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雑誌目次

雑誌文献

medicina32巻1号

1995年01月発行

雑誌目次

今月の主題 消化器疾患の画像診断 基本的な画像診断—適応と限界

腹部単純X線写真

著者: 水野富一

ページ範囲:P.6 - P.10

ポイント
●小腸の最大径が3cm以上のときイレウスと診断する.Kerckringひだの幅が3mm以上の場合は腸管壁に浮腫,壊死などの傷害があると考える.
●腸管内の液面形成の存在だけでイレウスと診断すべきではない.
●大腸の最大径は6cmとするが,個人差がかなりあり,大腸閉塞の有無は大腸ガスの分布から判断する.
●便通がないのに大腸に液面形成を見たら,大腸軸捻症や大腸閉塞を考える.
●腸管ガスが少ない場合は,積極的に超音波検査やCTを施行し,腸管の情報を得る.

腹部エコー

著者: 久保田光博 ,   近藤隆彦

ページ範囲:P.11 - P.15

ポイント
●超音波検査は無侵襲であり,消化器疾患の診断では腹部単純X線検査とともに,最初にやるべき検査である.
●超音波検査は腹腔内の実質臓器や含水臓器,すなわち肝・胆道・膵・脾の疾患の診断に有用である.
●超音波検査では膵頭部および尾部,肝の左葉端および横隔膜下などが死角となるので,病変の見落としに注意が必要である.
●一般に超音波検査は消化管の疾患の診断には不向きであるが,急性虫垂炎の診断には必須な検査である.
●超音波診断の質は検査する者の知識・経験・技術に左右されるので,消化器臨床に携わる医師は日頃より積極的に超音波検査に習熟しておくべきである.

腹部CT

著者: 黒崎喜久

ページ範囲:P.17 - P.19

ポイント
●CTの最大の長所は,コントラスト分解能と空間分解能の両方で優れた画像が比較的短時間で得られることにある.
●Dynamic CTにより病変のvascularity,間質量,細胞密度などが推定できる.
●USのように検者の技能に左右されることなく,CTでは再現性の高い画像が得られる.
●MRは軟部組織のコントラスト分解能でCTを凌駕するが,腹部領域では空間分解能が現時点では劣っているので,CTの役割は依然として大きい.

腹部MR

著者: 市川智章 ,   大友邦

ページ範囲:P.20 - P.25

ポイント
●腹部画像診断において,CTとMRIはお互いに相補的なものであり,検査部位,疾患により,両者を使い分けることが重要である.
●呼吸や血流によるアーチファクトは,腹部MRI検査において常に問題となる.画像劣化の点だけでなく,誤読の原因にもなるので注意が必要である.
●最近の高速撮像法の進歩により,腹部領域のMRI検査の効率,有効性が高まり,その適応は拡大傾向にある.
●新しいMRI造影剤の開発も進んでおり,これらを使用することによって,より精密な腹部MRI診断が可能になりつつある.
●通常のTI,T2強調像に,MRアンジオグラフィ,脂肪抑制画像などを加える工夫をすることにより,腹部MRI検査では有用な診断情報が増すことが多い.

上部消化管造影

著者: 七海暁男

ページ範囲:P.27 - P.30

ポイント
●造影検査は消化管の形態学的異常をきたす疾患の診断に用いられる.消化管の変位,狭窄,拡張などの粗大変化から粘膜の微細な凹凸の変化,さらには消化管壁の厚さ,伸縮不良,硬さなどの変化がわかる.
●内視鏡検査のように粘膜色調の変化をとらえることはできない.
●超音波内視鏡検査のように消化管壁のどの層に異常があるかを診断することが難しい.
●食道では,食道胃粘膜境界部の描出と表在平坦型の早期癌,特に平坦型の診断が注目されている.
●隆起性病変の質的診断は難しい.生検診断の助けを必要とすることがほとんどである.
●単発非隆起優位型進行胃癌は全例癌の存在を証明できる.
●単発非隆起優位型早期胃癌の存在診断正診率は97.7%で,癌確診率は88.1%であった.切除標本で癌と認識または指摘ができなかった症例を除くと,単発非隆起優位型早期胃癌の癌確診率は90.6%であった.
●質的診断能を高めるためには類形もしくは同形異質の疾患を数多く知ることと,それらを識別するX線所見を知ることである.

小腸二重造影法

著者: 小林茂雄

ページ範囲:P.31 - P.36

ポイント
●小腸X線検査の主な目的は,器質的疾患の診断である.腫瘍性病変は形態および表面性状で診断し,炎症性疾患は潰瘍の形および分布を描出し診断する.
●二重造影法の利点は,①一度の検査で圧迫像と二重造影像が撮影できる,②腸管の伸展と蠕動消失によって,偽陽性像が消失し,存在診断が容易である,③粘膜面の微細な変化を表現でき,小さな病変の診断まで可能である,といった点である.

大腸造影

著者: 松川正明 ,   栗原稔 ,   中村浩之 ,   千葉俊哉 ,   平島正直

ページ範囲:P.38 - P.41

ポイント
●多量の等張性クエン酸マグネシウム溶液と蠕動運動亢進剤による前処置で十分な検査が行える.造影剤は66%前後のバリウム懸濁液を使用し,陷凹性病変の描出もできた.
●X線検査と内視鏡検査を0.6~2cmの腫瘍性病変による発見能から精度をみると,統計学的に有意の差はなかった.
●非腫瘍性疾患として炎症性の疾患の診断をみると,これらの疾患では解剖学的罹患範囲と局所の潰瘍の形・分布によりX線診断が行われている.X線所見による診断は連続性82%,区域性70%,単発性89%,多発性83%であった.

腹部血管造影

著者: 磯部義憲

ページ範囲:P.42 - P.49

ポイント
●血管造影法は血管という間質の面から病変を推察する検査法である.
●種々の非侵襲的画像診断法の施行方法,読影力を高めれば,現在でも血管造影から得られる診断情報の多くはカバーできる.
●血管造影の読影に際しては他の画像診断法の情報を加味して読影すべきである.
●精査目的であれば,血管造影法と他の画像診断法とを組み合わせた方法(アンジオUS,CT angiographyなど)をできる限り施行すべきである.

上部消化管内視鏡検査

著者: 白井孝之

ページ範囲:P.51 - P.54

ポイント
●内視鏡による消化器疾患の診断は,①存在診断,②質的診断(良・悪性の鑑別),③量的診断(病変の範囲,深達度,進行度,重症度)の3つに分けられる.
●急性心筋梗塞の合併など限られた禁忌を除き,ほとんどの上部消化管疾患が適応となる.
●現状では食道癌,胃癌とも,拾い上げ率,質的・量的診断のいずれもX線診断より優れており,色素散布のサブルーチン化により診断能はさらに向上する.
●しかし,前方視鏡による胃の通常観察では,微小癌,多発病変,噴門部や胃体部の病変などの見逃しに十分注意すべきである.
●より高画素数のCCD,多走査線数のテレビモニターの開発や拡大観察,画像解析の進歩により診断能はさらに向上しよう.

大腸内視鏡検査

著者: 坪水義夫 ,   佐竹儀治

ページ範囲:P.55 - P.58

ポイント
●大腸内視鏡検査の長所は,表面の微細な変化や色調の変化をみるのに優れていることや偽陽性がないことである.
●大腸内視鏡検査の短所は,広範囲の病変の場合には全体像をとらえにくいこと,狭窄部の口側を観察できないことや半月ひだの口側は観察しにくいことである.
●大腸内視鏡検査が注腸造影検査に比べ最も有利な点は,他の診断法や治療に応用できることである.
●大腸内視鏡検査の適応は,診断,治療,経過観察と幅広い.

内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)

著者: 土岐文武 ,   田所洋行 ,   吉田憲司

ページ範囲:P.60 - P.65

ポイント
●ERCPは膵管・胆道の直接造影法であり,膵管・胆道の形態を忠実に描出できる.
●本手技を応用して経乳頭的に膵管・胆道へ種々の直接的アプローチが可能である.
●膵・胆道系の形成不全の診断には不可欠である.
●膵管分枝の描出ができ,慢性膵炎の診断の中心となっている.炎症性病変の拡がりや局在を非観血的に把握することが可能である.
●小膵癌や特殊な膵癌(粘液産生膵腫瘍)の診断や鑑別の中心的役割をはたしている.
●目的とする部位の造影が100%はできない,また合併症を完全に避けることはできない,などが問題として残されている.

RIシンチグラフィ

著者: 越智宏暢 ,   塩見進

ページ範囲:P.66 - P.69

ポイント
●肝シンチグラフロはびまん性肝疾患の診断には有用であるが,限局性小病巣の診断は超音波,X線CT検査に比し劣る.
●肝・胆道シンチグラフィは肝の形態と同時に機能の観察が可能で,ビリルビンが高値の症例においても施行可能である.
●消化管出血シンチグラフィは,特に異所性胃粘膜を有するメッケル憩室の診断に有用である.

画像診断の応用—現況と将来

カラードプラ腹部エコー

著者: 久直史

ページ範囲:P.71 - P.75

ポイント
●ドプラ信号は発信側,受信側いずれの動きによっても生ずる.探触子の固定と呼吸の停止をしっかり行うことが第1である.
●カラーゲインの設定を適切に.低すぎるカラーゲインでは信号は得られない.ノイズが出始めるレベルより少し低め程度に設定する.
●繰り返し周波数(PRF)の設定を適切に.PRFが高すぎると得られるドプラ信号は小さくなるし,PRFが低すぎると折り返し現象が起きてしまう.
●入射角は60°以下に.入射角が大きすぎると得られる信号は小さくなるし,角度補正による誤差は大きくなる.
●サンプリング幅を適切に.狭いサンプリング幅では微小な信号は探しにくい.また大きな血管では中心部と辺縁とで流速は異なる.サンプリング幅が広すぎると複数の血管の信号を拾うことが多くなる.

腹部アンジオエコー

著者: 斎藤明子

ページ範囲:P.76 - P.80

ポイント
●アンジオエコー法(造影エコー法)は,炭酸ガスを用いた超音波画像のエンハンス法である.
●アンジオエコーでは,肝細胞癌の中・低分化型は高輝度にエンハンスされ(positive enhancement),高分化型はガスが入らずnegative enhancementを示す.
●エンハンス像の形態をみることにより,肝細胞癌と胆管細胞癌や転移性肝癌,血管腫,限局性結節性過形成(FNH)などとの鑑別が可能である.

超高速CT

著者: 相澤信行

ページ範囲:P.82 - P.86

ポイント
●超高速CTは,電子銃の技術により,高速かつ連続的に撮影可能である.
●超高速CTで腹部の撮影をするには,前処置として濃いめのガストログラフィンと発泡剤を服用させ,造影剤を早いスピードで静注することにより,よいコントラストのついた像が得られる.
●超高速CTでは多断層のdynamic CTが可能である.
●超高速CTは膵臓の微小病変の発見に有用である.

MRアンジオグラフィ

著者: 湯浅祐二

ページ範囲:P.87 - P.92

ポイント
●MRアンジオグラフィは,MRIの手法を用いた非侵襲的な血流描出法であり,通常の血管造影とは全く異なったものである.
●代表的な方法としてはtime-of-flight法とphase contrast法と呼ばれるものがあり,それぞれ得られる情報に特徴があり,必要により使い分けられるべきものである.
●動脈,静脈,および門脈に広く応用でき,消化器疾患においては,特に門脈系の血管解剖や閉塞性変化の検出,側副路の描出などに応用できる.

PET

著者: 伊藤健吾 ,   加藤隆司 ,   太田豊裕 ,   田所匡典 ,   石垣武男

ページ範囲:P.94 - P.98

ポイント
●PET(positron emission tomography)による消化器腫瘍の診断に最も多く用いられている放射性薬剤は18F-2-fluoro-2-deoxy-D-glucose(FDG)である.
●対象とされるのは膵臓癌,直腸癌局所再発,肝臓癌などである.
●①良・悪性の診断,②進展範囲の診断,③治療効果および予後の判定,などにおいて,US,CT,MRIでは得られない診断情報が期待されている.

超音波内視鏡検査—上部消化管

著者: 芳野純治 ,   中澤三郎 ,   山近仁 ,   若林貴夫 ,   渡辺量己

ページ範囲:P.100 - P.105

ポイント
●食道から胃の消化管壁は基本的に高,低,高,低,高の5層構造を呈する.
●胃癌の深達度診断には癌巣内潰瘍およびそれに伴う線維組織を考慮に入れた判定基準が必要である.一方,食道癌では壁の変化がみられた最も深い層により深達度診断が可能である.
●食道から十二指腸までの粘膜下腫瘍では,その超音波内視鏡(EUS)像の基本所見に大きな差はみられない.EUSにより壁外性圧排との鑑別や,ある程度の質的診断までが可能である.
●消化性潰瘍では深さの臨床的な判定や,難治性潰瘍・再発潰瘍の予測が可能である.

超音波内視鏡検査—大腸

著者: 趙栄済 ,   芦原亨 ,   中島正継

ページ範囲:P.106 - P.113

ポイント
●正常大腸壁は内視鏡的超音波検査(EUS)では5層構造として描出され,第1層および第2層が粘膜層に,第3層が粘膜下層に,第4層が固有筋層に,第5層が漿膜下層および漿膜(あるいは外膜)に対応している.
●EUSでは癌は低エコー腫瘤像として描出され,層構造の温存あるいは破壊の所見によって深達度を診断する.
●EUSによって粘膜下腫瘍は発生母地と局在が判定でき,内視鏡所見との総合判定によって質的診断もほぼ可能になる.
●EUSによって炎症性腸疾患の層構造への影響が判定できるため,炎症の病態診断法として有用である.

超音波内視鏡検査—十二指腸/膵/胆道

著者: 松元淳 ,   中塩一昭 ,   有馬暉勝

ページ範囲:P.114 - P.119

ポイント
●超音波内視鏡(以下,EUS)は高周波数を使用することにより高い解像度の画像が得られ,小膵癌の診断,膵癌の進展度診断,膵嚢胞性疾患の質的診断などにおいて極めて有用な検査法である.
●EUSはコレステロールポリープの診断が可能であり,胆嚢隆起性病変の質的診断において有用である.また胆嚢癌,胆管癌,十二指腸乳頭部癌の進展度診断においても有用な検査法である.
●細径超音波プローブは胆管内,膵管内からの走査が可能で,EUSとは異なった視点からの超音波像が得られ,その有用性が検討されつつある.

電子内視鏡の画像解析

著者: 勝健一

ページ範囲:P.120 - P.123

ポイント
●画像解析による分析法にはテクスチャー解析とスペクトル解析がある.いずれの方法も解析に至る前に電気的情報に変換し,デジタル変換する必要がある.これらの情報を集積したものから分析の対象となる情報のみを抽出するための画像処理を行わなければならない.
●電子内視鏡においては現在はまだ映像信号のみでデジタル化されておらず,パーソナルコンピューターにより実験的に画像処理が行われている状況である.しかし,臓器反射スペクトル法やテクスチャー計測などの試みも始まっており,近い将来には画像解析によるコンピューター補助診断が可能になると確信している.

微小病変の画像診断—選択と読み方

食道—特に微小癌の発見を中心に

著者: 吉田操 ,   葉梨智子 ,   門馬久美子 ,   榊信廣

ページ範囲:P.125 - P.131

ポイント
●食道微小癌の定義は確立されていない.
●食道癌の初期像を微小癌に求めるなら,長径5mm以下の病変が適当である.
●食道微小癌は0-IIb型が主で,0-IIa,0-IIcも一部に含む.
●食道微小癌は上皮内癌が主体で,粘膜癌を一部に含む.
●食道微小癌は無症状で,拾い上げには内視鏡検査が必要である.

胃—特に微小胃癌の発見を中心に

著者: 杉野吉則 ,   今井裕 ,   藤沢裕久

ページ範囲:P.134 - P.138

ポイント
●微小癌をスクリーニング検査で診断するには,X線では鮮明な写真と高い診断能が必要である.内視鏡では,鋭い観察眼で検査し,積極的に色素散布や生検を行うことが発見につながる.
●IIa型は,X線ではポリープ様隆起・局所的なひだの肥大・粗大顆粒として,内視鏡ではドーム状の低い表面平滑な白色調隆起としてみられることが多いが,赤色調のこともある.
●IIC型は小さなニッシェあるいは濃いバリウム斑として表される.胃の辺縁像でごく軽度の変形として見つかることもある.内視鏡では淡い小発赤,小出血斑,軽微な褪色を示す.

小腸

著者: 今井裕 ,   杉野吉則 ,   小林剛

ページ範囲:P.139 - P.143

ポイント
●小腸造影検査の基本手技は,腸管の分離と充盈像による腸管の辺縁の観察である.
●潰瘍性疾患では,腸管の変形から潰瘍の形態を読み取り描出することが重要である.
●潰瘍周囲の瘢痕帯の診断には二重造影像が必要であり,粘膜皺襞の消失や微細顆粒状の粘膜面として描出される.

大腸

著者: 飯田三雄 ,   松本主之

ページ範囲:P.144 - P.148

ポイント
●大腸微小病変の診断上,色素散布法を用いた内視鏡検査と注腸二重造影法によるX線検査をうまく組み合わせることが重要である.
●平坦・陥凹型腫瘍の多くは径5mm以下の微小病変として発見されるが,同じ大きさの隆起型腫瘍に比べsm癌の頻度は高い.
●大腸アフタ様病変は,Crohn病,腸型Behçet病,悪性リンパ腫,薬剤性大腸炎,感染性大腸炎など種々の疾患で出現しうるが,その鑑別診断上X線検査は重要である.
●AA型アミロイドーシスのX線・内視鏡像の特徴として,微細顆粒からなる粗糙な粘膜所見が挙げられる.

肝臓

著者: 平井賢治 ,   小野尚文 ,   伊集院裕康

ページ範囲:P.150 - P.153

ポイント
●小さな肝細胞癌では,腫瘍マーカー(AFP,PIVKA-II)は陰性例が多い.早期発見には,腹部エコーによる慢性肝疾患の定期的フォローアップが必須である.
●組織学的には高分化型肝癌が多く,動脈血流は乏しい.
●DSAでは腫瘍濃染像がなく,dynamic CTでは,early phaseでhigh density areaとならない.MRIではT1強調像のみ高信号を示すものが多い.
●肝癌類似病変との鑑別は,画像診断のみでは難しい.

膵臓

著者: 税所宏光 ,   山口武人

ページ範囲:P.154 - P.157

ポイント
●病変検出のスクリーニングには超音波検査(US)とともに血中逸脱膵酵素の測定が応用される.
●血中膵酵素としては,エラスターゼ1がアミラーゼより優れた病変検出能をもつ.
●USによる微小病変の検出には,膵管拡張所見が重要な手がかりとなる.
●ERCPはUSにて腫瘤が検出されない場合,二次スクリーニング検査として位置づけられる.
●USで検出された腫瘤については,dynamic CTにより質的診断が可能である.
●今後,微小病変の確実な診断には,膵管鏡や膵管腔内超音波検査の応用が期待される.

胆管/胆嚢

著者: 藤本正夫 ,   中澤三郎 ,   山雄健次

ページ範囲:P.158 - P.162

ポイント
●腹部超音波検査(US)で異常を見逃さないことが,胆道系微小病変発見の第一歩である.
●超音波内視鏡検査(EUS)では,病変の質的診断に加えて深達度診断を行う.
●胆嚢微小病変に対する内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(ERCP)では,薄層法が有用である.
●病変の質的および進展度診断には,直視下生検を含めて胆道鏡検査が有用である.

理解のための28題

ページ範囲:P.163 - P.168

カラーグラフ 写真でみる外科手術の実際・1【新連載】

腹腔鏡下胆嚢摘出術

著者: 石川泰郎 ,   山川達郎

ページ範囲:P.170 - P.171

 腹腔鏡下胆嚢摘出術は開始以降,手術手技の習熟ならびに新たな工夫や改良に基づく適応の拡大に伴い,現在では手術適応のある胆嚢疾患に対する外科治療法の主流となってきた.本稿では現在筆者らが行っている標準的な術式を紹介する.

グラフ 検査・診断のためのCurrent Technology—原理と臨床的意義・1【新連載】

免疫染色

著者: 坂本穆彦 ,   山内直子 ,   元井紀子

ページ範囲:P.173 - P.177

●はじめに
 臨床的に用いられる免疫検査には極めてさまざまなものがあるが,その基本は抗原抗体反応を利用した検査法であるという点にある.近時,多種のモノクローナル抗体が作製され,それに伴い測定可能項目が激増している.
 血清を用いる免疫測定法では非放射性高感度測定法が顕著な発展を示しており,酵素免疫測定法や化学発光免疫測定法などとして用いられている.他方,組織片や細胞そのものを用いた免疫検査も大いに適応範囲を広げつつある.これらの組織診.細胞診用の検体による免疫検査は免疫組織(細胞)化学検査と呼ばれるが,一般には免疫染色という語で一括される.

MRI演習・13

小児腹部腫瘤

著者: 荒木力

ページ範囲:P.179 - P.183

Case
 6カ月,男児.母親が腹部腫瘤に気が付いて,病院を訪れた.図1AとBは造影CT,CはAとほぼ同じレベルのT1強調像(TR/TE:400/11msec),DはBとほぼ同じレベルのT2強調像(TR/TE:2000/80msec)である.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.189 - P.194

臨床医に必要な老人をみる眼・12

廃用症候群の再認識—“寝たきり予防”のために

著者: 大川弥生 ,   上田敏

ページ範囲:P.196 - P.198

◆はじめに
 近年“寝たきり”老人に関しての種々の問題が,医療に限らず社会問題としてもさまざまな立場から論じられ注目されてきている.この問題はこのように多様な面から論じられてしかるべきものであるが,医療自体の問題としても反省すべき点がないわけではない.そのなかで最も根源的な問題は,わが国における「廃用症候群」についての認識の不十分さである.いわゆる“寝たきり”とは,必ずしも病気自体のために必然的に寝たきりにならざるをえなかった者ばかりではない.半数以上は本当ならば寝たきりにならなくてすんだはずの,いわゆる“つくられた寝たきり”なのである.例えば,最初は風邪で数日臥床したり,腰痛で活動性が低下したりという,ほんのちょっとしたことがきっかけとなって生活が不活発となり,それによって廃用症候群→体力低下→易疲労性→一層の体動不足→一層の廃用という悪循環に陥って,その結果“寝たきり”となってしまうのである.

薬を正しく使うためのDrug Information—副作用について・13

抗ウイルス薬によるショック

著者: 大槻マミ太郎 ,   玉置邦彦

ページ範囲:P.199 - P.201

抗ウイルス薬の副作用とその報告例
 抗ウイルス薬によるショックというと,ジドブジン(AZT)その他の抗HIV治療薬によるものも含むが,ここでは皮膚科の日常診療上使用する機会の多い抗ウイルス薬であるアシクロビル(ゾビラックス®)とビダラビン(アラセナーA®),中でも副作用としてショック症例の報告のあるそれらの注射剤に絞って述べることにする.
 アシクロビル(ゾビラックス®)は,1979年に合成されたプリン骨格を有する抗ウイルス薬で,ヘルペスウイルス特異的チミジンキナーゼによるリン酸化により活性化されてウイルスのDNAポリメラーゼ阻害作用を発揮するため,正常細胞にはほとんど作用しない選択性の高い薬剤と考えられ,臨床で広く使用されている.単純ヘルペス感染症および水痘・帯状疱疹ウイルス感染症に対して効果があり,1985年に注射剤と眼軟膏が,そして1988年には錠剤が承認された.錠剤は当初単純ヘルペス感染症についてのみ承認されていたが,1992年には水痘・帯状疱疹ウイルス感染症に対しても承認され,1錠中400mgを含む剤型が追加され,さらに1993年には単純性疱疹に対して眼軟膏に加え5%軟膏が承認されており,その使用頻度は年々増加傾向にある.

これからの医療と医療制度・13

医療評価

著者: 寺崎仁

ページ範囲:P.202 - P.203

 「医療評価」とは,医療の質と効率を評価しようとするものである.商品に必ず品質という評価があるのと同じように,「医療サービス」という「もの」にも質の善し悪しがある.また,商品を生産したり販売したりするときにも,効率良くそれらを行うことが十分に考慮されるはずであり,医療の場合にも,提供されるサービス内容の質的な側面だけでなく,効率性の観点からも評価されなければならない.つまり「良い医療サービス」とは,質的に良く,またそれが効率的に提供された医療ということになる.
 このような医療の質と効率を評価しようとする動きは,近年わが国の医療界においても急速にその気運が高まってきている.その背景としては,わが国の医療提供の体制整備が量的にはほほ達成され,次なる課題が医療サービスの質的向上に転換しつつあるということに加えて,医療の高度化や人口の高齢化により増大し続ける国民医療費を,より一層効率的に運用しなければならないからである.しかし,国全体のマクロの視点とは別に,個々の患者や住民もこれらを求めはじめていることを十分に理解する必要がある.

アメリカ・ブラウン大学医学部在学日記・5

担当医として患者のケアから退院までを受け持つ内科実習

著者: 赤津晴子

ページ範囲:P.204 - P.207

患者のケアはチーム制で当たる
 アメリカの病棟での患者のケアは,内科,小児科などの診療科を問わず,大学病院ではチーム制である.チーム構成は一般的に2年目以上の研修医1人,1年目の研修医2人,準研修医として医学部4年生が1人,および医学部3年生が1人,というのがごく一般的である.病院のベッド数,また診療科の大きさによっても異なるが,例えば100床の内科であれば4つの内科チームといったところが平均的であろうか.そして,4チームであれば,各チーム交替で4日に一度当直を受け持つ.その日の当直チームは,その日中および夜間に入院してくるすべての患者の担当医となり,その患者が退院するまで診断,治療にあたる.また当直でないチームは,自身のチームの患者のケアを夕方,その日の当直チームに申し送りをし,あとはまかせて自分達は呼び出しベルのスイッチを切って病院をあとにする.したがって,当直チームは他のチームが帰ったあとは,内科100床であれば,その100人の患者のケアのすべての責任を担うこととなる.その他に,その晩新しく運び込まれてくる患者の診断および処置に飛び回ることとなるので,一睡もできない晩も珍しくない.

SCOPE

対談:肝疾患研究における—細胞死と細胞増殖

著者: 坪内博仁 ,   林紀夫

ページ範囲:P.209 - P.218

 林 日本では肝疾患が非常に多くて,最近,C型肝炎のインターフェロン療法について多くの先生方が興味を持っておられますが,肝臓の病気の進展のメカニズムそのものについてはよくわかっていません.肝疾患の場合,原因がウイルスであれ,アルコールであれ,あるいは自己免疫性の機序であれ,その基本となるところは細胞死と,それに対して細胞増殖が繰り返し起こることだと思います.だから,細胞死と細胞増殖ということはよくわかっていると思っていたのですが,よくよく考えてみますと,そのメカニズムは十分にはわかっておりません.坪内先生のご専門の細胞の増殖・再生については,最近かなりわかってまいりましたが,細胞死のほうはわかっているようでわかっていないと,最近つくづく思っております.
 本日は,坪内先生と「肝疾患研究における細胞死と細胞増殖」ということでお話をさせていただきます.まず最初に,細胞死を話題にしたいと思います.坪内先生は細胞の増殖因子であるHGFをご専門にされていますが,HGFというのは細胞死のマーカーとしても非常にいいといつもおっしゃっておられます.その点から入らせていただきたいと思います.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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