文献詳細
文献概要
iatrosの壺
蛋白尿,腎不全にて発見された大動脈炎症候群の一例
著者: 金原幸司1
所属機関: 1国立呉病院内科
ページ範囲:P.402 - P.402
文献購入ページに移動大動脈炎症候群は大動脈や肺動脈を中心とした主幹動脈に病変が局在することを特徴とし,病変が冠動脈や腎動脈にも及ぶことは稀ならず認められますが,一般的にはこれより末梢の動脈に及ぶことはないとされています.したがって初診時蛋白尿,腎機能低下を示す症例は稀と思われます.大動脈炎症候群にIgA腎症,巣状糸球体腎炎,アミロイド腎などの合併例が報告されていますが,本例でも腎糸球体にIgAの沈着を認め,大動脈炎症候群とIgA腎症の合併と考えられました.近年,抗好中球細胞質抗体(ANCA)が血管炎と密接な関係があることが明らかになってきています.しかしながら,ANCAが陽性となるのは細動脈から毛細血管までの小型血管炎であり,大型血管炎ではANCAは陰性であります.したがって,大動脈炎症候群の診断には臨床症状および検査所見より大動脈炎症候群を疑い,血管造影にて確定診断をつけなければなりません.しかしながら,造影剤を使用する検査は腎不全患者には施行しにくく,本症例でも血管造影の施行について迷いましたが,最終的には血管造影にて確定診断を得ました.大動脈炎症候群や古典的多発性動脈炎はANCAなどの血液学的マーカーがなく,不明熱で診断に苦慮したときには疑ってみるべき疾患と思われます.この症例でも,もっと早くレノグラムを施行していれば,初回入院時に大動脈炎症候群と診断できたのではないかと思われ,紹介しました.
掲載誌情報