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文献詳細

雑誌文献

medicina33巻12号

1996年11月発行

文献概要

iatrosの壺

ゴリテリー液が救った命?

著者: 足立明1

所属機関: 1田辺中央病院消化器内科

ページ範囲:P.142 - P.142

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 10年前,地方の国立病院勤務時代に,20歳の大学生が両親と口論の後,かっとして農薬を飲んだとのことで救急搬送されて来ました.こういう場合,確信犯でないので軽症(刺激臭が強く実際には飲めない)がほとんどですが,診察してみると,あの嫌な臭い,咽頭部のただれと緑色粘膜様物の付着,ひと目でパラコート,それもある程度の量を服用したと診断できました.救急設備の整っていない病院で血漿交換もできず,活性炭もありません.ゾンデで胃洗浄すると,悪臭を伴う緑がかった胃液が出てきました.マニュアルによると腸洗浄がもっとも大切とのことで,当時大腸内視鏡の新しい前処置法として脚光をあびていたゴリテリー液を思いつき,薬局に頼んで用意してもらいました(市販されておらず,各病院の薬局で合成していた).経鼻胃ゾンデより3l注入,最初は嘔気を訴えましたが,右側臥位にして我慢させたところ,スムーズに幽門を通過した様子で,1時間以内に大量の下痢となり,下痢便にもパラコート臭が著明でした.この患者はのちに,尿中のパラコート定性反応が陽性と判明,急性期に腎不全,その後軽い肺線維症を併発しましたが,最終的に後遺症なく改善しました.
 文献によると,小腸に留まったパラコートが持続的に吸収され全身の臓器合併症が進むとあり,発症当初のゴリテリー液による腸管洗浄が著効したものと自負していますが,いかがでしょうか.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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