icon fsr

文献詳細

雑誌文献

medicina33巻12号

1996年11月発行

文献概要

iatrosの壺

カルシウム拮抗薬の意外な副作用

著者: 祢津光廣1

所属機関: 1山梨県立中央病院内科

ページ範囲:P.49 - P.49

文献購入ページに移動
 カルシウム拮抗薬の投与により歯肉増殖症,視力障害,眼痛などの副作用が生じる場合がある.本稿では自験例を交えながら,あまり知られていないこれらの副作用について述べてみたい.
 1)歯肉増殖症:症例は60歳の男性.2年前,ホルター心電図および冠動脈造影法により冠攣縮性狭心症と診断が確定した.ニフェジピン40mg/dayの投与により狭心発作は完全に消失したが,15カ月後から歯肉増殖症が出現した.歯口清掃に加えて,ニフェジピンを20mg/dayに減量し,ニコランジルを併用したところ狭心発作もなく歯肉増殖症は次第に改善した.岩倉らの報告では,ニフェジピン服薬者の10.9%に歯肉増殖症がみられたとのことで,実際はかなりの症例数にのぼるものと考えられる.当院ではニフェジピンのほかにニソルジピン,ニルバジピンによる本症の発現例があり,カルシウム拮抗薬の種類に関係なく出現するものと考えられる.主な自覚症状は歯肉の腫れで,高齢者では「入れ歯が合わなくなった」と訴えることもある.本症の発現時期は服薬開始後平均10カ月程度で,遅発性である.本薬による歯肉増殖の発現機序として,末梢血液循環亢進による局所炎症の助長,コラーゲンの合成促進および分解抑制などの説があるが,確定していない.本症を認めた場合は,休薬するか,休薬が困難な場合は歯科専門医による積極的な歯周管理が必要である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?