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文献詳細

雑誌文献

medicina33巻12号

1996年11月発行

文献概要

iatrosの壺

電解質補正時の注意

著者: 宮下綾1 中元秀友1 鈴木洋通1

所属機関: 1埼玉医科大学腎臓病センター

ページ範囲:P.304 - P.304

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 高K血症は一般に腎機能が低下するに従ってよくみられる.特に,高齢で腎機能障害のある患者ではしばしば高K血症をみる.また,非ステロイド系消炎薬により高K血症が増悪することが知られている.さらに,この高K血症は致命的な不整脈を起こすことがあり,しばしば迅速な治療が要求される.高K血症の治療で比較的早い効果を期待できるものにグルコース—インスリン療法がある.これはインスリンがカリウムを細胞外から細胞内に取り込ませるようにする結果,細胞外のカリウムが低下することで効果をあげる.このとき,インスリンにより低血糖に陥ることを防止する目的でグルコースを補充する.今回の症例は非ステロイド系消炎薬を服用後に高K血症が生じ,その治療経過中に低Na血症が出現した.
 症例は74歳女性で,数年前より腎機能障害を指摘されていた.しかし,腎機能障害がどの程度であるのかは不明であった.腰痛にて近医を受診したところ,鎮痛薬の投与を受けたが痛みは軽減しなかった.数日後には手足のしびれを自覚した.他院を受診したところ,高K血症(血清K値8.5mEq/l),さらに心電図上心室細動をみたため,直ちにグルコース—インスリン療法が開始された.このときインスリン5単位に対して5%ぶどう糖500ccで輸液が行われた.約2,500ccを12時間輸液したところで血清K値は6.4mEq/lと低下しNaは120mEq/lで心電図上も洞性頻脈であった.その1時間後に患者の意識が低下していることが看護婦から報告された.そこで血清Na値を測定したところ117mEq/lであった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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