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文献詳細

雑誌文献

medicina33巻12号

1996年11月発行

文献概要

iatrosの壺

低栄養状態の心室頻拍にはマグネシウム静注を

著者: 西野雅巳1 田内潤1

所属機関: 1大阪労災病院循環器内科

ページ範囲:P.78 - P.78

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 72歳男性.慢性腎不全の急性増悪で他院へ入院し加療を受けていた.吐気が強いので念のため胃カメラをしたところ早期胃癌が発見され,手術にあたり透析が必要ということで,本院へ紹介転院となった.低栄養状態のため入院時より中心静脈栄養を行っていたが,入院5日目に突然心室頻拍となった.電気的除細動を行い,キシロカイン®静注を行っても,一時的に洞調律に復帰するだけで再び心室頻拍を繰り返すという状態であった.前日の血液検査をみたところ,カリウムは4.6mEq/lと正常であったが,マグネシウムは0.8mg/dlと低く,マグネシウム20mEqを10分で静注した.すると嘘のように心室頻拍は止まり,その後は点滴内にマグネシウムを入れ,ゆっくり補正することで,心室頻拍は全く認めなかった.次の日の血液検査ではマグネシウムは2.6mg/dlと正常化していた.後でわかったことだが,この患者は今までに不整脈の既往はなく,また,中心静脈栄養の中にマグネシウムは入れておらず,入院後ほとんど経口摂取できていない状態であった.
 1994年Suetaら1)は,心不全患者の心室頻拍にマグネシウム静注は有効と報告している.また,心室頻拍症は血中マグネシウム,カリウムに変化がなくても,マグネシウム投与によって改善する可能性があるとの報告もある2).いずれにしろ原因不明の難治性心室頻拍や低栄養状態の心室頻拍には,マグネシウム静注を試みるべきであろう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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