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文献詳細

雑誌文献

medicina35巻11号

1998年10月発行

文献概要

内科エマージェンシー 私の経験

大量吐血は予期せぬときにやってくる

著者: 萱嶋信介1

所属機関: 1自衛隊中央病院内科

ページ範囲:P.252 - P.252

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 その日は予告もなしに院内の電話は内線にも外線にも不通であった.もちろんポケットベルでドクターコールすることもできない.午前中から不自由は感じながらも予定されていた内視鏡検査をこなして,午後3時になった,外科の先輩のドクターから「早期胃がんのオペ後で数年前に残胃から大量出血が起こり追加で全摘になった患者が,ここ数日来黒色便が出て貧血症状も強いので今日入院させたのだ.ちょっと上部消化管だけ見てくれないか,以前も同じようなことがあって逆流性食道炎だったんだけど,一応輸血は取ってある」との緊急度が低いと感じさせる緊急内視鏡の依頼だった.外来カルテを見るとHCV陽性で,大量出血のときの輸血で感染したのではなく,もっと以前のもののようで,既に肝硬変であった.食道静脈瘤からの出血も予想できたので,徒歩で食道静脈瘤の治療を専門にしている先輩のM先生を捜したが,つい先ほど外出したとのことであった.しかたないので食道に詳しい後輩の先生と一緒に内視鏡を開始した.すぐに下部食道に静脈瘤があることわかり,しかも現在は出血はしていないがフィブリン塞栓の付着した出血点があることがわかった.とりあえずEVLだけはしておこうと考え,半透明フードを被せた内視鏡先端が出血点を捕らえようとした瞬間,血栓が取れ大量の吐血が起こった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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