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雑誌目次

雑誌文献

medicina32巻2号

1995年02月発行

雑誌目次

今月の主題 小児疾患とキャリーオーバー診療 Editorial

キャリーオーバー診療の問題点

著者: 桃井真里子

ページ範囲:P.226 - P.228

ポイント
●小児と成人では同一疾患でも病態が異なり,また治療法,治療への反応性が異なる.
●小児期発症の慢性疾患は多岐にわたる問題点を含む.
●専門診療と総合診療の両方が要求される.

内科医がみる小児救急外来

発熱

著者: 山中龍宏

ページ範囲:P.229 - P.231

ポイント
●小児の発熱の原因として,最も多いものはウイルス感染症であり,患児の年齢が重要な情報となる.診察所見とともに,全身状態を把握することが大切である.
●月齢4カ月未満の乳児の発熱でもウイルス感染症が多いが,原則として小児科医にコンサルトする.
●月齢6カ月以降の小児の発熱はかぜ症候群による場合が多い.
●生後4カ月までの乳児の発熱に対して解熱剤は使用しない.
●熱の高さと疾患の重症度に相関はなく,解熱剤を使用する場合は,主にアセトアミノフェンを頓用で用いる.

意識障害

著者: 粟屋豊

ページ範囲:P.232 - P.233

ポイント
●まず意識障害があるかないか,判断が難しいことがある.親もそれを意識していないことすらある.
●持続性の意識障害と,てんかん発作などでみられる一過性の意識障害とがある.
●昏迷状態など意識の変容も含まれる.
●成人同様,原因としては,脳障害によるものと全身疾患に伴うものなどさまざまあり,かつ緊急を要する疾患も多い.
●まずバイタルサインをチェックしたときには,「救急のABC」を施行しながら,鑑別診断と治療をすすめる必要がある.

腹痛(急性腹症)

著者: 堀野清孝

ページ範囲:P.234 - P.236

ポイント
●強い腹痛を訴えて受診した小児に対しては現病歴,既往歴,年齢,随伴症状,診察,緊急一次検査などから迅速な原因診断を行う.
●明らかに緊急外科手術を必要とする場合は直ちに外科医に,急性腹症かどうか不明の場合,小児科医による専門的治療を必要とする場合は外科的対応のできる病院の小児科医へと搬送する.
●搬送する場合には前もって連絡して,検査データを用意し,不測の事態に備えて血管を確保し,胃管を挿入することが望ましい.

嘔吐・下痢・下血

著者: 小林昭夫

ページ範囲:P.237 - P.239

ポイント
●嘔吐・下痢・下血の問診の要点
●嘔吐・下痢・下血の年齢別鑑別診断
●嘔吐・下痢・下血の診察の要点
●嘔吐・下痢・下血のルーチン検査
●嘔吐・下痢・下血の処置・処方のポイント

発疹性疾患

著者: 中村明

ページ範囲:P.240 - P.242

ポイント
●小児期の発疹症は紅斑性と水疱性とに大別される.
●さらに,discreteとconfluentとに分類し,confluentな紅斑の鑑別が重要である.
●好発年齢が限られた発疹症がある.たとえば,乳児期の突発性発疹,乳幼児期のブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群や川崎病,幼児から学童期の溶連菌感染症やアレルギー性紫斑病などがあげられる.
●ヘルペス属を除く多くのウイルス性発疹症は特異的治療薬はなく,またself-limitedである.ただし,麻疹のように併発症の多い疾患もあるので注意を要する.

気管支喘息発作時の処置

著者: 岩田力

ページ範囲:P.243 - P.245

ポイント
●綿密な問診と理学的診察によって発作の重症度の判定を行う.
●小発作の治療ではβ刺激剤の吸入を第一選択とする.
●中発作以上の発作に際してもβ刺激剤の吸入から開始するが,得られた効果を判定してアミノフィリンの静注,再度の吸入,ステロイドの使用と段階をおって治療していく.
●酸素投与はどの段階から行ってもよい.
●発作に対する頓用としての内服薬の選択は,吸収の早いものを第一とする.

急性呼吸障害

著者: 武内可尚

ページ範囲:P.246 - P.248

ポイント
●小児は歴年齢が浅いため,未だ免疫力に乏しく,多くのありふれた感染症に繰り返し罹患する.また病態生理も乳児では年長児とは大きく異なっている.
●発達段階に応じた事故,とりわけ誤嚥事故に多く遭遇する.気道の生理的条件の未発達あるいは免疫機能の未成熟に加え,社会生活上の経験不足などが,常に乳幼児にはつきまとっていることを,まず念頭に置かなければならない.

頭痛

著者: 小宮和彦

ページ範囲:P.250 - P.251

ポイント
●頭痛を主訴として来院した場合,まず重大な疾患の鑑別を念頭に置いて,問診,診察,必要な検査を行う.
●これらが否定されれば,患者,家族にその旨説明して安心させ,経過を見ながら対症療法と鑑別診断を並行して考えて行く.
●訴えの程度に応じて,対症療法としての鎮痛を考える.
●慢性の頭痛については成人のそれと基本的にはかわりない.
●片頭痛は小児期からの発症はよく見られる.ことに親にあるときは可能性が高い.
●緊張型頭痛や,心因性頭痛などもしばしば見られる.

けいれん

著者: 椎原弘章

ページ範囲:P.253 - P.255

ポイント
●小児期はけいれんが起きやすい時期であり,その原因も極めて多種にわたる.
●けいれん重積は,放置すると重篤な後遺症や死を引き起こすため,強力な治療が必要である.
●けいれん重積に対してはジアゼパムの静注が第一選択であり,多くの場合有効である.けいれんの抑制のみでなく,同時に全身管理が重要である.
●けいれんの治療と並行して原因疾患の検索を行い,適切な治療を選択する.症例によっては,急性期以降の長期管理が必要となる.

誤嚥・誤飲—薬物,中毒など

著者: 荒川洋一

ページ範囲:P.256 - P.258

ポイント
●起因物質の種類と量を確認し,判断に迷う場合は日本中毒情報センターへ問い合わせる.
●嘔吐をさせてはいけないときがある.
●全身管理,救急のABCを優先させる.
●活性炭は毒物の種類により吸収を抑制し,代謝を早める.

思春期の患者をどうみるか

思春期の患者をどうみるか

著者: 弘岡順子

ページ範囲:P.260 - P.261

ポイント
●思春期の患者が“病気とともに積極的に生きる”よう援助することが,思春期の患者を診療する医師の目標であると思われる.
●保護者とともに来院することが多いが,まず患者自身と話をするよう努める.
●父母との親子関係,学校生活など生活環境を推察し,家族や教師の理解と協力を得る.また,彼らの性的な不安,問題に配慮する.
●同年齢でも心身の成長に個人差が大きいので,説明の方法は一律であってはならない.

思春期特有の症状にどう対応するか

著者: 森崇

ページ範囲:P.262 - P.264

ポイント
●思春期の若者の心身の症状は,周囲へのアピール行為である.
●症状の背後には,若者の家族,学校,社会の諸問題が存在する.
●日常生活のリズムと心身の症状とは関係する.
●心身の症状の背後に性の問題があることが多い.
●親子関係のあり方をよく観察する.
●若者の心身の治療には,若者を中心にした理解と行動が必要である.

心雑音

著者: 阿波彰一

ページ範囲:P.266 - P.268

ポイント
●心雑音は血液の乱流に伴って発生する.乱流は心大血管の構造と血流速度によってもたらされる.
●心雑音の一部のようにして心音の正確な聴診も大切である.
●左心性の心雑音は深吸気で減弱し,右心性の心雑音は逆に増強する(Rivero-Carvallo徴候).
●大部分の先天性心疾患は,極論すれば,手術,catheter interventionにより部分的に治癒されるのみなので,いろいろな心雑音を持ったまま成人していくことが今後益々増加する.

肥満

著者: 大和田操

ページ範囲:P.270 - P.271

ポイント
●学童期,思春期の肥満は成人肥満につながることが多く,食事と運動による管理を要する場合が多いが,治療が必要な肥満と,そうでない肥満との鑑別が必要である.

高血圧

著者: 内山聖

ページ範囲:P.272 - P.273

ポイント
●小児の血圧測定は,年齢に合わせたカフを用いるが,9歳以上は成人と同じでよい.
●中学・高校生の1%前後に本態性高血圧症が存在するが,ほとんどは軽症高血圧である.
●年齢が低いほど,また,血圧が高いほど続発性高血圧症の可能性が高い.
●高血圧のタイプと薬剤選択の見極めに,カプトプリル試験が有用である.
●中学・高校生の本態性高血圧症では,150/90mmHg以上の固定性高血圧を治療開始の目安とし,140/85mmHg以下の血圧維持を図る.

高脂血症—高コレステロール血症を中心に

著者: 児玉浩子

ページ範囲:P.274 - P.276

ポイント
●小児では一般に血清総コレステロール値は200mg/dl,中性脂肪値は180mg/dl以上を高値とする.
●治療の基本は食事療法と運動の推進である.
●薬剤投与は原則として10歳以上を対象とし,慎重に行う.高コレステロール血症の第1選択剤としてはコレスチラミンが望ましい.
●発育・発達状態についても常に留意する.

思春期スポーツ障害—いわゆる“膝の成長痛”について

著者: 平岡久忠 ,   中村耕三

ページ範囲:P.278 - P.279

ポイント
●Osgood-Schlatter病は,大腿四頭筋脛骨付着部骨端核におけるスポーツによるover use症候群の一つと考えられる.
●身体の成熟に伴い成長軟骨帯が閉鎖すれば自然治癒する傾向がある.
●治療は,急性期にはcoolingと局所安静,疼痛軽減後は大腿四頭筋のストレッチングという保存療法を基本とする.
●診療に際しては,保存療法を継続することで治癒しうることを十分に理解させ,いたずらに不安を与えないことが肝要である.

神経性食欲不振症

著者: 中根晃

ページ範囲:P.280 - P.282

ポイント
●強度の痩せ,食欲不振,無月経を主徴とする心身症性の疾患で,青年期の女子に多発する.
●痩せを目的とする減食(ダイエット)に引き続いて発症することが大部分で,慢性に経過するが,衰弱のために死亡することもあり,強制栄養のような身体的な管理を必要とすることも少なくない.
●痩せへの希求が強く,自己誘発による嘔吐,下剤や灌腸の乱用,盗みや自傷行為などの行動異常を合併することも多く,心理療法的接近が不可欠である.
●8〜13歳の低年齢での経過は比較的良いが,高校生以上の年齢の治療は困難なことが多い.

思春期患者へのメンタルヘルスケア

著者: 宮本信也

ページ範囲:P.283 - P.285

ポイント
●思春期とは,発達心理学的概念である青年期の中で,二次性徴の発来から完成までという身体的特徴を持つ時期をいう.
●思春期の心理的問題には二重の多様性がある.1つは,患者間で病状が多彩である点,他の1つは,1人の患者において病状が多彩に変化する点である.
●思春期の心理的問題の多様性は,思春期心性の特徴により理解される.
●思春期心性の特徴は,同一性の課題と性的成熟が背景の大きなものである.
●同一性課題とは,過去・現在の自己像,理想の自己像,期待される自己像を統合させて自分自身を完成させていくことといえる.

心身症—自律神経症状を訴える患者をみる

著者: 星加明德 ,   三輪あつみ ,   池田明代

ページ範囲:P.286 - P.288

ポイント
●思春期の頭痛,腹痛,嘔気,微熱,めまいなどの自律神経症状を訴える小児では,
①一般的な対応,治療で改善しない場合,心身症を疑う必要がある.
②心身症の社会心理的因子として,学校ではいじめ,友人や担任教師との関係,クラブ活動,転校など,家庭では両親と患児の人間関係,両親間の不和が多く認められる.
③生物学的因子としては一部の症例で本人の発達障害がみられる.
④経過中に不登校(登校拒否)を合併することがあり,また分裂病,うつ病などの精神疾患でないか注意してみていく必要がある.

小児科から内科へのキャリーオーバー診療

先天性心疾患

著者: 小池一行

ページ範囲:P.289 - P.291

ポイント
●成人期の先天性心疾患の状態には,いくつかの類型がある.
●これらの患者の的確な内科管理には,それぞれの特異的問題についてあらかじめ熟知しておく必要がある.

川崎病性冠動脈瘤

著者: 白石裕比湖

ページ範囲:P.292 - P.295

ポイント
●川崎病性巨大冠動脈瘤を持つ患者では,遠隔期に冠動脈狭窄や心筋梗塞を起こす可能性がある.
●川崎病性冠動脈瘤を持つ患者では瘤内の血栓形成を予防するため,抗血小板薬や抗凝固療法を受けている.
●川崎病性冠動脈瘤を持つ患者では定期的に心筋虚血を評価し,冠動脈狭窄や心筋梗塞既往では適切な時期にA-Cバイパス手術を施行する.

心筋症のフォローアップ

著者: 原田研介

ページ範囲:P.296 - P.297

ポイント
●小児の心筋症で最も多いのは肥大型である.
●肥大型心筋症には閉塞型と非閉塞型がある.
●いずれの型でも突然死が起こりうる.
●突然死は運動に関係して起こることが多い.
●「競争」はしてはならない.
●自転車,柔道などで死亡していることがしばしばある.
●突然死の予防が最も大切なことである.

てんかん

著者: 小林繁一

ページ範囲:P.298 - P.300

ポイント
●小児の各てんかん病型には好発年齢がある.
●てんかんの病型は,発作型と脳波像(発作間欠期,発作時)から診断する.
●抗てんかん薬は病型にあったものを,できるだけ単剤で投与する.
●発達障害のない孤発性痙攣,中心側頭部に棘波をもつ良性小児てんかん(BECT)の初回痙攣では抗てんかん薬を投与せず,経過をみる.

慢性腎疾患のフォローアップ

著者: 五十嵐隆

ページ範囲:P.302 - P.304

ポイント
●IgA腎症患者の約半数は加齢とともに腎炎が進行し,蛋白尿の程度が増加したり,一部の症例では腎機能の低下が見られるようになる.
●小児のステロイド反応性ネフローゼ症候群の約1割を占めるステロイド依存性ネフローゼ症候群患者の多くは,低身長,骨粗鬆症,肥満,白内障などのステロイドによる合併症を有する.
●ステロイド反応性ネフローゼ症候群患者は,特に思春期に服薬,通院などのコンプライアンスが急に低下することがある.
●Alport症候群,若年性ネフロン癆,oligomeganephronia,爪膝蓋骨症候群,腎低形成の患者では,次第に低下してゆく腎機能や合併症の評価と腎不全合併症の治療を行う.
●遠位尿細管性アシドーシス患者では適切なアルカリ,K補充療法が一生涯必要である.糸球体・尿細管機能や腎結石,腎石灰化,腎嚢胞などの合併症を評価する.

気管支喘息

著者: 勝呂宏

ページ範囲:P.306 - P.308

ポイント
●小児気管支喘息の発症年齢は1歳から3歳に大きなピークがあり,6歳までに90%が発症している.
●寛解年齢は15歳頃までに70〜90%の患児が軽快ないし寛解する.予後率は対象者の重症度が関与している.
●キャリーオーバー例で,特に“自己の病状を過小評価・服薬率が低い・吸入用気管支拡張剤(β2MDI)依存例・学業や親子関係などで精神的ストレスがある患者ら”については,患者サイドに立ったきめ細かい指導と治療が必要である.

悪性疾患のフォローアップ

著者: 大平睦郎

ページ範囲:P.310 - P.311

ポイント
●小児の白血病や固形腫瘍などは治療法が進歩し,長期生存者が着実に増加している.
●小児期に受けた強力な化学療法や放射線療法のため,各種臓器障害や内分泌障害などの晩期障害も増加しており,入念な長期フォローが必要である.
●続発性腫瘍の発生や再発の危険もあり,慎重かつ迅速な対応が要求される.

血友病

著者: 飯塚敦夫

ページ範囲:P.312 - P.314

ポイント
●関節出血は最も頻度の高い症状で,出血を繰り返すと慢性関節症を併発し,肢体不自由になる可能性がある.
●慢性関節症の予防には定期的補充療法・家庭治療(自己注射)が必須である.
●成人になると出血回数や血液製剤の使用量が減少する.
●成人では,医師との関係が小児期より疎遠になりがちなので,医師と患者の関係をより親密に保つ必要がある.
●血友病患者は,適切な時に適切な補充療法(家庭療法)を受ければ普通人と同様の学校・社会生活を送ることができる.
●遺伝相談のほとんどは保因者診断であり,遺伝子解析によって正確に診断できる.

HIV感染症

著者: 山田兼雄

ページ範囲:P.315 - P.317

ポイント
●内科医との併診,包括的なミーティングが必要である.
●抗体検査の結果は告知する.
●定期検査は,内科医との連絡をとりながら能率的に行う.
●治療も内科,他科の医師との連絡をとりながら行う.
●患者に対する愛情は必要であるが,患者を内科に渡すのを惜しんではならない.

免疫不全症候群

著者: 矢田純一

ページ範囲:P.318 - P.319

ポイント
●成人にまで生存しうる病型は主として抗体欠乏症である.
●抗体欠乏症患者は細胞性免疫不全の合併がなければ,免疫グロブリン製剤の注射で適切に治療すればほぼ健康人と変わらない生活が送れる.
●注意すべきは中耳炎,下気道感染を反復することによる難聴や気管支拡張症の合併である.
●原発性免疫不全症では悪性疾患の合併が多いので,その発生に十分注意する必要がある.

肝炎ウイルスキャリア

著者: 田中雄二 ,   白木和夫

ページ範囲:P.320 - P.322

ポイント
●HBVキャリアのほとんどすべては乳幼児期に感染したものである.
●HBV,HCVを問わずキャリアは定期的な肝機能検査が必要である.
●HCVは成人でも高率に持続感染を起こす.

先天性胆道閉鎖症術後

著者: 小林昌和 ,   住山景一郎 ,   小池通夫

ページ範囲:P.324 - P.327

ポイント
●先天性胆道閉鎖症には軽重の差はあるが,全例に必ず肝硬変を合併していると考えて対処する.その程度は術前から存在するもので術後の逆行性胆管炎などでさらに進展するため,生涯続く管理が長期予後を決定する.
●栄養管理:脂肪吸収を計るMCT(中鎖脂肪酸)の利用と脂溶性ビタミンの補充を行う.
●胆汁排泄療法:利胆剤やコレスチラミンを用いる.
●逆行性胆管炎の防止:発熱,CRP,便の色を監視し,抗生物質持続投与を行う.
●肝胆道系の監視:肝逸脱酵素(GOT,GPT)と胆管系酵素(γ-GPT,LAP),ビリルビン,総胆汁酸などを定期的に検査する.
●門脈圧亢進症の管理:血小板減少を含む脾機能亢進症の管理と内視鏡で食道静脈瘤の管理.
●感染症の予防:予防接種の積極的採用.脾摘例には肺炎球菌ワクチンも接種する.
●肝不全対策:非代償期への進展防御と肝移植の相談.

糖尿病

著者: 内潟安子

ページ範囲:P.328 - P.330

ポイント
●発症年齢が10歳以下ならIDDM,10歳以降ならIDDMとNIDDMの両方を念頭に置く.
●糖尿病性合併症ははやくても思春期以後に発症してくる.
●糖尿病性腎症が生命予後を左右する.

膠原病

著者: 田中信介

ページ範囲:P.331 - P.333

ポイント
●JRA(若年性関節リウマチ)では,多関節型発症例と全身型発症例の中で多関節炎症状が進行していくタイプが関節機能障害を伴って成人になっていく.このような症例はJRA患者の10%を越える.
●小児SLEは小児膠原病の中でも発症年齢が高く,長期にわたって寛解と再燃を繰り返すことより,ほとんどの患者が成人になっても治療を受けることになる.
●JRAおよび小児SLE患者が成人に達してから受ける治療は各々成人のRA,SLE患者の治療に準じたものとなる.

小児診療の注意点

小児の検査値のみかた

著者: 澤文博 ,   月本一郎

ページ範囲:P.335 - P.337

ポイント
●小児の検査値は成人の基準範囲内でも異常であったり,基準範囲外であっても正常のことがある.
●小児の検査値の解釈には年齢による基準範囲の違い,採取時の溶血やアーチファクトの影響,発育発達の個体差などに注意する必要がある.
●小児の基準範囲は年齢が進むにつれて横ばい型,漸増型,漸減型,凸型,凹型,二峰型に推移するものがある.また成人の基準範囲に入る時期が乳児期,幼児期,学童期,思春期,成人と違いがある.
●報告伝票に小児の参考値の記載があっても,年齢区分の明記がなければ判定に注意を要する.

小児へのくすりの使い方

著者: 藤田昌宏

ページ範囲:P.338 - P.339

ポイント
●小児は成人を縮小したものではない.
●成人からの換算での投薬は十分ではない.
●小児用剤型と成人用剤型では吸収が異なることがある.
●小児におけるTDM(治療薬剤監視)の意義は大きい.

予防接種

著者: 木村三生夫

ページ範囲:P.340 - P.343

ポイント
●1994年10月に予防接種法が改正された.
●予防接種は,(従来の)義務集団接種から勧奨個別接種にかわった.
●ワクチンで防ぎうる病気はできるだけなくすことが望まれる.
●海外渡航などで,成人の予防接種の重要性が増している.

理解のための34題

ページ範囲:P.344 - P.350

グラフ 検査・診断のためのCurrent Technology—原理と臨床的意義・2

画像解析と病理組織診断

著者: 手塚文明 ,   八重樫弘

ページ範囲:P.373 - P.376

画像解析の意義
 近年,病理形態学にも新しい方法として,コンピュータにより画像情報を解析する方法が導入されつつある.特に病理組織診断は顕微鏡像の直観に基づくため,客観性や再現性を欠いた判断を与え臨床側を困惑させることも稀ではない.こうした問題に対し,定量的な基礎に立つ形態解析が一つの有効な解決策となり得る.

MRI演習・14

月経時痛を訴えて来院した38歳の女性

著者: 荒木力

ページ範囲:P.357 - P.361

Case
 38歳,女性.月経時痛を訴えて来院した.超音波検査で骨盤腔腫瘤を指摘された.図1AはT1強調像(T 1 WI,TR/TE:500/20msec),BはT2強調像(T 2 WI,2000/80msec)の冠状断面である.

薬を正しく使うためのDrug Information—副作用について・14

トリアゾラムによる一過性健忘

著者: 風祭元

ページ範囲:P.362 - P.363

トリアゾラムの概要
 トリアゾラム(ハルシオン®ほか)は,わが国では1983年に発売されたベンゾジアゼピン系睡眠薬で,市販数年後には,全睡眠薬の売上げの最大のシェアを占めるようになった.トリアゾラムは血中の生物学的半減期が2時間前後と短い超短時間型の入眠誘導剤で,他の通常の睡眠薬によくみられる持ち越し効果(hangover effect)がほとんどなく,翌朝覚醒時の気分が爽快なので,各科の医師により広く用いられている.
 トリアゾラムは,オランダで服用後の奇異反応が報告されて一時発売停止が行われ,また,イギリスやアメリカでも服用後の一過性健忘,翌日の不安の増大などの所見があり,これらがマスコミで犯罪や乱用の危険性を過度に強調する方向で報道が行われた.

臨床医に必要な老人をみる眼・13

脳卒中の治療としての早期リハビリテーションの重要性

著者: 大川弥生 ,   太田喜久夫

ページ範囲:P.364 - P.366

◆はじめに
 脳卒中の治療においてリハビリテーション(以下,リハと略す)が重要であるとの認識は非常に普及してきた.しかし,リハにおいて一般医療機関が果たすべき役割はまだ十分には発揮されているとはいえない.そこで,本稿では特に現時点で強調したいポイントについて述べることとする.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.367 - P.372

知っておきたい耳・鼻・のどの病気と病態・1【新連載】

中耳炎のみかた

著者: 白幡雄一

ページ範囲:P.379 - P.383

 中耳炎はありふれた疾患である.中耳炎は大別すると急性中耳炎,滲出性中耳炎,慢性中耳炎に分類される.乳幼児に好発する急性中耳炎は,遷延化に伴い滲出性中耳炎,慢性中耳炎へと変化し,難聴は進行する.
 中耳炎の診断に際しては,鼓膜所見を詳細に観察することが最も重要である.さらに,中耳炎症候である耳漏や耳痛・難聴の知識をしっかり身につければ正しい中耳炎の診断に到達することができる.本稿では,内科臨床医も診る機会の多い中耳炎の正しい診断の仕方について解説する.

これからの医療と医療制度・14

病院機能評価

著者: 寺崎仁

ページ範囲:P.408 - P.409

 医療評価には,「医師機能評価」と「病院機能評価」の2つの領域があると考えられている.前者の「医師機能評価」については,前号でも触れたように,極めて専門性の高い個別の医療行為の評価が含まれるため,医療の専門家である医師同士の相互評価,いわゆるpeer reviewが有効とされている.
 一方,「病院機能評価」については,昭和62年に厚生省と日本医師会が共同で「病院機能評価マニュアル(案)」を作成し,病院自らがその機能を評価する自己評価方式を試行した.この病院機能評価マニュアルには,病院の活動方針などの「基本的事項」や「地域ニーズの反映」,「患者の満足と安心」,「診療の学術性」,「管理運営の合理性」の5つの領域について,合計100項目の評価事項が設定されている.そして,例えば「病院の基本方針が職員に周知徹底されていますか」など,それぞれの項目についておおむね「はい」か「いいえ」で答える方法となっている.

アメリカ・ブラウン大学医学部在学日記・6

産科実習は人形を使ったお産の練習から

著者: 赤津晴子

ページ範囲:P.385 - P.387

 陣痛の間隔がだんだん縮まってきた.脊髄麻酔を受けた妊婦は子宮の強い収縮を圧迫感として感じてはいるものの,さほどの痛みはないようだ.もっとも,彼女にとっては初めてのお産であり,緊張と不安で私の差し出した手をギュッと握りしめている.私のほうは私のほうで緊張と不安が高まる.なにせ私にとっても初めてのお産なのである!もう少し正確に言えば,私が担当医として初めて取り上げることになるお産なのである.しかも産科の実習を始めて2日目である.しかし,そんなことは口に出せない.もう何十回も赤ちゃんを取り上げています!という顔をしながら,その母親に「頑張って!大丈夫よ!」と励ましの声をかける.産道をチェックする.もう少し時間がかかりそうだ.分娩室をいったん出てナースステーションに行き,「産婦人科」というここ数日の私の愛読書を手に取る.もう一度「お産の仕方」という章を広げながら頭の中で復習した.さあ,そろそろのはずである.分娩室に戻る.指導に当たってくれる助産婦さんに合図され,ガウン,キャップ,ゴーグル,そして手袋を身につけた.まるで手術室に入るようないでたちである.赤ちゃんの頭がだいぶ下がってきている.

medicina Conference・11

発熱と呼吸困難を主訴に救急外来を受診した69歳の男性

著者: 大成功一 ,   今井信行 ,   酒井泰彦 ,   梅沢剛 ,   山口明満 ,   石村孝夫

ページ範囲:P.388 - P.406

 症例:69歳,男性.
 主訴:発熱,咳嗽,呼吸困難.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

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60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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