文献詳細
カラーグラフ 塗抹標本をよく見よう・4
赤血球の異常・4
著者: 久保西一郎1 藤田智代2 浜田恭子3 高橋功4 三好勇夫1
所属機関: 1高知医科大学第3内科 2高知大学附属病院中央検査部 3高知県立中央病院中央検査部 4高知県立中央病院内科
ページ範囲:P.769 - P.772
文献概要
前回,肺癌細胞の骨髄転移によって生じた奇形赤血球症を紹介した.引き続いて,末梢血中に奇形赤血球の出現するその他の症例について解説する.
図1は著しい貧血と脾腫を呈した症例の末梢血塗抹標本である.図の中心部に3個の奇形赤血球が認められる.その中で矢印で示した赤血球は涙の形をしている.このような形をした異常赤血球を,涙滴赤血球(tear drop cell)と呼んでいる.同じ標本の別の場所を観察すると,図2のように赤芽球が見つかった.また,他の場所には図3のような骨髄球が認められた.通常ではこのように,有核赤血球(赤芽球)と未熟な顆粒球系細胞(骨髄球)がともに末梢血塗抹標本に認められることはない.このような病態をleukoerythroblastosisというが,奇形赤血球が観察され,そのうえにleu-koerythroblastosisが認められたら,前回も述べたが骨髄で大きな異変が起きていることが想定される.そこで骨髄検査が必要になるが,この患者で骨髄穿刺を行ったところ,dry tapで骨髄液を吸引することができなかった.次いで骨髄生検を行ったところ,図4のように骨髄は線維細胞により置換され,正常造血が著しく障害されていることが判明した.
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