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雑誌目次

雑誌文献

medicina34巻10号

1997年10月発行

雑誌目次

今月の主題 肺炎と肺臓炎 知っておくべき肺炎の基本的アプローチ

どのような患者が肺炎に罹患しやすいか—肺炎と生体の防御機構

著者: 吉嶺裕之 ,   永武毅

ページ範囲:P.1876 - P.1878

ポイント
●機械的および免疫学的クリアランスの破綻は気道感染を引き起こす.
●インフルエンザウイルス感染は,基礎疾患のあるもののみならず,健常人においても細菌感染を合併しやすい.
●寝たきり患者,経管栄養患者,気管内挿管中の患者では,上気道への病原体の付着・定着,咳嗽反射の低下,気道の粘液線毛輸送系の弱体化などの機械的クリアランスの破綻により肺炎を発症しやすい.
●H2ブロッカーの使用は,胃酸のpHの上昇,グラム陰性桿菌の増殖を誘導し,胃は気管内に定着する病原細菌のリザーバーとなりうる.

どういうときに肺炎を疑うか

著者: 前野哲博 ,   伴信太郎

ページ範囲:P.1879 - P.1881

ポイント
●気道感染症状を呈する患者で,肺炎診断の感度の高い症状は咳(95%),特異度の高い症状は遷延する発熱(86%),胸膜痛(83〜95%)である.
●crackleの肺炎診断の感度は35%程度にすぎず,crackleがなくても肺炎を除外してはならない.
●肺炎に特徴的な聴診所見(気管支呼吸音,egophony,crackleなど)は感度は低いが特異度は高いので,聴取されれば胸部X線などの検査を行うべきである.
●胸部X線では,血管陰影のシルエット消失,区域性の容積減少などの所見も参考にする.陰影濃度上昇の有無だけで判断してはならない.
●高齢者は非定型的症状のみの場合があり,発熱,咳,痰を認めるのは約60%にすぎない.
●高齢者では,白血球数増加を呈するのは約50%にすぎず,核の左方移動しかみられないことがあるので注意が必要である.

肺炎を疑ったら行うこと

著者: 松村理司

ページ範囲:P.1883 - P.1887

ポイント
●身体診察をはしょらない.生命徴候やconsolidationの所見を把握する.
●胸部X線像は万能ではない.その長所や短所を臨床状況に応じて理解する.
●喀痰グラム染色の起炎菌推定における意義は大きい.検査特性(感度・特異度)を向上させる努力は,研修医の修得目標であるべきだ.
●抗生剤は,できるだけ狭域のものを独自の薬剤耐性成績に照らして使う.予測的使用も,限られた状況で,層別化して行う.

肺炎のマネージメント—抗生剤以外に必要なこと

著者: 井上雅樹

ページ範囲:P.1888 - P.1891

ポイント
●呼吸状態を正確に把握することは重要.手間を惜しまず動脈血ガス分析を.パルスオキシメーターは上手に使おう.
●重症例では副腎皮質ステロイドが有効なことも少なくない.乱用には十分注意して,注意深く使用すること.
●重症例ではつい検査頻度が多くなる傾向にある.検査については適応をよく検討して行う.
●痰の多い症例や,呼吸苦の強い症例には呼吸理学療法が有効なことも少なくない.適応のある症例には積極的に勧めてみては.

外来で治療できる肺炎・入院が必要な肺炎—判断のポイント

著者: 中浜力

ページ範囲:P.1892 - P.1893

ポイント
●肺炎の絶対的入院適応は,患者の全身状態,基礎疾患,胸部X線像,推定起炎菌から判断する.
●外来治療の効果判定は,投与3日目に必ず行い,無効例はその時点で入院とする.
●軽症肺炎であっても,患者の社会的環境が外来治療に不適であれば入院を考慮する.
●臨床医は各因子を総合的に評価,判断し,患者への適切な説明を行ったうえで入院加療とすることが大切である.

患者の背景・病態・検査データから原因菌を予測して治療する

元気な若い人の肺炎

著者: 岸本寿男

ページ範囲:P.1895 - P.1897

ポイント
●健康な若年者の市中肺炎では起炎微生物として,肺炎球菌,インフルエンザ菌,黄色ブドウ球菌などの一般菌のほか,マイコプラズマ,クラミジアなどが多い.
●膿性痰と白血球増多を伴えば細菌性肺炎をまず考え,なければ異型肺炎を考える.
●クラミジア肺炎を疑った場合,オウム病でのトリとの接触歴,肺炎クラミジアの集団発生の有無について必ず問診する.
●一般菌を推定した場合にはβ-ラクタム剤を選択する.
●異型肺炎でマイコプラズマやクラミジアを疑えば,マクロライドやテトラサイクリン剤を選択する.

高齢者の肺炎

著者: 青木眞

ページ範囲:P.1898 - P.1900

ポイント
●高齢者は咳反射,気道粘膜の絨毛運動といった生理的な防御機構の低下に加え,肺炎の予後を決める二大要因である基礎疾患,起炎菌の病原性のどちらの点からも,既にハンデを負っている.
●グラム染色による塗抹検査と併用しない喀痰培養は信頼性が薄い.治療開始前の血液培養の採取は必須である.
●高齢者の肺炎は典型的な臨床像を示さないことが多く,意識障害,転倒といった非特異的な症状が前面に出ることもある.

喫煙者・COPD患者における肺炎

著者: 陶山時彦

ページ範囲:P.1901 - P.1903

ポイント
●喫煙者・COPD患者は局所防御力低下のため,気道感染を起こしやすい.
●COPD患者が肺炎を起こすと,呼吸不全,肺性心悪化などを併発して重症化しやすい.
●COPD患者の肺炎は,喀痰排出不良,薬剤到達不良などで難治化しやすい.
●COPD患者の肺炎の原因菌は,St. pneumoniae,M. catarrhalis,H. influenzaeが大部分を占める.
●慢性気道感染の例では,P. aeruginosaeなどの可能性が高まる.
●口腔内清浄化,慢性呼吸不全の在宅酸素療法などで気道感染の頻度を減少させうる.
●慢性気道感染例では,マクロライド長期内服で改善することが多い.
喫煙者・COPD患者と健常者との違い

インフルエンザ罹患後の肺炎

著者: 古川恵一

ページ範囲:P.1905 - P.1907

ポイント
●インフルエンザ罹患後の肺感染症の病型は,①急性気管支炎,②ウイルス性肺炎(びまん性型と限局性型),③細菌性+ウイルス性肺炎,④二次性細菌性肺炎,と分類される.
●インフルエンザ罹患後肺炎は,老人や慢性基礎疾患のある人に多い.
●細菌性肺炎を合併した場合,起因菌は肺炎球菌が最も多い(48%)が,黄色ブドウ球菌の頻度が次に高く(25%),この場合重症肺炎を起こしやすい.次にインフルエンザ桿菌(11%)である.
●細菌性肺炎合併時,起因菌未定の場合の初期治療としては,肺炎球菌,黄色ブドウ球菌,インフルエンザ桿菌に抗菌力の強い抗生剤を投与する.

意識障害患者の肺炎

著者: 武田多一

ページ範囲:P.1908 - P.1910

ポイント
●意識障害のある患者では誤嚥の可能性を考える.また肺炎の患者では,意識障害・痙攣発作・急性睡眠剤中毒・慢性アルコール中毒.麻薬中毒・齲歯や歯槽膿漏・歯科治療などのエピソードがあったときには,誤嚥を疑う.
●誤嚥症候群には,喉頭や気管の閉塞による窒息・気管支異物や無気肺・誤嚥された化学物質によって起こる化学性肺炎・誤嚥された病原体の感染によって起こる誤嚥性肺炎などがある.
●化学性肺炎は数日で改善するが,細菌性肺炎は2〜8日後に増悪することが多く,口腔や咽頭の細菌叢の細菌による混合感染のことが多い.

術後合併症としての肺炎

著者: 福家伸夫 ,   諏訪邦夫

ページ範囲:P.1912 - P.1914

ポイント
●術後肺炎の危険因子には,患者自身,術式,麻酔,術後管理などの要因がある.
●手術前は禁煙を指導する.
●意識されない誤嚥に対し口腔内清拭を行う.

ICUにおける肺炎

著者: 大滝美浩 ,   遠藤和郎

ページ範囲:P.1916 - P.1919

ポイント
●VAP患者の死亡率は高く,なかでも起因菌が緑膿菌/アシネトバクターの場合は90%近くになるという.
●これまでの臨床所見のみに頼ったVAPの診断は不正確なことも多い.
●重症患者ではグラム陰性桿菌が口腔内常在化することが多く,それに引き続いて起こる肺炎成立に関与していると思われる.
●制酸剤/H2ブロッカーは上部消化管出血を予防するが,同時に胃内常在化グラム陰性桿菌を増やす.
●治療に際しては,重症度/起因菌に対する危険因子を考慮に入れて治療のガイドとするべきである.
●VAPの治療は難しく,むしろその積極的な予防を重視するべきである.

免疫能の低下した患者の肺炎

著者: 北原光夫

ページ範囲:P.1920 - P.1923

ポイント
●免疫不全状態により肺炎を起こす原因菌はかなり限定される.
●肺病変の陰影(びまん性・結節性・局所性)と陰影の出現の速さにより,原因菌はかなり限定される.
●予測的に治療を開始する場合が多いが,培養をきちんと採取する.
●必要であれば経気管支生検・肺生検を行う.

HIV陽性者の肺炎

著者: 安岡彰

ページ範囲:P.1924 - P.1928

ポイント
●HIV陽性者では,CD4陽性細胞数により発症しやすい日和見感染症が規定される.
●CD4数が200/μl以下ではカリニ肺炎などの特徴的な病変が出現しやすくなる.
●非定型的な病態をとりやすく,病原体も多岐にわたることより,積極的な病因診断のための努力が必要である.
●種々の感染症とともに,悪性腫瘍や薬剤性肺臓炎,HIVに由来する病変なども鑑別する必要がある.

特殊な感染症が鑑別にあげられるとき

ニューモシスチス・カリニ肺炎の診断と治療—最新情報

著者: 齋藤昭彦

ページ範囲:P.1929 - P.1931

ポイント
●ニューモシスチス・カリニ肺炎は真菌に属するPneumocystis cariniiが原因菌で,日和見感染症の代表的疾患である.
●確定診断は気管支鏡によるBAL(bronchoalveolar lavage)または生検でなされる.
●治療の基本はST合剤であるが,副作用として,全身性の発疹を高頻度に起こす.このような場合は,第二選択薬を用いるか,減感作療法を行う.
●中等症から重症例にはステロイドが併用され,有用性が確認されている.
●患者を診た際には,特にHIV感染の有無を確認する必要がある.

結核の診断と治療—最近の動向

著者: 森亨

ページ範囲:P.1932 - P.1933

ポイント
●結核はわが国では年間発生患者4万,死亡3千という最大の成人感染症であり,欧米各国の数倍の水準にある.
●気管支内視鏡や核酸増幅法による結核菌の証明は優れた方法であるが,ともに信頼性の問題があり,従来の塗抹・培養法との併用,X線所見や臨床所見との総合的な判定による診断が必要である.
●化学療法の進歩にもかかわらず,治療予後は意外に悪い.規則的な受療のための患者指導,副作用や合併症の管理,再治療患者への専門的対応がますます重要である.

非定型抗酸菌症の診断と治療

著者: 斎藤武文 ,   大瀬寛高 ,   長谷川鎮雄

ページ範囲:P.1934 - P.1936

ポイント
●非定型抗酸菌症は増加傾向にある.
●非定型抗酸菌は環境常在菌であり,健常人からの偶然の排菌,局所抵抗減弱部位のコロニゼーションがある.
●非定型抗酸菌症は健常肺に発症する一次感染型と,既存肺病変を基に発症する二次感染型がある.
●非定型抗酸菌症の診断基準により診断できるのは,ある程度進行した病態であり,早期病変の診断には役立たない.
●MAC症は有効な治療がなされなければ大部分が漸次悪化する.
●MAC症の病巣が限局性で年齢,肺機能などが問題ない場合は,手術を考慮すべきである.
●MAC症は,RFP,EB,SMまたはKM,クラリスロマイシンなどから3剤以上を併用することにより,半数以上の症例で菌陰性化する.
●M. kansasii症の治療は,INH,RFP,EBまたはSMのうちRFPを含む3剤,1年間の投与で十分である.

肺炎の治療に困ったら

治療に反応しない肺炎患者へのアプローチ

著者: 山口哲生

ページ範囲:P.1937 - P.1941

ポイント
●院内肺炎の広範な重症例には,第3世代セフェム+CLDM(またはアミノグリコシド)に,ソル・メドロール®を数日併用する.
●マイコプラズマ肺炎の流行は,4年に一度の周期がなくなってきている.
●オウム病の発病時は,インフルエンザ様の突然の発熱や頭痛など,呼吸器症状を呈さないものが多く,時に肺炎が見逃されることがある.
●Chlamydia pneumoniaeによる肺炎が多いことがわかってきた.普通,軽症である.一般ラボでは血清学的証明はできない.
●レジオネラ肺炎は夏季に空調のクーリングタワーで菌が増殖して集団発生することがある.また,温泉帰りの発病も多い.
●真菌性肺炎は普通,日和見感染として起こるが,例外もある.β-(D)-グルカンの上昇が診断の傍証になる.
●マイコプラズマ肺炎,クラミジア肺炎,レジオネラ肺炎,真菌性肺炎,抗酸菌性肺炎では,発熱のわりには白血球数の増加がないか乏しい特徴がある.一般抗生物質が無効のときに,これらの肺炎をまず考えるべきである.
●BOOP,好酸球性肺炎,過敏性肺炎,細気管支肺胞上皮癌,肺胞蛋白症なども一般肺炎と間違われることがある.
●急性好酸球性肺炎では,初期には末梢血好酸球の増多はない.

ベッドサイドで役に立つ肺臓炎(間質性肺炎)の基礎知識

肺炎と肺臓炎はどう異なるか—病歴・症状・身体所見

著者: 古田島太 ,   佐藤哲夫

ページ範囲:P.1942 - P.1945

ポイント
●肺臓炎の問診では,職業歴,環境歴,薬剤投与など詳細な聴取が必要である.
●肺臓炎には慢性の経過をとるものと,急性・亜急性の経過をとるものがある.
●急性・亜急性の肺臓炎は肺炎との鑑別を要する.
●肺臓炎では乾性咳嗽,fine cracklesが特徴的である.
●肺病変先行型の膠原病を考慮する.

肺炎と肺臓炎はどう異なるか—画像所見

著者: 小場弘之 ,   吉田和浩 ,   大内博文

ページ範囲:P.1946 - P.1949

ポイント
●肺炎は肺胞腔内の滲出性変化が主体であり,単純X線像では区域性の浸潤影や融合傾向を有する散布性粒状影が認められる.
●肺臓炎では,UIP,DAD,BOOPなどの病理所見によって疾患の経過や治療への反応性が異なるため,これらの病理所見と対応した画像所見の理解が必要である.
●肺臓炎の画像診断においては病変の場や肺の構造変化の分析が必要とされるため,CT像の有用性が高い.

肺炎と肺臓炎はどう異なるか—病理組織所見

著者: 河端美則

ページ範囲:P.1951 - P.1955

ポイント
●肺の炎症には肺炎と肺臓炎がある.
●肺炎は気腔を炎症の場とし,腔内滲出が通常高度である.拡がりは肺葉性,小葉融合性などである.細菌感染の場合が多いが,時に非感染性の場合もみられる.
●肺臓炎は肺胞隔壁を炎症の場とし,腔内滲出が通常軽度である.拡がりはびまん性の場合が多い.ウイルス感染などを除けば,通常非感染性炎症である.
●過敏性肺臓炎や薬剤のように病原物質を除くことにより改善を得る場合があるが,肺臓炎の一部はステロイド治療の適応になるので,病理形態学的診断を得ることが重要である.

わかりやすい鑑別診断の立てかたと基本的アプローチ

間質性肺炎を疑う患者の診断へのアプローチ

著者: 河崎伸 ,   滝沢始

ページ範囲:P.1956 - P.1959

ポイント
●臨床症状の経過が急性なのか,亜急性か,慢性か,慢性経過中に急に悪化してきたものなのかに注意して,入院のタイミングを見極めなければならない.
●膿性痰,発熱などに注意して感染の合併に注意しなければならない.
●間質性肺炎の治療反応性は組織所見によって大きな異同がみられるため,できる限り気管支鏡検査を行いBALF,TBLBを施行すべきである.
●慢性間質性肺炎の活動性の指標に,KL-6,SP-Aなどの新しい有用性の高いマーカーが注目されている.

検査所見からみた肺臓炎(間質性肺炎)の鑑別診断

著者: 多田慎也

ページ範囲:P.1960 - P.1963

ポイント
●肺臓炎の診断は,問診(病歴),全身的な所見,一般検査成績の把握により鑑別すべき疾患の広がりを考慮することが重要である.
●肺67Gシンチは,臨床経過とともに肺臓炎の活動性評価に有用である.
●BAL所見や肺生検所見は肺臓炎の鑑別診断に有力な情報であるが,病期や病勢を念頭に置いて解析する必要がある.

急性・亜急性の経過で胸部X線・CTに間質影を生じる疾患

著者: 佐藤潤 ,   千田金吾 ,   佐藤篤彦

ページ範囲:P.1965 - P.1970

ポイント
●急性の経過で発症するびまん性肺疾患には,原因不明の急性間質性肺炎,急性好酸球性肺炎,膠原病に伴う肺病変(皮膚筋炎が多い)などがある.
●免疫不全患者においては,Pneumocystis carininii肺炎,サイトメガロウイルス肺炎などの感染症の急性発症が多い.
●BOOP(閉塞性細気管支炎・器質化肺炎)は,急性〜亜急性の経過で末梢側優位の多発浸潤影や下肺野の網状影・線状影を呈する.
●慢性好酸球性肺炎は亜急性経過で発症し,多発浸潤影を呈するBOOPとの鑑別が困難なことがある.
●高分解能CTにおける陰影分布は肺病理組織所見の特徴とほぼ一致しており,病理診断の推定にも役立つ.

慢性の経過で胸部X線・CTに間質影を認める疾患

著者: 土井修

ページ範囲:P.1972 - P.1975

ポイント
●単純X線写真とCTを上手に組み合わせて診断する.
●単純X線写真読影時にはできるだけ過去のフィルムを取り寄せて比較検討する.
●単純X線写真で間質性パターンを示した場合,その分布特徴をとらえる努力をし,また肺容積減少,肺過膨脹の有無もチェックする.
●肺門縦隔リンパ節腫大,胸膜石灰,気胸の有無なども参考とする.

肺臓炎(間質性肺炎)をきたしうる薬剤一覧

著者: 吉澤靖之 ,   澤田めぐみ ,   瀧玲子

ページ範囲:P.1976 - P.1980

ポイント
●薬剤投与開始後1〜4週間に肺炎を発症する.
●薬剤によると考えられる皮疹が出現する.
●末梢血あるいは気管支肺胞洗浄液中の好酸球増多,好中球増多.
●気管支肺胞浄液中リンパ球の増多がみられる.
●皮膚反応が陽性(即時型,遅発型,遅延型)である.
●末梢血あるいは気管支胞洗浄液中リンパ球を用いるリンパ球幼若化試験,マクロファージ遊走阻止試験が陽性である.
●血清あるいは気管支肺胞洗浄液中IgE抗体,IgG抗体,IgM抗体の検索で陽性である.
●肺生検組織像で好酸球性肺炎,肉芽腫性間質性肺炎,間質性肺炎あるいは閉塞性細気管支炎を伴った器質化肺炎がみられる.
●薬剤中止により改善傾向か進行しない.
●薬剤の再投与により再発する.

一般医に求められる肺臓炎(間質性肺炎)診療の考えかた

急性・亜急性に経過する肺臓炎の診断と治療

著者: 田口善夫

ページ範囲:P.1982 - P.1985

ポイント
●急性・亜急性に経過する肺臓炎は,感染,腫瘍,非感染・非腫瘍性の3群に大きく分けて考える.
●肺臓炎の診断は,最終的には病理診断が必要となる場合があるが,治療開始時期を失することのないよう,細心の注意が必要である.
●稀には病理診断が絶対的でない場合もあり,臨床的な評価が重要である.
●膠原病肺や特発性の重症例の治療としては,パルス療法で治療導入し,以後漸減療法を行い,免疫抑制剤の併用には躊躇しない.

慢性に経過している間質性肺炎患者をいつ専門医に紹介するか

著者: 大塚盛男

ページ範囲:P.1986 - P.1987

ポイント
●間質性肺炎は,詳細な病歴聴取や理学所見の採取,種々の血液検査,胸部X線・CT検査,肺機能・血液ガス検査などから,ある程度の診断が可能となる場合が多く,原因が確定できる場合もある.
●確定診断には専門的知識や技術が必要であること,活動性や治療の必要性の評価・治療内容の選択には総合的な判断が必要であること,治療法が確立していない場合が多いことなどから,症状や機能障害がある慢性の間質性肺炎を一般医が診察した場合には,専門医に紹介しその判断を仰ぐべきである.
●急性増悪や肺癌,肺感染症,気胸などの合併に注意して経過観察しなければならない.

肺臓炎の治療法の選択とタイミング

著者: 長井苑子 ,   泉孝英

ページ範囲:P.1988 - P.1993

ポイント
●肺臓炎(間質性肺炎)に含まれる疾患の数は多いが,共通した病態は,肺の間質(肺胞領域)の炎症と線維化である.
●対応する薬剤は抗炎症薬と抗線維化薬である.しかし,効果の確かめられた抗線維化薬はいまだない.したがって,抗炎症薬であるステロイド薬の肺臓炎の様々の病態に対応した投与法(時期,経路,量)が問題となる.
●炎症を主病変とする疾患では,ステロイド薬の有効性を期待できることが多いが,線維化を主病変とした疾患では有効性を期待することは困難である.症状,PaO2所見を指標とした対症療法としてのステロイド薬投与にならざるを得ない.

肺臓炎(間質性肺炎)の患者があなたの外来を受診したら

肺臓炎(間質性肺炎)患者を外来でフォローするときのポイント

著者: 高橋亨

ページ範囲:P.1994 - P.1996

ポイント
●間質性肺炎患者の外来診療では,自覚症状,ラ音などの理学所見の変化や,皮膚や関節などの変化についても注意する必要がある.
●安定期の患者では,血液生化学,胸部X線写真,動脈血ガスや経皮的動脈血酸素飽和度,呼吸機能検査(含む肺拡散能)などは3〜6カ月ごとに,活動期の患者では1カ月ごとに経過をみていく.
●外来診療では,急性増悪の徴候をいかに早く発見するかということと,肺癌の合併の早期発見が重要である.
●在宅酸素療法施行中の患者は,月1回の経皮的動脈血酸素飽和度の値で評価する.

肺臓炎(間質性肺炎)患者のための在宅酸素療法

著者: 坪井永保 ,   中田紘一郎

ページ範囲:P.1997 - P.2000

ポイント
●酸素吸入流量は,安静時,運動時,睡眠時のdesaturationの有無を確認し,症例ごとに適正吸入流量を決定する.
●安静時PaO2が61 Torr以上の症例でも,運動時にdesaturationをきたす症例は稀ではない.
●間質性肺炎は運動時には他疾患より高流量の酸素吸入を要する.

付録

研修医のための抗生物質早分かり

著者: 武田裕子

ページ範囲:P.2001 - P.2007

 臨床研修を始めたばかりの研修医にとって,抗生物質の使い方は,最も知りたい事柄の一つである.実際の患者を目の前にすると,学生時代に学んだ微生物学や薬理学の知識をどのように応用すべきか見当がつかず,途方に暮れることが多い.無数の抗生物質のなかからどの薬剤を選ぶかは,個人の経験や施設によってかなり違いがあるようであり,先輩の研修医に尋ねても明確な答えが返ってくることは少ない.知識不足から広域スペクトラム抗生物質が濫用されることも少なくない.
 施設によって,あるいは国によって使用できる抗生物質が異なり,細菌の薬剤に対する感受性にも差があることを考えると,抗生物質の選択にはある程度の幅が生じる.ここでは,抗生物質各グループ(表1に分類)の特徴をあげ,そのなかからいくつかの抗生物質を選んで臨床的に重要なポイントを述べた.次に,実際に感染症を疑って抗生物質を投与する際に,考えなくてはならない7つのチェック項目をあげた.最後に,多剤耐性菌の出現や院内感染を防ぐために留意すべき問題を取り上げた.

理解のための29題

ページ範囲:P.2009 - P.2014

カラーグラフ 感染症グローバリゼーション・7

消化器系寄生虫性疾患(1)—赤痢アメーバ症

著者: 西山利正

ページ範囲:P.2019 - P.2024

 消化器系寄生原虫としては,赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica),ランブル鞭毛虫(Giardia intestinalis,従来G. lambliaと呼ばれていた),クリプトスポリジウム(Cryptosporidium Parvum),ブラストシスチス・ホミニス(Blastocystis hominis),大腸バランチジウム(Balanlidim coli),戦争イソスポーラ(lsospora belli),腸トリコモナス(Trichomonas hominis),メニール鞭毛虫(Chilomastix mesnili)などが知られているが,今回これらの原虫のなかでわが国で遭遇する機会が最も多く,病原性についても最も強い原虫である赤痢アメーバについて述べることとする.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.2027 - P.2032

図解・病態のメカニズム 腎疾患・10

NOと腎

著者: 草野英二 ,   海野鉄男

ページ範囲:P.2033 - P.2036

 血管内皮は内皮由来弛緩因子(EDRF)を産生するが,それがL-arginineから合成される一酸化窒素(NO)であると判明1)して以来,その生理作用に関して多くの研究がなされている.NOは種々の細胞において産生され,血管拡張,血小板凝集の抑制,微生物に対する防御,そして神経情報伝達など多彩な作用を有している.本稿ではNOと腎に関連した事項について概説する.

内科医が知っておきたい小児科学・最近の話題・10

小児気管支喘息の治療

著者: 早川浩

ページ範囲:P.2037 - P.2041

 気管支喘息は小児の慢性疾患では最も頻度の高い疾患の一つであり,成人内科を専門とする医師もその診療を行わねばならない機会がしばしばあろう.今回のシリーズの中では異色であるが,本稿では内科医が小児の気管支喘息を診療する際に心得ていてほしい事項を重点的に述べたいと思う.以下,気管支喘息を喘息と略記する.

CHEC-TIE—よい医師—患者関係づくりのために・10

患者が医師とのコミュニケーションギャップを話す場面をみせてもらった

著者: 箕輪良行 ,   柏井昭良 ,   竹中直美

ページ範囲:P.2048 - P.2050

患者さんたちの座談会
 —医師とのコミュニケーションへの意見
 60〜67歳の男女6人.糖尿病や高血圧症,内耳性めまい症,突発性難聴などで医療機関にそれぞれ受診中の患者さんたちが集まった.都心部に在住で,標準的な生活状況にある.医師とのコミュニケーションをテーマに話し合うため,無作為に電話アンケートで選ばれたボランティアの方々である.自己紹介から始まり,患者説明用の食事指導パンフレットや健康手帳,説明メモやパソコンによる個人データファイルといったコミュニケーション・ツールの有用性について話し合った.プロの司会者による円滑な進行のもとで,医師とのコミュニケーションをめぐり全般的な意見が述べられた.
 「良いホームドクターに恵まれている」と発言した60歳の女性を除いて,ほかの5人からはマイナスの発言が続いた.この女性は肥満があって高脂血症で医師にかかっている.家族全員がその先生にかかり,「先生と相性が合う」「こちらが信頼することも大切だ」と話した.しかしその彼女でさえ「大病院の医師は忙しそうに見えて質問しにくい.患者がおとなし過ぎると損してしまう」と苦言を呈していた.

Drug Information 副作用情報・19

消化性潰瘍・消化管潰瘍(4)

著者: 浜六郎

ページ範囲:P.2051 - P.2053

 今回は「消化性潰瘍・消化管潰瘍」の締めくくりとして,間違いやすい常識や,消化性潰瘍の予防方法,薬剤性潰瘍を経験した際の対処方法の原則などについて述べる.

医道そぞろ歩き—医学史の視点から・30

生物学を揺るがしたDNAの二重らせん構造

著者: 二宮陸雄

ページ範囲:P.2054 - P.2055

 1209年に,オクスフォードの学生と町民の間で酒の上の喧嘩や女性をめぐる争いがあって,学者や学生がケンブリッジに逃れて学校を作った.このケンブリッジ大学には,1229年にパリ大学から多数の教師や学生が移住した.パリでも,市民は学生たちの日常行動に反感を抱いていて,ついに居酒屋の亭主と学生が喧嘩し,この移住の原因となった.
 それから700余年の後,1951年の秋に,23歳の生化学者ワトソンと35歳の物理学者クリックは,ケンブリッジ大学物理学部のキャベンディッシュ研究所で出会った.キャベンディッシュは,1766年に水素元素を発見したイギリスの貴族である.2年後の1953年,Nature誌に二人が発表したDNAの二重らせん構造の発見は,ワトソン自身の言葉で言えば,「ダーウィンの著書以来,生物学史上でもっとも画期的な発見の一翼を担う」ものであった.二人は900語の論文の冒頭に次のように書いている.「われわれはデオキシリボ核酸(DNA)の塩の構造を提案したいと思う.この構造は,生物学的にみてすこぶる興味をそそる斬新な特質をそなえている.」

SCOPE

血球貧食症候群

著者: 貞森直樹

ページ範囲:P.2043 - P.2047

 血球貧食症候群(hemophagocytic syndrome:HPS)は,骨髄などの網内系組織において著明に増殖した組織球が血球を貧食し,発熱,皮疹,リンパ節腫脹,肝脾腫などとともに,汎血球減少やDICを伴う症候群である.臨床経過は,急性かつ進行性で,多くの症例は致死的な経過をとり,予後不良である.
 HPSの概念は,1939年にScottら1)がhistiocytic medullary reticulosis(HMR)として報告したのが最初で,その後Rappaportがmalignanthistiocytosis(MH)を提唱した.1958年にはFar,quharら2)が,家族発生したHPSを,familialhemophagocytic reticulosisとして報告した.1979年にはRisdallら3)が,ウイルス感染が原因と考えられるHPS症例を,virus-associatedhemophagocytic syndrome(VAHS)の名称で報告し,新しい疾患概念を提唱した.

medicina Conference 解答募集・24

下記の症例を診断して下さい.

ページ範囲:P.2057 - P.2057

 症例:48歳,男性,会社員.
 主訴:胸部不快感,動悸,労作時呼吸困難.
 既往歴:特記すべきことなし.タバコ20本/日,30年.飲酒はしない.仕事は菓子原料運搬だが最近は休みがちであった.28歳で結婚し,30歳時長男が誕生している.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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