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iatrosの壺
切断をまぬがれた左足
著者: 隈井知之1
所属機関: 1足助病院内科
ページ範囲:P.412 - P.412
文献購入ページに移動 患者さんは,平成8年1月3日に食思不振,脱水にて入院.入院時の検査では,CPK3,865,BUN108.5, CRE2.2, GOT91, GPT24,尿酸18.5, CRP11.7でした.脱水,腎不全に加えて動脈閉塞症を疑い全身検索を行うと,左下肢に軽度のチアノーゼが発見されました.早速,動脈造影を実施.左大腿動脈が膝関節直上にてほぼ完全閉塞しており,側副血行路はほとんど存在しない状態でした.本人,家族ともに血栓除去術は強く拒否されましたが,カテーテルを外腸骨動脈より進め閉塞部位直上に留置し,ウロキナーゼ,プロスタグランジン,FOY,抗生物質などを持続動脈注入することには同意されました.しかし,24時間注入後も側副血行路の軽度改善を認めるのみで,チアノーゼは増悪していきました.本人,家族の同意のもと,血管造影にてかすかにうつった末梢動脈をDSAで確認しながら,慎重に狭窄部位を越えてガイドワイヤーを進め,カテーテルを挿入しブジーしました.その直後の造影では,末梢動脈が確実に造影されました.翌日の造影では,前日以上に末梢動脈の造影所見の著明な改善を認め,同時に症状の改善をみました.本人,家族と十分話し合い同意を得たのち,冒険ではありましたが,ガイドワイヤー下にカテーテルを慎重に挿入,血流が下肢の末梢動脈にいきわたるようにできたことと,ウロキナーゼ・プロスタグランジンを血栓溶解,側副血行路の増大目的で投与したこと,閉塞部位より末梢側からのサイトカイン,炎症産物の放出を抑制するためプロスタグランジン,FOY,抗生物質を持続注入したことなどにより,下肢切断を回避できたのではないかと思っております.現在も,左下肢は壊死に陥らず元気に外来通院中です.
以上,大腿動脈閉塞症を発症したものの,なんとか左足を切断することなく経過している患者さんについてご報告しました.
以上,大腿動脈閉塞症を発症したものの,なんとか左足を切断することなく経過している患者さんについてご報告しました.
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