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文献詳細

雑誌文献

medicina33巻12号

1996年11月発行

文献概要

iatrosの壺

「あんまり痒くて気が狂いそうです」

著者: 河野通盛1

所属機関: 1松江市立病院第1内科

ページ範囲:P.157 - P.157

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 肝臓病を専門にしている関係上,慢性肝疾患の患者が皮膚の掻痒感を訴えるのにしばしば遭遇するが,その主因は胆汁酸の蓄積によると考えられている.多くの場合掻痒感は自制内で,治療法も抗ヒスタミン薬の投与など対症的に行う程度が一般的である.しかし,強烈な掻痒感を訴えた印象深い症例を経験したことがあるので紹介する.
 症例は49歳女性.近医より肝炎治療経過中に黄疸が出現したとして紹介を受けた.診察すると,確かに顕性黄疸を認めるが,それより特徴的なのが診察中も四六時中全身を掻きむしり,引っかき傷だらけの状況である.「先生,あんまり痒くて気が狂いそうです.何とかして下さい」と訴える.どう見ても尋常な掻痒感ではなさそうである.とりあえず入院として肝機能検査と超音波検査を行うと,どうやら肝硬変に胆石を合併しているようだが,閉塞性黄疸を疑う所見はない.翌日検査室から返却された血清総胆汁酸値を見て驚いた.なんと絶食下の採血にもかかわらず851μMもあるのである.実はこの症例,C型肝硬変患者に,胆石溶解療法の目的でケノデオキシコール酸が2週間投与され,その蓄積により肝不全と掻痒感を生じたものと後日判明した.痒さの原因物質である胆汁酸自体が蓄積したのだから痒いはずである.患者の症状は薬剤の中止とコレスチラミンの投与により軽快した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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