icon fsr

文献詳細

雑誌文献

medicina32巻12号

1995年11月発行

増刊号 Common Disease 200の治療戦略

消化器疾患

劇症肝炎

著者: 与芝真1

所属機関: 1昭和大学藤が丘病院消化器内科

ページ範囲:P.175 - P.177

文献概要

疾患概念と病態
 肝は巨大な予備力と強力な再生力に恵まれた臓器である.肝はウイルス感染,アルコール,薬剤,虚血,変性など様々な侵襲を受けるが,大半の症例ではこの天賦の予備力と再生力により,黄疸や倦怠感など一定の症状は呈するものの破綻なく治癒する.しかし,肝細胞の破壊や変性がこの肝の持つ能力を越える範囲と速度で進行すると,肝再生力が追いつかなくなり,肝機能の不全状態に陥る.一般には発症後8週以内にこの状態に至ったものを急性肝不全,欧米ではfulminant hepaticfailure(FHF)と呼んでいる.わが国では劇症肝炎という病名が多用されているが,この用語を使用する場合,本来は基礎病変は肝炎に限られるべきだろう.
 欧米ではFHFはあくまでも急性肝障害の範疇でとらえているが,わが国の劇症肝炎の診断基準では,意図的にこの点を除いて単に肝炎としている.これは,東南アジアに多いHBVキャリア劇症化もこの診断基準に包摂する意図があったためであるが,それではC型を含め慢性肝炎の劇症化もこの診断に包摂するのかとなると,専門家の間でもはっきりしない.最近acute on chronicという名称が流布しており,この呼称は慢性肝炎の劇症化を包摂するが,先述の点の明確化がないうちに新しい病名を導入するのは好ましくないと思われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら