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雑誌目次

雑誌文献

medicina33巻6号

1996年06月発行

雑誌目次

今月の主題 内科医のためのInterventional Radiology

理解のための27題

ページ範囲:P.1181 - P.1186

Introduction

Interventional Radiologyの沿革と概要

著者: 栗林幸夫

ページ範囲:P.1038 - P.1040

Interventional Radiologyの沿革
 近年におけるinterventional radiologyの発展と普及は目覚ましく,種々の疾患に対する有用な治療手技としての地位を確立し,専門領域を形成するにいたっている.
 Interventional radiologyという言葉は,1967年にMargulisが最初に提唱したものであり,“Interventional diagnostic radiology.A new subspeciality”というタイトルでAJRに記載している1).カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の放射線科教授であったMargulisは,種々の放射線診断技術を治療に応用するという新しい分野を一つの専門領域として位置づけ,interventional radiologyと名づけてその将来展望を述べている.

血管系のInterventional Radiology 血管形成術

狭心症に対する冠動脈形成術およびステント

著者: 宮崎俊一

ページ範囲:P.1042 - P.1046

ポイント
●経皮的冠動脈形成術(PTCA)の適応は,臨床的立場と冠動脈の解剖学的形態の両面から考慮する必要があり,適応の決定にあたっては治療目的を鮮明にすることが大切である.
●心臓が立体的な構造物であることを念頭において,複数の角度から当該冠動脈および病変を観察し,三次元的な形態を理解して操作することがPTCA手技のコツである.
●PTCAの最大の問題は再狭窄の発生である.ステントの登場は再狭窄率を減少させ,治療成績の向上に寄与したが,それでも10〜20%の頻度で再狭窄が生じる.ステントを挿入できない細い冠動脈に対するPTCAは今後の課題である.

急性心筋梗塞に対するIVR

著者: 秋山達朗 ,   山口徹

ページ範囲:P.1047 - P.1051

ポイント
●血栓溶解療法は簡便かつ迅速に施行できるが,その再開通率は70〜80%であり,出血性合併症を生じやすい症例や高齢者などでは施行しにくい.
●direct PTCAの有用性は立証されており,本邦では状況が許せばdirect PTCAを選択する施設が多いが,一部の施設でしか不可能で,血栓溶解療法との併用が現実的な選択となっている.
●近年,急性心筋梗塞に対して,ステントを中心としたニューデバイスの適用も盛んに試みられるようになってきている.

冠動脈のinterventionにおける血管内超音波

著者: 山岸正和 ,  

ページ範囲:P.1052 - P.1056

ポイント
●冠動脈内エコー法では,発信周波数20〜30MHzの超音波振動子を装備した血管内探触子を冠動脈内に挿入し,360度方向の血管断面エコー像を得る.
●健常部位では血管内膜は1層の高輝度エコー層として認識されるが,動脈硬化が進展すると,この部位の厚さが増加する.また,石灰化病変ではacoustic shadowingを伴う.
●血管形成部位での壁性状の詳細な観察により,造影法では評価困難な微細な血管解離の存在やその拡がりが認識でき,ステントの留置部位の決定にも大変参考となる.

経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術(PTMC)

著者: 木村晃二 ,   永田正毅

ページ範囲:P.1058 - P.1061

ポイント
●僧帽弁狭窄に対して開心的僧帽弁裂開術や人工弁移植が行われているが,現在のところ,再狭窄や人工弁機能不全による再手術を余儀なくされている.
●Sellers分類でIII度以上の逆流のあるとき,新鮮な左房内血栓が疑われるとき,心房中隔または弁に付着血栓が疑われるとき,両交連部に強度の石灰化があるときなどは,経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術(percutaneous transvenous mitral commissurotomy:PTMC)は禁忌である.
●拡大された弁口面積は3年後にも十分保たれ,手術時期を遅らせることにより手術回数の減少が可能である.
●ハイリスクな症例を含めて,再手術の時期を遅らせるという目的でのPTMCは,患者のquality of lifeの向上の点からも有用な治療法である.

腎血管性高血圧症に対する経皮経管的血管形成術(PTRA)

著者: 成松芳明 ,   平松京一

ページ範囲:P.1062 - P.1066

ポイント
●腎血管性高血圧症の原因疾患として頻度が高いのは,粥状動脈硬化症(AS),線維筋性異形成(FMD),高安動脈炎(TA)などである.
●腎動脈本幹から一次分枝の狭窄性病変がPTRAのよい適応である.
●FMDに対するPTRAの成績は良好であり,病変の十分な拡張で治癒効果が得られる.
●ASではostial typeに比べ,renal typeの成績が良好である.
●高血圧の再発はPTRA後2年以内に起こる例が多い.

下肢閉塞性動脈硬化症に対するIVR—バルーンPTA

著者: 村上龍次 ,   興梠征典 ,   高橋睦正

ページ範囲:P.1067 - P.1069

ポイント
●Fontaine II度以上,狭窄率50%以上がバルーンPTAの適応となり得る.
●理想的対象は,石灰化を伴わない3cm以下の中心性狭窄で,末梢のrunoffが良好な病変である.
●初期成功率は80~90%である.
●外科手術と比較して侵襲が少ないが,重篤な合併症も起こり得るとの認識が必要である.

下肢閉塞性動脈硬化症に対するIVR—アテレクトミー

著者: 田中良一 ,   栗林幸夫

ページ範囲:P.1070 - P.1072

ポイント
●アテレクトミーは血管内腔に突出したアテロームを切除し,狭窄もしくは閉塞を解除する.
●偏心性の狭窄性病変がよい適応となるが,バルーンPTAにて十分に拡張できないような硬い病変や石灰化を含む病変にも有用である.
●手技がやや煩雑で時間を要するため,多発性病変やlong segmentの病変ではアテレクトミー単独での治療は困難な場合が多く,バルーンPTAと併用される場合が多い.
●初期成功率は90%前後と高く,重篤な合併症の報告もない.

下肢閉塞性動脈硬化症に対するIVR—メタリックステント

著者: 吉川公彦 ,   打田日出夫 ,   前田宗宏 ,   西峯潔

ページ範囲:P.1073 - P.1077

ポイント
●メタリックステントはステント自身が拡張力を有するself-expandableタイプ,バルーンによって拡張させるballoon-expandableタイプに大別できる.
●PTA後の残存狭窄,elastic recoil,内膜解離,偽動脈瘤,PTA後の再発例がステント留置の適応となる.
●メタリックステント留置術は腸骨動脈の閉塞性動脈硬化症の治療に優れた効果をあげているが,下肢については有用性が確立しておらず,今後の研究により適応が明らかになり,発展・普及すると考えられる.

下大静脈狭窄に対するステント治療

著者: 甲田洋一 ,   山田龍作

ページ範囲:P.1078 - P.1080

ポイント
●下大静脈の狭窄・閉塞は転移性肝癌,肝細胞癌などの肝悪性腫瘍による二次性のものと,先天的あるいは後天的と考えられる,肝部下大静脈膜様閉塞や区域閉塞などがあり,Budd-Chiari症候群を呈する場合がある.
●下大静脈の狭窄・閉塞は下腿浮腫,腹水や陰嚢水腫などの症状を呈する.
●Expandable metallic stent(EMS)は血管内異物とはならず,しかもステントをまたいで分岐する静脈分枝の開口部を閉塞しないことなど極めて有利な性格を持つ.
●適応は以下のようなものである.①原発性肝癌による下大静脈の狭窄・閉塞・腫瘍塞栓,②転移性肝癌による下大静脈の狭窄・閉塞,③リンパ節転移による下大静脈の狭窄・閉塞,④下大静脈膜様閉塞・区域閉塞症,⑤Budd-Chiari症候群.
●下大静脈狭窄・閉塞に対し,経皮経カテーテル的にステントを留置することは,極めて非侵襲的で良好な成績が期待できる.

下大静脈フィルター挿入術

著者: 古寺研一

ページ範囲:P.1082 - P.1085

ポイント
●下大静脈フィルターは,下肢深部静脈血栓症による肺塞栓症の再発予防に有用である.
●経皮的に挿入可能なフィルターは数種類,入手可能であるが,現時点ではTitaniumGreenfield Filterのみが保険適用になっている.
●挿入手技は非常に容易であり,要する時間は30分程度である.
●抗凝固療法禁忌症例,抗凝固療法にもかかわらず再発する症例,浮遊血栓がみられる症例,などが適応になる.血栓摘除術を行う場合の術前処置としても行われる.

経皮的血管内異物除去術

著者: 斎藤拓郎 ,   大滝誠 ,   松山正也

ページ範囲:P.1086 - P.1089

ポイント
●血管内異物の主な原因はIVH(中心静脈栄養)カテーテルの離断である.
●離断カテーテルは血栓,不整脈などの原因となる.
●経皮的血管内異物除去術は簡便かつ比較的侵襲が少なく,有用である.
●カテーテルは,バスケット,スネアカテーテルが主流である.

動脈塞栓術

脳脊髄血管病変に対する塞栓術

著者: 緒方登 ,   後藤勝彌 ,   卯田健

ページ範囲:P.1091 - P.1095

ポイント
●脳動静脈奇形の治療はガンマナイフが中心となりつつある.そのため,ガンマナイフの制約,問題点を補うことを目的とした塞栓術が行われるようになってきた.
●脳動脈瘤の塞栓術は,GDC(Guglielmi detachable coil)の登場により飛躍的に進歩した.
●硬膜動静脈瘻の治療は塞栓術が第一選択であり,病変部静脈洞を閉塞することにより完治可能である.
●脊髄硬膜動静脈瘻の治療は塞栓術が第一選択であり,NBCA(n-butyl-2-cyanoacrylate)を用いて瘻孔を完全閉塞する.塞栓術が不可能な場合は外科手術を行う.

喀血に対する動脈塞栓術

著者: 早川克己 ,   斉藤秀和 ,   西村一雅

ページ範囲:P.1096 - P.1099

ポイント
●喀血に対する動脈塞栓術は緊急止血の手段としては有効性が高い.
●出血部位と基礎疾患に応じて,気管支動脈およびそれ以外の肋間動脈や鎖骨下動脈分枝などの責任血管をすべて塞栓することが成績の向上につながる.
●止血の長期的成績は喀血の基礎疾患の種類や原疾患への治療により大きく異なる.
●極めて重篤な合併症として,脊髄梗塞がある.その予防のためには,詳細に解剖学的血管描出を行い,慎重な手技と熟練を要するため,経験の少ない術者が安易に行うべき治療手技ではない.

肺動静脈瘻に対する経皮的塞栓術

著者: 廣田省三 ,   佐古正雄 ,   河野通雄

ページ範囲:P.1100 - P.1103

ポイント
●肺動静脈瘻には単発,多発,びまん性があり,瘻の形態からはsimple typeとcomplextypeがある.
●肺動静脈瘻はRendu-Osler-Weber病に高頻度に合併する.
●塞栓術は外科切除と比べ,非侵襲的で,何度でも行え,かつ多発病巣にも対応できる.また,流入動脈を完全に塞栓すれば根治できる.
●塞栓術に用いられる塞栓物質は金属コイル,離脱バルーンである.
●塞栓術の合併症は小範囲の肺梗塞,左心系への塞栓物質の逸脱があるが,いずれも稀である.

消化管出血に対するIVR

著者: 草野正一 ,   小泉淳 ,   対馬義人

ページ範囲:P.1104 - P.1107

ポイント
●緊急内視鏡検査で,上部消化管出血か下部消化管出血かを確認する.
●動脈性出血か静脈性出血かを鑑別する.
●緊急内視鏡による治療で止血できない場合にIVRの適応となる.
●動脈性出血に対しては塞栓術が優先される.これが不可能あるいは止血できない場合にはバソプレシン持続動注が試みられる.
●動脈性出血の場合,出血血管が消化管の壁外に分布する大きな血管からの出血なら金属コイルが,消化管壁に分布する小さな血管からの出血なら500ミクロンから1,000ミクロンのIvalon®が塞栓物質として有効である.
●内視鏡治療で止血できない胃食道静脈瘤破裂にTIPSが有効である.

肝細胞癌に対する動脈塞栓術(TAE)—リピオドール併用動脈塞栓術

著者: 打田日出夫 ,   松尾尚樹 ,   阪口浩

ページ範囲:P.1108 - P.1112

ポイント
●肝細胞癌に対する動脈塞栓術(TAE)は,抗癌剤を混入したリピオドール(Lipiodol:Lp)併用TAE(Lp-TAE),すなわちLp-emulsionを作製して肝動脈から注入し,ゼラチンスポンジ細片で塞栓する方法が一般化しているが,Lpは認可されていないので問題が残る.
●SMANCS/Lp-suspensionは認可されており,Lp-TAEに使用されて有用性が検討されている.
●Lp-TAEは肝に広がる進行例に主に行われているが,亜区域または区域に限局した腫瘍には,担癌領域だけにLp-TAEを行うSegmental Lp-TAEにより手術に匹敵する治療成績が得られつつあり,高く評価されている.

肝細胞癌に対する動脈塞栓術(TAE)—進行肝細胞癌に対する動脈塞栓術

著者: 東原秀行 ,   岡崎正敏 ,   竹吉正文

ページ範囲:P.1114 - P.1117

ポイント
●肝動脈化学塞栓術(TAE)は進行肝細胞癌(HCC)の集学的治療の中心的役割を果たす.門脈内腫瘍塞栓(PVTT)を有する症例でも長期生存可能なものが存在する.
●HCCに対するTAEの適応は,全身状態,PVTTの有無,およびTAEされる非癌部肝組織の量と残肝予備能の関係で決定される.決して腫瘍進展度のみで決定されるものではない.
●HCCの予後向上には,①腫瘍進展の阻止,②残肝予備能低下の防止,③胃・食道静脈瘤の破裂の防止,の3事項がバランスよくコントロールされることが肝要である.

転移性肝癌に対する動注化学療法

著者: 高安幸生

ページ範囲:P.1118 - P.1122

ポイント
●転移性肝癌も,それが最大の生命予後決定因子であるかぎり局所療法の対象になる.
●肝動注化学療法は,直接効果のみならず生存期間延長に寄与している.また,全身療法に比べ副作用も軽微である.
●継続的かつ計画的で,患者のQOLに寄与する動注療法のためには,体内埋め込み式リザーバーが有用である.
●リザーバーの埋め込みにはIVRによる経皮的手技が安全・確実で,確立した方法といえる.
●胃癌肝転移にはFAM(5-FU,adreamycin,mitomycinの3者併用)の,大腸癌肝転移には5-FU持続動注のレジメンが有効である.

骨盤骨折に対する動脈塞栓術

著者: 川俣博志 ,   隈崎達夫

ページ範囲:P.1123 - P.1127

ポイント
●強大な鈍的外力によりひき起こされる重症骨盤骨折は,高率に後腹膜大量出血をきたし,また,その受傷機転より多発合併損傷を伴っていることが多い.
●本症に伴う後腹膜腔出血の主な出血源は内腸骨動脈分枝損傷であるが,この領域には豊富な側副血行路が存在する.
●本症に対する内腸骨動脈の塞栓術は,血管造影にて出血部位を明らかにし,引き続き塞栓術を施行するもので,損傷部の止血のみならず,側副血行路を介する出血の制御も可能であることから,その止血効果は極めて高く,現在最も優れた第一選択の治療法として評価されている.

非血管系のInterventional Radiology

食道癌に対するメタリックステント

著者: 前田宗宏 ,   田中健寛 ,   打田日出夫

ページ範囲:P.1129 - P.1134

ポイント
●メタリックステント(以下,ステントと略す)は,折り畳んだ状態で小径のチューブを通して挿入でき,狭窄部で拡張するという特徴があり,留置時の患者の苦痛が比較的少ない.
●ステント留置術は,他に有効な治療法がない場合にも施行可能であるので,患者のqual-ity of lifeの観点から有用性が高い治療法である.
●手術不能食道癌症例の食道狭窄や瘻孔形成には食道ステントが,中枢気道狭窄には気管・気管支ステントが適応である.
●食道ステントは,狭窄部の拡張・再開通という観点からは非常に有効であるが,移動・穿孔などの合併症の危険性がある.
●食道ステント留置術は,現時点では十分には確立されていない治療法であり,今後,至適なステント形状の確立が望まれる.

肝細胞癌に対するエタノール注入療法

著者: 田中正俊 ,   谷川久一

ページ範囲:P.1136 - P.1139

ポイント
●エタノール注入療法(PEIT)は小肝細胞癌の治療に有効である.殊に腫瘍径2cm以下では,肝切除と同等の成績が得られる.
●肝細胞癌治療後は,多中心性再発も含めて再発率が非常に高い(5年88%)ので,厳重な経過観察で再発癌(再度発癌)の早期診断,早期治療が重要である.
●PEIT治療後の予後に重要な因子は,肝癌の分化度,定期外来観察の有無,臨床病期,腫瘍径,年齢である.

胆道狭窄に対する胆道ドレナージ法の選択

著者: 齋藤博哉 ,   桜井康雄 ,   真口宏介

ページ範囲:P.1140 - P.1144

ポイント
●悪性胆道狭窄に対する胆道ドレナージの第一の目標は,外瘻術,内瘻術とも適切な減黄である.
●第二に,ドレナージ効果範囲の拡大と維持期間の延長である.これらはQOLの向上に直結するものである.
●ドレナージ法の選択にあたっては,目的,原疾患や肝内胆管狭窄の有無,胆管内腔の状態,抗腫瘍療法の併用ならびにその効果などを検討する.
●患者の病態に応じたドレナージ法を選択する必要がある.

胆道悪性腫瘍に対するメタリックステント

著者: 吉岡哲也 ,   阪口浩 ,   打田日出夫

ページ範囲:P.1146 - P.1151

ポイント
●悪性胆道閉塞に対して,従来のチューブ型ステントに比べて細いイントロデューサーで大口径のものを挿入できるexpandable metallic stent(EMS)を用いた胆道内瘻術は,低侵襲で合併症が少ない.
●EMS留置に際しては,個々の特徴を熟知し,適切な種類とサイズを選択することが大切である.
●胆道癌例や胆嚢癌例は良い適応である.
●チューブ型ステントでは適応でなかった肝内胆管閉塞例にも応用可能である.
●経過とともに,メッシュを介した腫瘍の増大による再閉塞が増加するため,予後の改善や開存期間延長などQOLの向上には,放射線治療を中心とした抗癌療法の併用が望ましい.

胆道結石に対するIVR

著者: 佐伯光明 ,   石川徹

ページ範囲:P.1152 - P.1154

ポイント
●胆道結石に対する経皮的IVRによる結石除去術は,瘻孔の拡張をすることなく施行可能であり,安全で短時間に行える手技となってきた.
●化膿性胆管炎などの炎症を伴った症例ではドレナージに引き続いて行える手技であり,良い適応となる.
●腹部手術の既往のある症例や高齢者にも良い適応である.
●腹腔鏡下胆摘術との併用療法により,より侵襲の少ない治療を行い得る.

気管・気管支狭窄に対するメタリックステント—悪性腫瘍に起因する呼吸困難の新しい治療方法

著者: 澤田敏

ページ範囲:P.1156 - P.1159

ポイント
●メタリックステントは,根治手術が不能で,呼吸困難などの症状を有する気管—主気管支の狭窄・閉塞性病変に対して留置される.
●留置の絶対適応は症状を有する悪性例で,その原因が原発性・浸潤・転移などのいずれであっても治療効果は高い.
●留置手技は極めて低侵襲であり,呼吸困難などの症状はステント留置直後から消失する.●症状消失後,併用療法を考慮する.

膿瘍ドレナージ

著者: 川口洋 ,   蘆田浩 ,   石川徹

ページ範囲:P.1160 - P.1165

ポイント
●経皮的ドレナージ療法が外科的治療に比較して優れている点は,全身麻酔の必要がないことと,小さな切開で治療できることであり,また多臓器不全などの問題を持つ患者に対しても比較的良い成績が得られる.
●外科的アプローチと比較して安全であると判断した場合には,経皮的ドレナージ療法はほとんどの膿瘍に対して適応となる.
●経皮的ドレナージ療法の前にCT,超音波検査,MRIなどを組み合わせて,正確な診断,刺入経路決定が必要である.
●通常,カテーテル留置後数日で症状は改善し,2〜3週で抜去可能となる.
●成績は個々の膿瘍によって異なるが,約80〜95%の成功率である.

超音波ガイド下針生検

著者: 林信成

ページ範囲:P.1166 - P.1168

ポイント
●画像をガイドとする針生検は超音波やCTなどを用いて行われているが,超音波は簡便であるうえ,リアルタイムに病変と針の両方を見ながら生検できる大きな利点を持っているため,広い範囲で用いられている.
●腹部では3.5〜5MHzのセクタ型探触子を用い,甲状腺など体表臓器では7.5〜10MHzの探触子を用いるのが一般的である.
●また生検針も,細い径で組織を確実に採れるように進歩したことが,この手技の普及を促進した.
●合併症は出血や播種などであるが,いずれもその危険性は少ないと考えられている.

Interventional Radiologyのトピックス

経皮的肝内門脈肝静脈短絡術(TIPS)

著者: 中村健治

ページ範囲:P.1170 - P.1175

ポイント
●経皮的肝内門脈肝静脈短絡術(TIPS)とは,肝臓内に門脈-肝静脈間の短絡路を作成する門脈圧亢進症に対する新しい治療法である.
●TIPSの手技は,頸静脈アプローチで門脈穿刺,短絡路のバルーン拡張,さらにステントを挿入して行うが,門脈圧は平均10〜15mmHg減圧される.
●TIPSの適応は,内視鏡的硬化療法が無効な食道・胃静脈瘤と難治性腹水で,特に難治性腹水は本法が唯一の積極的治療法である.
●TIPSの絶対的非適応はびまん性嚢胞性肝疾患,高度の肺高血圧症,びまん性門脈血栓症,相対的非適応は局所的門脈血栓症,Budd-Chiari症候群,胆管拡張,肝腫瘍がある.●副作用,合併症は肝機能低下と肝性脳症がみられるが,ほとんどの例が軽度で,内科的治療でコントロールされる.

ステントグラフトを用いた大動脈瘤治療

著者: 加藤雅明

ページ範囲:P.1176 - P.1179

ポイント
●大動脈瘤に対し,ステントグラフトを用いた低侵襲治療が普及しつつある.
●経カテーテル的に人工血管(ステントグラフト)を挿入できるため,局麻下の治療が可能で,大動脈の遮断もなく,極めて低侵襲で,将来性の高い治療である.
●急性期の成績が安定せず,慢性期の成績が不明である現在,その適応は解剖学的なチェックポイントがクリアされ,かつ身体的・精神的付随状況が従来の手術治療を阻む場合に存在すると思われる.
●分枝対応,屈曲部への対応は今後,早急に解決されるべき問題点である.

カラーグラフ 塗抹標本をよく見よう・6

血小板の異常・1

著者: 久保西一郎 ,   藤田智代 ,   浜田恭子 ,   高橋功 ,   三好勇夫

ページ範囲:P.1199 - P.1202

正常血小板
 止血に重要な働きをする血小板の大きさは,約2〜3ミクロンである.核を持たないが,中心部に赤紫色に染色される粒子(chromomere)を有するので,末梢血塗抹標本では,図1に示すように,赤血球の間に赤い色をした小さな細胞として観察される(矢印).その数は約15〜35×104/mm3.塗抹標本で赤血球を15〜30個数えるうちに,血小板1個に出会うくらいの勘定になる.
特発性血小板減少性紫斑病
 図2は,特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)の塗抹標本である.この標本では,図1で認められた血小板が全く認められない.図3も同じ患者の標本である.好中球が中心に認められているが血小板はない.本患者においては出血傾向(点状出血と紫斑)が認められ,血小板数は1.5×104/mm3と極端に減少していた.

グラフ 高速CTによるイメージング・5

大血管の病変(1)—肺血栓塞栓症:電子ビームCTによる画像診断

著者: 栗林幸夫 ,   高宮誠 ,   飯野美佐子

ページ範囲:P.1203 - P.1208

 肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)は,生命に危険を及ぼす重篤な疾患であり,迅速かつ的確な診断が要求される.
 PTEの診断のプロセスでは,確定診断および重症度の判定に画像診断が重要な役割を果たす1,2).画像診断法としては,従来,核医学的肺血流・換気スキャン(V/Qスキャン)と肺動脈造影が中心であったが,最近では,国内外において電子ビームCT(electron-beam CT:EBT)が注目を集めている3〜8).本法は,肺動脈内血栓を直接かっ精度良く描出可能な非侵襲的検査法であることから,PTEの診断体系に変化をもたらしている.

演習 胸部CTの読み方(最終回)

咳嗽・呼吸困難にて受診した50歳の女性

著者: 村上功 ,   山木戸道郎 ,   粟井和夫

ページ範囲:P.1229 - P.1234

Case
50歳,女性.喫煙歴なし.呼吸困難(Hugh-Jones IV度),乾性咳嗽を主訴として来院.胸部X線写真にて異常陰影が認められ,精査のため胸部CT写真撮影となる.血液検査ではWBC 6,600/μl,CRP 2.2mg/dl,LDH 628IU/l,肺機能検査では%VC 37.5%,FEV1.0%87.0%,動脈血ガス検査はPaO2 66.7mmHg,PaCO2 33.8mmHg,pH 7.43であった.

図解・病態のメカニズム—分子レベルからみた神経疾患・10

Dystrophin関連蛋白の異常と筋ジストロフィー

著者: 松村喜一郎

ページ範囲:P.1211 - P.1215

 Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)の原因蛋白dystrophinは,筋細胞膜において複数の細胞膜(糖)蛋白と結合し,複合体dystrophin-glycoprotein complex(DGC)を形成する.その1つ,dystroglycanは,筋細胞外基底膜の主要構成蛋白laminin-2とagrinの受容体として細胞外の情報を細胞内に伝達する.dystroglycanはまた,シナプスや髄鞘の形成にも関与する.DGCの構成要素の欠損は,Duchenne型を含む複数の重症型筋ジストロフィーを引き起こす.本稿では,これらの点について解説する.

知っておきたい産科婦人科の疾患と知識・10

更年期に起こる自律神経失調症

著者: 松木俊二 ,   西田欣広 ,   宮川勇生

ページ範囲:P.1217 - P.1220

 1994年7月に厚生省が発表したわが国の女性の平均寿命は82.51歳で,世界一の長寿国である.したがって,この十数年前より更年期,老年期の諸問題が重要視されてきたことは当然である.
 閉経は,自然閉経と卵巣摘出などの人為的閉経とに分類される.わが国の女性の平均自然閉経年齢は50.54歳(10%閉経年齢45.34歳,90%閉経年齢56.34歳)であり,更年期とは生殖期(性成熟期)から非生殖期(老年期)の間の移行期で,一般に閉経前の5〜6年間,閉経後7〜8年間を指す.この時期にはしばしば自律神経失調症状をきたし不定愁訴が多くなる.婦人科領域では,更年期に生じた自律神経失調症を更年期障害と診断しているが,多くの更年期女性に見られる症状でもあり,症状の軽い場合を更年期失調,また,症状が強く治療の対象となるものを更年期障害と区別している報告もある.

Drug Information 副作用情報・3

薬剤性ショック(2)—重篤な症例の紹介

著者: 浜六郎

ページ範囲:P.1221 - P.1223

 筆者が経験した症例,あるいは裁判に関係した重篤な症例を報告する.
◆ビタミンK製剤によるアナフィラキシー型ショック1
 【症例1】 21歳,男性.サバ,夏みかんによる蕁麻疹のアレルギー歴がある.大腿骨骨折後の抜釘のため,乳酸加リンゲル液TRにケーワン®(フィトナジオン)30mg,ビスコリン®(ビタミンC)を混入したものを術前輸液として点滴を開始.その直後より,点滴側の上腕から胸部,喉頭部,顔面の順に焼けつくような感じがし,次いで「胸が苦しい」と訴えたため,ナースが抜去して点滴を中止(時間にして,2〜3分間).0.5mg程度のケーワンが注入されたものと考えられた.ただちに医師が呼ばれ,3名の医師が駆けつけたとき(約5〜10分後程度)には,強い呼吸困難,口唇浮腫,著明なチアノーゼが出現し(全身が真っ黒という感じがした),脈は触知不能,血圧測定不能であった.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1191 - P.1197

医道そぞろ歩き—医学史の視点から・14

『ファブリカ』を出版したバーゼルのオポリヌス

著者: 二宮陸雄

ページ範囲:P.1224 - P.1225

 パドヴァ大学の本館「イル・ボ」(牛の館)には,14世紀広間という内科外科教授室が保存されている.記録によると,16世紀から17世紀にかけてドイツ人の学生だけで1万500人を越えたというから,欧州各地から多数の学生がこのパドヴァ大学にやって来たらしい.この教授室の壁には有名な教授の肖像画が十数枚かけられている.『疾病の局在と原因の剖検による研究』という大著で名高いモルガーニの肖像画もある.モルガーニはボローニャの医学校を出て,29歳でパドヴァの理論医学の助教授,33歳で解剖学教授になった人である.14世紀広間で驚かされるのは,8人の教授の頭蓋骨が展示されていることである.サントリオ・サントリオのもある.1614年ヴェネチア初版のベストセラー『静的状態の医学』の著者で,自分で秤に乗って基礎代謝を測った人である.
 アンドレアス・ヴェサリウス(1514〜1564)はブリュッセル生まれのベルギー人で,父は国王の典薬司であった.学者家系の一員としてヴェサリウスは,ルーバン大学を経てパリでシルビウスらに学び,1537年の12月にパドヴァ大学から学位を授与され,直ちに外科教授に任命された.解剖は,その頃は外科教授が壇上から解剖人に指図して教えていた.

medicina Conference 解答募集(第19回)

下記の症例を診断して下さい.

ページ範囲:P.1227 - P.1227

 症例:48歳,男性
 職業:会社員
 入院日:1996年3月13日
 主訴:呼吸困難
 既往歴:18年前より糖尿病で当院外来通院し,中間型インスリン朝8単位,夕6単位投与されている.平成7年10月,ホジキン病でC-MOPP/ABV(シクロフォスファミド,ビンクリスチン,プレドニゾロン,プロカルバジン/アドリアマイシン,ブレオマイシン,ビンブラスチン)交代療法計6クールを予定し,5クールまで終了している.最終クールは2月15日施行した.結核の既往なし.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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