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文献詳細

雑誌文献

medicina34巻12号

1997年11月発行

文献概要

今月の主題 臨床医のための遺伝子工学 疾患治療への遺伝子工学の応用:遺伝子治療に向けて 日本での現状

癌の遺伝子治療:免疫遺伝子治療

著者: 谷憲三朗1

所属機関: 1東京大学医科学研究所内科

ページ範囲:P.2171 - P.2176

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 近年の癌・白血病に対する治療法の進歩にはめざましいものがあるが,一方でいまだに治療抵抗症例も多く,悪性腫瘍は過去十数年以上も日本人の死因の第1位になっている.現在まで,これらの手術療法,化学療法や放射線療法などの主要な治療が有効でない症例群に対して,いくつかの新しい治療法が開発されてきており,遺伝子治療もこのうちの一つである.
 癌に対する遺伝子治療法としては表1に示すような遺伝子治療プロトコールが,現在計画もしくは実施されている.これらは方法論的に大きく2つに分けられる.すなわち,癌細胞に直接的に遺伝子導入することによって治療を行う方法と,癌細胞以外に遺伝子導入をすることで間接的に治療を行う方法が検討されてきている.前者は従来の癌治療法の方向性と類似しており,その抗腫瘍効果には期待が持てるものの,現在の方法論ではまだ正確な腫瘍細胞の標的化が困難であるため,非腫瘍細胞への副作用の出現も懸念される.一方後者では,患者自身の免疫機構を利用しており,腫瘍細胞の標的化が現在の技術水準でも可能と考えられ,実用性が高いものと考えられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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