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今月の主題 臨床医のための遺伝子工学 遺伝子の基礎知識
染色体の構造と遺伝子
著者: 服巻保幸1
所属機関: 1九州大学遺伝情報実験施設病因遺伝子分野
ページ範囲:P.2068 - P.2074
文献購入ページに移動 生物の遺伝情報を担う構造物を染色体(クロモソーム)と呼ぶが,大腸菌などの原核細胞では遺伝情報が塩基配列として刻み込まれているDNAはほとんど裸の状態で存在している.しかし酵母からヒトに至る真核生物の細胞では,染色体はより複雑な構造をとっている.つまりDNAだけでなく,組織によらず均一なヒストン蛋白質と一部組織ごとに異なるノンヒストン蛋白質やRNAから成り,このような染色体の構成成分を染色質(クロマチン)と呼ぶ.本来,染色体は細胞周期のM期(分裂期)に凝縮してみられる棒状の構造体を示し,それ以外の間期に核内に分散してみられる塩基性色素で染まる物質をクロマチン(染色質)と呼んでいた.このクロマチンがM期に凝集して染色体を形作ることになるが,現在では染色体という言葉は細胞周期の時期によらず用いられ,特に染色体の構成成分を意識した場合,クロマチンという言葉が用いられることが多い.ここでは染色体の基本構造やゲノムと遺伝子との関係,ならびにクロマチンと転写や複製との関係について説明する.
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