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文献詳細

雑誌文献

medicina33巻12号

1996年11月発行

文献概要

iatrosの壺

慢性咳嗽

著者: 深町雄三1

所属機関: 1庄内余目病院内科

ページ範囲:P.214 - P.214

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 一般診療の場では,咳嗽は極めて多い症状である.感冒や気道感染症,慢性気道炎症(DPB,Athma,Tbc,etc),あるいは悪性疾患などが頭に浮かぶし,また,これらの疾患が見逃されてはならない.しかし,呼吸器の各種器質的疾患をいくら検索しても明らかな原因を特定できず,「気のせい」とか「心身症によるもの」とされている場合もある.
 症例は72歳女性.主訴は夜間の咳.ここ数年来,床につくと咳が出るが,さほど激しくはなく,痰はほとんどからまない.発熱,胸痛はない.前医にて呼吸器の異常は気管支鏡まで含め検索したが,異常なし.既往に高血圧があり,β遮断薬・アンジオテンシン変換酵素阻害薬などの関与も前医にて検索されたが,試験投与や中止で症状の変化はない.当院での胸部X線写真,CT,呼吸機能にも異常は認めなかった.症状を再度聴取し直すと,咳の前に胸やけがすることがあるという,以前呼吸器を専門とする畏友が,「文献的に中年以上の女性の慢性咳嗽では,噴門部機能不全による胃酸やその蒸気の逆流によって起こるものが多くみられるとある」と話していたことを思い出し,当患者ではヘルニアがある可能性が高いと判断した.上部消化管内視鏡を施行したところ,滑出型ヘルニアと萎縮性胃炎を認めた.試験的に眠前のH2ブロッカー投与を行ったところ,当日より数年来悩まされていた夜間咳嗽が消失した.本来は,食道未端部のpHをモニターし,確定診断すべきであるが,症状がよくなったのにもう入院は嫌だとのことで,外来にて経過を診ている.いまだにH2ブロッカーをのみ忘れると咳が出るという.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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