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雑誌目次

雑誌文献

medicina31巻7号

1994年07月発行

雑誌目次

今月の主題 循環器薬の使い方 1994 循環器薬と予後の改善

心不全治療と予後

著者: 申偉秀 ,   豊岡照彦

ページ範囲:P.1326 - P.1328

ポイント
●心不全の病態は急性期と慢性期,または病因によって大きく異なる.
●心不全治療の最終目的は,患者のquality of lifeと生命予後を改善することにあり,血行動態のみを指標にしてはならない.
●大規模臨床試験は主に外国で発表されているが,人種による薬に対する感受性の相違を考慮すると,今後日本人についての詳細な検討が必要である.
●急性心不全のスワンーガンツカテーテルによる血行動態の測定,解釈,分類と各々の治療については別稿を参照いただきたい.
●本稿では臨床の現場で比較的経験することの多い慢性心不全の治療のうち,最近注目されている血管拡張療法とβ遮断薬療法について紹介する.

狭心症の薬物治療と予後

著者: 大谷望 ,   松﨑益徳

ページ範囲:P.1330 - P.1331

ポイント
●狭心症の治療目標は,短期的には狭心症発作のコントロールと運動耐容能の増加であり,長期的には心筋梗塞や突然死の予防である.
●各種狭心症治療薬の狭心症の予後に対する影響について概説する.

心筋梗塞後の薬物治療と予後

著者: 清野精彦 ,   高野照夫

ページ範囲:P.1332 - P.1334

ポイント
●Sooner and more complete reperfusionが急務である.
●Aspirinは一次・二次予防に有効.
●WARISにより,warfarinの再梗塞・総死亡率減少効果が明らかにされている.
●心不全のないnon-Q MIに限定すれば,verapamil,diltiazemは再梗塞予防に有効.
●頻用にもかかわらず,硝酸薬の評価はなされていない.
●ISA(-)のβ遮断薬長期投与は,死亡率と再梗塞を減少させる.
●ACE阻害薬はremodeling抑制,心不全発症予防,死亡率低下,再梗塞予防などの優れた有効性が証明され,今や第一選択薬に位置されている.

不整脈治療と予後

著者: 小沢友紀雄

ページ範囲:P.1335 - P.1340

ポイント
●危険な不整脈や,症状の強い不整脈が出現すれば当然治療の対象となる.しかし,不整脈の治療あるいは予後の改善を目的として,長期間にわたり抗不整脈薬を投与することの是非については不明な点が多い.
●最近では,不整脈の出現をいかに抑制するかではなく,不整脈死をいかに抑制するかに重点が置かれるようになりつつある.
●そのきっかけとなったのは,CASTと呼ばれるフレカイニド,エンカイニド,モリシジンを使用した大規模二重盲検試験である.心筋梗塞患者の心室性不整脈に対して,抗不整脈薬を使用すれば心臓突然死を予防できるのではないか,という推測で始められ,途中でプラセボ群よりも実薬投与群に突然死率が高かったために中断されたという成績による.
●現状では,突然死を明らかに減少させるものはβ遮断薬であり,III群の抗不整脈薬も期待されている.
●薬物以外では,カテーテルアブレーションや植え込み型除細動器が,不整脈の予後改善に有力な方法と考えられる.

高血圧治療と予後

著者: 後藤英司 ,   石井當男

ページ範囲:P.1342 - P.1345

ポイント
●中等症・重症高血圧患者では,降圧薬治療は心血管系疾患の発症を抑制する.
●軽症高血圧患者では降圧薬治療で脳卒中の発症が抑制される.しかし虚血性心疾患に関する抑制効果は明らかではない.
●軽症高血圧患者において,β遮断薬とサイアザイド系利尿薬はほぼ同等の予後改善作用を示す.
●高齢高血圧患者,収縮期高血圧患者における降圧薬治療も心血管系疾患の発症を抑制する.
●血圧を過剰に低いレベルにコントロールすると,かえって脳卒中や虚血性心疾患の発症が多くなる可能性がある.

高脂血症治療と予後

著者: 齋藤康

ページ範囲:P.1347 - P.1348

ポイント
●高脂血症の治療による動脈硬化状疾患,もしくは動脈硬化病変の進展に及ぼす効果について検討がなされ,一次予防,二次予防いずれも抑制効果がみられている.
●脂質低下による虚血性心疾患の低下にもかかわらず,全体の死亡率を低下させないという報告がみられる.コレステロールの低下療法は自殺やうつ病を増加させるとしているが,その因果関係は不明である.
●脂質低下療法は動脈硬化の予防には著効を示すが,退縮にはそれほどの効果を示した報告はない.

心不全

心不全治療の基本

著者: 木原康樹 ,   篠山重威

ページ範囲:P.1350 - P.1355

ポイント
●急性心不全においては,破綻した循環動態の回復が当面の目標である.それに対して慢性心不全においては,QOLの改善や延命が治療の目標となる.
●急性心不全においては,原疾患の治療,憎悪因子の排除,前後負荷のコントロールを行う.
●患者との密接な関係の維持が慢性心不全の管理・治療を可能とする.
●心臓移植は目下,重症心不全に対する唯一の根本治療である.

急性心不全治療薬の選択

著者: 垣花昌明 ,   杉下靖郎

ページ範囲:P.1357 - P.1359

ポイント
●急性心不全の治療は,組織の酸素需要を満足させるべく,心拍出量を改善させることに基盤を置く.
●心拍出量の改善のために,収縮性,前負荷,後負荷,および心拍数の改善に努める.
●適切な治療指針を得るために,肺毛細管圧,心拍出量測定が必要となる.

慢性心不全治療薬の選択

著者: 芹澤剛

ページ範囲:P.1360 - P.1361

ポイント
●慢性心不全の病態は,左室機能不全による運動耐容能の低下,うっ血・浮腫,重症心室性不整脈を伴う症候群であり,治療は原因疾患,病態により異なる.
●治療の目的は,Quality of Lifeの向上と延命である.
●延命効果の証明されている治療薬は,hydralazineと亜硝酸薬の併用と,ACE阻害薬enaraprilのみである.

ジギタリスの使い方

著者: 落合正彦 ,   一色高明

ページ範囲:P.1363 - P.1364

ポイント
●ジギタリスは,心筋収縮力増強作用に陰性変時作用を併せ持つ.
●digoxinまたはmetildigoxinを原則的に使用する.
●治療当初より維持量を投与するのが一般的である.
●digoxinの有効血中濃度は0.8〜2.0ng/mlである.
●併用薬剤がある場合は血中濃度を測定し,投与量を調節する.
●ジギタリス中毒の初期症状は,悪心・嘔吐などの消化器症状が多い.
●中毒防止のため,血清カリウム値は4mEq/l以上を維持する.

ACE阻害薬の使い方

著者: 永井良三

ページ範囲:P.1365 - P.1367

ポイント
●肥大心は心不全の重要な危険因子である.
●うっ血性心不全の非代償期には,血中アンギオテンシンII濃度が上昇している.
●肥大心や不全心では,心筋内レニンーアンギオテンシン系も活性化されている.
●アンギオテンシン変換酵素阻害薬は心不全患者の生命予後や運動耐容能を改善する.

β遮断薬の使い方

著者: 半田俊之介 ,   西村洋

ページ範囲:P.1368 - P.1370

 ポイント
●拡張型心筋症などを原因とする慢性心不全例の中には,β遮断薬を投与すると症候,病態 および予後改善をきたす可能性のある症例がある.
●投与開始直後には心不全の病態が一過性に悪化する可能性がある.入院治療など自・他 覚症状を注意深く観察し,必要に応じて心エコー図,核医学による心機能検査,負荷に よる運動耐容能の判定を行う.
●β遮断薬の中で治療成績はmetoprololに集中しているが,他の遮断薬も有効とするこ とができる.

カテコラミンの使い方

著者: 平山治雄

ページ範囲:P.1371 - P.1374

ポイント
●急性心不全および慢性心不全の急性増悪と,慢性心不全とでは薬物療法の考え方は異なる.すなわち前者では,全身の血行動態の速やかな改善を第一目的とし,カテコラミンの適応となり,後者では長期的生命予後の改善を目的とし,強心薬よりもむしろ心負荷の軽減を図る薬物の適応となる.
●ドパミンは用量によって作用が異なり,低血圧で利尿の悪い症例が低用量(2〜5μg/kg/min)使用の対象となる.より強い心筋収縮力を必要とする場合は,ドブタミンを2.5〜15μg/kg/min併用する使い方が一般的である.
●長期使用ではβリセプターのdown regulationを生じ,効果が減弱する.

新しい強心薬

著者: 堀正二 ,   是恒之宏

ページ範囲:P.1375 - P.1377

ポイント
●急性心不全と慢性心不全では,治療目標が異なる.
●急性心不全では心不全死の回避が第一目標となり,慢性心不全ではquality of lifeや予後の改善が重要である.したがって,強心薬の使用法についてもこの治療目標を常に念頭におきながら考える必要がある.
●ジギタリスにかわる新しい強心薬として開発された多くの薬剤は,急性には有効であっても,慢性の効果はかえって予後を悪化させることから悲観的である.
●一部の強心薬では,予後を劇的に改善することが最近明らかとなり,そのメカニズムについて現在検討がなされている.

狭心症

狭心症治療の基本

著者: 山口徹

ページ範囲:P.1379 - P.1383

ポイント
●狭心症治療の基本は,胸痛発作を抑え良好なQuality of Lifeを確保するだけでは不十分で,心筋梗塞,心臓死を予防して長期予後を改善する,コンプライアンスのよい治療でなければならない.
●適切な治療法の選択には冠動脈造影による冠動脈病変の把握が不可欠である.
●冠動脈攣縮にはカルシウム拮抗薬を選択するが,器質的冠動脈狭窄には薬物治療の効果を確認し,薬物治療抵抗性あるいは虚血領域が大きい場合はPTCAあるいは冠動脈バイパス術による血行再建を考慮する.
●不安定化した場合には抗血栓薬を追加し,期を逸しないで血行再建の要否を決定する.

安定狭心症治療薬の選択

著者: 田村勤

ページ範囲:P.1384 - P.1386

ポイント
●安定狭心症においては,患者のactivityに応じた治療法を選択する.
●薬物治療の目標は発作の予防と冠動脈硬化の進展の予防にある.
●主として使用される薬物は,硝酸薬,β遮断薬,Ca拮抗薬,アスピリンである.

不安定狭心症治療薬の選択

著者: 光藤和明

ページ範囲:P.1387 - P.1389

ポイント
●不安定狭心症においては,プラークの破綻とそれに引き続く血栓形成や攣縮が主因となる.
●治療薬の選択としては,硝酸薬やCa2+拮抗薬,アスピリンの内服増量に加えて,硝酸薬,ヘパリンの注射が選択される.
●血栓溶解薬は,一部の症例に有用である.

硝酸薬の使い方

著者: 渡辺淳 ,   白土邦男

ページ範囲:P.1391 - P.1394

ポイント
●硝酸薬は平滑筋細胞内で一酸化窒素を遊離して血管を拡張させる.
●硝酸薬の効果は,心臓前負荷の軽減と比較的太い冠動脈拡張による.
●硝酸薬の副作用としては頭痛が最も多い.
●硝酸薬は主として肝臓で代謝される.
●硝酸薬には舌下剤,経口剤,経粘膜剤,経皮膚剤,経静脈剤などがある.
●狭心症発作の寛解には舌下剤(錠剤,スプレー)が多く用いられる.
●狭心症予防には経口または経皮・粘膜の徐放剤が使われる.
●硝酸薬を連続大量投与すると,薬剤耐性が生じ効果が減弱する.
●硝酸薬の耐性は休薬時間をおくと回復する.
●不安定狭心症に対して硝酸薬の経静脈投与が行われる.

カルシウム拮抗薬の使い方

著者: 鈴木孝彦 ,   大岡陸邦 ,   細川博昭

ページ範囲:P.1395 - P.1398

ポイント
●狭心症の治療には冠動脈造影による病態把握が重要である.高度器質狭窄の場合,薬物療法には限界があり,経皮的冠動脈形成術(PTCA),冠動脈バイパス術(CABG)などの血行再建術を考慮する必要がある.
●薬物療法も,病態によって使用法が異なり,Ca拮抗薬は各種狭心症に使用されるが,特に冠攣縮狭心症に対してfirst choiceとして使用される.
●Ca拮抗薬は化学構造などによって薬理作用が異なり,それぞれの特徴をふまえて薬剤の選択を行い,副作用を最小限に抑えることが大切である.また他剤との併用の場合,薬物間の相互作用にも注意が必要である.
●新しいCa拮抗薬が開発され,特徴に応じた使用法や予後など長期的な展望に立った薬剤の選択が必要となる.

β遮断薬の使い方

著者: 日浅芳一 ,   和田達也

ページ範囲:P.1399 - P.1401

ポイント
●狭心症でのβ遮断薬の適応は,器質的冠狭窄が関与している労作性狭心症例である.
●心拍数を低下させるため,内因性交感神経刺激作用のない薬剤を主に使用する.
●狭心症の病態により,持続の長いものと短いものとを使い分ける.
●β遮断薬の使用により副作用が出現したり,他の病態が増悪する際には,β遮断薬に固執せず,Ca拮抗薬などの他の薬剤に変更する.
●本薬剤と相乗的作用があるCa拮抗薬(diltiazem, verapamil),ジギタリス薬,H2受容体拮抗薬(cimetidine)などとの併用は原則として行わない.

抗血小板薬・抗凝固薬の使い方

著者: 石川欽司 ,   小柳津美樹

ページ範囲:P.1402 - P.1406

ポイント
●狭心症に対する薬物療法の第一の目的は狭心発作の治療・予防であり,狭心発作が減少すれば患者のQOLは向上する.第二の重要な目的は,心筋梗塞発症や突然死など重大心事故の防止である.
●Ca拮抗薬や硝酸塩は第一の目的に有効であるが,Ca拮抗薬は第二の目的には無効である1).硝酸塩についても同様との報告2)がある.
●心事故発生防止には抗血小板薬とβ遮断薬が有効であることを認識してほしい.
●本邦では抗血小板薬や抗凝固薬は不安定狭心症に限って使用されることが多いが,欧米ではアスピリンの有効性が米国医師を被検者とした集計で明らか3)となって以来,汎用され,1992年の調査では医師の57%が発作予防にアスピリンを服用すべきと答えている.

薬物治療とPTCA・バイパスとの選択

著者: 小宮山伸之 ,   中西成元

ページ範囲:P.1407 - P.1409

ポイント
●冠攣縮性狭心症の治療には,基本的にCa拮抗薬と亜硝酸薬を併用する.冠動脈に高度有意狭窄がある場合にはPTCAやCABGを行う.
●不安定狭心症ではheparin,抗血小板薬,亜硝酸薬,Ca拮抗薬ならびにβ遮断薬を用いて狭心症の安定化を図る.薬剤抵抗性の場合に,PTCAやCABGを行う.
●安定狭心症では,1枝病変例には内科治療かPTCAが選択される.多枝疾患や左主幹部病変例にはCABGやPTCAを選択する.

急性心筋梗塞

急性心筋梗塞治療の基本

著者: 延吉正清 ,   中川義久

ページ範囲:P.1411 - P.1415

ポイント
●急性心筋梗塞に合併する病態は,不整脈,ポンプ失調,心破裂の3つに大別される.この各病態に対応して予防,治療を行うことが重要である.
●再疎通の達成は急性期治療の中心であり,この成功により急性心筋梗塞患者の管理はより安全に行える.
●再疎通の手段として血栓溶解療法,PTCAの2つがある.
●心原性ショックを伴う急性心筋梗塞に対しては,一刻も早い再疎通が必須であり,早く確実にそれを達成できるPTCAを選択すべきである.

急性心筋梗塞治療薬の選択

著者: 鈴木紳 ,   平島康嗣 ,   川岸直子

ページ範囲:P.1417 - P.1419

ポイント
●疼痛は速やかに取り除く必要があり,塩酸モルヒネや塩酸ブプレノルフィン(レペタン®)を静注する.
●合併症が出現した場合には,重症度を的確に把握して適切な治療法を選択することが重要である.
●心筋梗塞急性期には,効果発現および消失時間に個人差の大きい経口薬はできるだけ控え,投与量の調節が容易な静脈内投与を原則とする.

t-PA,ウロキナーゼの使い方

著者: 佐藤光 ,   立石博信

ページ範囲:P.1420 - P.1423

ポイント
●心筋梗塞の急性期に血栓溶解療法を試みるとき,組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)やウロキナーゼ(UK)を用い,冠動脈造影下に血栓を認めて冠注する場合と静注する場合があり,急性心筋梗塞の急性期の有力な治療法としての地位を確立してきた.
●責任冠動脈の疎通のためには明らかにt-PAはUKよりも優れるが,再閉塞率が高いのでは,との指摘がある.
●疎通率が高く再閉塞率を少なくするためには,併用療法が望ましいとの報告があるが,わが国では用法・用量がまだ臨床的には確定されていない.

カテコラミン,強心薬の使い方

著者: 樫田光夫

ページ範囲:P.1424 - P.1426

ポイント
●急性心筋梗塞例に使用する強心薬は,主にドブタミン,ドパミン,ノルエピネフリンの3種類のカテコラミンである.
●カテコラミンの使用目的には,昇圧,心拍出量増加,利尿があり,昇圧はノルアドレナリン,心拍出量増加はドブタミン,利尿はドパミンが有用である.
●カテコラミンの副作用には,不整脈の誘発,心拍数の増加,後負荷の増大などがあり,きめ細かい管理が必要である.
●カテコラミンは低濃度から開始し,良好な血行動態が得られるまで素早く増量し,減量は慎重にゆっくり行う.
●心原性ショック例など,カテコラミン治療の限界例では,早期にIABPなどの補助循環を使用しながら再灌流療法を試みるべきである.

ACE阻害薬の使い方

著者: 酒井英行 ,   山口徹

ページ範囲:P.1427 - P.1430

ポイント
●急性心筋梗塞患者に対するACE阻害薬の早期かつ継続的投与は生命予後の改善や,重症心不全の発症,心筋梗塞再発を予防する可能性がある.
●ACE阻害薬は心筋梗塞後の左室リモデリングを抑制する.
●ACE阻害薬投与による過度な血圧低下には注意が必要であり,腎機能低下例,脳動脈硬化症例には慎重に投与する.

β遮断薬の使い方

著者: 高沢謙二

ページ範囲:P.1432 - P.1434

ポイント
●発症後できるだけ早期に静注法で投与し,以後は経口投与する.
●高血圧を伴う例,心機能は保たれているが頻脈を伴う例などは良い適応である.
●心拍数60/分以下,血圧100mmHg以下では使用しない.
●心不全,末梢循環不全,房室ブロック,高度の慢性閉塞性肺疾患では使用しない.
●血管攣縮性狭心症,あるいは梗塞発症に冠攣縮が関与していると思われる場合には使用しない.

抗血小板薬,抗凝固薬の使い方

著者: 早崎和也

ページ範囲:P.1435 - P.1438

ポイント
●ヘパリンは血栓溶解療法後や,PTCA後の治療法として用いることが推奨されている.
●ワーファリンはヘパリン点滴後の後療法として用いられるが,急性閉塞をくり返す例や血栓形成の高い例を中心に用いられることが多い.
●ワーファリン投与中の緑色野菜の通常量の摂取は可能だが,納豆はたとえ少量でも禁止すべきである.
●アスピリンは血栓溶解療法の後療法として有用との報告が多く,再閉塞率の減少,再梗塞の減少および慢性期の予後改善に役立つ.

新しい血栓溶解薬

著者: 長尾建 ,   上松瀬勝男

ページ範囲:P.1439 - P.1441

ポイント
●今日,新しい血栓溶解薬として,t-PAの欠点を遺伝子工学的手法により改変した第二世代のt-PA(mutant〔modified〕t-PA)が開発され,臨床治験段階に入っている.
●mutant t-PAは,従来のt-PA(第一世代)より血中半減期を延長させ,bolus静脈内投与を可能にさせたことが最大の特徴である.
●臨床治験では,bolus投与短時間で高率に冠再開通が得られる成績が集まりつつある.

不整脈

不整脈治療の基本

著者: 小川聡 ,   高橋栄一

ページ範囲:P.1443 - P.1446

ポイント
●治療適応となる不整脈は致死的不整脈,血行動態を悪化させる不整脈,自覚症状が強い不整脈である.
●心室細動,心室頻拍にはIII群抗不整脈薬と植え込み型除細動器を考慮する.
●抗不整脈薬には陰性変力作用と催不整脈作用という副作用がある.
●自覚症状の強い不整脈の治療では,症状の頻度に応じて頓用薬,予防薬を使い分ける.
●抗不整脈薬の選択は有効性と副作用との兼ね合いから決定される.
●今後,カテーテルアブレーション,植え込み型除細動器の適応が増えることが予想される.

上室性頻拍の治療薬の選択

著者: 山口巖

ページ範囲:P.1447 - P.1449

ポイント
●リエントリー性頻拍の治療にはクラスIa,IcおよびIII薬を選択する.
●リエントリー性頻拍の停止には塩酸ベラパミルあるいはアデノシン3リン酸の静注が有効である.
●WPW症候群でバイパスを通る心房細動にはクラスIa,Icを選択し,ジギタリス,クラスII,IV薬は使わない.

心室頻拍の抗不整脈薬治療

著者: 相沢義房

ページ範囲:P.1450 - P.1452

ポイント
●心室頻拍の治療では,治療の目標を明確に設定する.これには心臓突然死の予防,血行動態の改善,症状の軽減などがあり,これらの目標は心室頻拍の特徴によって大きく規定される.
●非持続性心室頻拍の治療は予後を改善するとはいえないので,副作用に注意しながら血行動態の改善や症状の軽減に努める.
●持続性心室頻拍の予後は不良で,再発予防は必須で,このため電気生理学的検査に基づく有効抗不整脈薬の選択を行うとともに薬物治療に固執しない.

徐脈性不整脈の治療薬の選択

著者: 水牧功一 ,   井上博

ページ範囲:P.1453 - P.1455

ポイント
●徐脈性不整脈によると思われる症状(めまい,眼前暗黒感,失神,息切れ,易疲労感)は.それが不整脈の出現と一致していることの確認が必要であり,Holter心電図や電気生理学的検査が有用.
●徐脈性不整脈の治療は,まず第一に誘因となっている状態を取り除くことが必要.
●徐脈性不整脈による症状がある場合,常にペースメーカー治療が考慮されるべきだが.ペースメーカー治療までの緊急処置として,診断・治療法の選択に薬物治療は重要.
●徐脈性不整脈の治療には,交感神経刺激薬か迷走神経遮断薬が使用されるが,長期間の安定した心拍数コントロールが難しい場合が多い.

class I抗不整脈薬の使い方

著者: 笠貫宏

ページ範囲:P.1456 - P.1460

ポイント
●Class I抗不整脈薬はIa,Ib,Icの3群に分類される.
●Class I系の薬物動態学・薬力学について理解する.
●Class I系の催不整脈作用,陰性変力作用について理解する.
●基礎心疾患―心不全症例や高齢者については十分な注意が必要である.

カルシウム拮抗薬の使い方

著者: 鈴木章古 ,   大江透

ページ範囲:P.1463 - P.1465

ポイント
●発作性上室性頻拍には房室結節の伝導を途絶し,頻拍の停止を目的として用いる.
●心房粗動,心房細動に対しては房室結節での伝導能の抑制により,心拍数コントロールを目的として用いる.
●QRS幅の広い頻拍の場合には,カルシウム拮抗薬で頻拍が増悪することがあり,正確な不整脈診断が重要である.

抗不整脈薬による不整脈

著者: 瀬川和彦 ,   飯島竜之 ,   松尾博司

ページ範囲:P.1466 - P.1467

ポイント
●抗不整脈薬が原因と考えられる既存の不整脈の増悪および新たな不整脈の発生を,抗不整脈薬の催不整脈作用(proarrhythmic effect)という.
●不応期延長作用が小さく,伝導抑制作用が大きい場合,リエントリー性頻拍が起こりやすくなることがある.
●一部の不応期を延長すると,リエントリー性頻拍が起こりやすくなることがある.
●活動電位持続時間(QT時間)の延長によってtorsades de pointesが起こることがある.

新しい抗不整脈薬

著者: 神谷香一郎 ,   児玉逸雄

ページ範囲:P.1468 - P.1470

ポイント
●新しい抗不整脈薬として最近注目されているのは,Vaughan Williamsの分類における第III群抗不整脈薬である.この群に属する薬物は,活動電位持続時間の延長を介した不応期の延長作用によりリエントリー性の不整脈を抑制するとされる.
●現在,わが国で認可されている第III群抗不整脈薬はアミオダロン(アンカロン®)だけである.頻脈性不整脈の全般に対し幅広く優れた効果が認められるが,致死的な副作用が発現する場合があるので,対象は難治性の致死性不整脈に限られている.
●現在,わが国で治験中のその他の第III群抗不整脈薬としては,ソタロール,E-4031,MS-551,sematilideがあげられる.

薬物療法とカテーテルアブレーションとの選択

著者: 杉薫

ページ範囲:P.1471 - P.1473

ポイント
●WPW症候群の副伝導路が関与する頻拍(房室回帰性頻拍と偽性心室頻拍)と房室結節リエントリー性頻拍については,カテーテルアブレーションによる根治率が高く,施設によっては第一選択治療法となりうる.
●そのほかの頻拍性不整脈については薬物療法が中心であるが,難治例や心機能低下例には高周波カテーテルアブレーションを試みる価値はある.
●発作性心房細動の予防については抗不整脈薬投与による治療が選択される.

高血圧

高血圧治療の基本

著者: 猿田享男

ページ範囲:P.1474 - P.1482

ポイント
●高血圧の治療は,非薬物療法と薬物療法とからなる.
●非薬物療法として,生活の注意,食事療法,アルコール摂取の注意,禁煙および運動療法などが行われる.
●薬物療法は,利尿薬,β遮断薬(含むα,β遮断薬),Ca拮抗薬,ACE阻害薬,α1遮断薬などが中心的薬剤として使われる.

高血圧治療薬の選択

著者: 三浦伸一郎 ,   荒川規矩男

ページ範囲:P.1483 - P.1485

ポイント
●降圧薬の選択にあたっては,患者の年齢,高血圧の病態,合併症などを考慮に入れることが重要である.
●患者の年齢や高血圧の病態面から:アンジオテンシン変換酵素阻害薬・Ca拮抗薬は末梢血管抵抗が増加した老年高血圧に,利尿薬は低レニン性の容量依存型高血圧に,β遮断薬は交感神経活性が亢進している若年高血圧に適する.
●合併症の面から:アンジオテンシン変換酵素阻害薬は心不全・心肥大・糖尿病・初期の腎障害に,Ca拮抗薬は労作・安静狭心症に,β遮断薬は労作狭心症・洞頻拍・心室性不整脈に,ループ系利尿薬は腎機能障害に適する.

利尿薬の使い方

著者: 関顕

ページ範囲:P.1487 - P.1489

ポイント
●サイアザイド系降圧利尿薬は,降圧薬の第一次選択薬の一つである.
●サイアザイド系降圧利尿薬には,代謝面への影響があるため注意が必要であり,少量投与が望ましい.
●ループ利尿薬は腎機能低下例で有用である.
●K保持性利尿薬は低K血症予防に有用である.

α遮断薬の使い方

著者: 島本和明 ,   吉田英昭

ページ範囲:P.1491 - P.1493

ポイント
●α1遮断薬は最近第一選択薬に加えられた降圧薬であり,シナプス後α1受容体拮抗作用により血管拡張と降圧効果を示す.
●心拍出量に影響を与えず,前負荷,後負荷を減少させることから,心機能低下例にも良い適応であり,腎機能障害例,末梢循環障害例にも使用できる.
●糖代謝,脂質代謝に好影響を与え,これら合併例に積極的に使用できる.
●前立腺肥大例に対し治療効果が望める.
●他の降圧薬と併用しやすい.
●副作用に起立性低血圧があり,少量投与から開始する.

β遮断薬の使い方

著者: 羽野卓三 ,   西尾一郎

ページ範囲:P.1495 - P.1497

ポイント
●β遮断薬は若年高血圧,高レニン血症の患者に有効である.
●ISAを有するβ遮断薬は,夜間の血圧に影響を与えない.
●心不全,徐脈,喘息患者では使用しない.
●心筋梗塞,狭心症の合併例に有効だが,心機能に注意する.
●冠攣縮による狭心症では使用しない.
●耐糖能異常,脂質代謝異常の患者では増悪する可能性がある.
●経口糖尿病薬,インスリン治療を受けている患者では低血糖に注意する.
●H2ブロッカーはβ遮断薬の効果を増強する.
●Warfarinとの併用は血中濃度を上昇させ,プロトロンビン時間を延長させる.

カルシウム拮抗薬の使い方

著者: 築山久一郎

ページ範囲:P.1499 - P.1501

ポイント
●カルシウム(Ca)拮抗薬は,本邦では一次薬のなかで初期治療薬として使用される頻度が高い.
●持続性の長いCa拮抗薬の臨床応用により服薬のcomplianceが向上している.
●Ca拮抗薬は適応範囲が広く,糖・脂質代謝障害合併例で好んで使用される.
●dihydropyridine系Ca拮抗薬とACE阻害薬またはβ遮断薬との併用の評価は高い.

ACE阻害薬の使い方

著者: 小野歩 ,   藤田敏郎

ページ範囲:P.1503 - P.1505

ポイント
●レニンーアンジオテンシン系の抑制と,キニン系の促進により降圧する.
●正〜低レニン性高血圧にも有効である.
●心不全の改善や腎機能の保持など,臓器保護作用に優れている.
●糖,脂質代謝などに対する悪影響がない.
●副作用には咳,高カリウム血症などがある.
●利尿薬使用中には,初期投与で過度の降圧をきたす場合があるので注意を要する.
●腎不全患者(血清クレアチニン値が2.5mg/dl以上)では,腎機能の急速な悪化がみられることがある.
●両腎の動脈狭窄および片腎患者の腎動脈狭窄症例,妊婦には禁忌である.

新しい高血圧治療薬

著者: 日和田邦男

ページ範囲:P.1506 - P.1507

ポイント
●現在市販されている降圧薬は,降圧効果の点からみると,それらを上手に組み合わせればごく一部の治療抵抗性の患者を除き,ほぼ高血圧をコントロールできる.
●高血圧に基づく臓器障害の進行をどこまで食い止められるか,あるいは障害された臓器,組織の改善が可能かどうか不明なことが多い.この点に次々と新しい降圧薬が開発される余地がある.

高脂血症

高脂血症治療の基本

著者: 木下誠 ,   寺本民生

ページ範囲:P.1509 - P.1511

ポイント
●高脂血症を治療することにより,冠動脈疾患の再発,新規発症を予防することが可能である.
●高脂血症の治療基準は,患者の持つ冠動脈疾患に対する危険因子の多少により異なる.

高コレステロール血症治療薬の使い方

著者: 神崎恒一 ,   大内尉義 ,   折茂肇

ページ範囲:P.1512 - P.1514

ポイント
●高コレステロール血症の治療法の原則はまず食事療法,運動療法で,その次に薬物療法である.
●高コレステロール血症の薬物治療では,高脂血症のタイプを判別したうえ,そのタイプに合った適切な治療薬を選択する.
●単剤治療で血清コレステロールの低下が不十分な症例,および著しい高コレステロール血症患者には,HMG-CoA還元酵素阻害薬,コレスチラミン,プロブコール,ニコチン酸の中から2剤または3剤の併用療法を行う.

高中性脂肪血症治療薬の使い方

著者: 村上透 ,   山田信博

ページ範囲:P.1515 - P.1517

ポイント
●フィブラート製剤は,強力な中性脂肪およびVLDL低下,さらにHDL3-コレステロール分画上昇作用を有する.
●ニコチン酸は中性脂肪とともに,コレステロールおよびLp(a)低下作用,HDL上昇作用を有する.
●家族性複合型高脂血症例にフィブラート製剤およびニコチン酸製剤がともに有効であり,VLDLとともにLDLも低下する.
●HMG-CoA reductase阻害薬は高コレステロール血症に有効であるが,中性脂肪も約15〜20%低下させる.
●フィブラート製剤使用後,筋肉痛および肝酵素の一過性上昇を認めることがある.
●ニコチン酸の作用として,顔面紅潮および掻痒感を15%くらいの患者に認める.

心筋症

肥大型心筋症治療薬の使い方

著者: 加来秀基 ,   古賀義則

ページ範囲:P.1518 - P.1519

ポイント
●原因治療は現時点ではない.
●対症療法が基本となり,①心筋拡張障害に対するCa拮抗薬,②流出路狭窄に対するβ遮断薬,③心室性不整脈に対する抗不整脈薬,④心筋虚血に対するCa拮抗薬,冠拡張薬,⑤心房細動,塞栓症の予防,⑥突然死の予防に対する運動制限と不整脈対策,⑦収縮不全に対する心不全治療が中心となる.
●長期経過中に大きな病態変化を示すため,個々の患者の病態の把握が必要.

拡張型心筋症治療薬の使い方

著者: 横田慶之 ,   川合宏哉 ,   横山光宏

ページ範囲:P.1520 - P.1522

ポイント
●拡張型心筋症には原因療法がないため,本症の合併症である心不全,不整脈,血栓・塞栓症に対する対症療法が行われる.
●心不全に対しては利尿薬,ジギタリスに加えてACE阻害薬やβ遮断薬療法を行う.
ACE阻害薬やβ遮断薬療法は本症の心症状,心機能の改善のみではなく延命効果をも期待できる.
●重症心室性不整脈に対する抗不整脈薬投与に際しては,常に催不整脈作用を念頭において,有効で,しかも副作用のない薬剤を選択すべきである.
●高度心機能低下例には,血栓・塞栓症の発生を予防するためワーファリンによる抗凝固療法を行う.

その他の疾患と循環器薬の使い方

低血圧

著者: 丸山幸夫 ,   大谷弘

ページ範囲:P.1523 - P.1526

ポイント
●低血圧の定義は明確でない.
●低血圧に伴う自覚症状があり,日常生活が著しく障害される場合に低血圧症と認識され,治療の対象となる.
●低血圧症の診断では,原因疾患を明らかにし,症候性(二次性)低血圧の除外診断が大切である.
●症候性低血圧は,降圧薬治療によるものが原因として最も多い.
●本態性低血圧は,無症状のことが多く予後は良好である.血圧を上げても症状が改善しないことがあり,一般療法が大切である.
●起立性低血圧は起立時に収縮期血圧が20mmHg以上下降するものと定義される.症状がある場合は,昇圧薬の適応がある.

大動脈瘤

著者: 黒木茂広 ,   島由和幸

ページ範囲:P.1528 - P.1529

ポイント
●大動脈瘤の急性期の内科治療で最も大切なことは,大動脈解離の進展と大動脈瘤の破裂を阻止することである.3点に要約できる.
①血圧を下げる.
②疼痛を解除する.
③不穏状態を防ぐ.

閉塞性動脈硬化症

著者: 折口信人 ,   大川真一郎

ページ範囲:P.1531 - P.1533

ポイント
●軽症例では生活指導・食事療法・運動療法に加えて,薬物療法を施行する.
●重症虚血肢では血行再建を第一選択とする.
●薬物療法として,パナルジン®(3〜6錠/分3)などの抗血小板薬のほか,EPA製剤エパデール®G(3〜6Cap/分3),PGI2誘導体製剤ドルナー®(3〜6錠/分3)などが開発され,注目を浴びている.
●閉塞性動脈硬化症を有する症例は高齢者に多いので,臨床効果と副作用をみながら,薬剤はなるべく低用量とすることが望ましい.

肺血栓塞栓症

著者: 吉田一郎 ,   甲谷哲郎 ,   北畠顕

ページ範囲:P.1535 - P.1537

ポイント
●肺血栓塞栓症は種々の要因(血流停滞,静脈壁異常,凝固能亢進)で形成された静脈血栓の肺動脈流入によって生じる.
●治療には呼吸・循環の管理のほか,血栓に対する治療(抗凝固療法,血栓溶解療法)がある.
●抗凝固療法は新たな血栓生成を予防し,血栓溶解療法は塞栓子の溶解を目的とする.禁忌がなければ抗凝固療法は全例に施行する.血栓溶解療法では,出血の合併症を減らすような投与方法が今後の検討課題である.

原発性肺高血圧症

著者: 国枝武義

ページ範囲:P.1538 - P.1540

ポイント
●本症の確定診断後は抗凝固薬(ワーファリン)を併用して,血栓塞栓性原因による肺高血圧の悪化を防ぐ必要がある.
●肺血管拡張薬が本症治療の基本であるが,残念ながら今日まで決定的薬物は開発されていない.
●最近,わが国でもPGI2注射製剤(エポプロステノール)の使用が可能となり,静脈内持続注入で肺血管抵抗を下げることができるようになり,右心不全の急性増悪に対処することが可能となった.

感染性心内膜炎

著者: 増田善昭

ページ範囲:P.1541 - P.1543

ポイント
●本症が疑われたとき,治療の前に複数回の血液培養を行う.
●培養結果の前に治療を行う場合は,ペニシリンGと,ゲンタマイシンの併用をする.
●起因菌が固定された後は,感受性に応じた治療を行う.

カラーグラフ 生検による組織診断・7

腎臓(I)

著者: 伊藤信夫

ページ範囲:P.1553 - P.1556

 腎生検の対象は原発性糸球体腎炎のみならず,糖尿病やアミロイドーシスなどの代謝性疾患,血管炎や膠原病,移植腎の評価など多岐にわたる.本稿では2回にわたり,原発性糸球体腎炎に焦点をあて,病理医の立場から臨床医の理解に役立つ実践的な解説を試みたい.

グラフ 内科疾患と骨・関節病変・7

線維性骨異形成

著者: 福田国彦 ,   甲田直也

ページ範囲:P.1559 - P.1564

症例
 患者:McCune-Albright症候群を疑われ紹介となった3歳4ヵ月女児.
 現症:1歳半頃より性器出血.2歳半頃より乳房腫大.気管支喘息のため某病院を受診したところ,McCune-Albright症候群を疑われた.

MRI演習・7

大脳基底核がT1強調像で低信号,T2強調像で高信号となる疾患

著者: 荒木力

ページ範囲:P.1567 - P.1572

Case
 9歳,男児.生後何回も繰り返す痙攣発作の精査のため,MRIを施行した.図1AはT1強調像(T1WI),図1BはT2強調像(T2WI)である.図1Cで示す1は側脳室,3は第3脳室である.

図解 病態のしくみ—遺伝子・サイトカインからみた血液疾患・7

再生不良性貧血—非代償性肝硬変と原発性肝癌患者の管理

著者: 内田秀夫 ,   武藤章弘

ページ範囲:P.1578 - P.1581

病態と発症機序
 再生不良性貧血(以下,再不貧)は,汎血球減少と骨髄の低形成を特徴とする疾患である.先天性と後天性に分けられ,後天性再不貧はさらに特発性と二次性に分類されるが,90%近くの症例が後天性特発性再不貧である.
 再不貧は主として,骨髄における造血幹細胞の量的・質的異常に起因する疾患と理解される.この異常は造血幹細胞自身の異常に加えて,種々の外因性の要因によって誘導され得ることが,現在までに蓄積された莫大な基礎臨床データより明らかにされつつある.つまり,その発症機序の面からは,再不貧は極めてheterogenousな疾患であり,一つの症候群としてとらえるのが妥当である.造血幹細胞の異常を誘導する主な原因としては,免疫学的機序・造血微小環境の異常・遺伝的素因などがあげられる(図1)1,2)).

臨床医に必要な老人をみる眼・7

老年者の慢性肝障害

著者: 永田博司

ページ範囲:P.1582 - P.1584

 慢性肝障害の中で慢性肝炎,代償性肝硬変は自覚症状がなく,また短時日で生命予後に直結する疾患ではない.本稿では高齢者におけるウイルス性非代償性肝硬変と肝細胞癌の管理について述べる.

薬を正しく使うためのDrug Information—副作用について・7

血栓溶解薬による出血

著者: 塚田理康

ページ範囲:P.1585 - P.1588

 ウロキナーゼ(UK)および組織型プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)はプラスミノゲン(PLG)をプラスミンに活性化してフィブリン血栓を溶解することを目的として投与される.t-PAは発症6時間以内の急性心筋梗塞の冠動脈血栓溶解を適応とし,UKは①t-PAと同様に新鮮な心筋梗塞,②発症5日以内の脳血栓症,③発症10日以内の末梢動脈・静脈血栓症,を適応としている.
 本療法中に頭蓋内出血を含む重症出血を認めた症例が報告され,この副作用を回避するため,①治療の適応,②投与量,③本療法中に避けるべき処置,などの点が検討されてきた.本稿ではこの点を中心に解説を加える.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1545 - P.1550

これからの医療と医療制度・7

医療保険のしくみ

著者: 寺崎仁

ページ範囲:P.1589 - P.1590

 わが国は,昭和36年より医療保障制度としての国民皆保険が実現し,国民は一人残らず何らかの医療保険に加入している.この医療保険,わが国では健康保険と呼ばれているが,大きく分けてサラリーマンなどが加入する「被用者保険」と,農家など自営業者が加入する「国民健康保険」とがある.そして70歳以上の老人医療は老人保健法による医療として,この両者を基礎にした共同事業で行われており,わが国の医療保障制度の基本的枠組みは,上記2つの健康保険に大別される.
 被用者保険は「職域保険」とも呼ばれ,給与所得者本人とその家族が加入し,全国民の2/3がこれでカバーされている.被用者保険には,大企業または業界団体で結成した健康保険組合が保険者となっている「組合管掌健康保険(組合健保)」と,中小企業の従業員などを対象に政府が保険者の「政府管掌健康保険(政管健保)」とがある.その他に公務員の共済組合や私学共済,また船員保険などもあるが,これら被用者保険の保険料は,各健保組合の財政状況に応じた保険料率を毎月の給料に乗じて算出され,これを労使双方で折半し負担している.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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