icon fsr

文献詳細

雑誌文献

medicina33巻12号

1996年11月発行

文献概要

iatrosの壺

身近な所に落し穴

著者: 西田雅弘1

所属機関: 1西田内科クリニック

ページ範囲:P.90 - P.90

文献購入ページに移動
 10年ほど前,海辺の国立病院に勤務していたころのことです.月曜の朝,病院に行くと看護婦さんより,「昨日Oさんが胃が痛いといってこられ,当直の先生が診察され,入院になっていますのであとお願いします」とのこと.Oさんは29歳の男性.この病院の放射線技師で,私の釣り友達でもあり,週末には20kgを超える釣りえさ,釣り道具を持ち2〜3kmは岩場を歩いて釣りに出かけていました.「どうしました?」とたずねると,「昨日家で晩酌をして寝ていたら急に胃が痛みだして,当直の先生に注射をしてもらい,今はもうかなり良くなっている」とのことでした.「潰瘍ができているかもしれないので入院のついでに胃の検査をしてみましょうか」と,一応というかたちで診察をしていくと,心尖部で心膜摩擦音が聴取されました.怪訝に思いつつ心電図をとってみると,II,III,aVFでSTの上界,異常Q波がみられ,立派な下壁梗塞の所見でした.よく話を聞いてみると,突然の発症で冷汗を伴っていたとのこと.心窩部には圧痛がないなど心筋梗塞も考慮しておく必要があるにもかかわらず,注意が胃にばかり向いて危うく大きな誤診をするところでした.初対面の患者さんの場合には,いろいろな可能性を考えつつ診るものですが,身近な人の場合には何がしかの先入観や照れがあり,しかも医療従事者の訴えとあって,注意が胃にばかり向いてしまったものと思われます.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら