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雑誌目次

雑誌文献

medicina34巻2号

1997年02月発行

雑誌目次

今月の主題 アレルギー疾患の最近の考え方と治療 Editorial

アレルギー疾患—その新しい概念と治療体系

著者: 福田健

ページ範囲:P.196 - P.199

ポイント
●アレルゲン曝露後に起こるアレルギー反応には,即時相,遅発相,後遅発相がある.
●アレルギー疾患の病態にはIgE依存性のメカニズムだけでなく,Tリンパ球依存性のメカニズムも関与することが明らかになってきた.
●アレルギー疾患の治療もこれら2つのメカニズムをターゲットにしたものでなければならない.

ここまで進んだ病態解明

アレルギー性炎症とは

著者: 奥平博一

ページ範囲:P.200 - P.203

ポイント
●アレルギー性炎症とは,好酸球を主体とする炎症である.
●遅発型喘息反応は,アレルギー性炎症により発現する.
●アレルギー性炎症には,Tリンパ球が産生するIL-5が大きな役割を果たす.

アレルギー性炎症における肥満細胞・好酸球・T細胞の役割

著者: 岡山吉道

ページ範囲:P.204 - P.208

ポイント
●他の炎症と比べて特徴的なアレルギー性炎症の所見は,好酸球・肥満細胞・T細胞の浸潤と活性化であり,発現されるサイトカインはTh2タイプを示す.
●気管支喘息では気管支粘膜が炎症部位であり,肺実質に炎症はない.
●アトピー型(外因性)喘息と非アトピー型(内因性)喘息の間に,病理所見,発現されるサイトカインプロファイルに差はなく,アレルギー性炎症を惹起する複数の過程が存在することが示唆される.

気道の炎症性疾患としての喘息

著者: 佐野靖之

ページ範囲:P.209 - P.214

ポイント
●喘息患者の気道粘膜には,好酸球浸潤,EG2陽性細胞浸潤などが特徴的に認められる.
●サイトカインネットワークによるIL-5,IL-4などが,好酸球浸潤を主体としたアレルギー性炎症を増強する.
●炎症増悪時には,炎症細胞浸潤や免疫細胞浸潤は数十から数百倍へと増幅する.
●好酸球の活性化されたタイプがEG2陽性細胞である.
●ECPやMBPは好酸球由来の組織障害性蛋白である.
●喘息の特徴的病変として,気道粘膜上皮下に基底膜の肥厚が認められる.

鼻過敏症発症のメカニズム

著者: 寺田修久 ,   浜野ナナ子 ,   山越隆行 ,   藤田洋祐 ,   今野昭義

ページ範囲:P.215 - P.219

ポイント
●肥満細胞,好酸球から放出される各種ケミカルメディエーターのうち,ヒスタミンは鼻粘膜上皮に分布する知覚神経終末,特にSP,CGRP陽性神経を刺激してくしゃみを起こす.
●鼻粘膜腫脹には,ロイコトリエン,ヒスタミンあるいはPAF(血小板活性化因子)を主とするケミカルメディエーターによる容積血管拡張と血漿蛋白漏出が強く関与している.
●鼻粘膜過敏性は,鼻粘膜知覚受容のレベルにおいても,また腺,血管反応のレベルにおいても,刺激閾値を低下させ,同時に反応性を亢進させることによって鼻過敏症状発現に強く関与する.
●鼻粘膜過敏性の成立には,好酸球あるいは好塩基性細胞由来のケミカルメデロエーターの関与が大きい.
●ロイコトリエン,PAFあるいは好酸球由来の顆粒蛋白は,鼻粘膜反応性を亢進させることにより,ケミカルメディエーターによって惹起された鼻アレルギー症状をさらに増幅させる.

アレルギー性炎症としてみたアトピー性皮膚炎

著者: 中川秀己

ページ範囲:P.220 - P.223

ポイント
●アトピー性皮膚炎の病変部位の組織像は好酸球の浸潤に特徴づけられる.
●アトピー性皮膚炎において,アレルゲン侵入後の炎症惹起の初期段階においてはTh2系のサイトカインが主体となるが,それ以降の炎症の維持にはTh1系のサイトカインも関与している.
●アトピー性皮膚炎の病変部位の抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞は高親和性および低親和性のIgEレセプターを有し,そこに結合したIgE抗体を介して,アレルゲンを捕捉する.

アレルギー疾患の新しい検査法

特異的IgE抗体測定法

著者: 中川武正

ページ範囲:P.225 - P.228

ポイント
●特異的IgE抗体測定は,アレルギー疾患の診断と治療の両面において重要である.
●測定法としてCAP RAST,MAST,AlaSTAT,LUMIWARDなどがあるが,それぞれ感度や特異性が異なっているので注意を要する.
●本邦で陽性率の高いアレルゲンとしては,ヤケヒョウヒダニ,コナヒョウヒダニ,室内塵,ネコ上皮,スギ,ヒノキなどがあげられる.

好酸球穎粒蛋白の測定法とその臨床的意義

著者: 永田真

ページ範囲:P.229 - P.231

ポイント
●気管支喘息は慢性気道炎症性疾患であり,そのエフェクター細胞として好酸球の役割が重要である.
●気管支喘息のモニタリングはピークフローや喘息日記などを中心に行われているが,これらはアレルギー性炎症に特異的なマーカーではない.
●血清中のeosinophil cationic protein(ECP)値は好酸球の活性化準備状態を反映すると考えられるアレルギー性炎症のマーカーである.
●ECP値の測定は喘息性気道炎症の程度の評価や発作を予知するうえで有用性がある.

アレルギー疾患治療薬の進歩

抗アレルギー薬の種類と作用機序

著者: 冨岡玖夫

ページ範囲:P.233 - P.236

ポイント
●現在,いわゆる抗アレルギー薬/抗喘息薬は20種類あるが,これらについての統一した一定の呼称,見解はない.
●アレルギー性疾患発症にかかわるケミカルメディエーターとしてヒスタミンのみならず,ロイコトリエン,トロンボキサン,血小板活性化因子などが一定の役割を果たすことが明らかになるにつれて,抗アレルギー薬の開発の焦点はこの3種類のケミカルメディエーターの特異的な合成阻害薬と拮抗薬に向けられた.
●抗アレルギー薬は,実用上,あえて①抗ヒスタミン作用を持たない抗アレルギー薬と②抗ヒスタミン作用を持つ抗アレルギー薬に分けられる.
●現時点で,抗アレルギー薬の効果の判定をいつ行うかについて判断する科学的な根拠はないが,経験的には3カ月で判定してはどうかと考える.

抗アレルギー薬の実際の使い方(内科領域)

著者: 高橋清

ページ範囲:P.239 - P.244

ポイント
●抗アレルギー薬は,一般にアトピー型・混合型で,軽症・中等症例に適用が認められ,効果発現は緩徐(2週間以上)であるため,気管支拡張薬との併用が必要である.
●近年開発されたAA代謝系作用薬(LT受容体拮抗薬など)は,感染型,重症例にもかなり高い有効性と即効性(1週間以内)が認められる.
●抗ヒスタミン作用薬は,他のアトピー疾患合併症患者にも有用である.
●重篤な副作用が少ないことから,有効例には抗炎症効果維持のために長期投与療法が勧められる.
●病態に合致した抗アレルギー薬を選択するために,炎症局所における主要メディエーター(ヒスタミン,LTs,TXなど)計測法の確立が望まれる.

抗アレルギー薬の実際の使い方(耳鼻科領域)

著者: 増山敬祐

ページ範囲:P.246 - P.249

ポイント
●アレルギー性鼻炎・花粉症はI型アレルギーの典型的疾患であり,吸入性抗原に対するIgE抗体産生が起こる.
●IgE抗体で感作された鼻の好塩基性細胞表面上で起こった抗原抗体反応の結果,即時相および遅発相の反応が引き起こされる.
●アレルギー性鼻炎・花粉症における重要なケミカルメディエーターは,ヒスタミンとロイコトリエンであり,この遊離抑制薬および拮抗薬が有効と考えられる.
●アレルギー性鼻炎・花粉症に適応のある抗アレルギー薬は3群に分類され,そのなかでヒスタミン拮抗作用を併せ持つ塩基性抗アレルギー薬が基本となる.

抗アレルギー薬の実際の使い方(皮膚科領域)

著者: 池澤善郎

ページ範囲:P.250 - P.256

ポイント
●H1R拮抗による抗ヒスタミン作用がある塩基性抗アレルギー薬(アゼラスチン,ケトチフェン,塩酸エピナスチン,オキサトミド,テルフェナジン,アステミゾール,エバスチンなど)は,アレルギー性か非アレルギー性かを問わず,蕁麻疹,湿疹皮膚炎,痒疹,皮膚掻痒症などの掻痒性皮膚疾患を対象皮膚疾患とし,アトピー性皮膚炎(AD)患者の場合,通常,その一次選択薬剤として投与する.
●鎮痒効果に関係したH1R拮抗性の抗ヒスタミン作用がある塩基性抗アレルギー薬は,さらにnonsedatingであるかどうか,また脱顆粒阻害やH1R拮抗以外の抗サイトカイン活性,抗ロイコトリエン活性,抗PAF活性などの抗アレルギー作用があるかどうかにより,その使い方は若干異なる.

アレルギー性炎症や喘息の病態に対するステロイド薬の作用

著者: 田村弦

ページ範囲:P.257 - P.259

ポイント
●ステロイド薬はlipocortin-1などの蛋白を増加させ,アレルギー性炎症を抑制する.
●ステロイド薬は喘息に関連する多くのサイトカインやケモカインの転写を抑制し,アレルギー性炎症を抑制する.
●ステロイド薬は血管内皮細胞上の種々の接着分子の発現を直接的に,または間接的に抑制し,結果として肺内への炎症細胞の浸潤を抑制する.
●ステロイド薬は気道粘膜の浮腫形成や気道分泌物の産生を抑制するが,気道平滑筋の収縮を直接には抑制しない.

吸入ステロイド薬への期待と限界(内科領域)

著者: 石原享介

ページ範囲:P.260 - P.263

ポイント
●喘息は好酸球を主体とした慢性気道炎症が主要病態である.
●現存する最も強力な抗炎症薬はステロイド薬であり,吸入が最も合理的な投与法である.
●高齢者,難治例など高用量吸入ステロイド投与例ではdose-responseが平坦化する可能性があり,このような例では気管支拡張薬などの適切な併用が望ましい.
●高用量吸入ステロイド投与では全身的影響(副作用)の可能性は否定しえないが,その多くは鋭敏なマーカー(検査値)の異常の域にとどまる.
●現時点においては,早期の吸入ステロイドの導入,ガイドライン治療の普及のみが喘息死亡率などの統計的諸指標を改善しうる方策と考えられる.

吸入性ステロイド薬への期待と限界(耳鼻科領域)

著者: 今野昭義 ,   寺田修久 ,   永田博史

ページ範囲:P.265 - P.267

ポイント
●局所ステロイド薬により,鼻粘膜におけるアレルギー性炎症は有意に軽減する.
●抗原誘発時にみられる鼻粘膜即時反応は,著明に抑制される.
●局所ステロイド薬はすべての鼻過敏症状に等しく奏効する.
●副作用として鼻粘膜局所刺激症状が問題となる.

ステロイド外用薬の効果と副作用

著者: 田中洋一 ,   分山英子 ,   片山一朗

ページ範囲:P.268 - P.271

ポイント
●ステロイド外用剤は日常の皮膚科の診療で最も頻用される薬剤であるが,今日,その局所的副作用が大きく取り上げられ,患者側のみならず,医師側からも忌避される傾向にある.
●しかし,今日,その抗炎症効果に勝るものはなく,ステロイドのリンパ球,好酸球などの免疫担当細胞に対する強力な免疫抑制作用を考えると,現在でも皮膚科領域において有用な薬剤であると考えられる.
●使用にあたっては,その副作用,皮膚への吸収,使用法を熟知し慎重に使う必要がある.

喘息におけるβ刺激薬の最近の考え方と使用法

著者: 榊原博樹 ,   大河原重栄 ,   佐藤元彦

ページ範囲:P.273 - P.277

ポイント
●β刺激薬は喘息の急性増悪や運動誘発性喘息の予防における第一選択薬であり,主として定量噴霧型吸入器(metered-dose inhaler:MDI)で使用される.MDIの正しい操作方法を指導することは,喘息の管理のうえで極めて重要なポイントである.
●ネブライザーによるβ刺激薬の吸入は救急治療の中心を成すものであり,医師の監視下であれば,初期治療として1時間に3回,あるいはそれ以上の吸入も可能である.
●長期管理のためのβ刺激薬MDIは頓用で用いられるべきであり,その上限は1日3〜4回(6〜8パフ)である.
●β刺激薬MDIが1日5回以上必要な場合には,喘息のコントロールが不良な証拠であり,吸入ステロイドを併用するか増量するなどの治療のステップアップが必要である.
●β刺激薬MDIの過剰使用は,気道過敏性を増悪させて喘息のコントロールを不良にする.
●β刺激薬MDIに対する依存や過信は,受診の遅れから過剰使用と相まって喘息死の危険性を増す.
●中等量の吸入ステロイドを使用してもコントロールが不良な症例に対しては,吸入ステロイドの増量のほかに経口β刺激薬の併用をオプションとしてもよい.

喘息におけるテオフィリン薬の新しい側面と使い方

著者: 大田健

ページ範囲:P.278 - P.281

ポイント
●テオフィリンは,気管支拡張薬として喘息の治療で中心的な役割を演じてきたが,抗炎症作用という機能的に新しい側面を持つことが指摘されている.
●テオフィリンは,肥満細胞や好塩基球からの化学伝達物質の遊離を抑える.
●テオフィリンは,好酸球に作用し,in vitroではアポトーシスを介してIL-5の存在下での寿命延長を,in vivoではその活性化を抑制する.
●テオフィリンは臨床的にも,発作時の治療および慢性管理において有用で,喘息治療の第一選択薬とするにふさわしい薬剤と考えられる.

アレルギー疾患の治療ガイドライン

成人気管支喘息—急性発作に対する治療

著者: 森田寛

ページ範囲:P.282 - P.285

ポイント
●β2刺激薬のネブライザーによる吸入は,呼吸困難のためMDIでうまく吸入できない患者に効果的である.
●吸入ステロイド薬は発作時には用いない.
●呼吸困難が強い場合や,PaO2が60 torr以下の場合は酸素投与を開始する.
●重症発作での喘鳴の減弱ないし消失は呼吸停止の切迫を示す.

成人気管支喘息—慢性喘息の管理

著者: 長坂行雄 ,   藤田悦生 ,   波津龍平

ページ範囲:P.286 - P.289

ポイント
●気管支喘息の本態は慢性の好酸球性の気管支炎である.この原因として,約半数の例でアレルギー(I型アレルギー=アトピー)が認められる.
●気管支拡張薬による発作の治療とは別に,慢性喘息の管理には,この気道炎症をコントロールする必要がある.
●気道炎症のコントロールには,家庭でのダニのコントロールのような環境整備のほか,症状がないときでも抗炎症薬(予防維持薬)を使い続けることが必要である.
●最も効果の優れた抗炎症薬は吸入ステロイド薬で,副作用も少ない.

小児気管支喘息

著者: 小田嶋博

ページ範囲:P.290 - P.293

ポイント
●小児喘息では本人が症状をうまく表現できないことが多く,重症度の判定には注意深い観察が必要である.肺機能が参考となるのは,一般には学童期以降である.また,乳幼児の初発発作では,親も判断能力がない場合が多い.
●急速悪化型の発作では,受診時期の遅れに要注意であり,家族,本人に指導が必要となる.
●発作持続状態の治療では,合併症など持続の原因検索を同時に行う.
●思春期にはコンプライアンスが低下しやすく,時に心理的側面からの援助も考慮する.
●難治例では,親,保母,教師などと連携した治療体制が必要である.

アレルギー性鼻炎

著者: 馬場廣太郎

ページ範囲:P.294 - P.297

ポイント
●病型は,くしゃみ・鼻汁型,鼻閉型に分類する.
●重症度分類は,くしゃみまたは鼻汁と鼻閉の症状程度の組み合わせで,軽症,中等症,重症とする.
●病型と重症度によって治療法を選択する.
●軽症では抗ヒスタミン薬,中等症では抗アレルギー薬,重症では局所ステロイド薬を主に用いる.
●くしゃみ・鼻汁型には抗ヒスタミン薬,鼻閉型には局所ステロイド薬を主に用いる.
●保存的治療に抵抗する鼻閉には手術を考える.

アトピー性皮膚炎

著者: 片山一朗

ページ範囲:P.298 - P.301

ポイント
●アトピー性皮膚炎は近年,その成人例の増加と重症化が大きな社会問題となっている.
●皮膚科学会によるアトピー性皮膚炎の診断基準や重症度判定スコアの作成,日本アレルギー学会による治療のガイドラインの作成により,きめの細かい治療が可能になりつつある.
●患者一人一人の増悪因子を見いだすことがアトピー性皮膚炎の治療では最も重要であり,症状に合わせたきめの細かい外用療法が要求される.
●コントロールスタディのない民間療法は避けるべきである.

アレルゲンからの回避(特にダニ対策)

著者: 佐々木聖

ページ範囲:P.303 - P.306

ポイント
●アレルギー疾患におけるアレルゲンとなるのは,室内塵中のコナヒョウダニ(チリダニ)である.
●チリダニはヒトのフケ,垢を餌にし,ヒトと共生している.
●紙パック式真空掃除機で1m2当たり20秒の時間をかけて,寝具類より直接吸塵する.
●気管支喘息児における発症予防(二次予防),またアトピー素因陽性児ではチリダニの感作予防(一次予防)に有用である.

気管支喘息の新しい治療と管理における患者教育の実際

著者: 灰田美知子

ページ範囲:P.309 - P.313

ポイント
●気管支喘息の発症率は増加傾向にあり,家庭的・社会的・経済的損失が大きい疾患であることから,世界的にも大きな健康問題として取り上げられている.
●気管支喘息は慢性アレルギー性疾患であることが明らかとなり,このような病態に即した治療管理指導が必要である.
●患者教育は,医師と患者のパートナーシップに基づいて行われるべきものであり,その目標はアレルゲンの回避,ピークフローによる病状の把握,発作止め,予防薬など各種の薬剤の使用法,救急受診の時期の習熟などである.
●本邦における現行の医療制度では診療の枠内での患者教育は困難であり,アレルギー協会,アレルギー友の会などの非利益団体,保健所などの役割が重要になる.

特殊なアレルギー

ハチアレルギー

著者: 山田吾郎

ページ範囲:P.314 - P.316

ポイント
●ハチアレルギーはハチ刺傷による全身性アナフィラキシー反応で,全身性蕁麻疹,気道収縮,血圧低下,意識障害などを呈する.
●ハチ毒成分のなかでホスホリパーゼやピアルロニダーゼなどが抗原となり,特異的IgEを介して起こるI型アレルギー反応が主体である.
●アナフィラキシー反応にはエピネフリン,ステロイド剤,抗ヒスタミン剤などの投与が有効である.
●長期的治療として,減感作療法が予防的治療として有効である.

食物アレルギー

著者: 向山徳子

ページ範囲:P.318 - P.321

ポイント
●食物あるいは食物に含まれる成分を摂取することによって起こる免疫反応を食物アレルギーという.
●食物アレルギーの症状は全身に発現するが,食物を摂取して1時間以内に症状の出現する即時型と,1時間以後に症状の出現する非即時型とに分けられる.
●食物アレルギーの診断は,問診により食物に起因した症状を推定し,皮膚テスト,特異的IgE抗体測定や,食物の除去・誘発試験などにより原因食物を決定する.
●食物アレルギーの予防的療法においては,除去食療法に合わせて代用食品や低アレルゲン食品の使用を指導する.

薬物アレルギー

著者: 中島宏和 ,   福田健

ページ範囲:P.322 - P.325

ポイント
●薬物アレルギーと診断するうえで最も重要なのは,詳細なる問診である.
●診断には,まず皮膚テストを施行し,最終的には内服または点滴静注負荷試験を行う.
●急性期の重篤な症状に対しては,救急時のABCに準じた治療を行う.

アレルギー性疾患治療の最近の話題

免疫抑制療法

著者: 美濃口健治 ,   足立満

ページ範囲:P.326 - P.329

ポイント
●気管支喘息の病態は慢性の気道炎症であるため,治療の中心はステロイドであるが,ステロイド薬の長期使用で副作用が出現した患者や,ステロイド薬抵抗性患者には免疫抑制薬が必要とされる.
●シクロスポリンはステロイド抵抗性の有無を問わず,T細胞の細胞増殖反応やサイトカイン産生を抑制する.
●ステロイド依存性重症喘息患者にシクロスポリンを投与すると,ピークフロー値や喘息症状が改善し,さらにはステロイド依存量も減量可能であった.
●その他の免疫抑制薬として,FK 506やメソトレキセートがアレルギー疾患治療薬として有効性が示されている.

急速減感作療法

著者: 田部一秋 ,   坂本芳雄

ページ範囲:P.331 - P.334

ポイント
●適応:ダニ特異的IgE抗体が強陽性か,抗原吸入試験が陽性例で,中等症〜重症,非発作時の1秒率≧70%がよい適応である.
●臨床効果は早期からみられ,月間喘息点数は施行1ヵ月後より有意に減少し,1年後には著明改善22.2%,中等度改善48.1%であった.
●ダニ特異的IgG4抗体は,RI施行4週間後から有意に増加し,1年後も増加が持続する.このことはIgG4が阻止抗体として作用するという説を支持する.また,末梢血単核球からの好酸球遊走活性が減少する例や,IL-5産生が抑制される例がみられた.

経口減感作療法

著者: 須甲松伸 ,   佐藤元

ページ範囲:P.337 - P.339

ポイント
●注射による減感作療法は,手技の煩雑さ,通院負担,全身の副反応の懸念など解決すべき問題があるが,経口減感作療法は簡便で安全性が高い.
●アレルゲンの選定,投与方法の工夫により,その有効性も上がってきている.
●経口免疫寛容を誘導する方法として,アレルギー疾患のみならず自己免疫性疾患においても応用への期待が高い.

アレルギー疾患治療の将来的展望

高親和性IgEレセプター(FcεRI)を標的にした肥満細胞活性化の制御

著者: 羅智靖 ,   ,   西山千春

ページ範囲:P.341 - P.345

ポイント
●肥満細胞は,外界からの抗原に曝されている皮膚,気道,消化管などの粘膜に多数存在し,即時型アレルギーのコンダクターとなる細胞である.
●肥満細胞はTh2タイプのほとんどのサイトカインを合成・分泌し,好酸球,リンパ球を病変局所へ遊走させる働きがあり,アレルギー性炎症を始動させる.
●肥満細胞はIL-4,IL-13,そしてCD40 Lを発現し,B細胞のIgE産生へのクラススイッチを誘導する.
●高親和性IgEレセプター(FcεRI)とIgEの結合を阻止することによって,アレルギーの源を遮断できる可能性がある.

特異的サイトカイン抑制薬

著者: 森晶夫 ,   奥平博一

ページ範囲:P.346 - P.349

ポイント
●気管支喘息やアトピー性皮膚炎は,T細胞と好酸球を中心とする慢性の炎症反応が重要である.
●好酸球性炎症を呈するアレルギー疾患では,CD4+T細胞のIL-5産生が亢進している.
●ヒトT細胞のIL-5遺伝子転写には,IL-2やIL-4の遺伝子転写とは独立した制御機構が存在する.
●IL-5遺伝子転写を選択的に制御することは,アレルギー疾患のピンポイントな治療につながると考えられる.

T細胞ワクチネーション/ペプチド療法

著者: 岩本逸夫 ,   中川典明 ,   倉沢和宏

ページ範囲:P.351 - P.353

ポイント
●T細胞ワクチネーションとペプチド療法は,抗原特異的免疫抑制療法として研究開発中である.
●T細胞ワクチネーションは,抗原特異的T細胞に対する免疫反応を誘導し,抗原特異的T細胞を抑制する方法である.
●抗原ペプチドを修飾したペプチドによって抗原特異的T細胞を刺激した場合,T細胞の反応は様々で,T細胞不応答が誘導されることもある.
●抗原ペプチドの投与法によっては,抗原特異的T細胞に免疫寛容を導入することも可能である.

理解のための31題

ページ範囲:P.355 - P.365

カラーグラフ 塗抹標本をよく見よう・14

骨髄異形成症候群・顆粒球増加

著者: 久保西一郎 ,   藤田智代 ,   森澤美恵 ,   浜田恭子 ,   高橋功 ,   三好勇夫

ページ範囲:P.369 - P.373

骨髄異形成症候群
 前回の本欄では,急性骨髄性白血病(acute myelocytic leukemia:AML)のFAB分類M4からM7までを紹介した.今回は,前半で骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS),後半で顆粒球について解説する.
 MDSは貧血,または2系統の血球減少(bicytopenia),あるいは汎血球減少(pancytopenia)を初発症状とし,比較的高齢者に発生する白血病である.緩やかな経過を示しながら,しだいに急性白血病へと進行する.FABでは次の5つに分類されている.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.377 - P.382

図解・病態のメカニズム 腎疾患・2

Bartter症候群

著者: 柴垣有吾 ,   藤田敏郎

ページ範囲:P.385 - P.391

概念
 1962年,Bartterは,低カリウム血症,代謝性アルカローシス,レニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系の亢進を伴い,病理学的に腎の傍糸球体装置(juxtaglomerular apparatus)の過形成を認める症候群を提唱した1).本症候群では,二次性高アルドステロン血症を認めるにもかかわらず,浮腫や高血圧を認めないのが特徴である.この症候群の病因については諸説があり,生理学的解析からそれぞれヘンレループ上行脚太い部(TAL)のNa-K-2 Cl cotransporterが有力とされていたが,1996年,LiftonらのグループはBartter症候群の患者家系の遺伝子解析からNa-K-2Cl cotransporter2),K channel(ROMK)3)の遺伝子異常を見いだしたのである.
 最近では,Bartter症候群とほぼ同じ臨床的特徴を持つが,発症年齢,Ca, Mgの動態などに違いがあるGitelman症候群が知られており,今までBartter症候群と考えられていたものの多くがGitelman症候群であった可能性が考えられているが,詳細は次号にゆずりたい.

内科医が知っておきたい小児科学・最近の話題・2

わが国のHIV母子感染の現状

著者: 奥山伸彦

ページ範囲:P.393 - P.396

 HIV感染は「日本人・国内・異性間」の形で,確実に拡大している.感染妊婦は100例を超え,分娩数の約20%に母子感染が確認されている.一方,妊産婦のHIV抗体検査が60%に施行されているとの報告はあるが,それは逆に,3分の1は母子感染児を含めて見逃されている可能性を示唆する.感染児が先に発症して診断され,遅れて家族の感染が証明されることがある.母子感染の実態と感染児の病像の把握は,小児感染症専門医にのみ要求されることではなくなっている.

Drug Information 副作用情報・11

意識障害・脳症(1)—Reye症候群,原因不明の急性脳症とNSAIDs

著者: 浜六郎 ,   山本征也

ページ範囲:P.397 - P.402

 副作用としての意識障害は,可逆的(一時的)なものから不可逆的(永続的)なものまで種々ある.今回は,意識障害を生じる副作用のうちReye症候群について述べ,アスピリンの使用が減少した現在でもなお減少しない,わが国のReye症候群あるいは感染後の原因不明の脳症と,解熱剤として使用されているNSAIDs(非ステロイド系抗炎症鎮痛剤)との問題点についても併せて述べる.

CHEC-TIE—よい医師—患者関係づくりのために・2

患者から前医への不満や非難を向けられたら

著者: 箕輪良行 ,   柏井昭良

ページ範囲:P.404 - P.405

●症例前医の診断ミスを疑う患者
スギタさんは,68歳,女性で,右乳房痛を主訴に受診.2年ほど前から痛みに気づき,昨年末には就寝時にほぼ毎晩痛みがあった.寝間着に血のようなものが付くため,近くのK病院の外科を受診した.診察を受け,超音波検査,吸引穿刺細胞診検査,腫瘍マーカーを調べた結果,「今のところ大丈夫です.6カ月後にまたみせてください」と医師にいわれた.
その後半年たっても症状が変わらないので,当院を受診した.乳頭が陥没気味で一部変色がみられ,乳頭直下に母指頭大の硬結が触知される.胸壁固定はなく,右腋窩に径1cmの硬性軟のリンパ節が触れた.X線上,微細石灰化なし.血性分泌物は細胞診陰性.超音波検査や吸引穿刺細胞診が施行され,クラス5という結果だった.病期はT4,N1a,M0のステージIIIaであった.

医道そぞろ歩き—医学史の視点から・22

経口血糖降下剤の開発とモンペリエ

著者: 二宮陸雄

ページ範囲:P.406 - P.407

 第二次大戦中,ドイツ軍に占領されていた南フランスのモンペリエで腸チフスが流行した.その治療にスルフォナマイド剤のIPTD(VK57,2254RP)が使われた.モンペリエ医学校のジャンボンらが,30人の腸チフス患者にこの薬を投与したところ,持続的な低血糖を起こして3人が死亡した.ほかにも痙攣や意識障害を起こした患者がいたが,ブドウ糖で回復した.ジャンボンらは,この事故を1942年に「モンペリエ医学雑誌」に報告した.
 ジャンボンは,当時モンペリエ大学の生理学部のヘドン教授の下にいたルバチエのところに行って,この事故のことを話した.そして,事故の原因をどう考えたらよいか意見を求めた.ヘドンは糖尿病と膵臓の研究で有名なヘドンの息子である.ルバチエらは1942年の6月13日に犬で実験を始めた.ルバチエは次のように書いている.「一夜絶食した犬に2254RPを食べさせると,進行性で高度で持続性の低血糖が起き,血糖は50mg/dlに低下した.……膵臓摘出犬ではこの作用はない.」

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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