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雑誌目次

雑誌文献

medicina34巻9号

1997年09月発行

雑誌目次

今月の主題 外来診療でここまでできる 血液疾患・感染症

心内膜炎

著者: 玉野宏一 ,   竹田幸一

ページ範囲:P.1698 - P.1699

ポイント
●ペニシリン感受性の高い(MIC≦0.1μg/ml)緑色レンサ球菌による自己弁心内膜炎は,外来治療が可能である.
●治療は,セフトリアキソン2gの1日1回静注で行う.治療期間は4週間でよい.
●血行動態の安定した,合併症のない患者を選んで行う.患者を選択する際には,性格や自宅と医療機関との距離も考慮しなければならない.

腎盂腎炎

著者: 吉岡俊昭

ページ範囲:P.1700 - P.1702

ポイント
●急性単純性腎盂腎炎では,重症でない限り外来治療の対象となる.
●急性単純性腎盂腎炎で入院が必要な状態は,内服ができなかったり脱水状態にあるか,腎内,腎外に膿瘍形成を認める重症症例である.
●急性複雑性腎盂腎炎で特に入院が必要なものとして,尿管結石や尿路通過障害が認められるときや,糖尿病,妊婦などがある.
●腎盂内圧が上昇している状態での急性腎盂腎炎では,細菌の血中移行による菌血症やショックになることもあり注意が必要である.

感染性腸炎

著者: 井上冬彦 ,   深田雅之 ,   杉坂宏明

ページ範囲:P.1703 - P.1705

ポイント
●感染性腸炎の多くは外来診療で対応できる.
●入院が必要となるのは法定伝染病,排菌のある腸結核,ボツリヌス菌食中毒,MRSA腸炎,偽膜性腸炎などと,その他の腸炎の重症例である.
●大腸菌O157:H7などによる腸管出血性大腸菌腸炎の場合,軽症であれば経過観察を行い,溶血性尿毒症症候群や脳症の初期症状に注意しながら経過観察すれば外来診療が可能である.
●感染性腸炎の多くは対症療法のみで軽快し,抗菌剤投与が必要となるのは,法定伝染病を含めた一部の症例に限られる.
●原因菌不明のまま抗菌剤を投与をする場合は,ニューキノロン剤などを使用する.

MRSA感染症

著者: 力富直人

ページ範囲:P.1707 - P.1709

ポイント
●MRSA感染症は気管切開,レスピレーター,経鼻経管栄養,カテーテル(IVH,尿路,腹腔),褥瘡保有患者,胸腹部外科手術後などに発生する.
●MRSA感染症は呼吸器感染症,皮膚軟部組織感染症,尿路感染症,菌血症,腸炎として発病する場合が多い.
●予防として基礎疾患の改善,カテーテルの抜去,鼻腔口腔内の清浄化が重要である.
●外来でのMRSA感染症の治療は,経口剤あるいは外用剤で治療できるものに限られる.
●バンコマイシンによる治療では,点滴の注入速度(60分以上かけて)に気を付け,高齢者や腎機能低下患者では血中濃度のモニターが望ましい.最高血中濃度25〜40μg/ml,最低血中濃度5〜15μg/ml前後に調整する.

非定型抗酸菌症

著者: 田中栄作 ,   網谷良一

ページ範囲:P.1710 - P.1712

ポイント
●大量排菌患者であっても,入院加療しなければならないという社会的制約はない.
●入院の適応は,あくまでも患者の一般状態を基準として決定する.
●患者検体から抗酸菌が検出された場合,菌の同定を確実に行うことが最も重要となる.
●M.avium-intracellulare complex症に対して,クラリスロマイシンを含む多剤併用療法が有効である.ただし,高齢で基礎疾患を有する患者が多いため,副作用には特に注意する必要がある.
●クラリスロマイシン単剤による治療は容易に耐性株を誘導するため,避けるべきである.

真菌症(1)—クリプトコッカス髄膜炎

著者: 有岡仁 ,   大田健

ページ範囲:P.1713 - P.1715

ポイント
●明らかな髄膜刺激症状や意識障害のない例は,外来での治療が可能である.
●治療の基本はアムホテリシンB(AMPH)と5-FCの6週間の併用であるが,経口フルコナゾールで治療を行うこともできる.また,AMPHを隔日投与することも可能である.
●AMPHと5-FCの後に高用量のフルコナゾールを投与することもある.
●AIDSなど免疫不全状態が持続する例では,経口フルコナゾールによる維持療法を行ったほうがよい.

真菌症(2)—白血病患者のカンジダ肝膿瘍

著者: 淡谷典弘 ,   木崎昌弘

ページ範囲:P.1716 - P.1717

ポイント
●外来診療への移行を検討する際には,白血病が寛解もしくは病勢コントロールが可能なことが条件である.
●投与法として,fluconazoleの経口,amphotericin Bの大量経口投与あるいは経門脈投与がある.
●患者の全身状態や薬剤への感受性・反応性を考慮し治療法を決定する.

AIDS症例の外来でできる治療と予防

著者: 菊池嘉 ,   岡慎一

ページ範囲:P.1718 - P.1720

ポイント
●AIDS症例の外来管理は,抗ウイルス剤によるHIVに対する治療と,新たな日和見感染症の発症予防とその早期診断から成り立つ.
●ST合剤はカリニ肺炎およびトキソプラズマ症にも予防効果が認められ有用性が高いが,副作用の出現に留意すべきである.
●マクロライド系抗生剤(clarithromycin,azithromycin)は,非定型抗酸菌症の予防に適している.
●サイトメガロウイルス(CMV)網膜炎,クリプトコッカス髄膜炎,トキソプラズマ脳症は初期治療終了後に,維持療法(二次予防)を開始する.
●AIDS発症後も,日和見感染症がコントロールされれば,十分外来管理できる状態にある.

悪性リンパ腫

著者: 田口博國

ページ範囲:P.1722 - P.1724

ポイント
●G-CSFの併用により,中高度悪性群の悪性リンパ腫の化学療法も外来で行うことが可能となった.
●CHOP療法は増量して2週間隔で投与が可能である.
●G-CSFは化学療法開始5日目くらいから投与し,次の化学療法はG-CSF中止後1日以上あける.
●感染症の発症に十分注意する.
●制吐剤も注射,内服を使い分けて投与する.

リンパ節生検

著者: 門田俊夫

ページ範囲:P.1725 - P.1727

ポイント
●リンパ節生検を行うに際しては,鑑別疾患を念頭に置きながら,主治医,専門医,外科医,病理医が十分な打ち合わせと準備をしてから行う.
●リンパ節生検の方法には,①穿刺吸引細胞診,②Tru-Cut® biopsyに代表されるcore針生検,③incisional biopsy(切開生検),④excisional biopsy(切除生検)の4つがある.目的に応じ,これらをうまく使い分ける.
●体深部のリンパ節に対しても,CTや超音波と針生検を併用したり,胸腔鏡や腹腔鏡を利用した外来手術や日帰り手術が可能となった.

循環器疾患

冠動脈造影

著者: 森野禎浩 ,   田村勤

ページ範囲:P.1729 - P.1731

ポイント
●患者側(仕事を休みにくい),病院側(入院ベッド数の制約),社会(入院期間の短縮)の3者の要求から,可能な範囲内で外来にて冠動脈造影が行われるようになった.
●外来における適応は,low risk患者(70歳未満,心機能正常ないし軽度低下,腎機能正常など)かつ穿刺経路の動脈異常のない者に限定したほうがよい.
●穿刺部位は,出血合併症を考慮して,原則として上腕動脈あるいは橈骨動脈とする.
●外来冠動脈造影(CAG)は入院検査と同じく安全に施行できると考えられるが,十分に熟練した医師とmedical staffのもとで行われなければならない.
●CAGのみならずPTCAまでも外来で行われる傾向にある.

経皮経管冠動脈形成術(PTCA)

著者: 齋藤滋

ページ範囲:P.1732 - P.1735

ポイント
●日帰りPTCA(経皮経管冠動脈形成術)は,経橈骨動脈的アプローチと冠動脈内ステント植え込み術の両者の出現によって可能となりつつある.
●しかし,日帰りでPTCAを行うといっても厳重な管理が必要であり,原則として入院扱いで行われる.また,病院側も日帰りPTCAに備えた条件を整える必要がある.

発作性頻拍

著者: 新博次

ページ範囲:P.1737 - P.1739

ポイント
●発症が予測できない頻拍発作に対し,心電図の電話電送可能なメモリー式小型心電計が実用可能となった.
●頻拍発作停止にIc群抗不整脈薬の効果が示され,外来でその効果をみることができる.
●頻拍発作により心血行動態の破綻をきたすもの,持続性心室頻拍などでは,早期に専門病院を紹介する.
●適切な診療には患者の協力が必要であり,そのためには十分に病態の説明をすることが不可欠である.
●抗不整脈薬の効果が不十分なときは,安易に増量するのではなく,薬剤の変更やβ遮断薬の併用も考慮する.

急性心筋梗塞

著者: 石田秀一 ,   林田憲明

ページ範囲:P.1740 - P.1742

ポイント
●急性心筋梗塞(AMI)は,未だ外来治療が可能な疾患ではない.致死的不整脈や心不全などの致死的合併症を併発する可能性を含んでいるためである.しかし,AMIの前駆状態である不安定狭心症などを診断・治療する技術は明らかに進歩している.
●そのなかで再灌流療法(血栓溶解療法,経皮的冠動脈形成術;percutaneous transluminal coronary angioplasty:PTCA)の確立は,血栓による冠動脈の完全閉塞を防ぎ,あるいは完全閉塞を短時間でくい止め,入院期間を短縮することを可能にした.
●したがって,AMIの外来診療は,いかに早く診断・治療を開始するか,そしていかに再発を予防するかがポイントとなる.

高血圧・動脈硬化

著者: 北島武之

ページ範囲:P.1743 - P.1745

ポイント
●健常人の血圧は,短期変動性とともに概日変動性を有する.動脈硬化度が進行すると,これらのリズムに変調がみられ,とどのつまりは血管合併症の一因となる.
●従前には冠動脈や脳動脈硬化病変を知るには,観血的検査を行わなければならなかった.ところが,大動脈壁を伝播する粗密波の速度を測定することによって動脈硬化度を安易に知ることが可能になった.24時間血圧測定とともに,これらの検査法は臨床上で有用である.

消化器疾患

食道狭窄(良性・悪性)拡張術,ステント留置

著者: 嶋尾仁 ,   森瀬昌樹 ,   堤修

ページ範囲:P.1747 - P.1749

ポイント
●食道良性狭窄のほとんどは外来治療で十分である.
●悪性腫瘍では,self-expandable metallic stentを用いれば外来での治療は可能である.
●治療の際,疼痛対策を十分に行うことが治療継続のコツである.
●治療開始までの経過期間の長い症例,縫合不全の狭窄,屈曲部の狭窄は,入院治療が安全である.
●穿孔に対してはまず保存的治療を行う.
●動脈性出血には止血術を,毛細管性出血は自然止血する.

消化管出血

著者: 六倉俊哉

ページ範囲:P.1750 - P.1752

ポイント
●消化管出血をみるにあたっては,循環動態を把握し出血量を評価したうえで,診断・治療を進めていく必要がある.
●上部消化管出血に際しては,入院を要することが多いが,出血が少量で内視鏡的止血術が確実に施行できたときには,外来での観察も可能である.
●血管性病変に対しては,クリップ止血術が有効である.
●食道静脈瘤に対する追加治療は外来にて施行可能である.
●内痔核に対する内視鏡的硬化療法は,痔核出血のみならず軽度の脱肛にも有効である.
●外来にて止血処置を行うに際しては,合併症について熟知し,いつでも対応できることが重要である.

ポリペクトミーと内視鏡的粘膜切除術(EMR)

著者: 小林文徳 ,   板倉勝

ページ範囲:P.1753 - P.1756

ポイント
●十分な問診を行い,基礎疾患,服用中の薬剤(抗凝固剤,血小板凝集抑制剤)に注意して,安易な鉗子による切除を行わない.
●隆起型で茎の太いポリープは,留置スネアやクリップを多用して茎部を絞扼し,血流を遮断してから切除する.EMR後の潰瘍はクリップにて縫合する.滲出性の出血にはアルトシューターが有効である.
●偶発症を常に念頭に置き,ポリペクトミー後の注意事項を詳細に説明し,さらにその内容を記載した用紙を手渡す.緊急の場合は,入院可能な施設のバックアップ体制が必要である.

炎症性腸疾患急性再燃

著者: 岩男泰 ,   渡辺守 ,   日比紀文

ページ範囲:P.1757 - P.1759

ポイント
●潰瘍性大腸炎では,便の性状や排便の集中する時期などを注意深く問診し,重症度や罹患範囲を推定する.
●ステロイドは初回から十分量を投与し,漸増は避ける.初期投与量が不十分なまま継続投与し,状態を悪化させることのないように注意する.
●Crohn病は,在宅成分栄養療法により再燃時の入院を回避することが可能である.ステロイドは症状の改善など速効性があり,適切な薬物治療を加えれば,さらにQOLの向上が望める.
●在宅成分栄養療法を円滑に行うには,医師だけでなく,保健婦,薬剤師,栄養士など医療チームによるサポートが重要である.

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)

著者: 平田信人 ,   竹熊与志 ,   藤田力也

ページ範囲:P.1760 - P.1761

ポイント
●ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)後の経過を観察するためには,入院での検査が望ましい.
●外来では,MRCP(膵胆管描出)やEUS(内視鏡超音波)で情報収集を行うという考え方もある.
●外来ERCPを施行する場合には,午前中に行い,検査後3時間は病院内で経過を観察するようにする.
●昼食は絶食とする.帰宅後に腹痛を発症した場合には,すぐに来院するようによく話しておく.
●ERCP後急性膵炎の発生率は,全国集計では約0.1%であった.

急性肝炎

著者: 阿部和裕 ,   宮川浩

ページ範囲:P.1762 - P.1763

ポイント
●急性肝炎の原因によって予後,治療方針が異なるため,その特定は極めて重要である。
●重症肝炎の劇症化に注意しなければならない。
●トランスアミナーゼの上昇が一峰性でピークを過ぎ,GPT>GOTのパターンを呈し自覚症状のない症例では外来フォローアップが可能である。

肝生検

著者: 柴田実

ページ範囲:P.1764 - P.1765

ポイント
●わが国ではほとんどの肝生検が入院して行われるが,欧米では外来での肝生検が広く普及している.
●外来での肝生検は,米国消化器病学会のガイドラインに従って行われている.
●外来での肝生検の合併症のほとんどが術後3時間以内に発生し,被検者の2.3%が合併症のため入院となる.
●超音波検査の併用で,合併症の発生率は有意に減少する.

治療的腹水ドレナージ

著者: 山室渡 ,   住野泰清

ページ範囲:P.1766 - P.1768

ポイント
●欧米で普及しつつある「治療的腹水ドレナージ」は,肝硬変患者の腹水を一度に4〜6l,短時間でドレナージする治療法で,有効性と安全性が注目されている.
●欧米ではアルコール性肝硬変,わが国ではウイルス性肝硬変が多く,腹水治療では両者の病態の違いを理解しなければならない.
●ウイルス性肝硬変患者の腹水例では循環動態・肝機能が不良で,腹水ドレナージの副作用を起こしやすく,適応は慎重になる.
●外来での腹水ドレナージは,利尿剤などの治療に反応しない例が一般的な適応で,アルブミン点滴静注を併用し,2〜3lドレナージする.アルコール性肝硬変は積極的な適応になりうる.
●注意すべき合併症は循環不全,肝不全,腎不全であり,バイタルサインのほか,BUN,クレアチニン,ビリルビン,アルブミン,アンモニアなどの監視が必要である.

呼吸器疾患

肺炎

著者: 高橋幸則

ページ範囲:P.1771 - P.1773

ポイント
●治療開始時に予後を予測する因子(年齢,基礎疾患,身体所見,検査所見)を検討する.
●危険度が低く外来治療が可能と判断した場合は,グループIとIIに分け病原体を予想する.
●グループIでは肺炎球菌・マイコプラズマが大多数であり,ペニシリンかマクロライドを投与する.
●グループIIではインフルエンザ桿菌・グラム陰性桿菌・ブドウ球菌の可能性もあるので,セフェム,キノロン剤の使用も考慮する.
●治療開始後はその効果を綿密に評価し,もし改善がない場合は入院の上,原因を検索・治療する.

睡眠無呼吸検査

著者: 神尾和孝 ,   小野容明 ,   太田保世

ページ範囲:P.1774 - P.1776

ポイント
●睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは,睡眠時の繰り返す無呼吸の結果,さまざまな症状を惹起させる疾患の総称である.
●SASには中枢型と閉塞型があるが,多くは閉塞型(OSAS)である.
●OSASの特徴は,中年以降の男性,肥満体型,大きないびき,昼間時過眠などである.
●簡易診断装置(アプノモニターなど)やパルスオキシメーターを患者に貸し出し,自宅で記録することにより,外来でのスクリーニング検査が可能である.

腎疾患

透析患者の外来手術

著者: 中川芳彦 ,   寺岡慧 ,   阿岸鉄三

ページ範囲:P.1778 - P.1782

ポイント
●ブラッドアクセス関連の外来手術では,それが不調に終わったときに引き続いて再手術をするか,後日改めてするか患者に説明しておく.たとえ最終的に手術が成功したとしても,長時間に及べば患者からの信頼は得られない.
●ブラッドアクセスインターベンション治療は,手術による修復術を先延ばしにできる外来治療法として有用である.
●手根管症候群に対する鏡視下手術は,従来の手術よりも術後の疼痛が軽く,リハビリテーションも早期から開始でき,有用な外来治療法である.
●二次性上皮小体機能亢進症に対するエコーガイド下エタノール注入療法は,外来での治療法として注目を集めている.

ネフローゼ症候群

著者: 安藤康宏

ページ範囲:P.1783 - P.1786

ポイント
●ネフローゼ症候群の診療にあたり入院が必要なのは,腎生検,外来では管理できない体液貯留,および各種重篤合併症(急性腎不全,血栓症,薬剤副作用)の治療などである.
●腎生検は機器の進歩により手技が容易になり,また,合併症も減少してきているが,外来腎生検が安全に行えるレベルには達していない.
●ステロイド,免疫抑制薬による治療も多くは外来で可能であるが,長期投与の副作用の監視が重要である.

持続的外来腹膜透析(CAPD)

著者: 窪田実

ページ範囲:P.1787 - P.1789

ポイント
●CAPDの外来における管理は1ヵ月に1ないし2回の通院で良好に維持される.
●CAPDの最も多い合併症であるカテーテル感染症には,出口,トンネル,腹膜炎が知られているが,これらは外来治療で治癒することが多く,的確な診断と治療が要求される.
●CAPDの合併症のなかでも予後の悪い硬化性被嚢性腹膜炎に対して,外来での綿密な計画に基づいた治療が必要である.
●CAPD療法の長期継続のためには,腹膜機能の定期的な外来観察が必要である.

内分泌・代謝疾患

内分泌的負荷試験

著者: 板東浩

ページ範囲:P.1791 - P.1794

ポイント
●4者負荷試験(TRH,LHRH,GRH,CRHの同時負荷)は簡便であり,下垂体前葉ホルモン分泌の予備能を評価できる.
●最近,診断薬として認可されたCRH製剤は,下垂体・副腎系の分泌予備能も評価でき,糖質コルチコイドで治療中の患者などにも適応できる.
●インスリン低血糖試験は,成長ホルモン分泌不全症(下垂体性小人症)を診断し,視床下部・下垂体機能を評価できる安全な検査である.
●Overnight法のデキサメタゾン負荷試験は,Cushing症候群やpre-Cushing症候群の診断に,外来で行える簡便で有用な検査法である.

糖尿病の治療

著者: 石田俊彦

ページ範囲:P.1795 - P.1797

ポイント
●血糖コントロールがHbA1c7%以下と良好であれば,糖尿病の血管合併症の発症あるいはその進展が阻止されることが明らかにされた.
●高血糖状態をいたずらに放置することの医師の責任は大きい.
●インスリン導入が必要となれば入院が前提であったが,SMBG(血糖自己測定)やペン型インスリン注射器の普及により,外来での導入が可能となった.ただし,患者,医師,看護婦,家族,職場などとのチームワークが確立されてから開始すべきである.
●外来導入に際しては,血糖コントロールを目標にしないで注射に慣れてもらうことをまず目標にする.できれば1日2回投与で開始し,経口血糖降下剤も併用して血糖を低下させないほどの少量より開始し,SMBGの結果をもとに2週間から3ヵ月の間隔で投与量を調節(1回の投与量は,速効製剤であれば0.05〜0.1単位/体重,混合製剤であれば0.1〜0.15単位/体重)する.

神経疾患

脳血管障害

著者: 星野晴彦 ,   高木誠

ページ範囲:P.1799 - P.1801

ポイント
●MRIは,脳幹・小脳・脳表病変の診断に優れている.
●頭蓋外の頸動脈・椎骨動脈の検査には超音波検査法が有用である.
●MRA・CTアンギオにより頭蓋内主幹動脈病変が診断できる.
●SPECTは脳血流を3次元でとらえることができる.
●脳血管障害の急性期は原則として入院のうえ,検査すべきである.

未破裂脳動脈瘤

著者: 中川俊男

ページ範囲:P.1802 - P.1804

ポイント
●外来診療で未破裂脳動脈瘤が発見できる.
●MRAによる脳血管撮影は非侵襲性であり,診断能力は日々向上している.
●くも膜下出血の家族歴を有する群では,有意に未破裂脳動脈瘤の発見率が高い.
●発見される未破裂脳動脈瘤は10mm以下が90%以上を占める.

意識障害患者の在宅栄養管理

著者: 小川滋彦

ページ範囲:P.1805 - P.1807

ポイント
●経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)を用いた経腸栄養療法により,意識障害患者の在宅栄養管理が合理的かつ容易になったため,入院期間の著しい短縮と医療経済的効果が期待される.
●PEGによる在宅栄養管理は,十分なインフォームド・コンセントの後,病診連携と訪問看護体制のもとで行われるべきである.
●胃食道逆流や下痢をきたさないような,栄養剤の投与方法を検討しておく.
●瘻孔の管理は一般人にも簡単に行うことができるが,カテーテルが抜けた場合などのトラブル・シューティングを家族に十分に指導しておく.
●栄養剤の長期投与に伴う電解質や微量元素の欠乏に留意しておく.

膠原病(リウマチ)・アレルギー疾患

リウマチ性疾患における生検手技

著者: 諏訪昭

ページ範囲:P.1809 - P.1812

ポイント
●穿刺・生検手技は,インフォームド・コンセントをとって行う.
●ショックなどの重篤な合併症に対応できる準備をして穿刺・生検手技を行う.
●局所麻酔薬,抗生剤を使用するときは,アレルギーの有無について十分な問診を行う.
●関節液穿刺は,関節炎疾患の鑑別診断上,有用な情報を与えてくれる.
●胸腔穿刺は気胸,胸水貯留の診断,治療方針決定のために行われる.
●高度の肺虚脱を伴う気胸,多量の胸水貯留がみられる場合は,入院のうえ持続吸引を行う.

日帰り手術

日帰り手術

著者: 篠崎伸明

ページ範囲:P.1813 - P.1815

ポイント
●北米では,手術の80%が日帰りで行われている.
●日本の医療経済もすでに破綻しつつあり,日本でも同様のシステムの社会的ニーズが高まるものと思われる.
●手術検査,手術の説明などは外来ですべて行われるため,外来での比重が高くなる.
●手術内容は,施設の外科医によって異なってくるだろうが,従来1週間程度の入院で行っていたものの多くは日帰りで可能であろう.
●日帰り手術を行うにあたり,医療従事者の意識改革および患者教育が大切である.
●日帰り手術は,患者,家族,社会へのメリットはいうまでもなく,病院経営においてもコストダウンという点で大きなメリットがある.

理解のための32題

ページ範囲:P.1819 - P.1825

カラーグラフ 感染症グローバリゼーション・6

節足動物媒介性原虫疾患(2)—リーシュマニア症

著者: 西山利正

ページ範囲:P.1835 - P.1838

 前回は節足動物媒介性原虫のうちトリパノソーマ原虫による疾患について述べたが,今回は同様に節足動物媒介性原虫であり,最近海外からの輸入感染例がしばしば報告されているリーシュマニア原虫による諸疾患について述べることとする.原虫の生活史を図1に示す.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1827 - P.1832

演習 腹部CTの読みかた・5

上腹部痛で発症した79歳の男性

著者: 遠藤じゅん ,   岩田美郎

ページ範囲:P.1841 - P.1848

case
79歳,男性.主訴:右上腹部痛.
2週間前より右上腹部痛を覚え,近医を受診した.抗潰瘍剤の投与のみにて保存的に治療されたが,症状の改善は認められなかった.このため超音波検査を施行したところ,胆嚢壁肥厚と肝腫瘤の存在が指摘され,当院紹介となった.当院の理学的検査では,皮膚の黄染と,触診で右季肋下に圧痛を認めた.

内科医が知っておきたい小児科学・最近の話題・9

予防接種の現状と問題点

著者: 牛島廣治

ページ範囲:P.1851 - P.1854

 1980年頃天然痘が撲滅され,ポリオも2000年を撲滅目標として,予防接種も最終段階に近づいてきている.わが国では,予防接種の有効性,安全性,接種率の向上がより叫ばれるようになってきている.そのなかで,平成6年の予防接種法の改正とその後の施行は大過なく行われてきた.しかしなお問題点もあり,またワクチンをめぐる新しい取り組みも提起がされてきている.

図解・病態のメカニズム 腎疾患・9

ミネラルコルチコイド受容体と11β-hydroxysteroid dehydrogenase

著者: 武藤重明

ページ範囲:P.1855 - P.1858

 ミネラルコルチコイドであるアルドステロンは体液の恒常性維持に最も大切なホルモンの一つである.副腎皮質球状層でつくられ,アンギオテンシンII,Na欠乏,K過剰など,種々の刺激で分泌される.本稿では,アルドステロンのミネラルコルチコイド受容体への特異的結合に重要な役割を担っている酵素である11β-hydroxysteroid dehydrogenase(11β-OHSD)とその異常につき,最近の知見を含め解説する.

Drug Information 副作用情報・18

消化性潰瘍・消化管潰瘍(3)

著者: 浜六郎

ページ範囲:P.1861 - P.1863

 NSAIDsとステロイド剤は消化性潰瘍を生じやすい薬剤の双璧である.今回は,最初にステロイド剤による消化性潰瘍について述べ,続けてその他の消化性潰瘍を生じやすい薬剤についても触れたい.

CHEC-TIE—よい医師—患者関係づくりのために・9

有効で安全な治療を患者さんが拒否したとき

著者: 箕輪良行 ,   柏井昭良 ,   竹中直美

ページ範囲:P.1864 - P.1865

 症例 血管造影検査を拒否した脳幹梗塞例
 63歳,女性.動揺感と頭重感で受診.タナベさんは写真館の主人で,入学など慶事の記念撮影で忙しい合間にやってきた.1週間ほど続く症状は,はじめ嘔気もみられた.血圧は160/110,左上肢の協調運動障害,知覚異常を軽度に認めた.歩行,運動,反射,脳神経に異常はなかった.CTは正常で,とりあえず,放置されていた高血圧の治療を開始した.3週間後に撮ったMRIで右脳幹梗塞と診断して,抗血小板剤を投与した.このとき約5mm大の脳動脈瘤(rMCA)を発見した.

医道そぞろ歩き—医学史の視点から・29

ジギタリスを発見したウィザリング

著者: 二宮陸雄

ページ範囲:P.1866 - P.1867

 エディンバラ大学を出たウィザリングが「キツネの手袋」(Foxglove)を初めて水腫病の治療に使ったのは1775年,彼が34歳のときである.当時,彼は連鎖状球菌咽頭炎の論文で医師となり,故郷に近いウエリントンで開業していた.植物が好きで,余暇を植物の研究で過ごしていた.
 ジギタリスの研究を始めたきっかけについて,ウィザリングは後(1785年)にまとめた著書「キツネの手袋とその医学的利用のいくつかの話.水腫とその他の病気に関する実際的記述を付す」の中で次のように述べている.「1775年に私は水腫病の家伝秘薬について意見を求められた.シュロプシャイヤの老婦人が長い間秘密にしていた薬で,この人は医者が匙を投げた患者を治していた.激しい嘔吐や下痢を招くことは知っていたが,利尿作用には気づいていなかった.この薬は20種もの薬草を調合したものだが,有効なのはキツネの手袋だけだとすぐに分かった.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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