icon fsr

文献詳細

雑誌文献

medicina32巻12号

1995年11月発行

“ホッ”とspot

“たいしたことのない”腹痛(その1)

著者: 高橋将1

所属機関: 1済生会宇都宮病院内科

ページ範囲:P.351 - P.351

文献概要

 34歳の男性が上腹部痛を主訴に救急室を受診した.問診上“とりたてたこと”はなく,腹部の理学的所見も“たいしたこと”はなかった.患者には胃の痛みだろうと告げた.少し休んでいきたいというので奥のベッドを指示し,それきり患者には注意を払わなかった.その夜の救急室は昼間の外来さながらに混雑しており,その対応に追われていた.ただ,患者がたびたび腹を抱えて部屋を出るのを不信に思った.トイレにでも行って吐いているのかな.それにしても,吐くとはいっていなかったはずだが……(後で聞いたところによると,水を飲みに行ったとのことだった.水を!飲みに!しかも何度も!).
 救急の診察室に並べられたカルテが一段落したところで,奥のベッドに様子を伺いに行った.「どうですか.帰れますか」.来院してから1時間が経っていた.「いや帰れない」という.腹部はやはり“たいしたこと”はない.しかし,患者の顔はどうも苦悶状である.はっと思い立って心電図をとって驚いた.前胸部でT波がテント状に高い.医者の顔色が変わった.急性心筋梗塞?!超急性期?!

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら