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文献詳細

雑誌文献

medicina33巻12号

1996年11月発行

iatrosの壺

鉄欠乏性貧血

著者: 山下えり子1

所属機関: 1藤枝市立総合病院内科

ページ範囲:P.273 - P.273

文献概要

 〈その1〉健康診断の季節になると必ず,出戻り鉄欠乏性貧血の女性が何人か外来に受診する.小球性低色素性貧血で,問診上過多月経がある.本人は前回受診中に鉄剤を服用していたが,医師に「貧血は改善したから受診しなくていい」と言われたという.確かに貧血は一時的に改善するだろう.しかし貧血の原因の過多月経は改善しているのか?鉄欠乏性貧血の多くの女性は腹部超音波で子宮筋腫が見つかり婦人科に紹介する.一方,腹部超音波で所見がないどころか婦人科に受診しても器質的に異常なしという症例がある.いずれによせ巨大な子宮筋腫がないかぎり婦人科の先生は手術してくれないし,年齢によっては「なにも今切らなくても閉経を待ちましょう」という症例がほとんどである.そこで内科医はどうするべきか?原因が解決するまで長々と鉄剤を処方するしかないのである.では過多月経とは?それが多くの男性医師には理解できないようである.私の少ない外来経験からは,「昼でも夜用(ナプキン)が必要」という日が2日間以上,周期が3週間以内のどちらかが当てはまれば,まず放っておくと鉄欠乏性貧血になる.そういう症例にはきちんと閉経までのお付き合いを宣言すべきである.また鉄剤の投与は,血色素量の改善に次いでフェリチン値の正常化が得られたら,フェリチン値の一定化(20〜30ng/mlで十分)を目指して服用日を決める.例えば2〜3日に1錠とか,忘れないように月経中に1日1錠と.そうすれば貧血再発というショックを受ける女性は激減するであろう.
 〈その2〉高脂血症の治療方針は①食餌療法,②運動療法,③薬物療法であることは周知の事実である.高脂血症の患者が過多月経による鉄欠乏性貧血を合併していたら,鉄剤を処方するとともになんの気なしに「食事に気をつけて下さい」と言ってしまう.患者は脂肪制限を受けているが,多くの場合「貧血を治そう!」とレバー・卵・貝類を大いに食べ始める.したがって急に高脂血症のコントロールが悪くなる.それでは困るので,そういう場合は貧血の治療は鉄剤に任せてもらう.どうしても食餌療法でという場合は,「鉄・カルシウム強化,カロリー控えめ」という牛乳や鷲のマークの製薬会社から発売されている,女性をターゲットにした鉄分入り健康ドリンクを勧めている.食餌療法を指導するには普段からいくつかのスーパーマーケットに通い,どこにどういう商品が置いてあるかを知っておくと役に立つ.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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