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文献詳細

雑誌文献

medicina33巻12号

1996年11月発行

iatrosの壺

心窩部痛にご注意あれ

著者: 田島真帆1

所属機関: 1はとがや病院内科

ページ範囲:P.55 - P.55

文献概要

 午前中の忙しい外来が終わって,やっと一息ついたある日の午後のことである.1人の青年が,みぞおちのあたりが痛むといって外来にやってきた.25歳の土木作業員で,やせぎみではあるが,背は高くがっしりした体格をしている.話を聞くと,ここのところずっと痛みが続いているとのことである.当院に1週間ほど前に初診でかかっており,胃・十二指腸潰瘍の疑いで,H2ブロッカーが処方されていた.触診では,心窩部に一致して軽度の圧痛があり,やや膨隆している.年齢を考え,やはりまず胃潰瘍か十二指腸潰瘍であろうと思い,H2ブロッカーがほとんど効いていないのを疑問に思いつつも,胃内視鏡検査をすることとした.内視鏡では胃は全く正常であった.きっと大きな潰瘍が視界の中にとびこんでくるであろうと想像しながら十二指腸球部に挿入すると,なんと全く正常なのである.びらんの一つでもないかと思いしつこく見てみるが,何もない.患者にまず潰瘍であろうとムンテラした手前,結果をどう説明しようかと少々あせりつつ検査を終了した.そのとき,心窩部が膨隆していたのを思い出し,すぐに腹部エコーをしてみた.まず胆嚢をみてみたが,石はなく,腫大もない.総胆管や膵にも異常がない.おかしいと思いつつ肝臓をみてみると,左葉に何やら大きな塊がある.これは何だと思いつつよくみてみると,塊の周囲にはlow echoなハローがあり,内部はモザイクパターンを呈し肝表面より腹壁に向かって大きく突出している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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