は多くないが,ADAが鑑別に有用である.
●その他,腹部臓器由来の特殊なものとして,膵疾患に関連するもの,胆道系疾患に関連する胆汁性のもの,腹膜仮性粘液腫によるものなどがある.

肝腫大

著者: 為田靱彦 ,   小坂義種

ページ範囲:P.734 - P.737

ポイント
●患者の診察に際しては,肝腫大の存在の有無を慎重な腹部打診・触診にて把握するよう心掛ける.
●ほとんどの肝疾患で肝腫大をきたし,硬度の増強は肝の線維化の程度を反映している.
また,急性肝炎や肝硬変の肝萎縮は予後不良徴候である.●肝疾患のうち,特にアルコールに起因するものでは,肝腫大の程度は強く,硬度も増強していることが多い.
●著明な肝腫大,特に慢性肝疾患の経過中にみられる肝腫大の増強は,肝悪性腫瘍を疑わせる所見である.
●肝・胆道疾患以外で肝腫大をきたす疾患として,心不全,コントロール不良の糖尿病,先天性の代謝異常などがある.

脾腫

著者: 荒田慎寿 ,   田中克明

ページ範囲:P.738 - P.740

ポイント
●脾腫は,全身性疾患の一徴候あるいは他臓器疾患に関連していることがほとんどで,脾原発の病変は少ない.また,巨大脾腫を呈する疾患は,慢性骨髄性白血病,骨髄線維症などの血液疾患に限られる.
●First-line検査としては,末梢血検査,血液生化学検査,腹部超音波検査などが有用である.
●Second choiceの検査としては,炎症性および感染性疾患では細菌培養,ウイルス特異抗体価の測定を,うっ血性脾腫では各種画像診断,肝炎ウイルスマーカー,ICG負荷試験および肝生検を,血液疾患では骨髄生検,リンパ節生検などを考慮する.

黄疸

著者: 山内眞義 ,   戸田剛太郎

ページ範囲:P.742 - P.744

ポイント
●血中あるいは組織にビリルビンが増加し,皮膚,粘膜などが黄染した状態を黄疸という.柑橘類の取り過ぎで黄染した場合は,黄疸ではなく高カロチン血症である.
●血清総ビリルビンの正常値は1.0mg/dl以下であるが,2〜3mg/dl以上になると肉眼的にも明らかな黄疸として認められる(顕性黄疸).
●血中のヘモグロビンの異化により生じた間接ビリルビンは,肝細胞に取り込まれて,肝の小胞体でグルクロン酸抱合されて直接ビリルビンとなり,胆汁を介して腸管に排泄される.この代謝過程および移送過程に異常が生じると黄疸を呈する.
●増加するビリルビンが直接か間接かで,黄疸の鑑別が大別される.直接ビリルビンの上昇は,肝細胞性黄疸,胆汁うっ滞性黄疸,一部の体質性黄疸,間接ビリルビンの上昇は溶血性黄疸と一部の体質性黄疸である.

多尿

著者: 堀田饒

ページ範囲:P.745 - P.747

ポイント
●通常,多尿とは1日尿量2,000ml以上を指し,病的ともなれば3,000〜6,000ml.
●小児,高齢者では頻尿を多尿と訴えることが少なくなく,診断を誤らない.
●診断を進めるうえで,尿所見が提供する情報は大きく,比重,蛋白,沈渣,糖,ケトン体は重要である.
●多尿の発症状況,尿所見からおおよその診断を下し,血液生化学検査,諸機能検査,臨症症状から総合的に診断を下し,鑑別する.
●非ケトン性高浸透圧利尿に陥った糖尿病は脱水著しく,診断・治療の時機を逸すると死の危険性は大きい.

乏尿・無尿

著者: 小林正貴

ページ範囲:P.748 - P.749

ポイント
●成人では,通常1日尿量は1,500ml前後に保たれており,乏尿(oliguria)は1日尿量が400ml以下,無尿(anuria)は100ml以下をいう.
●乏尿・無尿が急性に生じ,体液およびその組織の恒常性を維持できなくなった場合を急性腎不全,慢性にこれが生じた場合を慢性腎不全という.
●尿が正常に生成され,膀胱に溜まっていても尿流出ができない場合は,尿閉(urinaryretention)と呼ばれ,乏尿・無尿とは区別される.
●乏尿・無尿の原因は,部位別に腎前性,腎性,腎後性に大別される(表1).
●診断の手順としては腎後性を否定し,ついで腎前性と腎性の鑑別をする.

リンパ節腫脹

著者: 岩田純一

ページ範囲:P.750 - P.752

ポイント
●リンパ節腫脹をきたす疾患は多種多様であり,熟知しておくこと.
●リンパ節腫脹患者の診察のポイント
1)発熱,皮疹や全身症状の有無
2)腫脹が限局性か全身性か?
3)腫大リンパ節の疼痛,硬度,大きさ,可動性
4)限局性の急性感染症では化膿創などの責任病巣の発見
●原因疾患の頻度は細菌性,ウイルス性の急性感染症が多いが,悪性腫瘍などの重要疾患を見落とさないことが肝要.
●検査は,血算,生化学,CRPに加え,疑わしい疾患に特異性を有するものを選んで加える.
●リンパ節生検は診断上有用であるが,侵襲を伴うため症例を選んで行うべきである.

出血傾向

著者: 渡辺清明

ページ範囲:P.754 - P.757

ポイント
●スクリーニングとして出血時間,血小板数,APTT,PTおよびフィブリノゲン量の検査を行う.
●上記により,血小板減少症,血小板機能異常症,内因系,外因系凝固異常症,DICなどが診断される.
●さらに,second choiceの検査をし,各種疾患を診断する(図1〜3参照).

Raynaud症状

著者: 井上哲文

ページ範囲:P.758 - P.759

ポイント
●Raynaud症状(Raynaud's phenomenon)は,寒冷刺激や精神的緊張に由来する手指の血管攣縮によってもたらされる.
●症状は主に近位指節関節より末梢部位に生じ,皮膚の色調はまず蒼白に,そして紫色に変化する.さらに,回復過程では充血によって潮紅することが多い.血管攣縮を生じている間は,手指は冷たく,知覚鈍麻や疼痛を有することも少なくない.
●Raynaud症状は,手指だけでなく足趾にも生ずる.また稀ではあるが,鼻尖,耳朶,舌に及ぶこともある.
●基礎疾患を有する頻度は高く,その診断の契機となる症状ではあるが,これを有しないRaynaud病(primary Raynaud's phenomenon)に留意する必要がある.
●基礎疾患としては,各種膠原病,時に進行性全身性硬化症(PSS),混合性結合組織病(MCTD),全身性エリテマトーデス(SLE)の頻度が高い.これらの疾患においては,Raynaud症状がその他の皮膚症状,臓器症状,臨床検査異常に先行することも稀ではない.

喀血

著者: 鈴木修治 ,   貫和敏博

ページ範囲:P.760 - P.761

ポイント
●概念と病態生理:喀血は,出血した血液が咳嗽とともに経気道的に喀出されることと定義される.肺動静脈と気管支動静脈より形成される肺血管系は,気道や肺実質の病変によって破綻をきたし,出血して喀血をみるに至る.
●喀血を起こす疾患:大別すると,腫瘍,感染症および炎症,心循環器疾患,その他の疾患に分けられる.それぞれの疾患の原因によって,検査が選ばれる.
●臨床的鑑別:喀血と吐血の鑑別がまず必要になり,その後,原因疾患の特定を目指すことになる.検査法には,病歴,理学的所見から始まり観血的検査まで種々の検査法があり,適宜選択される.

吐・下血

著者: 菅野健太郎

ページ範囲:P.762 - P.764

ポイント
●吐・下血は多くの場合大量の消化管出血を意味し,生命にかかわる緊急事態である.
●吐・下血をみたら,まずバイタルサインのチェックを行い,ショック症状の有無を把握する.
●ショック状態の患者に対しては輸液路の確保を行い,輸液・輸血によって循環血液量の回復を図る.これに対する迅速・適切な対応を怠ると,ショックから回復しても,腎不全,中枢神経傷害などの二次的傷害を残すことになる.
●これらの救命救急処置を行って状態を安定化させ,内視鏡的に出血源の検索を行う.出血が持続している場合には保存的に止血操作を行い,止血しなければ外科的に対処する.
●ショックのない患者では出血源の検索を病歴,症状などから推定し待期的に検索する.

よくみる異常所見へのFirst-line検査

蛋白尿

著者: 鈴木道彦 ,   中林公正

ページ範囲:P.766 - P.768

ポイント
●腎疾患の専門医のいる医療機関での検査・治療が必要か,経過観察でよいか,また治療の必要な他の疾患に起因する二次的な蛋白尿かを鑑別すること.
●早朝第一尿と随時尿の2回検尿を施行し,その尿蛋白量と尿中赤血球数の変動と程度を参考に,血液検査や画像診断を行うこと.
●蛋白尿陽性率は,原因疾患の年齢的頻度の影響を受けるので,それを十分加味した検査計画を立てること.

尿潜血陽性

著者: 村上睦美

ページ範囲:P.770 - P.773

ポイント
●潜血反応は尿中の赤血球ばかりではなく,ヘモグロビン,ミオグロビンに対しても陽性を呈する.
●潜血反応が単独で陽性となる疾患の数は多いが,潜血反応単独陽性者から重大な疾患が発見される頻度はきわめて低い.
●潜血陽性者では,丁寧な家族歴の聴取が必要である.
●潜血反応とともに蛋白尿が陽性の場合は,腎生検を含む精密検査の適応となる.
●First-line検査に異常がみられない潜血反応単独陽性者では,経過観察が大切である.

便潜血陽性

著者: 石森章 ,   藤本秀江

ページ範囲:P.774 - P.776

ポイント
●便潜血陽性の結果は,口腔から直腸に至る消化管内に出血があったかもしれないという疑いを示すに過ぎない.
●化学的反応で正確な判断を下すためには,検査前3日間の潜血食を与えたり,食事,投薬内容,採便や検体の取扱いに注意する.
●特異性の高いグアヤック法と鋭敏なオルトトリジン法を組み合わせることにより,感度・特異度ともに信頼性の高い結果が得られる.
●ラテックス凝集法や逆受身血液凝集法などによる免疫学的方法は,ヒトHb特異抗体を用いる方法であり,特異性に優れ,大腸癌スクリーニングに汎用されている.ただし,上部消化管出血に対する信頼度は低い.
●化学的便潜血反応と免疫学的便潜血反応の特徴を表1に示す.

白血球増多・減少

著者: 北村聖

ページ範囲:P.777 - P.779

ポイント
●白血球数の異常は比較的よくみる異常である.多くの疾患で白血球が増加したり,減少したりする.
●白血球の検査では数だけでなく,分画の検査も重要であり,簡単な検査で多くの情報を得ることができる.

貧血

著者: 大野陽一郎 ,   今中孝信

ページ範囲:P.780 - P.782

ポイント
●貧血診断の第一歩は,小球性(平均赤血球容積:MCV≦87)と非小球性(MCV>87)に注目することである.
●小球性では,鉄シリーズ(鉄,不飽和鉄結合能:UIBC,フェリチン)で鉄欠乏性貧血と慢性炎症,サラセミア,鉄芽球性貧血を鑑別.
●非小球性では,骨髄穿刺,鉄シリーズ,ビタミンB12,葉酸,ハプトグロビン,Coombs試験,生化学検査で各血液疾患を鑑別.
●入院・早期治療の必要な疾患である急性白血病,重症再生不良性貧血,播種性血管内凝固症候群(DIC),大量消化管出血,重症感染症,急性溶血を見逃さない.
●甲状腺機能低下症,腎性貧血,膠原病,肝疾患,悪性腫瘍などの二次性貧血に注意.
●溶血性貧血,巨赤芽球性貧血では,特殊検査でさらに疾患を特定.

肝機能異常

著者: 池田有成 ,   佐藤芳之 ,   井野元勤

ページ範囲:P.784 - P.786

ポイント
●GOT,GPT,γ-GTPの異常で来院することが多い.
●肝機能異常の原因疾患として,アルコール性肝障害,脂肪肝,ウイルス性慢性肝疾患による場合が多い.
●肝機能異常が必ずしも肝疾患によるとは限らない.
●GOT/GPT比は鑑別診断の際,有用である.
●ウイルスマーカーとしては,HBs抗原と第2世代HCV抗体をまず調べる.
●肝疾患の否定には,血液生化学的検査ばかりでなくウイルスマーカーや画像診断が必要.
●First-line検査で病態を把握してから異常へのアプローチを行う.

血糖値異常

著者: 石森正敏 ,   武田則之 ,   安田圭吾

ページ範囲:P.788 - P.790

ポイント
●血糖値の判定には,採血条件,採血時の食事摂取,およびストレスの有無の確認が重要である.
●血糖高値の場合,FBS 140mg/dl以上の時に糖尿病と診断される.140mg/dl未満の時は,75gGTTにより糖尿病を診断する.
●糖尿病と診断された場合には,病型診断および代謝状態や合併症の把握が重要となる.
●低血糖の場合,血糖値と同時にインスリン値を測定する.

高脂血症

著者: 原城達夫 ,   馬渕宏

ページ範囲:P.791 - P.794

ポイント
●高脂血症とは,血清脂質のうちコレステロール(CHOL)とトリグリセライド(TG)のいずれか,もしくは両方の増加した状態である.
●高脂血症の大部分は原発性であり,遺伝子異常,またはそれに環境因子が加わって発症する.
●高脂血症の診断では,まず二次性高脂血症をきたす疾患を除外する必要がある.頻度の高いものとしては,糖尿病,甲状腺機能低下症,腎疾患(ネフローゼ症候群,慢性腎不全など),肥満,アルコール,薬物(ステロイド,βプロッカー,利尿剤など)などがある.
●高脂血症,虚血性心疾患などの既往歴と家族歴,嗜好品(喫煙,アルコール),服薬の有無などの調査も不可欠である.

心電図異常

著者: 田辺晃久

ページ範囲:P.795 - P.797

ポイント
●心電図異常では,基礎疾患,基礎病態があるか否かの評価が重要である.
●最小限,12誘導心電図記録,胸部X線写真撮影(正面後前像と側面左右像),心エコー法(Mモード法と断層法,必要に応じカラードップラー法)を行い,基礎疾患の有無を評価する.
●血液検査では,貧血,電解質異常の有無を検討する.
●ジギタリス(各種不整脈,ST下降),Ia群抗不整脈薬(QT延長),β遮断薬ないしベラパミルやジルチアゼム(徐脈,房室ブロック)など,薬剤による心電図異常の発生にも注意する.

不整脈

著者: 松本万夫 ,   内田昌嗣

ページ範囲:P.798 - P.800

ポイント
●不整脈は心電図診断のみでなく,その背景にある基礎疾患(原因)が重要.特に,他臓器関連疾患が見落とされやすいので注意する.
●不整脈の重症度は致死性であるかどうかが重要.基礎疾患の有無により不整脈の重症度も異なってくる.
●不整脈は一時的に出現・消退することが多いので,その診断には十分な観察が必要.最終的に臨床電気生理学的検査が有用.

CEA,CA 19-9

著者: 田所洋行 ,   渡辺伸一郎 ,   竹内正

ページ範囲:P.801 - P.803

ポイント
●CEA,CA 19-9は臓器特異性が低く,いろいろな悪性腫瘍において上昇を示す腫瘍マーカーである.CEAは大腸癌をはじめとする消化器癌で高い陽性率を示すほか,肺癌,子宮癌,乳癌で陽性を示す(表1).CA 19-9は膵癌,胆道癌を中心として,大腸癌,胃癌,食道癌,乳癌,卵巣癌で陽性を示す(表2).
●現在,腫瘍マーカーと呼ばれている多くのものは,癌特異性物質ではないため,悪性疾患のみならず,良性疾患でも陽性を示す.CEAでは急性肝炎,慢性肝炎,肝硬変,急性膵炎,慢性膵炎,胃潰瘍,高齢者,喫煙者で偽陽性を示し,CA 19-9では閉塞性黄疸,急性膵炎,慢性膵炎,肝硬変,胆石,糖尿病で偽陽性を示す.
●CEA,CA 19-9は検診などで用いられているが,一般的には早期発見には役立たない.画像診断と組み合わせることによって診断能の向上を図ることができる(表3).
●CEA,CA 19-9はともに病期の進行に伴って陽性率の上昇,値の上昇を認める.このため,腫瘍マーカーの上昇がみられた場合,治療後の効果判定,再発のモニターとして有用である(表4).

臨床場面に応じたFirst-line検査

外来初診時・入院時の検査

著者: 吉原幸治郎 ,   福井次矢

ページ範囲:P.804 - P.806

ポイント
●検査を有効に利用するためには,臨床診断のプロセスとその問題点について理解する必要がある.
●特に重要なことは,詳細な問診と理学診断から精度の高い鑑別診断を挙げ,目的を明らかにしたうえで検査を選択することである.
●外来における基本検査は,どのような愁訴の患者に対しても一度は行うべき検査であり,検尿,末梢血球数,便潜血反応,赤沈とCRP,血清総蛋白,A/G比などである.
●入院時検査は体の主要臓器の機能を評価するため,かなり広範囲の検査項目と同時に種々の感染症のマーカーが含まれる.

術前の検査

著者: 中島正暢 ,   跡見裕

ページ範囲:P.808 - P.809

ポイント
●術前の検査は患者のリスクを把握し,侵襲による合併症を最少とすることと,病変の正確な診断で適切な術式を選択するために行われる.
●いわゆる術前検査一式を漫然と実施するより,超音波内視鏡やMRIなどの画像診断に加え,腫瘍マーカーや吸引生検細胞診を適宜行うべきである.
●超音波検査は,非侵襲性で反復検査が可能なことや結果が即時に得られるので,First-line検査の中心と位置づけられる.

カラーグラフ 生検による組織診断・4

肝臓(Ⅱ)

著者: 中沼安二

ページ範囲:P.829 - P.832

正常組織を知る
生検肝の正常組織像を,肝の支持結合組織成分であるグリソン鞘を中心に述べる.
グリソン鞘の主要な構成成分は,胆管,肝動脈枝,門脈枝(1個のグリソン鞘内に,各々1〜3個くらいみられる)で,いわゆるグリソン鞘の3つ組(triad)を形成している.その他,少量の線維性結合織,肝動脈枝や門脈枝の細分枝,胆管と肝細胞との接合部にある細胆管(Hering's duct),神経線維,リンパ管も存在する.

グラフ 内科疾患と骨・関節病変・4

CPPDおよび他のcrystal deposition disease

著者: 江原茂

ページ範囲:P.835 - P.840

 関節軟骨や滑膜に沈着した結晶が,何らかの原因で関節内に遊離されると,急性あるいは慢性の炎症反応を引き起こす.このような結晶性滑膜炎のうち,放射線診断が診断の主体となるcalciumpyrophosphate dihydrate(CPPD)crystal deposition diseaseを中心に,結晶性滑膜炎の画像診断について述べる.

MRI演習・4

複雑な内部構造を持つ骨盤腔腫瘤

著者: 荒木力

ページ範囲:P.815 - P.819

case
28歳,女性.腹部膨満,腹痛にて来院.T1強調像(TR 500msec,TE 20msec,図1a)とT2強調像(TR 2,000msec,TE 80msec,図1b)の矢状断層像を撮影した.

図解 病態のしくみ—遺伝子・サイトカインからみた血液疾患・4

多発性骨髄腫

著者: 中島秀明

ページ範囲:P.842 - P.847

 ●はじめに 骨髄腫は,骨髄での形質細胞の腫瘍性増殖を本体とする疾患であり,一般に表1に示す5型に分類される.多発性骨髄腫は,骨髄での形質細胞の増加,血清・尿中の単クローン性蛋白の存在,骨融解性病変,腎機能障害,造血障害,免疫不全などを特徴とする骨髄腫の一亜型である.その頻度は,人口10万人あたり約0.95人で男性にやや多く,圧倒的に40歳以降の高齢者に多い.
 骨髄腫の病態に関する生物学的・分子生物学的な解析は白血病に比べて遅れていたが,近年になり骨髄腫細胞の主要な増殖因子がIL-6であり,骨髄腫細胞はIL-6受容体を発現しているのみならず,それ自身がIL-6を産生していることが明らかにされた.また,治療面ではこれまでのMelphalan-Prednisolone(MP)療法主体の姑息的化学療法から,インターフェロン,サイトカイン,自家骨髄移植を用いた,長期寛解・治癒をめざした治療法が広がりつっある.ここでは,B細胞悪性腫瘍としての骨髄腫の病態・治療法を中心に述べて行きたい.

臨床医に必要な老人をみる眼・4

老人の糖尿病

著者: 阿部隆三

ページ範囲:P.848 - P.850

 我が国では1960年代の後半から糖尿病患者,特にインスリン非依存型糖尿病(以下NIDDM)が増えてきており,最近の疫学調査によれば,都市,農村を問わず,40歳以上の国民の約10%,500万人以上の糖尿病有病率であったとしている1).しかも,米国に移民した日系二世や三世の糖尿病有病率は,現在の我が国よりも高いことが知られているので,今後さらに我が国のNIDDM患者が増える可能性が大である.
 また,糖尿病有病率の年次推移を年齢階級別に検討した成績2)によると,65歳以上の老年者糖尿病の有病率が他の年齢階級に比べて著しく高く,その割合が年々大きくなっていることが示されている.

薬を正しく使うためのDrug Information—副作用について・4

インターフェロンとうつ病・自殺企図

著者: 上島国利

ページ範囲:P.852 - P.854

 インターフェロン(IFN)の適応が悪性腫瘍からB型慢性活動性肝炎,さらにC型慢性活動性肝炎にも拡大され,使用頻度が急速に増加している.多くの患者に投与されるに従い,さまざまな副作用が知られるようになったが,なかでもIFNによる精神症状のうち,抑うつ,自殺念慮,自殺企図は生命を脅やかす重篤な副作用である.
 本稿では,まずIFNによる精神症状全般を概観し,次いで抑うつ(うつ病),自殺企図などの診断と,その対策について述べてみたい.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.820 - P.827

これからの医療と医療制度・4

老人病院

著者: 寺崎仁

ページ範囲:P.855 - P.855

 「老人病院」なる言葉を聞くと,何かしらネガティブなイメージを持つ読者が多いのではないかと思うが,実は病院経営が非常に厳しい状況の中で,ひとり「老人病院」だけは経営が比較的安定し元気が良いといわれている.もちろん,20年近くも前に社会問題化した「悪徳病院」が根絶されたわけではないが,従来から真面目に老人医療に取り組んできた施設を含め,制度的にもまた社会的にも日陰者扱いだった「老人病院」が,やっと日の目を見るようになった感がある.
 ところで「老人病院」が,医療制度の中で“公認”されたのはそう古い話ではない.何十年も前から,老人の患者だけを入院させていた病院はあったのだが,昭和57年に制定された老人保健法により,70歳以上の高齢者の医療は新たに定められた老人診療報酬体系で扱われることになり,その中で「老人病院」の位置づけが初めて明確にされた.当初,老人病院には「特例許可」と「特例許可外」とがあり,入院患者の一定割合以上が老人で,定められた看護や介護要員の基準を満たしていれば「特例許可」,そうでなければ「特例許可外」とされた.

medicina Conference・6

口渇と頻尿,食後の腹痛を自覚し,突然の意識消失で救急搬送された59歳の男性

著者: 松井保憲 ,   虫本光徳 ,   板東浩 ,   森由弘 ,   山下和彦 ,   田中江里 ,   玉木和美

ページ範囲:P.856 - P.875

 主訴:意識障害
 家族歴:父,胃癌.母,脳梗塞.
 既往歴:25歳,胃潰瘍.30歳,膵炎,尿管結石.45歳,糖尿病.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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