文献詳細
iatrosの壺
文献概要
勤務医時代に経験した症例で,つくづく心電図は信用できないと思える症例を提示いたします.42歳の男性で,数日前より胸部圧迫感が出現し来院されました.安静時心電図は問題なく,負荷心電図も全くS-Tの変化はみられませんでしたが,症状が特有のため亜硝酸薬と舌下錠を持たせて帰宅.その夜たまたま私が当直のときに胸痛を訴えて再来院.来院時の心電図は症状があるにもかかわらず正常.そのまま入院していただきましたが,数時間後看護から,胸痛が強くなったとのことで連絡があり,再度心電図をとったところ前胸部誘導でS-Tの低下がみられました.梗塞ではないが症状が不安定なため,冠動脈造影を急遽行いました.ところが結果は,左前下行枝基部の亜閉塞で造影遅延がみられ,右冠動脈から側副血行路が出ていました.ウロキナーゼの局注を行ったところ残存病変が75%位で血行は良好になり,一時再疎通後の心室性不整脈を起こし不安定になりましたが,ことなきを得ました.このとき造影をしなかったら左前下行枝基部の閉塞になり,将来バイパス術の必要性もあったと思います.
結論からいえば,側副血行路がみられたため心電図変化が出にくかったのですが,その後,私は心電図はあくまで参考にして胸部症状をなにより大事にしております.
結論からいえば,側副血行路がみられたため心電図変化が出にくかったのですが,その後,私は心電図はあくまで参考にして胸部症状をなにより大事にしております.
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