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文献詳細

雑誌文献

medicina33巻12号

1996年11月発行

iatrosの壺

皮内反応は,確実に皮内に

著者: 保戸山克宏1

所属機関: 1永生病院内科

ページ範囲:P.261 - P.261

文献概要

 患者は57歳男性.39℃を超える弛張熱が続いていた.臨床症状に乏しく,主な画像診断では異常は認めず,血沈,CRPなどの炎症反応のみで,とりあえず抗生剤を投与したが,効果は認められなかった.血液培養も頻回に施行したが,細菌は検出されず,患者が1年以内に世界中を旅行していたため,マラリア,レジオネラなどの検索も施行したが,異常なし.腫瘍や膠原病を示唆する所見も認められなかった.紹介状にはツベルクリン反応(ツ反)は陰性と記載されていたが,念のため結核も考えてツ反を施行し,各種の培養を施行したが,結果は陰性であり,またガフキーも陰性であった.
 このような検索を行っている間も,発熱は継続していた.当時施行されはじめたHIV抗体検査も行った.症例検討会では,日本ではまだ少ない輸入感染症ではないかという意見もあった.私は,“結核ではないか”という考えが捨て切れなかったため,結核の専門家に意見を求めると「ツ反は確実に皮内で行わないと,反応が不確実なことがあり,自信がなければ再検したほうがいい」とのことであった.そこで今度は確実に膨疹を作り,皮内でツ反を施行すると,48時間後には強陽性と出た.すかさず抗結核薬を投与すると,あれほど続いていた弛張熱が,3日後には36℃台に解熱した.病巣は特定できなかったが,その後も発熱は認められなかったため,患者は退院となった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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